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エクサウィザーズに学ぶ、生成AIを「使いこなす組織」の作り方【SELECK miniLIVEレポート】

エクサウィザーズに学ぶ、生成AIを「使いこなす組織」の作り方【SELECK miniLIVEレポート】

「SELECK miniLIVE」は、注目企業からゲストスピーカーをお招きし、X(旧Twitter)スペース上で30分間の音声配信を行う連載企画です。

2024年7月17日に開催した、SELECK miniLIVE シリーズ「非エンジニアの生成AI活用ワザ」第2回にお越しいただいたのは、株式会社エクサウィザーズ 執行役員/人事責任者の半田 頼敬さんです。

シリーズ「非エンジニアの生成AI活用ワザ」
さまざまな生成AIが、競い合うように進化を続ける昨今。
本シリーズでは、敢えてエンジニア以外の職種(営業、マーケティング、人事、広報、経理 etc…)に焦点を当て、生成AIの活用ワザをカジュアルに公開していくことで、相互の学び合いを促進していきたいと考えています。

AI・生成AIを活用したさまざまなサービスを展開する同社。2023年10月に設立されたグループ会社 Exa Enterprise AIが提供する「exaBase 生成AI」は、初年度で約550社・5万以上のユーザーに利用され、ARRは約9億円規模に達しているといいます。

そんな同社の内部では、実際にどのくらい、そしてどのように生成AIが活用されているのでしょうか。今回は「実は温度差があった」という社内への浸透プロセスや、具体的なユースケースまで、詳しくお聞きしました。(聞き手:株式会社ゆめみ / Webメディア「SELECK」プロデューサー 工藤 元気)

本記事は、2024年7月17日に開催したSELECK miniLIVEの生配信を書き起こしした上で、読みやすさ・わかりやすさを優先し編集したものです。当日の音声アーカイブはこちらからお聞きいただけます。

もはや生成AIは、業務においてパソコンと同レベルの必需品

工藤 本日は、シリーズ「非エンジニアの生成AI活用ワザ」第2回となりますが、株式会社エクサウィザーズより、執行役員/人事責任者の半田 頼敬さんにお話を伺いたいと思います。

早速ですが、半田さんがエクサウィザーズの中でどのようなミッションや、業務を担われているのかお話いただけますか?

半田 はい。私の役割は大きく2つです。まず1つは、エクサウィザーズの人事責任者として、大きくは採用と人事企画、総務、労務を管掌している役員として、組織全般を見ています。

もう1つが、グループ内のExa Enterprise AIという生成AIに特化した会社の中で、人事を担当しつつ新規事業開発に関わっています。

※エクサウィザーズの小会社であり、生成AIプロダクトの開発・提供に特化した 新会社「Exa Enterprise AI」について取材させていただいたこちらの記事も、是非ご覧ください。

というのも、我々が提供しているサービスの中には、DX人材の育成を目的としたアセスメントやeラーニングのように、人事がお客さんになるものがあります。同様に、法人版の生成AIサービスを提供する中でも、人事がお客さんになるケースがあるんです。

▼株式会社エクサウィザーズ 執行役員/人事責任者 半田 頼敬さん

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工藤 なるほど、自らがユーザーになるというケースがあるので、人事として顧客の業務を理解されている半田さんが事業開発に関わっているんですね。

半田 そうです。これまでに、自分たちが人事業務に生成AIを使ってきた中で、うまくいかなかったこともあったので、それらをサービス開発チームや市場に共有することも重要な役割かなと思っています。

工藤 早速、生成AIの社内活用というお話が出ましたが、これは今日お伺いしたいテーマのひとつです。実際、エクサウィザーズさんの社内では、どのくらいの活用がされていらっしゃるのでしょうか?

半田 我々は法人向けに「exaBase 生成AI」という組織の内部データを活用できるAIサービスを提供していますが、まず社員に対してはこれを完全に開放しています。誰でもセキュアな環境で、いつでもAIを利用できる状態です。

その中でモデルとしてはGPT、Claude、Geminiなどを切り替えて、業務に合わせて選んで活用できます。

▼「exaBase 生成AI」の実際の画面(同社提供)

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工藤 例えば、半田さんの業務領域である人事領域では、どのような使い方をされていますか?

