- 株式会社シグマクシス
- コミュニケーション部 ディレクター
- 内山 その
「文字だけ」では伝わらない!会社説明に「インフォグラフィックス」を使うその理由
今回のソリューション:【FILM BANK/フィルムバンク】
〜インフォグラフィックスの動画制作によって、自社のコンセプトを明確化し、お客様に事業内容を分かりやすく伝えることに成功した動画マーケティングの事例〜
今話題の「インフォグラフィックス」。その本質は、文字による「情報(インフォメーション)」を、直感的に理解可能な「図像(グラフィック)」にすることにある。では、その効果はどういうところにあるのだろうか?
企業の事業支援のコンサルティングを主な事業とする、株式会社シグマクシス。同社は、自社の事業や強みをお客様に分かりやすく伝える新しい手法を求めていた。
そんな同社が利用したのが、InSync株式会社の提供する、アニメーション動画制作サービス、「FILM BANK(フィルムバンク)」だ。こちらのサービスを利用して、シグマクシスは自社の事業を説明するインフォグラフィックス動画を作成した。
これまで、ゼロから社員が説明していた会社説明のエッセンスを、インフォグラフィックス動画でカバーすることで、お客様により直感的に内容を理解してもらえるようになり、コミュニケーションの質と効率があがったという。また、社内でも自社の事業に対する理解が深められたそうだ。
今回は、同社の広報責任者である内山 そのさんに、FILM BANKを利用した背景から、そのユニークな制作過程やインフォグラフィックスの本質、そして動画の効果まで、余すところなくお話を伺った。
▼インフォグラフィックスを用いた会社説明とは
※実際の動画はこちらをご覧ください。
「わかりやすさの追求」新たな表現方法へのチャレンジ
新卒で外資系のコンサル会社にコンサルタントとして入社しました。その後、広報にキャリアチェンジをして、数社で広報の責任者を経験した後、当社の創業に携わりました。現在は広報・宣伝・マーケティングを一手に担うコミュニケーション部の責任者をしています。
当社の事業の価値を世の中にどう伝えるかを考えていくなかで、ここ数年来の感じていることは、「もはやコミュニケーションは文字の中心の時代ではない」ということでした。
コンサルティングサービスという仕事の特性上、どうしても日常のコミュニケーションはドキュメントやパワーポイントのプレゼンテーションが基本となっています。
でも、情報が溢れてあらゆることのスピードが速まっている今の時代、誰も彼もが忙しいし、あふれる情報、あふれるメディアに囲まれている。そんな中、ひとつのことを理解するのに最初から大量の文字は読みたくないし、大量のスライドを見せられたくない。
そういう意味で、コミュニケーションは「分かりやすさ」を追求すべきなんじゃないかという声が社内で上がりました。「文字ではなく、もっとビジュアルに訴えてみよう」ということが、経営以下、全社のテーマになってきたのです。
「ズバッと興味を惹く」ために、インフォグラフィックスを導入
そうなると、まずは直感的に「なんか面白そう」とか「こんなこと考えているのか、なるほど、もうちょっと知りたい」といった、フックをかけるところから入っていくことが非常に重要ですよね。
100%の論理構成で「説得」することに時間をかけるよりは、まずはズバっと興味を持ってもらうようなイメージですね。興味をもっていただければ、細かいことはあとからでよい。
そこで、企業広報の役割を担う当部としても、弊社の目指しているものをもっとシンプルに分かりやすく提示し、直感的に理解してもらうための表現方法を探してみよう、ということになり、数年前から様々なパターンの動画制作にチャレンジし始めました。
その一環として、昨今話題になっている「インフォグラフィックス」にも取り組んでみよう、ということになったのです。
そこで出会ったのが、InSyncさんです。インフォグラフィックス動画を専門にしている企業は少ない中で、InSyncさんがその意義や利点を詳しく説明してくれたので、ぜひご一緒したいと思いました。
インフォグラフィックスの具体的な制作プロセスとは?
