• 株式会社コンカー
  • マーケティング部 部長
  • 柿野 拓

【前編】「死に筋」を「成約」に導く!マーケティングと営業の役割分担で販売活動を革新

今回のソリューション:【マーケティングオートメーション】

〜連載前編。営業とマーケティングの役割分担が鍵になる、「マーケティングオートメーション」実践法〜

「マーケティング」が果たすべき役割とは何だろうか。成約までのプロセスでどこまでをマーケティングが担い、どの部分を営業が担当すべきか。多くの企業ではその線引きが依然としてあいまいであり、結果的に、非効率な販売活動が行われているケースが多い。

経費管理クラウドを提供する株式会社コンカー。同社のマーケティング部を統括する柿野 拓さんは外資系ERPベンダーで15年間に渡り、様々な製品・市場領域でのマーケティング活動を経験後、コンカーのスタートアップメンバーとしてマーケティング部の立ち上げに従事。

CRM(顧客管理システム)MA(マーケティングオートメーション)を活用しながら、販売プロセスの可視化と最適化に取り組んでいる。

柿野さんは、「受注確度の高い案件は当然営業がフォローします。マーケティングの役割は、販売プロセス全体をモニタリングしつつ、営業が手を出しにくい領域に注力し、販売活動全体を底上げすることです」と語る。具体的にどのような活動を行っているのか、詳しくお話を伺った。

「イケテルエンジニア」になりたかった。外資系でキャリアをスタート

子どもの頃からコンピューターが大好きで、BASICで簡単なゲームなどを作っていました。大学では情報システムとマーケティングを専攻していて、マーケティング志向でITを活用した仕事がしたいな、と思っていたんです。

でも、当時の日本のIT産業と言えば親会社のシステム子会社が多く、正直、ピンとこなくて。なんとなくグローバルの意識もあったので、大学卒業後、外資系ERPベンダーに入社することになりました。

なんとなく入社したので仕方ないと思うのですが、入社してみたら全然イメージが違って…。ERPというものがパッケージソフトで、パラメータ設定でシステムができあがる仕組みだということを知らなかったんです。

もちろん追加機能の開発はできるんですが、プログラム言語がかなり独自のもので、全然イマドキじゃない…。

困ってしまって、もう辞めようかとも思いました(笑)。でも知り合いに相談したら「せっかく入ったんだから実務やればいいじゃん、マーケティングなんて面白いんじゃない?」と言われ、「そうか!」と希望を出したらそのまま配属になり、私のマーケティングのキャリアがスタートしました。

「ドブ板マーケティング」の世界からオンラインの世界へ

入社当時は、CRMの定義もあやふやでしたし、当然、マーケティングオートメーションなんてありません。いわゆる「ドブ板マーケティング」が当然で。

派手にイベントやって、新聞広告出して、キャラメル広告電車走らせ、テレビCM作って、ダイレクトメールを大量に送って。ダイレクトメールなんてひどくて、50万通くらい出していました。

でも、当時はメールアドレス自体を持っていない人も多かった時代で、必要な人に安価に情報を届けること自体が難しくて。どこの会社もそんなやり方をしていたと思います。

3年間、楽しかったのですが、やはり入社当初から抱いていた「エンジニアやりたい」という思いが沸々と湧いてきて。ちょうど面白そうなポジションに空きが出て、2002年にマーケティング活動を支援するIT部門へ異動しました。

その頃になると、ワン・トゥ・ワンマーケティングなどのコンセプトがITで実現できそうな時代になっていました。会社でもグローバルレベルでこの動きを積極的に展開していくこととなり、時代の変わり目にいる感覚があったのを覚えています。

具体的に日本でそれを動かしていくために、3週間本社に入り浸って、戦略の理解やツールのテストを行いました。でも、いざやってみるとツール自体が全然日本語で動かない…。いろいろ回避する方法を試したんですが、結局、うまくいかず失意のうちに日本へ戻ってきました。

でも、戻ってきても、どうしてもWebマーケティングがやりたくて…。当時、自分はプログラミングスキルにも結構自信があったので、これはもう自分で作るしかないなと(笑)。

早速、サーバーを買って、本社には内緒で個人的にプロジェクトをスタートさせました。スキマ時間を見つけ、こそこそ3ヶ月くらいプログラミングをしていたら、それなりのシステムが出来上がったんです。

見込み客のリストをデータベースに取り込んで、メールの反応をモニタリング、Webサイトへの訪問履歴をCookieで追っかけて、活動を累積集計するなど、今あるマーケティングオートメーションと似たような仕組みでした。

毎日、「こんな機能があったら便利だな」、と思いを巡らせながらの試行錯誤するのは本当に楽しかったですし、とてもいい経験をさせてもらいました。最終的には極めて個人的なプロジェクトにもかかわらず、日本法人から表彰されて賞金までもらっちゃいました(笑)。

