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年間1万時間の工数削減! サイバーエージェントの管理業務システム「DOX」とは

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今回のソリューション:【kintone(キントーン)】

〜業務アプリ作成プラットフォーム「kintone」をベースにした業務効率化システムを構築し、グループ全体で年間1万時間のバックオフィス工数削減に成功した事例〜

急成長を遂げるスタートアップ企業で起こりがちなのが「バックオフィス業務が後手にまわる」こと。売上や従業員数が急速に増加すると経理などの管理業務も膨大になるが、それを捌く体制や仕組みが構築できていないケースが多いためだ。

インターネット広告、ゲーム、メディアなど広いドメインで成長を続けるサイバーエージェントグループ。同グループには、現在70社ほどの事業子会社が存在し、またその数は年間20社ほどの勢いで増加を続けている。

子会社では事業が急速に成長するケースも多く、そういった場合にバックオフィス業務が取り残され、膨大な業務に苦しむことになってしまうという課題もあったのだという 。

そこで、同社ではサイボウズが提供する業務アプリ作成プラットフォーム「kintone(キントーン)」をベースに、「DOX(ドックス)」と呼ばれるオリジナルのバックオフィス効率化システムを開発した。

kintone内に、業務プロセスに合わせた管理アプリを予め用意することによって、事業の立ち上げと同時にバックエンドシステムが提供できる状態を実現できたという。そして経理などの業務が標準化・自動化されたことで、グループ全体で年間1万時間の工数削減にも成功した。

今回は、DOXの開発から導入までを主導した同社の内部監査室マネージャーの鹿倉 良太さんに、詳しいお話を伺った。

(※内容は、2015年11月6日に開催された、cybozu.comカンファレンス 2015 kintone Award セッションでの発表と弊社独自のインタビューを元にしています。)

急成長する事業と本社機能の役割

鹿倉 良太さん

弊社はインターネット広告、ゲーム、アメーバ、メディアその他、という4つのドメインで事業を展開しています。企業買収はせずにイチから事業を立ち上げるのが基本的なスタイルで、1年間に20社ほどの事業子会社が設立されており、現在は合計で70社ほどになりました。

この事業子会社のバックエンド業務の多くは本社で集中管理されており、本社機能の役割範囲も拡大しております。

急成長する子会社のバックオフィス業務が追いつかない…

そんな中で以前から課題に挙がっていたのは、「子会社のバックオフィス業務の効率化」でした。具体的にどのような課題があったかというと、

  • 管理プロセスを毎度ゼロから構築
  • 事業が急成長した場合の対応
  • ガバナンスの向上
  • 決算の早期化

という4つです。子会社では毎回ゼロから管理プロセスを作るのですが、事業が急に伸び始めるとバックオフィスの業務が追いつかなくなることがよくあったんですね。なぜ追いつかなくなってしまうか、その理由のひとつには、事業の成長に伴い増加する取引に対して、初期に構築された業務のプロセスの許容量を越えてしまうことがありました。

鹿倉 良太さん

例えば決算の数値をエクセルで処理することが多かったんですが、バージョン管理が面倒ですし、コピペミスが起こったり、作ったファイルが関数だらけの重たいものになって、壊れて最初からやり直しになることもありました。すると、本来やる必要のない業務に忙殺されてどんどんみんなの目が死んでいくんです…。

また、現場のToDoが増えて視野が狭くなってくると、ガバナンスに対する意識も低くなりがちです。決算業務は重要ですが事業プロセスの最終工程で何かを生み出す業務ではないので、短時間で確実に行うことを目指していたのですが、以前はなかなか芯が通った施策が打てずにいたんです。

バックオフィスを効率化する社内システム「DOX」を構築

そこで、ビジネスアプリ作成ツールの「kintone(キントーン)」をベースに、「DOX(ドックス)」と命名した社内システムを構築しました。DOXは、業務プロセスに合わせた複数の管理アプリを予め用意することによって、バックオフィスの業務を効率化するシステムです。

目的としては、システムによって経理業務の標準化や自動化により決算の早期化を実現するということがありました。各アプリにはそれぞれ、発注書や申込書の出力、請求書の発行、売上の実績管理などいくつかの機能を持たせているのですが、用意しているアプリは大きく分けて3種類になります。

1つ目は、各事業ごとの実績管理アプリです。事業モデルによって管理すべき数字が異なるので、広告代理業、ゲーム事業、そしてメディア事業に向けて3種類作りました。各子会社がそれぞれ該当するものを使うことで、実績管理を効率化することができます。

