- Kaizen Platform, Inc.
- Marketer
- 宮下 毅
インバウンド受注「ゼロ」からの挑戦!Kaizen Platformのインバウンドマーケ(前編)
今回のソリューション:【マルケト】
〜「マーケティングオートメーション」で劇的に成果を上げるには? インバウンドからの受注が「ゼロ」だったKaizen Platformに学ぶ、「マルケト」の活用法〜
インバウンドマーケティングで成果を出すためには、どうすればいいだろうか?参考になるのが、Webサイトの改善するためのマーケティングプラットフォームとグロースハッカーのクラウドソーシングを提供するKaizen Platform, Inc.での「マルケト」の活用事例だ。
マーケティングオートメーションツール「マルケト」
同社は、Web最適化ソフトウェアとグロースハッカーのクラウドソーシングという世界にも類のないプロダクトで驚くべき成長を続けてきた。
他に類を見ないプロダクトゆえに、営業担当者は見込み客を1社ずつ訪問し、プロダクトを丁寧に説明する必要があったという。その一方で、マーケティングでのリードの獲得や、インバウンドからの商談はほとんどないという状態だった。
そんな同社で、グローバルなデジタルマーケティングのインフラを作り、リード獲得や商談生成を仕組み化するために参画したのが、宮下 毅さん。
マーケティングオートメーションツール「マルケト」の日本で最初のユーザーであり、マルケトを知り尽くした同氏の手によって、Kaizen Platformのマーケティングは様変わりした。
「インバウンドからの受注ゼロ」から、わずか半年の間にインバウンドからの受注は激増し、最も重要な商談のソースとなっているという。
マーケティングオートメーションを検討中の方も既に実践中の方にも参考になる、Kaizen Platformにおけるセールス・マーケティング大変革のリアルストーリーをお伺いした。
※「インサイドセールス」の役割や、マーケ、インサイドセールス、営業がいかに連携していくべきかを中心にお伺いした後編記事はこちらです。
「日本で最初」のマルケトユーザーがKaizen Platformに参画!
半年前にKaizen Platformに来て、デジタルマーケティングの仕事をしています。これまでは外資系のソフトウェアベンダーでマーケティングに15年以上携わってきました。
Kaizen Platformは、日本の企業ですが、プロダクトはアメリカを始めグローバルにビジネスを展開しています。グローバル市場で戦うデジタルマーケティングプラットフォームを作りあげるのは、マーケターにとって最高に興奮する仕事です。
僕は、「マルケト」が日本法人を作る前からマーケティングオートメーションツールの「マルケト」を使っていました。おそらく日本では最古のユーザーでして、日本のユーザー会の初代会長も務めさせていただきました。
その後、マルケト社にマーケティング担当としても入社し、マーケティングオートメーションの「ベスト オブ ベスト プラクティクス」とも言えるマルケト社のマルケトの運用を経験することができました。
現在はこれまでの経験を生かしながら、Kaizen Platformでマーケティングを担当しています。
インバウンドの受注「ゼロ」から、マーケティングの仕組みを構築
Kaizen Platformでは半年前まで、マーケティング活動から商談を作る仕組みが回っていませんでした。イベントや展示会に出展する場合も、ブランドの知名度アップが目的で、見込み顧客や商談を獲得することを狙っていませんでした。というか、その必要性がありませんでした。
どうやって商談が獲得できていたのかというと、営業担当が自らの人脈からお客様候補を見つけ、アプローチをしていました。Kaizen PlatformのプロダクトはWebサイト改善のためのソフトウェアとグロースハッカーのクラウドソーシングを組み合わせたユニークなものです。
そのため、営業担当がプロダクトのコンセプトや導入のメリットを1社ずつに説明して回るアウトバウンド型のアプローチで受注していました。
その状況からマーケティングオートメーションの導入を始めて半年経ちましたが、現在は、毎日、インバウンドで見込み顧客が入ってくるようになりました。
マーケティングオートメーションの導入にあたって、最初に取り組んだのは顧客と市場の全体像の把握でした。Salesforceの中に過去の商談と名刺情報が記録されていたので、このデータを手がかりに商談とリードのデータを分析していきました。
