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「乾杯」で出会い、つながる。国内最大級のビール×NFTコミュニティ「Crypto Beer Punks」の運営術

2022年にアート領域におけるNFTブームが隆盛し、日本でも多くのNFTプロジェクトが立ち上がった。その後、熱狂的な盛り上がりは落ち着いたものの、NFTを活用したビジネスの可能性を模索する企業は依然として挑戦を続けている。

そうした中、多くの人にとって身近なアルコール飲料である「ビール」にNFT技術を掛け合わせ、共感や熱狂を生み出すコミュニティが存在する。

それが、Crypto Beer Punks(クリプトビアパンクス)だ。ビールとサイバーパンクの世界観を体現したハイクオリティなイラストが話題を呼び、立ち上げ当初からNFT業界では大きな注目を浴びた。

同プロジェクトは現在、「乾杯、その最高の瞬間をもっと!」というビジョンを掲げる株式会社KANPAIDANのいち事業として運営されており、設立から約2年で、3,500名ほどが参加する日本最大級の「ビール×NFT」コミュニティとなった。

また、コミュニティの運営に留まらず、横須賀のビール醸造所「GRANDLINE BREWING」の運営や、ビアバー共通のデジタル会員証「KANPAI PASS」の開発、酒造メーカーや酒販店舗のトータル支援を手がけるなど、数々のビール関連事業を展開している。

同プロジェクトのファウンダー 兼 株式会社KANPAIDAN 代表取締役の漢那 徳馬(かんな とくま、コミュニティネーム :Nakan)さんは、「ビールはコミュニケーションツールの1つであり、本質的価値は人と人がつながる点にある」と話す。この価値を広げるべく、どのような取り組みを展開しているのだろうか。

そこで今回は、Nakanさんに、ビールを基点としたコミュニケーションの促進方法や、コミュニティの熱量を維持し、発展させていくための取り組みについて詳しくお話を伺った。

「乾杯」で人と人が出会い、つながる世界を目指すCrypto Beer Punks

私は現在、映像制作会社「NOKID」と、乾杯トータルプロデュースカンパニー「KANPAIDAN」の2社で代表取締役を務めています。

会社を設立する前はPR会社で企業のマーケティング・プロモーション支援を行っていました。その中で、イラストレーターや漫画家に特化したプラットフォーム事業を立ち上げた際、自分ももっとクリエイティブな仕事がしたいと感じ、2020年にNOKIDを創業しました。

そして、2022年頃にNFTが盛り上がる中、クリエイティブ制作会社としてNFTを扱えるようになりたいと思い、以前から興味があったクラフトビールとNFTを掛け合わせて「Crypto Beer Punks(以下、CBP)」を立ち上げました。

現在は、KANPAIDANのいち事業として位置付けており、後述する「KANPAI PASS」やCBPのコミュニティ運営を通じて酒造メーカーや酒販店舗のトータル支援を行っています。

CBPは、既成概念にとらわれない新しい価値を持つ理想のビール「Crypto Beer」を見つけるコミュニティです。ビール愛飲家はもちろん、アルコールを飲まない方でも「乾杯」でつながる世界を目指し、そのコミュニケーションツールとして様々なビールを展開しています。

横須賀に私たちの旗艦店となる醸造所「GRANDLINE BREWING」を構えていて、フラッグシップ商品となる「Hello,World」や「Crypto Beer」をはじめ、すでに10種類以上のオリジナルビールを開発し、都内近郊や関西地区を中心に20店舗以上のビアバーや飲食店に卸しています。

CBPを立ち上げた当時は、海外でもクリエイティブ感度の高いNFTプロジェクトが流行していたため、イラストのクオリティは特に重視したポイントです。

また私自身、本業で若年層向けのプロモーションに関わる機会があったため、彼らに刺さるトレンドや、どういった色合いやトーンであればCBPの世界観を体現できるかの感覚は大体つかめていました。

そのため、CBPのキャラクター制作を担当いただくクリエイターの方を決める際には、20〜30人ほどの候補の中から選定し、NFTの販売直前まで絵柄を一緒に擦り合わせさせていただきました。キャラクターデザインはビール瓶のラベルにも採用していて、キャラクターを魅力的に見せるラベル素材を厳選するなど細部にまでこだわっています。

実際に見て、感じて、飲んでもらって、CBPの熱量を伝える

CBPを立ち上げてからは、泥臭くマーケティング施策をやってきた実感がありますね(笑)。特に大切にしているのは、「肌触り感」のあるコミュニケーションです。

前提として、私たちは「乾杯、その最高の瞬間をもっと!」というビジョンを掲げているため、CBPのコミュニティに関わってくださった方々が、乾杯をきっかけに出会い、つながりが生まれたら嬉しいと思っています。