2つ目は、必ず共通して発生するコストの部分を管理する、全事業モデル共通の購買管理アプリです。そして最後に、弊社の場合は特に多い内部取引を管理するアプリです。

▼バックオフィス業務を効率化するシステム「DOX」

DOX

DOXが用意されていることで、事業が立ち上がって走り出すと同時にバックエンドシステムができている状態を実現しています。事業が急成長した時にバックオフィスが取り残されないように、予め型にはまっている状態にしているんですね。

JavaScriptが書ければ構築できるのがkintoneの良さ

このアプリの中で最初に開発したのは、広告代理業向けの販売管理アプリでした。私がkintone上で基本となるアプリを設計しながら作成し、その後のkintoneの基本機能では実現できない部分をJavaScriptとAsteriaWarpというETL(※)ツールを組み合わせてエンジニアが1人で実装しました。

他の業務と並行で進めたので運用開始までは3ヶ月ほどかかりましたが、フル稼働で開発すれば3、4営業日で完成すると思います。

(※)ETL:企業の基幹系システムなどに蓄積されたデータを抽出(extract)した上で利用しやすい形に加工(transform)し、対象となるデータベースに書き出す(load)こと。もしくは、これら一連の処理を支援するソフトウェア。

またkintoneには強いユーザーコミュニティがあります。エンジニアもそちらを参照すれば、開発や運用の疑問をほとんど解決できるのも魅力です。

kintoneは自分たちで動かないと何も始まらないツールですが、その意志がある会社にとっては課題解決のあり方もスピードも劇的に変えてくれる存在だと思います。

kintoneをコアにして、さまざまな集計データと自動連携

DOXでは、コアとなるkintoneの高い拡張性を活かし、結果的に経理の入力業務の多くをデータ連携して自動化できています。

▼DOXの実績管理画面

具体的に言うと、例えば*ゲーム事業において売上が発生するApp StoreやGoogle playの決済データとDOXが連携していて、売上が立つと自動で仕訳データまでが作成されるようになっています。

*具体的にはAsteria Warpがデータを収集しDOXに格納してくれるため、データのダウンロードも集計も必要ありません。ゲーム事業はこのシステムの自動入力でほぼ経理業務が終わっています。

他にも親会社の会計システムや、事業サイドの基幹システムなど様々なものとDOXを連携させ、データの流れを作っています。

また、広告代理店事業の販売管理アプリでは、数値を入力するセールス担当者の使い勝手を保つために、それまで使い慣れたエクセル入力フォームに合わせる形でGoogleスプレッドシートを作成し、これをDOXと同期させたがデータが連携されるようにしています。

▼さまざまな社内システムとDOXをデータ連携

DOX

結果として、経理部署は起票のようないわゆる経理っぽい業務はしなくて済むようになりました。その分の時間を、数値の裏付けを確認して経理の妥当性をチェックしたり、事業の収益分析をするといったより本質的な部分に使うことができるようになってきています。

年間1万時間の工数削減 人員はそのままで年間20社設立

現在50社弱の子会社で、DOXを導入しています。同じシステムをコピーして展開するだけなので、導入には何の苦労もありません。DOXを活用することで、グループ全体で年間1万時間ほど作業時間を減らすことに成功しました。

結果としてバックオフィス業務にかける人数はそのままで、年間20社のペースで事業子会社を増やせています。

このプロジェクトを進めるにあたって感じたのは、現場の業務効率化を考える際に重要なのは「まず、現場の当たり前を見直すこと」だということです。

例えば、業務をヒアリングしていた中で、一つの業務プロセスの中で同じようなデータをそれぞれ別の担当者が作成していることがありました。業務に慣れてしまうと「そもそもこの業務フローは適切か」と考えることが難しくなってしまいますが、常にそれを自分に問うことが大切だと思います。

「one fact, one time」の思想で「大統領ボタン構想」へと進む

鹿倉 良太さん

我々がシステム構築を行ううえで大切にしているのは「one fact, one time」というコンセプトです。「1つの事実が発生した瞬間に、1回の処理で全て終わらせてしまう」という考え方になります。

例えば同じデータを複数回、違うファイルに入力する必要をなくすということですね。これを実現するためにはデータの自動連携が必須になるのですが、この部分とkintoneが持つ機能が非常にマッチしたことが、成功要因のひとつかなと思っています。

また、実はこのプロジェクトの背景には、「大統領ボタン構想」という、ボタン1つで決算業務が完了するシステムを作りあげる構想があります。その構想のゴールから考えると、今はまだ50%くらいの出来具合かなと思っています。

今後は管理業務だけでなく、事業サイドの数値管理にもDOXをオーバーラップさせていきたいと思っています。引き続きkintoneを使用して、業務効率化を促進する社内システムを構築していきたいです。(了)

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