半田 もう、生成AIがなければ、パソコンがないのと同じくらい…もはや仕事にならないですね。もし使えなくなったら、かなりストレスを感じると思います。

使い方としては、まずは何か困った時に聞く。困っていなくても、聞いてみた方が早いなと思ったら聞く。作業としても、求人票のような採用コンテンツを作るのはもちろん、面接の質問項目や判断基準の下書きや修正はよくやってもらっています。

他にも、内部人事系の業務では、いわゆるeNPSという従業員向けのNPSの結果を経営層、リーダー層に共有する際の簡易レポートを作ってもらったりしますね。

こういったレポートは、「鮮度が命」じゃないですか。ただお恥ずかしながら、以前は作業にけっこう時間がかかっていて、共有した際に「これ、いつの?」となってしまうこともあって。今はそこにAIを入れたことで、レポートや分析はだいぶ早く出せるようになりました。

▼実際のレポート(ダッシュボード)の一部

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社内の困りごとをAIで解決した上で、新サービスとしても展開する

工藤 レポートまで作るとなると、使い方としてはかなり高度かなと思います。半田さん以外の方も同じような使い方をされているのですか?

半田 それで言うと、私が個人的に使っているわけではなく、組織として社内のコーポレートエンジニアと一緒にシステムを開発して活用しています。先ほどのレポートの話ですと、Looker Studio(ダッシュボードツール)でそうした集計やレポーティングができる状態を構築しています。

個人でライトに生成AIを使うようなこともあれば、ちょっと発展版として、組織としてシステムを作って活用するようなこともありますね。

工藤 すごい。どのような体制でシステム開発をしているんですか?

半田 人事と、いわゆるコーポレートエンジニアのような職種が協働する「業務変革室」という組織を立ち上げ、現在はエンジニアが5名ほど所属しています。

コーポレート業務の中には、自動化したりAIを絡ませたりすることでラクになるものが結構あるんですね。そこで半年ほど前に、1名のエンジニアがコーポレートエンジニアとして入り、現在では5名のエンジニアを含めた10名ほどのチームで効率化を推進している形です。

工藤 コーポレート業務の効率化のためにAIを実装してくれるエンジニアが、社内に内製チームとしていらっしゃると。素晴らしいですね。

半田 我々の場合は、生成AIのプラットフォームをサービスとしても提供しているので、社内事例を作ることがそのままトップラインへの貢献や、新規サービスの芽につながることもありますので。そこは、特殊な部分かなとは思います。

例えば直近では、「exaBase IRアシスタント」という、AI×IRの新規サービスを始めました。これも元々は、コーポレートのIR担当が「株主総会や投資家向けミーティングの準備を効率化したい」という相談を社内エンジニアにしたことから始まっています。困っている人がいるのであれば、サービスにすれば良いのでは? という形で、サービス化されていったんですよ。

これはIRに特化した話ではなく、人事・経理・広報などそれぞれが困り事を抱えていますし、色々なニーズがあると思っています。それを意識した上で、一旦社内でドッグフーディングをライトに始めることを意識していますね。

工藤 まずは社内の困りごとをプロトタイピングしてみて、実際に役に立つものであれば、サービス化も検討していくと。組織と事業が連携した、非常にフレキシブルな組織なんですね。

半田 せっかくAIの会社でコーポレート業務をするんだったら、そんな風にAIを活用ができたほうが楽しいだろうなと。そういった形で面白い仕事や機会を作るのは、リーダーの仕事かなと思っています。

そしてサービスを開発するエンジニアからしても、一番先に反応してくれるユーザーが社内にいることで、作ったものへの反応がわかりやすくやりがいがありますよね。

全員が「生成AI大好き」ではない。組織浸透における3つのカギは…

工藤 ちょうど、組織に関連するお話が出てきたので、自社内への生成AIの活用浸透という文脈にお話を移したいと思います。

エクサウィザーズさんはAI事業を展開されているので、「そもそも生成AIに興味のある人が集まってるんじゃないの?」という、勝手なバイアスがあるのですが、実際はどうなんでしょうか?

半田 結論から言うと、やはり組織内にも一定の温度差はあります。全員が全員、「AI大好き、AI超楽しい!」みたいな感じでは当然ないのが実情です。特に初期の頃は、温度感が高い人が率先して動く状態が続きました。

工藤 良い意味でも、好きな人はガンガン習得していくし、使わない人はずっと使わない、といった形で差が開いていくイメージですか?

半田 最初はそうでしたね。でも、そのままでは組織としては良くないよね、という考えはベースとしてあるので、「こう使っていこう」という啓蒙活動を意識的に行っていました。放っておくだけで広がっていく、ということはなかったです。

前提として、生成AIと業務の相性があると思っています。最初からとっつきやすい職種もあれば、距離が遠い・イメージが湧きづらい職種も当然ある。後者の方たちを巻き込んでいくには、工夫が必要だと思います。

工藤 そういった方々が「一歩踏み出す」きっかけを作っていくには、何が重要でしょうか?