そして、ビールも開発しているわけなので、やはり実際に見て、感じて、ビールを味わっていただきたい。さらに、CBPの世界観に共感してくれているメンバーとの会話を通じて、その熱量が伝わる方が良いと思っています。

そのため、リアルで話せる距離感を設けられる「イベント」への協賛を積極的に行ってきました。昨年だけでも合計30件以上のイベントに出展し、多い時は月に5回ほど参加していたと思います。実際に、イベントを通じて様々な方に興味を持っていただき、同じ出展側であるWeb3事業者の方々とコラボが決まることもありました。

CBPがリアルイベントと相性が良い背景として、「クラフトビール」は賞味期限が短い反面、フレッシュさを楽しむという文化が根底にあるので、アートや不動産などと違って資産性が低い点にあると思っています。つまり、誰にとっても手に取りやすいプロダクトであるため、様々な形式のイベントと共存し、会を盛り上げられる点が私たちの強みです。

また、イベントに出ることでCBPの運営メンバーと近い距離で話せますし、一緒に同じものを売る体験を共有できます。これが、とても楽しいんですよね(笑)。

自身の心持ちとして「飲みにいけるファウンダー」でありたいと思っていて、決して遠い存在にならないよう心がけています。たまにコミュニティの方と飲みにいくこともありますし、関わりやすさは常に意識しています。

▼実際にイベントに出展している際の様子

リアリティのあるコミュニケーションを重視している背景として、私もWeb3の技術には大きな可能性を感じている一人ではありますが、NFTやDiscordなどの技術はあくまで手段の1つでしかないと考えています。

実際、メンバー同士のつながる場所としてDiscordコミュニティも運営していますし、もちろんオンライン上でも「乾杯!」という会話はできます。それでもやはり、「飲んで楽しむ」だけでなく「飲むことでつながる」を体現するには、リアルでのコミュニケーションの方が何十倍も価値があると思っているんですよね。

とはいえ、リアルで感じた熱量を「誰かに伝えたい」という時に共有しやすいのはオンラインだと思いますし、リアルに比べて拡張性がある点を踏まえると、認知度を広げる観点では重要なので、Web3の技術はもう少し活用していけたらと思っているところです。

NFTを知らなくても楽しめる、ビール好きに向けた「KANPAI PASS」

いくつものイベント協賛を通じて、Web3に精通する方々にはある程度CBPを知っていただけた実感があったので、今年に入ってからは「ビールが好き」という方をメインターゲットに、よりマスに向けた施策を強化しています。

その一環として、2024年2月に株式会社KANPAIDANを立ち上げ、デジタル会員証の「KANPAI PASSをリリースしました。この会員証を持って、全国の加盟店でQRコードを読み込むと、KANPAI COIN(以下、KPC)を獲得できます。貯まったKPCは、お店のクーポンやオリジナルグッズと交換できる仕組みです。

現在のQRコード設置店舗は、クラフトビール醸造所の「GRANDLINE BREWING」や、六本木の「BrewDog Roppongi」など首都圏を中心に数十店舗で、他にも複数の店舗で導入に向けての話が進んでいます。

加盟店側のメリットとしては、LINEに登録している1,000人以上のビール好きなユーザーに向けてメッセージを配信できるため、来店動機を促す施策を打つことが可能です。将来的には、課金方式を導入し、来店支援を強化していく事業モデルも考えていますね。

このKANPAI PASSを開発する際にこだわった点は、ウォレットを作成したり暗号資産を購入せずとも、誰もが簡単にNFTを取得できる体験設計です。

そこで、ほとんどの人が日常的に使っているLINEアカウントさえあれば、登録など不要で会員証を受け取れる形にしました。技術としては、シンシズモ社が提供する「キリフダ」というソリューションを活用しています。

結局、NFTは単なる手段でしかないため、それを使って何を実現したいかが重要です。

「NFTプロジェクト」として始まったCBPは、これまでビール好きの方との距離が遠く、コミュニティに参加してもらうにはハードルがありました。そこでKANPAI PASSを設けることで、うまくハブとして機能すると思っていて。

つまり、NFTやCBPを知らずとも自分の好きなビアバーで楽しんでいるうちに、KANPAI PASSについてもっと知りたいという方が出てくると思うんです。そこでようやく、ビール×NFTのコミュニティであるCBPに興味を持ってもらえれば良いと考えています。

そして、CBPのことをより好きになってもらったら、運営やモデレーターとして関わってくれたら嬉しいですし、この3つの階層が独立して存在するのではなく、うまく循環しながらつながりが生まれたらと思っています。

これからもイベント出展には注力していく予定なので、例えばビール好きが集まるフェスなどにKANPAI PASSを導入し、まずはLINEで登録してもらった後、次第にCBPにも興味を持ってもらえるような導線を作っていきたいですね。

