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ポエムで会社を変える!? nanapiのデザインカルチャーを作った、Qiita:Team活用法

今回のソリューション:【Qiita:Team/キータチーム】

「組織文化をもっと良くしたい」そう思った人は、どのように行動すればいいのだろうか。

株式会社nanapiは、生活の知恵が集まる情報サイトnanapiを運営する企業だ。同社にデザイナーとして2014年に入社した上谷 真之さんは、社内のデザインカルチャーをより良いものにするため、入社直後から孤軍奮闘の毎日を送ったという。

そんな上谷さんは、「本当に組織のカルチャーや方向性を変えたかったら、超泥臭いことをしなくては何も変わらない」と語る。

そしてその「泥臭い」取り組みの際に活用したのは、チームや組織での情報共有を助ける「Qiita:Team(キータチーム)」。デザインに対する共通言語を作るため、入社以来、同ツール上に地道にナレッジを投稿し続けた。

結果として*社内のデザインに対する意識は変わり*、以前は行っていなかったユーザーリサーチなどユーザー中心のデザインメソッドが日常的に業務へ活かされるようになったという。上谷さんに、詳しいお話を伺った。

デザインへの「思い」で代表と共感し、nanapiにジョイン

今まで10年以上デザインの業界で働いてきましたが、2014年の1月に、縁あって前職の教育系のスタートアップから弊社に転職しました。ジョインした理由は、代表の古川とデザインに対する「思い」で共感できる部分が多かったことです。

以前から、デザインを軸にした組織づくりを行っていきたいと考えていたのですが、それを入社前に話した時点で「やりましょう!」と言ってもらえたのが大きかったですね。

現在はCCO(Chief Creative Officer)というポジションでクリエイティブ全般の責任者をしています。デザイナーチームは僕を含めて8名で活動していて、こちらのマネジメントも担っています。

自由でフラットな分、責任も問われるのがnanapiの組織文化

弊社の現在の組織構成としては、一番多いのが編集スタッフで、アルバイトを含めて30人弱おります。開発系で言うとエンジニアが12人ほど、デザイナーが8人、ディレクターが2人、コミュニティマネージャーという専門職が1人です。

更にそちらとは別に、事業戦略やマーケティングを担当する部署に5人ほどが在籍しています。チームの構成は、基本的にはプロジェクトベースになっています。

メイン事業の「nanapi」以外にも、新規事業をいくつかプロジェクトとして展開しています。現在、注力しているのは例えば「アンサー」というスマートフォンのコミュニティアプリや、グローバルメディアの「IGNITION」などです。

昨年1年間で、事業規模もある程度成長させることができましたね。もはや若手ベンチャーというよりは中堅という立ち位置で、「事業感」を持たせて再現性の高い組織づくりをしていこう、という明確な意思を持っています。

社内には、全社的に誰でも自由に新しいことにチャレンジし、発信できる風土があります。現場の意思決定もほぼボトムアップで、マネジメントから「こうしようよ」というのはあまりないんですよ。

ただその分、責任も当然問うスタンスがありますね。メンバーによっては「もう少し指示がほしい…」という悩みを持つこともあるようです。ただ、そのような環境でも自発的に動いて仕事を作れるような人が集まっていると思います。

代表の行動哲学から銭湯レビューまで!全社で使うQiita:Team

弊社がQiita:Teamを導入したのは、僕が入社する前の2013年9月頃です。「とりあえず使ってみようよ」という感じで、現場主導で導入しました。

今は日報、ミーティングの議事録、プロダクトの機能要件、データ解析のサマリーなどが幅広く投稿されています。

役員レイヤーですと、CTOは技術周りの記事を上げていますし、代表の古川は行動哲学などサービス開発の前提となる考え方を書いたりもしています。1日に6~7件ほどは記事が投稿されていると思いますね。

特にQiita:Teamを活用する機会が多いのは、エンジニアとデザイナーです。プロジェクトという機能を使って、プロダクト別の機能要件やコンセプト、ワイヤーフレーム、体験設計などをまとめ、社内wikiのように使っています。

QIita:Teamでは新しい投稿があると古いものがどんどん流れていってしまうので、プロジェクト機能でそれを補完しながら情報を蓄積していっています。

業務外のカジュアルな投稿もありますね。勉強会やセミナーの報告に始まり、先日はインフラエンジニアが近所の銭湯のレビューを投稿して、20くらい「いいね」がついていたり(笑)。

正社員だけではなく、アルバイトの学生にも日報やデータ解析結果を上げてもらっています。本当に生々しい情報も上がるのですが、敢えて何でもオープンにすることでカジュアルに投稿できる雰囲気作りを意識的に行っていますね。

社内のデザインカルチャー醸成のため、ポエムの投稿を開始!