半田 大きくは3つあるかなと思います。まず1つは、トップが背中で見せるような形で、使い方を見せていくこと。単に「使え」と言うだけではなくて、トップやリーダーがちゃんと使ってそれを見せることが重要ですね。

2つ目は、事例をできるだけライトに共有すること。これはすごく大事だと思っています。例えば我々の場合は「LT会」という形で、どんなに些末なものであっても、使い方をどんどんみんなで共有するようにしています。

というのも、めちゃめちゃ生成AIを使いまくるガチの人の事例だけを共有されても、ちょっと次元が違いすぎて、逆に「自分とは関係ない」と思ってしまいがちなんですよね。

ですので、使いこなし度でいうと真ん中くらいの人たちの「使う前はハードルが高かったけれど、やってみたら意外と簡単でした」といった声がすごく大事なんです。そういった中間層の人が増えてくると、みんなが動き始める印象があります。

最後に3つ目は、文化と言いますか、雰囲気づくりです。例えば日々の会話の中でも、積極的に生成AIの使い方やプロンプトなどを共有していく。それを続けていくと、「この会社ではこれは普通なんだな」という形で、すっと染み込んでいくと感じます。

工藤 いわゆる「2:6:2」の話といいますか、上位の「2」の人たちがどんどん自主的に進んでいく中で、中間の「6」の人たちの厚みと濃さを増していくことを、LT会などを通じて行っているのかなと感じました。

その上で、普段のコミュニケーションの中に生成AIの話題をどんどん入れていくことで、文化をつくり、過渡期を越えていくと。とても参考になりますね。

生成AIによって「不可逆的に」起こる変化に向き合い、楽しむ

工藤 ちなみに、今の感覚的には生成AI浸透における過渡期を越えた感覚はありますか?

半田 どうですかね。日々生成AIにアクセスしている人が組織全体の7割を超えてくると「進んでいる組織」だと捉えていますが、その数字は越えています。ただ、個人的にはもっともっと使いこなせるかな、まだ全然かな、という感覚もあります。

工藤 「7割を超えると進んでいる組織」というのは、どういった背景でしょうか?

半田 我々は、生成AIの活用レベルを5段階で定義した上で、日本においてどのくらい活用が進んでいるかを調査したレポートを定期的に出しています。それを踏まえての数字です。

工藤 なるほど、お客様に生成AIサービスを提供される上で、活用レベルを整理しているんですね。

▼2024年6月10日に公開された、最新の調査レポートより抜粋

エクサウィザーズに学ぶ、生成AIを「使いこなす組織」の作り方【SELECK miniLIVEレポート】.004

工藤 お客様にサービスを提供される中で、他に見えてきたことはありますか?

半田 そうですね。exaBase 生成AIのサービスの中に、活用によって削減された業務時間を可視化する面白い機能があるのですが、それを見ていると、やはり職種によって活用度が全然違います。例えばエンジニアは、コード生成やレビューなどの用途があるので、やはりよく使われていますね。

そもそも、費用対効果を重視されるお客様が多いので、削減時間などで定量的に成果を可視化できる状態は大事ですし、それがあることで組織として打ち手が打ちやすい印象です。

工藤 ありがとうございます。最後に、まだまだ生成AIの社内導入・活用に悩まれてる方も多いと思いますので、そんな方々の背中を押すような、応援メッセージをお願いしても良いでしょうか。

半田 応援というほど偉そうなことは言えないのですが、個人的に感じていることは大きく2つあります。

1つは、やはり生成AIを活用すると仕事がとてもラクになること。そのおかげで、シンプルに早く帰って家族と時間を過ごすこともできますし、自分の場合はそれによって空いた時間を事業開発に充てています。いずれにせよ、自分がラクをするためにまず使っていきましょう、と言いたいですね。

もう1つは、生成AIの登場によって人事の仕事内容が大きく変わるのは不可逆的なことで、元には戻れないということです。

それが良いことなのか・悪いことなのかではなく、そちらの世界へ向かうことは決まっていると思うので、であれば先に行って待っていたほうが楽しいかなと。

ですので、「生成AI×人事」の領域を楽しいと思える方がいたらぜひ一緒に働きたいですし、他の業種でも、みんなが自分の業務に生成AIを掛け合わせて、楽しく仕事ができると良いなと思っています。

工藤 生成AIによって業務改革が起こることは大前提として、それをうまく使いこなすことで、自分自身のクオリティオブライフに向き合うきっかけにもなるのではないかと。非常にエモい、メッセージ性を感じました。半田さん、本日はありがとうございました。

半田 ありがとうございました。(了)

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