• Repro株式会社
  • 代表取締役
  • 平田 祐介

世界で戦うためのデザインを!「プロ」の仕事を見せてくれたデザインチームとは

今回のソリューション:【AQ】

〜グローバル市場に受け入れられるデザインを作る「AQ」の事例〜

実際のユーザーの動きを動画で見ることができるモバイルアプリ解析サービス「Repro」を展開するRepro株式会社は、2015年4月に総額1億円の資金調達を実施した。そして同時に、約1年β版として提供してきた同サービスの正式リリースにも踏み切った。

元々グローバルな市場を見据えて世界で戦う準備をしてきた同社は、このタイミングでホームページのデザインの革新にも踏み切った。それを共に創り上げたのが、デザインチーム「AQ」だ。

代表取締役である平田 祐介さんが「本当のプロフェッショナリズムを見せてもらった」と語るAQについて、そしてReproのサービスが生まれた背景について、詳しいお話を聞いた。

世界を歩くため!早期リタイアを目標に起業家を目指す

大学を卒業してから2年間ほどは就職をせず、学生時代に貯めたお金でパリにアパートを借りて半年ほどヨーロッパをぶらぶらしていました。

一度きりしかない人生の中で、自分が「気持ち良い」時間を長くとれるかどうかが重要だと思っているのですが、僕にとってはそれが「自分が行ったことのない場所に足を踏み入れる」時なんです。

自分が足を踏み入れたことのない場所をなくしたいというゴールがその時にできて、そこから逆算すると、45歳で仕事はリタイアしたいなと。そうしなければ、体力的な問題で行けないところが出てきてしまうなと思ったんです。

そこでアーリーリタイアを実現するために、起業家としての人生を歩もうと決めました。

2度目の起業でぶつかった壁…売上が上がらない!

ただ、いきなり起業しても成功する自信もなかったので、帰国してまずはコンサルティング会社に就職しました。

コンサル業界で1年間ハードに働くと通常の3年分の経験ができると言う話もありますし、既に遅れている2年分を取り戻せると考えたんです。5年間働き、そこからReproを立ち上げるまでに2回起業をしました。

1回目の企業では様々な問題があって会社を離れることになったのですが、そこでまたサラリーマンに戻るのは嫌だなと。ただ当時お金がなかったので、次に何をしたいか明確に決まるまでの期間限定のつもりで、Eコマースの事業を立ち上げました。結果的にはこの経験が、今のReproに繋がっています。

このEコマースの事業がなかなかうまくいかなくて。単に売れる商材を見つけてインターネットで売るだけの商売なので、確実に利益が出ると考えていたのですが、かけていた広告費を回収するだけの売上がまったく上がらなかったんです。

そこでアクセス解析のツールを導入して検証したみたところ、サイトのTOPページの離脱率が90%もありました。そこでTOPページを直さないといけない、ということはわかりましたが、いわゆる教科書的なEコマースの常套手段を全て試しても、成果は上がりませんでした。

あと1ヶ月で破産…救世主となった「GhostRec」がReproの原型

もともと資金もありませんし、このままではあと1ヶ月で破産してしまう、という状況にまで追い込まれました。その時に相談したイギリス人の友達からGhostRec(ゴーストレック)というサービスの話を聞いて。

ユーザーがWEBサイトをどう使っているのかを動画で完全に再現するサービスなのですが、これがまさに今のReproのサービスの原型なんです。

導入して気がついたのは、定量的なアクセス解析のサービスは所詮「TOPページの離脱率が90%です。That’s all」ということでしかなくて、具体的な改善の方法までは教えてくれないんです。

だからどうしたらいいかわからなかったし、いくら考えてもコンバージョンは改善しなかった。けれどGhostRecでユーザー行動を見たことで、何が起こっていたのかが明確にわかりました。

これまでは教科書的にサイトの1番上に重要なコンテンツを並べていたのですが、それがほとんど見られていなかったんです。

広告経由でサイトに来たユーザーの9割が、同じ動きをしていました。訪問した瞬間にマウスを下にスクロールして、あっという間に離脱していたんです。要は、めちゃくちゃ考えてサイトの上に並べていたコンテンツには誰も興味を持っていなかった。

ショックで、1時間くらいは思考停止になりましたね。でもこの現状を元に改善しなければいけないと思い直して、Eコマースの王道に反してページの一番下にコンテンツを並べたら、コンバージョンが4倍になりました。