変わるマーケティング手法 クラウドはすべてを変えた

ここ数年で企業システムの中心が、オンプレミス(自社運用型)からクラウド(共同利用型)に変化しているため、IT業界のビジネスモデルが大きく変わってきています。前職ではオンプレミスのビジネスモデルの中でマーケティング活動をしていたので、クラウド化に合わせて自分の発想や業務の方法を変えなければと思うようになってきました。

オンプレミスの場合は、大企業をターゲットとし、大規模な営業体制を敷いて、高額案件を狙っていくスタイルが中心です。案件の初動から受注までの流れを、営業が提案チームとともに進めていきます。この場合、マーケティングの役割は営業活動の補完的なものとして機能します。

一方、クラウドの場合は製品開発とパートナー戦略でビジネスモデルを形成し、単価が安い、大量の案件数を仕組みで売っていくモデルです。営業は、この仕組みの中の最終工程に位置づけられます。

変わっていく市場環境の中で、自分も進化するクラウドのビジネスモデルの中にいたい、また、まっさらな状態から新しく事業を立ち上げてみたいと思いました。初めての転職でしたので不安もありましたが、スタートアップ段階だったコンカーに飛び込み、第二のキャリアをスタートすることになりました。

コンカーのマーケティングの全体像とは?

コンカーの販売プロセスは、マーケティング、インサイドセールス、営業、という3つの役割で構成されています

数あるマーケティングの役割の中でもっとも重要な仕事は「魅力的な案件を作る」ことです。様々なデータの中から案件の種を見つけ、確度の高いものをリードとしてインサイドセールスに渡します。インサイドセールスはマーケティングから引き渡されたリードを案件化し、営業は受注をします。

マーケティングは様々なデータを扱いますので、マーケティングオートメーションなど様々なツールで自動化を含めた効率化を行っています。インサイドセールス以降のプロセスは案件情報のメンテナンス性も考慮し、単一のCRMシステムで集中管理しています。

マーケティング業務には派手なイメージがあります。でも、実際は事務作業が多い仕事です(笑)。データをクレンジングしつつ、新しいデータをどんどんデータベースに投入して、その情報をベースにぐるぐるマーケティング活動をしかけていきます。

インサイドセールスが一日でかけられる電話回数には上限があるので、彼らの業務効率を上げるには質のいいリードを大量に早く渡すことが重要です。様々なデータから良質な案件になりえる原石を見つける作業をMQL(Marketing Qualified Lead)というプロセスで行っています。この作業は人海戦術だと限度があるため、マーケティングオートメーションで自動化しています。

コンカーのリードの魅力度は2軸のスコアリングモデルで構成されています。「コンカーのクラウドサービスを購入する資格があるか(資格レベル)」と「興味を持っているか(興味レベル)」です。

自社サービスの特性から「資格レベル」を定義

資格レベルでは、その人がコンカーを導入するポテンシャルを評価しています。ポテンシャルが高いかどうかは売る商材の特性で判断する必要があります。例えば、コンカーを導入するメリットの一つとして経費削減があげられますが、効率的に削減するには海外出張費に注目すべきです。

海外出張費は従業員の利便性という観点がありつつも、ある程度統制、管理しなければあっという間に膨れあがります。

従って、海外売上比率が高く、海外出張も比較的多いと考えられる商社やメーカーといった企業は、コンカーを検討していただける可能性が高く、資格レベルが高いということになります。一方、倉庫業や銀行などの業態はほとんど海外出張が発生しませんので、ほとんどスコアしなくてもいいと思います。

このように、自社ソリューションの特性を分析し、購入する可能性の高いターゲットを突き止めることで、資格レベルの基準を作ることができます

お客様の行動のすべてから「興味レベル」を算出

次に興味レベルの軸で言うと、「キャンペーンサイトに訪問した」「ホワイトペーパーをダウンロードした」「問い合わせがきた」などの見込み客のデジタルな行動情報に加え、営業がお客様から直接拾い上げた情報を投入していきます。

例えば、「今使っている会計ソフト」のような項目を入れます。仮にその会計ソフトがクラウドベースであれば、コンカーには追い風です。

クラウド同士の連携は標準機能としてサポートされている場合がありますし、なによりお客様が企業システムをクラウドで運用していれば、コンカーのようなサービスに共感を示してくれる可能性も高いということになります。

逆に3ヶ月前に経費システムを導入したばかりであればスコアリングをしません。もし、次の更新タイミングが3年後、ということが分かれば3年間後にコンタクトを再開します。

このように、デジタルな行動と営業活動の情報を統合することで、現場の肌感覚に近い興味レベルが算出できます

「資格レベル」と「興味レベル」のスコアリングの基準を決め、ある一定のスコアになったタイミングでインサイドセールスに自動で通知します。

インサイドセールスの活動により、案件化すれば営業が引き継ぎますし、まだ、その段階になければマーケティングに差し戻すことになります。インサイドセールスはマーケティングと営業をつなぐ、コンカーの販売活動の司令塔と言える存在だと思います。(了)

後編では、これらのスコアリングにもとづいてどのように販売活動を進めていくのか、そしてマーケティングオートメーションの本質について、お話を聞きます。

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