- オイシックス株式会社
- EC事業部 戦略推進室
- 米島 和広
「PとDだけ」の環境にデータ分析基盤を PDCAを加速した、データ活用ノウハウとは
今回のソリューション:【Domo/ドーモ】
〜株式会社オイシックスが、データを一元化・可視化するBIツールDomoを利用して、多くの部署でPDCAを高速で回す体制を作り上げた事例〜
「ビジネスではPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを繰り返すことが重要だ」と誰もが言う。しかし、それを本当に実践できている企業がどれほどあるだろうか。
有機野菜、無添加物食品など「体によくてしかもおいしい食品」の宅配事業で知られる、オイシックス株式会社。
同社でデータ分析セクションのマネージャーを務める米島 和広さんによると、同社でも数年前まではPDCAの中の「PとDしかない」というような状況だったという。目標達成のために闇雲にPlan(計画)とDo(実行)を重ね、施策の素早いCheck(検証)が不十分だったのだ。
その状況を改善するために導入したのが、様々なデータを一元的に管理し、ダッシュボード形式で可視化するBIツール「Domo(ドーモ)」だ。
Domoの導入により、かつては3週間かかっていたPDCAサイクルが、最短2時間で回るようになったという。今回は米島さんに、Domo導入の背景となった課題から、全社を巻き込むDomoの運用ノウハウ、そしてその成果まで、詳しくお話を伺った。
増え続ける「PとD」に、「C」が追いつかず
私は創業当時に、学生だった頃からOisixに関わっています。今は主にマーケティングに関わる形で、データに基づいて自社サービスの課題を発見し、それを解決するという仕事をしています。
弊社はもともと「起こっている事実を確認し、活用しよう」という志向が強い会社ではあるのですが、以前はPDCAのP(Plan)とD(Do)のスピードにC(Check)がついてきていませんでした。
そのように検証(Check)が不十分な場合、どう施策がうまくいっているかが分からず、「継続するのかやめるのか」がうまく決断できませんでした。
その状態で、目標を達成していない場合、多くの別の施策を考えてまた実行することになります。するとその施策でも目標が達成されないので、また施策を増やしていく…。
目標のために、ひたすら新しい施策を実行し続ける。そのような環境だったので、少しずつ疲弊し始めていたんですね。
つまり、計画の成果をしっかり「検証(Check)」して、効果のある計画にリソースを集中するという「改善(Act)」ができないまま、ただPとDの手数だけを増やしてるという状態でした。
データが散在が検証のボトルネック
PDCAが回せていなかったのは、効果を検証するためのデータの扱い方が原因でした。
当時、事業が多角化していく局面にあり、データを見ようと思ったら、各チームに依頼してデータをかき集める必要がありました。そしてかき集めたデータを、エクセルを使って手動でレポートにしていました。
そのやり方だと問題が2点あり、ひとつはデータの精度が低かったことです。データの集計を別のチームに依頼するときに狙いが伝わらず、欲しかったデータと実際に受け取ったデータに食い違いが生まれることがありました。これでは正確な効果検証は不可能です。
そしてもうひとつが、最終的なデータが見えるようになるまでに時間がかかったことです。例えば、弊社が運営するECサイトでは、かつては施策のレビューをしようと思っても、販売開始してからすべてのデータが整うのに、2週間もかかっていました。
すると、データによる検証ができたとしても、改善結果が反映されるのは3週間後になってしまいます。それだけ時間が経ってしまうと、事前に立てた計画がもう「自分事」では無くなってしまい、検証や改善に身が入らない状態でした。
データ連携を容易にする、「Domo」を導入!
結局、問題はデータを一元管理するシステムがなく、バラバラに散らばっていたことでした。
その問題に対処するため、データを一元管理し、素早く可視化ができる、いわゆるBIツールの導入を検討し始めました。
最終的には「Domo(ドーモ)」を導入することになったのですが、決め手はクラウド系のサービスのため、自動的にバージョンアップしてくれることでした。
さらに、すでに使っていたさまざまなクラウド系ツールからのデータ取り込みが容易であることもポイントでした。
DomoはOSSのように無料ではありませんが、データの手動集計にかかる人件費、そして検証がうまくできないために無駄な計画を実行するコストを冷静に考えれば、十分に元手が取れると考えました。
3週間が2時間に!Domoによるデータ可視化の成果とは
Domoでは様々なデータを一元管理し、「カード」としてダッシュボード形式で可視化できます。この構築は、エクセルで集計するより少し大変という程度のもので、慣れれば簡単です。
▼大量のデータを一元管理&簡単にグラフ化できる「Domo」(内容はイメージです)
この機能のおかげで、素早く正確に、データを可視化できています。3週間かかっていたキャンペーンページの効果検証も、最短2時間で終わるようになりました。
キャンペーンのトラフィックが悪ければコンセプトが良くなかった、コンバージョンレートが悪ければページに何か問題がある、というように、素早く検証と改善を行っています。
▼「キャンペーン」ページの一例。現在開催中の「父の日」キャンペーン
例えば、リアルタイムに「コンバージョンレートが悪い」ということがわかれば、すぐにサイトをチェックできます。そうすると、実はページ上部の商品で「売り切れ」が発生したりしているんです。
すると、それを見たお客様が、下までスクロールせずに離脱してしまっているという仮説が立ちます。そして商品の順番を入れ替えるなど、すぐに微調整ができるようになっています。
リアルタイムに簡単に確認できることに組織として慣れてくると、施策実施前からどの指標を毎日確認するかのスキルも高くなり、さらに決断が早くなってきています。
分析基盤を整えることで、女性の持つ感性がより活きる会社に!
弊社はお客様の9割が女性ということもあって、弊社のメンバーも女性が多く約70%を占めています。データや数字の集計があまり好きでない人も多く、一方で、感性やクリエイティブの部分は、圧倒的に強いんです。
なので、私たちデータ分析セクションでは、そういったデータ作業の負担を軽減や、事実確認を理解する支援を素早く提供していきたいですね。すると女性社員たちが、その感性とクリエイティブな力をより活き活きと発揮する手助けになるのではと思っています。(了)