この時の感動は言葉では言い表せないですね。Ghostrecは命を救ってくれた恩人です。この感動をネイティブアプリでも提供したいという想いから、Reproを立ち上げました。

正式版リリースに向けて、最重要課題は「デザイン」

2015年の4月に1億円の資金調達を発表したのですが、それにあたり約1年間β版として展開していたReproのサービスを、正式版としてリリースすることを決めていました。

それまで我々のホームページのデザインはデザイナー不在の中で作ったハリボテのような感じで、ベンチャー感満載でした。

僕以外は全員エンジニアなので、デザインがおろそかになっていたんです。けれどReproのことをより伝えるデザインにしたいという想いもありましたし、調達や課金も見据えて人様のお金を預かるんだったら今、経営判断として変えるしかないでしょうと。

Reproにとって、ホームページのデザインは明らかに成長の阻害になっていましたね。機能を評価していただいてβ版を使ってもらっていた人からも「デザインはどうにかならないのか」という声をいただいていましたし。

また、もともとグローバルな市場を攻めると決めていたので、外国人が見た時に違和感のないデザインにしたいと考えていて。

変な話、日本人ウケはしなくてもいいからアメリカ人をターゲットに、というコンセプトがありました。そこで今回、デザインをお願いすることにしたのがAQさんです。

「いつか一緒に仕事をしたい」と思っていたデザインチームAQ

AQさんはOrange FabというインキュベーションプログラムにUXデザインのメンターとして参加されていて、我々がOrange Fab Asiaに入っていた時にメンターセッションに参加させていただきました。

チームに行って、自分たちのサービスを見せてアドバイスをいただくというものです。1グループ1時間という限られた時間だったのですが、その時に聞かれた質問や回答へのリアクションが当時僕が知っていたデザインチームのレベルを2段階くらい越えていて。

いつかこの人たちと仕事したいと思っていたんです。日本人も外国人もいるバイリンガルチームで国内外の市場をわかっているため、僕たちが実現したかったデザインを作っていただけると思いました。

想いを反映した妥協のないデザイン作り

オーダーは「TOPページでReproのことをわかりやすく伝え、ユーザーにアカウントを作ってもらう」をゴールにしたデザインでした。まずはワークショップを行って、Reproの多くの機能の中で3つ、TOPに出すものを決めました。

AQさんにリードしていただきながら、今までユーザーから受けたフィードバックを見直して、様々な視点からReproのエッジの効いた部分だけを抽出していきました。このワークショップでの体験から、新規機能を考えるときに実際にユーザがどう使うのかというUXの意識が高まりました。

▼Reproのエッジの効いた機能だけをTOPで紹介

そして週に1回1時間、濃密なディスカッションを通じて僕らの想いを咀嚼していただき、抽象的なものを絵にして表現したり、様々な視点からアウトプットとレビューを繰り返してデザインを作っていきました。

彼らは見た目のデザインだけでなく、ユーザーエクスペリエンスを重視しているので、どのようなメッセージを伝えていくかということや、何をどんな順番で並べていくかといったことも一緒に議論していきましたね。

お願いしたのはTOPページだけでしたが、第一印象からプロダクトの価値を理解するまでをトータルでユーザ体験を見てくれているチームだと思いました。

「プロフェッショナリズム」を見せてくれたAQ

最終的にできあがったものは知り合いのデザイナーにも評判がいいですし、デザインだけが理由ではないと思いますがPVに対する新規登録のコンバージョンレートも40%ほど上がりました。

もともと「Reproって良さそうだね」と感じていただくことを担保するデザインにすることが目的だったので、良かったなと思います。

▼リニューアルしたReproのホームページ

実は最初は期間として1ヶ月で、というお話をしていたのですが、僕らが品質にかなりこだわってレビューを繰り返していったところ、最終的に2ヶ月かかってしまって。でもAQさんは、嫌な顔一つせずに、むしろ「君たちからフィードバックをもらって直すとよくなっていくから僕らもすごく楽しいよ」と言っていただけて。

クライアントのために最大限のアウトプットを出すために時間を惜しまない姿勢を感じました。お互いがいいものを作りたいと思って始まった以上、予算の範囲内で積極的にいいものを作る努力をすることが非常に大事だと思うんですね。

その点AQさんには、本当にプロフェッショナリズムを見せていただいたなと。最終的にAQさんには「Reproさんと一緒に仕事をしたのは、最高に面白かった」と言っていただいたんです。本当に良い人たちと仕事ができたな、と思いましたね。(了)

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