ビールを基点に様々なコミュニティとクロスし、新たなつながりを生む

さらに、KANPAI PASSに加えて、英国No.1のクラフトビールメーカー「BREWDOG(ブリュードッグ)」とコラボした「BREWDOG PUNKS PASSも発行しています。

BREWDOG PUNKS PASSは、六本木の店舗「BrewDog Roppongi」に来訪した際にポイントがもらえたり、オリジナルグッズやクーポンと交換できたりするユーティリティを設けています。また、4つのグレードを設けていて、それぞれ店舗での割引率や獲得可能なKPCの数が異なります。

BREWDOGはCBPの立ち上げ当初からコラボしていたブランドで、彼らには「Punk IPA」という商品があり、まさに「Punk」を共通のキーワードにして今回の取り組みがスタートしました。

私自身「Punk IPA」が大好きで、いちファンとしてBREWDOGをみていたので、コラボが決まった時は大変うれしかったですね。

担当の方と色々お話しさせていただく中で、私たちがCBPのコミュニティ運営を通じて得られた知見と、彼らがもつクラフトビール業界での圧倒的なブランド力などの強みを活かし、うまく補完し合う関係を築けたらと思っていました。

ただ、お互いの強みや特性が異なる中で、どのようにコミュニティを繋ぎ合わせれば熱量を高められるのか…この点を考えるのにすごく時間がかかりましたね。現在も、最良の連携の仕方を模索している段階ですが、控えているニュースもいくつかあるので、良きタイミングで発表していけたらと思っています。

また、BREWDOGの他にも企業やIPとコラボビールを開発することもありますが、基本的には、私たちのビールを実際に飲んでいただき、CBPの世界観にワクワクを感じてくださる事業者の方を中心に選定しています。

その際、クリエイティブ制作会社として、コラボ先の世界観をしっかり反映したデザインに落とし込むよう留意しているのに加え、どれだけ絵柄が良くても結局ビールが美味しくなければ意味がないので、そこを両軸できちんと届けられるようビールの開発にも力を入れています。

過去の事例で言うと、東映アニメーションのNFTプロジェクト「電殿神伝-DenDekaDen-」とコラボを実施していて、現時点で他にも様々なNFTコンテンツとのコラボレーションが決まっています。

このように、ビールを基点に多様なコミュニティと接点を作っていくことで、新たなつながりや交流が生まれると実感しています。まさに、コミュニティとビールのそれぞれがクロスオーバーし、共に成長していく形が理想です。

ビールはコミュニケーションツール。「乾杯」という言葉を世界に広げたい

私たちは、NFTやコミュニティの力を借りてビール業界の発展に貢献したいと考えています。その一方で、まずはビール業界の既存のビジネスモデルを踏襲しつつ、私たち自身が楽しみながら持続可能な収益構造を生み出す必要があります。

そのために、例えば、コミュニティに関わる人たちが加盟店の集客を手伝ってくれるような仕掛けを作るといったことが考えられます。そして、この流れを作る「ハブ」として私たちが機能すれば、ユーザーがイベントを楽しみながら、店舗側も集客に困らないという状況を生み出すことができると思っていて。

結局、「投資(NFTを販売・購入する)」だけでは経済が回らないんですよね。私は、CBPに関わるすべての人が「関わって本当によかった」と感じてもらいたいので、いかに社会に付加価値を還元していけるかをファウンダーとして考えなければならないと思っています。

そのためにも、まずは国内のコミュニティに真摯に向き合いながら足固めを行い、その点をやりきりたいですね。

今後の展望としては、ビール文化の魅力をもっと世界中に広めていきたいです。特に、多様性のあるクラフトビール市場は日本でも浸透してきており、かなり伸びしろがあります。そこにWeb3を組み合わせていけば、新たなビジネスチャンスを見出せるのではないでしょうか。

加えて、私は人と人のつながりや出会いをたくさん作りたいという思いを込めて「乾杯」という言葉を使っているのですが、その言葉も海外に同時に発信しながら、イギリスやアメリカなどでも「KANPAI」と言われるような世界観を作っていきたいですね。

よって、将来的にはアニメやキャラクター、漫画といった海外にも通じるエンタメコンテンツとビールを組み合わせた展開も検討しているところです。

今後も、ビールの本質的な価値である「人とつながる」を実現する様々なアプローチを行いながら、CBPのコミュニティやKANPAI PASSを成長させていきたいと思っているので、私たちに共感してくださる方がいれば、ぜひ一緒に取り組んでいけたら嬉しいです。(了)

取材・ライター:古田島 大介
企画・編集:吉井 萌里(SELECK編集部)

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