- 株式会社コンカー
- マーケティング部 部長
- 柿野 拓
【後編】「死に筋」を「成約」に導く!マーケティングと営業の役割分担で販売活動を革新
今回のソリューション:【マーケティングオートメーション】
〜連載後編。営業とマーケティングの役割分担が鍵になる、「マーケティングオートメーション」実践法〜
「マーケティング」の果たすべき役割は何だろうか。その答えを導く鍵は、企業の販売活動におけるマーケティングと営業の領域の定義にある。そしてまた、それぞれの役割を明確化することで、効率的にリード(見込み顧客)を案件化、受注につなげる体制の構築ができる。
クラウド経費精算を提供する株式会社コンカーでマーケティング部を統括する柿野 拓さんは、「営業は受注確度の高い案件にフォーカスし受注を取ってくる、逆にマーケティングは動きのない案件を動かす施策を展開、案件を作るのが仕事」と語る。
前編では、コンカーにおける販売プロセスの全体図と、リードのスコアリング方法についてお伺いした。後編では、特にマーケティングが果たすべき具体的な役割、そして「マーケティングオートメーション」の本質について、詳しくお話を伺った。
※販売プロセスの全体像や、リード(見込み顧客)のスコアリング定義についてお伺いした【前編】はこちらです。
営業ができること、マーケティングができること
リードをスコアリングするための基準が決まったら、次に名刺情報などすべてのコンタクト情報をマーケティングオートメーションのシステムに投入し、スコアリングを開始していきます。
様々なマーケティングチャネルから入ってきたリードのスコアは、マーケティング・営業の活動結果を受けて変動していきます。例えば、インサイドセールスが電話での会話内容をシステムに投入することで、リアルタイムにスコアが更新されていきます。
スコアが蓄積されていく中で、マーケティングはどのようにスコアを上げる施策を展開していくか、そしてどの段階になったらインサイドセールスに渡すのか。このようにお互いの業務を指標化することで、相互補完的な関係を構築することが大切です。
▼リード(見込み顧客)のスコアリングの一例
そもそもマーケティングの役割とは何なのか? ということを考える上では、小売のお店を想像してみるとわかりやすいと思います。
店長さんは、売れ筋の商品は絶対に把握していますよね。「売上げトップ10の商品って何?」と聞くと、きっと全部答えられる。ただ一方で「ここ3ヶ月で売上が芳しくない商品トップ10って何?」と聞くと、きっとすぐにはわからず、おそらくPOS(Point of Sale:販売時点情報)データを見ると思います。
この話と同じで、営業は売れている製品、よく買ってくれる自分のお客様については誰よりも知っています。受注間近であれば営業だけでなく関係者全員がフォローしてくれますので、その段階でマーケティングができることはほとんどありません。
マーケティングオートメーションが活きるのは「死に筋」への活動
では、マーケティングの役割が何かと言うと、営業が手を出しづらいところ、つまりお店で言えば、売れそうにない死に筋の商品をどうするか? ということです。コンカーで言えば、コンカーどころか経費管理にすら興味もないお客様、または残念ながら失注して、しばらく動きがなさそうなお客様です。
そもそもリードから成約までの間には様々な検討段階があり、あるステージから次のステージに移るコンバージョン(率)があります。そのすべてをマーケティング内で行うことは、作業量から考えても現実的ではないですね。
「製品に興味を持っていただく」「社内で合意形成がされている」「契約書の文言のすり合わせを法務部門と調整する」といった、様々な段階のすべてをマーケティングオートメーション化させるべきではありません。
そこで、まずは検討段階のプロセスを洗い出し、「受注確率が〇%以上になったら、それ以降は営業がフォローする」と定義します。そう決めることで個々の段階ごとに担当する部門を分け、それぞれを管理しやすくなります。
このような、明確な役割分担が非常に重要だと思います。逆に、営業がしっかり商談を進めている顧客に対して、マーケティングからマスコミュニケーションのアプローチをかけると事故が起きるリスクもありますし。営業がマーケティングにカバーしてほしいのも、受注確度が低いところですよね。
死に筋をどう引き上げる? ポイントはカスタマージャーニー
では、次に現時点で製品に興味すらないお客様を、どうコンバージョンにつなげていくかということになります。それに対しては、カスタマージャーニーにまず注目する必要があります。
興味がない、ということは、コンカーの名前すら知らず、経費管理にも興味がないという人です。そのような人に、何かしらの我々にとってポジティブな行動を起こしてもらうには、何をすれば良いのでしょうか?
仮説として、例えば「経理部門に所属している人は、会社の利益率を上げたいと思っている」とします。そうすると、「自社のパフォーマンスが競合他社と比べて悪い」ということが客観的な数字として分かれば、コンカーにとってポジティブな行動を起こしてくれる可能性があります。
その仮説を元に戦術を立てます。具体的には、「あなたの会社の経費管理のレベルは、同業種内の競合会社と比べると〇割パフォーマンスが悪い」という詳細レポートを作ってキャンペーンを実施し、反応をたしかめます。
このようにカスタマージャーニーを考えて仮説を立てることで、具体的に施策を実行していくことができます。
販売プロセス全体を指標化し、俯瞰して見ることが重要
ここまではマーケティングと営業の役割分担を中心にお話してきましたが、最後に販売プロセス全体の見える化についてお話したいと思います。
なぜなら、中長期の目標達成のためには、販売プロセス全体のボトルネックを把握し、それを改善し続けることが重要だからです。
コンカーでは、BIツールを用いて、販売プロセスのすべてを可視化しています。マーケティングのキャンペーンから案件化する確率、案件化後に成約する確率、成約するまでの平均日数、といった分析結果を得ています。
このように数値を可視化すると、「〇日後に〇件の成約を取りたいのであれば、マーケティングから〇件のリードをインサイドセールスに渡せばよい」というような計算ができるようになります。
誰が何をするべきかが明確になるんですね。案件化の確率をあげるにはキャンペーンを改善、成約までのスピードを上げるには営業のアプローチを変えるこのように、すべてを指標化することで、プロセスごとに改善策を打つことができます。
「販売活動のボトルネックの解消」がマーケティングの役割
販売プロセスの数値化は、製造業のサプライチェーンや、電力・ガス会社の供給システムなどに非常に似ていると思います。全体を数値で見てボトルネックを探し、改善の手を打ち続けていく。すると徐々に状況が改善され、中長期の結果につながっていきます。
マーケティングオートメーションの効果を最大化するには、正しい情報を網羅的に押さえ、システムに反映することが必要です。
営業が主体で売る商材であれば、お客様とのコミュニケーションの情報、Webで直接売り切るような商材であれば、デジタルマーケティングの情報など、カスタマージャーニー上にある必要な情報すべてを網羅的に押さえておく必要があります。
コンカーの場合はカスタマージャーニーの後工程を営業が担当するため、特に営業の役割が重要です。会社としての目標達成のためには、やはりすべての部門が連携できる良質な仕組みの整備が不可欠だと思います。
これからもさまざまなツールを活用しながら、会社が安定的に成長していく仕組みを作っていけるように頑張っていきたいと思います。(了)