僕も入社してからずっと、Qiita:Teamを使ってきました。主に自分の持っているデザインのナレッジや、思いをポエムとして上げているんです。

これまで80記事ほど投稿していますね。この活動を始めたきっかけは、入社した時に弊社のいわゆる「デザインカルチャー」に対して課題を感じたことです。

▼実際に上谷さんがQiita:Teamに投稿した「ブレスト」についてのポエム

入社当時の弊社では、デザイン領域における共通言語のようなものがまだ明確になっていませんでした。「デザインってなんだろう?」という問いに対しても人によって答えがバラバラな状況で。

誰かと「デザインが◯◯ですよね」という話をしても「え、そうなの?」という反応が返ってきたり。

個別に見た場合には、感覚的にほんのちょっとのズレなんです。ただ実は、組織全体で考えた時にこのズレが大きく影響することがあります。

デザインに対する共通言語が持てないことでコミュニケーションコストがかかり、その結果、チームとしてのアウトプットの質の低下につながりかねないんです。

そこで、とにかく僕から伝えられることは伝えて、作れる土壌は作っていこうと考えました。デザインカルチャーを醸成するために、幅広くサービス開発のナレッジやデザインメソッドの話などを全社員に向けて投稿し始めたんです。

デザイナー以外のポジションの人にも、「よく聞く単語だけど、こういうことだったんだ!」と少しでも腹落ちしてもらえるだけで違うのではないかと思って。

▼全社員に向けて「ファシリテーション」について発信

例えば最近であれば、デザインを「つなぐ力」について投稿することが多いですね。あらゆるデザインメソッドを実践で使う際に、要素同士をつなぐ力が弱かったり、そもそもそこに意識が行ってないデザイナーが多いという課題をずっと感じていたんです。

例えばUI設計にしても、A・B・Cという個別のUIを全体の中の一要素として捉えた上で設計をしなければ、効果の最大化は見込めません。Aだけ良くしましょう、次にBを良くしましょう、最後にCを良くしましょう、ではダメなんです。

そういったハードスキルに偏って軽視されがちなソフトスキルの重要性について、全社にQiita:Teamの投稿を通じて伝えました。

最初は反応ナシ!それでもコツコツ続けることで、組織が変わった

最初は1人で淡々と上げ続けていきましたね。入社してすぐに始めたので最初は誰からも反応はなく、スルーされるわけです。メンバーからしたらシンプルにうっとうしい存在だったかもしれませんね(笑)。

でも「より良いデザインカルチャーの形成する」という強い覚悟を持って活動していたので、コツコツ続けていきました。その甲斐があって、数ヶ月経った頃には皆の意識も変わってきて、僕の投稿にもコメントや「いいね」がつくようになったんです。

そして徐々にそれが、社員の行動にも反映されるようになっていきました。例えば以前は、ユーザーリサーチはほとんど行っていない状況だったんです。

でもユーザーリサーチを実施する上でのWhyやHowに関する記事を本当に細かく書いて上げていくうちに、結果として現在ではインタビューやユーザビリティ評価を定期的に実施するようになっています。

会社のカルチャーを変えるためには「泥臭い」行動が必要

実体験として思うのは、本当に組織のカルチャーや方向性を変えに行こうとすると、超泥臭いことをしなければならないということです。

それらしい人がそれらしい発言をしただけで劇的に変わる、なんてことはありえないんですよね。だからこそ、このような方法をとって良かったなと思っています。

今回のようなカルチャー形成を進めたい場合に使うとするならば、Qiita:Teamは最適なツールだと思いますね。

投稿記事の共有がすぐに行えるので、オープンでスピード感があり、会社全体に訴えかけるのに適しているんです。今後もQiita:Teamを効果的に活用して、組織をより良い状態にしていきたいと思っています。

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