業種や企業規模、商談履歴を分析していくことで、お客様とターゲット市場の様子を理解したかったのです。
さらに、商談のデータを深掘りしていき、営業担当がどのように商談を進めていたのか、どのような経緯で接点を持ったのかという、ミクロの視点でお客さんとのコンタクトの履歴を追体験していきました。
すると、会社の見ているマーケット全体を様々な粒度でイメージができてきて、どんなマーケティング施策を行うべきなのか見えてきます。
「スコアリング」であらゆる活動をKPI化
マーケットの全体像を把握したうえで、実際に「マルケト」のセットアップをはじめました。まずは、Webサイトアクセスをトラッキングするスクリプトの埋め込みと、基本的なスコアリングの設定を行いました。
マルケトのWebサイトのトラッキングでは自社のWebサイトの閲覧を個人単位でトラッキングして記録します。
Webサイトのトラッキングは、できるだけ早く始めるべきです。Kaizen Platformではスコアリングのルールを決める前に、Webサイトでのトラッキングをスタートして、スコアリングのルールを決めたあとで、後日、バッチ処理でスコアを反映させました。
スコアリングのルールですが、まず大前提として、スコアリングのルールのチューニングはエンドレスです。定期的にトラッキングデータや商談化のデータを分析し、インサイドセールスにヒアリングをして、スコアリングのルールを調整していきます。
インバウンドマーケティングにおけるスコアリングの利点は、コンテンツの貢献をKPI化できることです。
Kaizen Platformでは、スコアが「100点」を超えたリードをMQL(Marketing Qualified Lead)として、インサイドセールスがクオリフィケーション(商談見極め)のため電話でコンタクトするルールになっています。
Eブックのダウンロードを10ポイントとするとそのEブックが100件ダウンロードされたら、1,000ポイント稼いだのでMQL10人分の貢献があったとみなしています。価格表のページは購買意思を測る重要なコンテンツなので、通常のWebページの5倍のスコアをつけています。
さらに、過去3日以内に価格表のページに訪問した人が再度価格表のページを訪問した際には、価格に関する関心が高いことがうかがえるので、さらに大幅にスコアを加算しています。
このように見ていくと、それぞれのコンテンツがMQLの生成にどれだけ貢献したのかを計測することができます。長期間にわたって貢献しているロングセラー、あるときから急にダウンロードが増えるもの、それぞれの役割や貢献をKPIとして活用することができるのです。
「カスタマージャーニー」は作っても無意味!
よく「マーケティングオートメーション導入では、カスタマージャーニーを固めることが必須」と言っている人がいますが、僕は大反対です。
正確なデータなしに、マーケターの空想を形にしたカスタマージャーニーマップを作ったところで、どのような意味があるのか私にはわかりません。その空想で作ったカスタマージャーニーマップをもとに複雑なワークフローを作ってしまったら悲劇です。
購買者は無数のWebサイトから欲しい情報を得ることができる環境にあり、マーケターの想像で、カスタマージャーニーマップは書けないですよね。想像で何段階も重なるジャーニーマップを書いても意味がないと思いませんか。
フィクションを想像するよりも、早くWebトラッキングを始めて事実の収集を始めた方がいいと思います。
詳細なカスタマージャーニーマップは不要だと思いますが、「ナーチャリング」の大きなステップはコンテンツを作成する際にも強く意識しています。
具体的には初期、中期、後期という 3つのナーチャリングステージに分けて、その各ステージに適したコンテンツをバランスよく提供していけるようにしています。
また、興味が深まった場合の探求のパスを提示する必要があります。見込み客が、製品のどこに興味を持っているかは千差万別ですから、その多様な関心事に対応するコンテンツを提供して、その関心事を受け付けることができるかどうかは大事です。
コンテンツをバランスよく作成し、関心事へのパスを作る
どのようなコンテンツを制作し公開していくかは、年間カレンダーをベースにコンテンツマップを作っています。同心円が3つ並んでいますが、一番外側から初期、中期、後期という位置付けです。
