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KPIより、ユーザーのための開発を。利用者1,000万人!ツイキャスのサービス運営哲学

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〜定量指標は追わない。ユーザーの声に基づいたエンジニアリングを追求する、ツイキャスの開発秘話〜

リリースから6年で登録ユーザー数1,000万人、累計配信回数2億5千万回を突破したライブ配信サービスTwitCasting、通称「ツイキャス」。順調な成長を遂げる同サービスであるが、その成長過程は近年のWebサービスとは一線を画している。

秋葉原で1台6万円くらいで仕入れたサーバーと、1GBの家庭用の回線を8本引いて運用していました

私は世界で3人だけのための機能とか好きなんですよ

正直、ユーザーサポートで忙しくて数字なんて見ている暇はありませんでした。今もKPIはあまり意識していないですね

と語るのは、ツイキャスを運営するモイ株式会社の代表取締役・赤松 洋介さん。その独特なサービス運営の考え方について、お話を伺った。

▼ユーザー数1,000万人!「ツイキャス」の運営哲学とは?

ツイキャス

「なぜユーザーがここまで増えたのか、いまだにわからない」

ツイキャスは、最初は街歩きをしている人や、弾き語りしている人が主に配信をしていました。その時は顔出し配信よりも、風景の配信のようなものが多かったですね。

それが2012年あたりに女子中高生にTwitterが爆発的に広まったタイミングで、主に若い世代の間で利用が拡大していきました。

今ではユーザー数も1,000万人を超えましたが、正直、何でこんなに利用されるようになったのか…私自身、いまだにわからないんですよ(笑)

赤松 洋介さん

リリース後2年半くらいまでは、開発も含めて3人体制で運営していたんです。ユーザーサポートも私が担当していたので、朝出社してメールを返信して、全部返し終わった時には午後4時!なんてこともありましたね。当時はユーザー数で言うと、200万人ほどだったかと思います。

今ではルーティンワークはかなり自動化・効率化していますが、当時はそれどころではなく、開発も本当に大変でした。

毎日2時、3時まで働くのも当たり前でしたし、資金調達もしていなかったのでお金もなかったですし。たまにツイキャスで、好きなストリートミュージシャンの方の配信を聴くことを励みに、日々がんばっていましたね

秋葉原で買った自前のサーバーで、250万人のユーザーを支えていた

今、ツイキャスのインフラにはオンプレミスのデータセンターを使っています。そのデータセンターに移管したのは2013年で、それまでは社内にサーバーを置いていたんです。

ライブ配信系のサービスはトラフィックが膨大なので、データセンターで1GBや10GBの回線を借りるとものすごくお金がかかるんですよ。そこで、秋葉原で1台6万円くらいで仕入れたサーバーを社内に置いて、1GBの家庭用の回線を8本引いて運用していました(笑)

社内に置いていたサーバーは、カバーもケースも何もない、むき出しの状態でした。消費電力が抑えられるようにCPUも計算して選んでいたのですが、配電盤を見るとうちの会社だけが凄い勢いで回っていて(笑)。

▼当時のサーバーは、いまも社内に展示されている

ツイキャス サーバー

最終的には電気の容量が足りなくなってしまったんです。そこでビルの管理会社に「どうしたら増やせますか」と聞いたら、「隣の部屋も借りてくれたら容量増えますよ」って。それで隣も借りました。

社内サーバーでは運用は大変でしたが、ヒットするかどうかもわからないサービスに初期投資もかけられないので…。とにかく少ない機材でどうやって運営するか、ということを、常に考えていましたね

その後、ユーザー数が250万人を超えた頃に、NTTの神田基地局がパンクして…。仕方なく、データセンターに移しました。

数値よりユーザーの声。世界中でたった3人のための機能も

Webサービスの改善は数値を元に決めるところが多いと思いますが、私は正直、忙しくて数値を追っている暇はありませんでした

ユーザーの増加は見ていましたが、他はメールを確認するくらいで。それよりも、日々のユーザーさんの配信を実際に見て、そこで出てくる「声」を吸い上げることを大切にしてきましたね

例えば、今ツイキャスにはコラボキャスという機能があります。これは元々、ユーザーさんが配信中に「コラボキャスしよう」と言っていて、なんだろうと思ったら、お互いをSkypeでつないでツイキャスすることをコラボキャスと呼んでいたんです。それがどんどん広がっていったので、機能として実装しました。

赤松 洋介さん

このケースのように、改善はバランスを考えた上で、声の大きい機能から優先して取り組んでいます。一方で、私は世界で3人だけのための機能とかが好きなんですよ(笑)

小学生から「ベネッセのタブレット端末、チャレンジタッチでツイキャスが見られなくなった」という悲しいメールが来たことがあって。その端末でツイキャスを見ている人なんて世界に数人しかいないと思うのですが、空いている時間でこっそり対応してしまいました。

KPIを考え過ぎると、ユーザーではなく数字と向き合ってしまう

リリースから6年が経った今でも、あまり数値は見ていません。少し前まではあるサービスを超えられるようにとKPIを決めて取り組んでいましたが、今ではあまり意識していないですね。

KPIというものを考え過ぎると、みんな「どうやってその数字をクリアしよう」という意識になってしまいますよね。ただ、とにかく配信数を増やせば良いのかというと、そうとも限らないわけですから。

最初からずっと、ひたすら「ユーザーさんに喜んでもらう」ということを目指して頑張っています。誰が配信をしていて、どういった人が閲覧をしているのかは常に見ていますね。ユーザーさんのために改善をして、結果としてユーザー数が増えたり、たくさんの人が使うようになるというのは幸せなことです。

赤松 洋介さん

技術の人ってなんだかんだ、いわゆる案件ベースで考えるパターンに陥りがちかと思います。次のマイルストーンはこれで、それを実装するにはどうしたらいいか、というような考え方ですね。

けれど大事なのは、なぜそこにその機能があるのか、どんな人がそれを使うのか、という背景です。それを考えられるエンジニアリングができればいいな、と思っています

今はプロマネの役割は私がしていますが、私も結構間違えることもありますし、「赤松さんが言っているから、この機能をつけよう」ではなくて、その裏にあるユーザーの声をみんなで考えるエンジニアリングがしたいですね。

いまはツイキャスのエンジニア体制も変わり、10名ほどのチームになりました。ただこれからもっと人数が増えていっても、ユーザーさんからのメールには全員が目を通せるようにしておきたいと思います。

赤松 洋介さん

ツイキャスを、人々の「インフラ」となるサービスへ成長させたい

私は、インターネットで人の生活を変えることを目標にしています。ツイキャスもいつかエンタメ的なサービスから、インフラにシフトしたいなという思いがありますね。今の状態も、これはこれで文化としてすごく楽しいのですが、それだけで終わりたくはないですね。

例えば震災の時に、私は新幹線の中に閉じ込められていてインターネットを見ていたのですが、ニコ生さんやユーストさんでは、みんながライブ配信していたんですね。一方でツイキャスだけは自粛モード満点で…。そういうときにも使ってもらえるインフラになれるよう、もう少し突き詰めていきたいと思っています。

私はお金を稼ぐのが苦手なんですよ(笑)。もう少し、フラットな感じでユーザーさんと関係を作れたらなと思っています。趣味でやっているくらいの感覚が伝わるように、今後もサービス開発を続けていきたいと思います。(了)

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