コンテンツは、社内メンバーと外部パートナーさんの両方で制作しています。コンテンツは「作れるときに作っておく」と考えて面白そうなネタがあれば、ライターが参加して記事を作るようにしています。
年間のコンテンツマップ
同心円の中心に近づくほど、見込み客の関心事は購買に近づき、Kaizen Platformとプロダクトについての知識も多くなっています。現在、Kaizen Platformでのゴールは「Web問い合わせ」か「スコア100点(前述のMQL)」です。
真ん中にいくほど、製品の購入の意思決定に必要な情報になります。この初期、中期、後期で、バランスよくコンテンツがあることが重要だと思います。プロダクトが複数あるような企業さんでしたら、それぞれのプロダクトに対して適切なものがあるかどうかを考えるべきですね。
ナーチャリングのプロセスは、最初の接点から徐々に内側のコンテンツへと誘導するように設計していますが、マーケターが思い描いたような順番とタイミングで見込み客が一直線に動いてくれるとは思ってはいません。
頭の中のイメージは、流れるプールに見込み客がプカプカ浮いていて、時間の経過でゆっくり回っているイメージです。時間の経過とともに、見込み客を取り巻く環境も変化するし、自社のプロダクトや提供するコンテンツも変化していくことをイメージしておくのが重要だと思います。
1日に複数回Webサイトに訪問した、導入事例を複数ダウンロードした、Webinarに同じ会社から複数人が申し込んだなど…。同心円の内側に移動したことを示すサインを発見し、スコアを大幅に加点する。
このインサイドセールスにアラートを上げるといった仕組みこそが、人にはできない、マーケティングオートメーションが実現する「オートメーション」の本質だと思います。
問い合わせの急増につながったのは、ブログコンテンツの拡充
弊社では昨年の12月ごろからインバウンドの数が急増したんです。その理由をログから調べてみたところ、ブログの記事と関連性があることがわかってきました。
▼Kaizen Platform オフィシャルブログ Never Ending Re-Invention
しかし、何かひとつのヒット記事があったというわけではなくて、ブログの記事の総量がある基準を超えたことが、問い合わせの増加につながっていました。弊社のブログの場合、あえてコンテンツのカテゴリーやタグ付けをせずに、時系列でどんどん記事を読んでもらうUIになっています。
記事は、デジタルマーケティングに関わる人が面白いと思う記事、つまり、自分自身が面白いと感じた記事を出すようにしています。
コンテンツがある一定の量を超えたところで、お問い合わせが起こるようになってきました。「これは全部読みきれない。自社でも効果があるのか、聞いたほうが早いな」という心理状態になったということだと思います。コンテンツの量が商談を作る仕組みを見つけた気がしました。
コンテンツマーケティングでPDFなどの資料ダウンロードを提供したらすぐにアプローチする企業も多いかと思うのですが、コンテンツが単独で見込み顧客としてのフラグとなる考え方は、もう古くなっているんじゃないでしょうか。
作り手としては、PDFでのコンテンツはきれいに体裁が整っていてわかりやすくて、ダウンロードした人は、全員読んでくれていると錯覚してしまうんですよね。けれどPDFを3件ダウンロードしたとして、すぐに3つのPDFを完読しないですよね。
それよりはWebページをしっかりと作り込んで、バランスよくコンテンツを載せていくことが重要というのが今の僕の解です。ただし同心円の内側に行くと、購買プロセスに使う情報が求められるので、印刷しやすい、メールに添付しやすいPDFは利用価値が高まります。
マーケティングの仕組みを作ることは、もはやマーケターが考えていく時代ではない。テクノロジーを使ってお客様との接点を増やし、それを記録していくことが基盤になると思います。
人間でしかできないことは、商品を買うという意思決定をするために必要な情報を準備し提供すること、また、買いたいと思ったときの挙動を見つけて、その動きをシステムに教えることだと思います。ここはAIがやってくれる時代が来たようですが。(続く)
※「インサイドセールス」の役割や、マーケ、インサイドセールス、営業がいかに連携していくべきかを中心にお伺いした後編記事はこちらです。