具体的な制作プロセスについてお話しすると、まずは完全なスクリプト、ナレーション原稿を作るところから始めました。
なぜなら、インフォグラフィックスとは、「動画」ではなく「インフォ(情報)」を「グラフィック」にするものだからです。原稿を作ったら、そちらをInSyncさん側で絵コンテにしていただき、弊社が伝えたいコンセプトと流れがあっているかをすり合わせていきます。
それが終わると、今度は少しずつ動画にして送られてきます。それをナレーションとの整合性やストーリーの流れに違和感がないかなど確認し、ズレがあれば話し合って作り直してもらう、ということを繰り返しました。
InSyncさんは、この過程をすごく丁寧に進めてくれました。メールで頻繁にやり取りしていましたし、弊社まで何度もお越しいただいて、打ち合わせをしました。
私たちは特に急いでいたわけではないので、こちらの事情でゆっくり半年ほどかけて行いましたが、やろうと思えば1ヶ月ほどでできるというお話しでした。
「コンセプトを言語化して研ぎ澄ませる」 制作プロセスで新たな発見も
インフォグラフィックス動画作りは、コンセプトをいったん言葉に整理して、それをきわめて抽象的なシンボルを組み合わせた動画に作り上げるプロセス。非常に抽象度が高いんです。
そういう意味で、今回の取り組みは弊社がすでに持っているコンセプトを、研ぎ澄ますプロセスでもありました。
▼抽象的な方法論をグラフィックに変換
▼「小さく始めて、大きく育てる」ことを直感的に表現
具体的なケースで印象に残っているのは、最後の最後、仕上げの段階まで来た時に、一か所だけ絵の動きにどうしても違和感が残った部分があった時。なんだかそこだけナレーションと絵があってない。伝わらないモヤモヤ感が残る。
普通の動画制作だったら、そういう時は「動画」を調整しよう、という話になりますよね。私も、「動きとシンボルを工夫できないか」とリクエストしました。
でも、その時にInSyncさんにずばっと言われたのは「絵はスクリプト通りですよ」ということ。「インフォグラフィックス動画は、そもそも、ナレーションをシンプルなシンボリックな動画で『補足』するものなので、ナレーションで語られていないものは表現できないんです」と。
改めてよく見てみると、確かに絵はスクリプトにそって綺麗に作られていました。それでも動画として違和感があるとすれば、そもそものスクリプトに問題がある、ということになります。
すべての言葉をシンボルに変えていくという作業なので、伝えたいコンセプトがまず「言語」として具体化できていないとうまく絵にならないんですね。だから、伝えたいことが概念的であればあるほど、言語化を無駄なく丁寧にして、その表現を研ぎ澄ましておく必要がある。
振り返れば、制作プロセスはこの作業の繰り返しだったわけですが、InSyncさんは、初めての私たちに対しても、丁寧に付き合い、入り込んでガイドをしてくれました。結果として私たちの頭も整理され、いい勉強になったと思っています。
インフォグラフィックス動画は、お客様の質問を引き出す!
結果としてできた動画自体にも、様々な効果があったと感じています。
まず、制作に関わった者だけではなく、弊社全体でも自分たちの伝えたいコンセプトが明確になったこと。実際、社内での受けもすごくいい。「自分たちはこういう会社だったのか!」と改めて理解する社員も(笑)。
もっと重要なのは、お客様に弊社の事業や強みを直感的に理解いただけるようになったことです。採用活動にも使われ、初めて訪問するお客様にまずお見せしてから本題に入る、という社員もいます。
これまではプレゼンで長々と会社の説明をしなければならなかったのに、この3分動画で「基本的な大事なこと」は伝わる。そこから、各論に興味をもってくださったお客様からの個別の質問をお受けする、そして、社員による特定領域の説明に自然と進んでいく、という流れです。
言わば、動画できっかけを作ることで、お客様の側から理解のギャップを埋めるべく、知りたいポイントを出していただける、という感じですね。
個人的には、ここにインフォグラフィックスの特長があると思っています。普通のイメージ動画は、そもそも言葉になりにくいものを映像というコンテンツでアピールすることを目的としているものですよね。イマジネーションはどんどん膨らませることはできるけれども、それを起点に具体的な言葉による理解や質問を生み出しにくい。
それに対してインフォグラフィックスは、一見シンプルなつくりだけれども、文字情報をシンボリックに映像化して補足しているので、パッと興味を惹いて直感的に理解してもらえる動画の良さと、明確な情報をナレーションとしてしっかり伝えるという二つの要素をあわせもっています。
どちらにもそれぞれ良さがあり、それらを使い分けるという面白さも今回学びましたね。
「やるべきこと」よりも、「やりたいこと」をシンプルに訴求する時代
かつてのコンサルタント稼業は、ロジック力が勝負だったと思うんです。ただ、これだけ変化が激しく、何が正解かもはや誰にもわからない時代においては、理屈で納得できたからって、それが必ず価値につながるかは分からないですよね。
市場がゆっくり動く時代には、あらゆる領域に「ベストプラクティス」と言われるものがあって、「A社が取り入れた手法をウチもやってみよう」「競合がやっているからウチもやらなければ」といった動きがありました。
でも、今は他社の真似をしたからと言ってうまくいく時代ではない。自分たちがそれをやりたいかどうか、チャレンジしたいかどうかがポイントで、それをやりきって初めて新しい価値が生まれ、企業の競争力も高まっていくんだと思うのです。
そういう意味では、コンサルティング会社も、絶対的な正解を最初から提供できる時代ではないわけです。
なので、私たち自身、お客様と一緒にリスクをとって新たな領域に切り込んでいかなければいけない。お客様も、ロジックと方法論と資料だけのコンサルティングには、すでに意味がないことに気づき始めています。
そう考えると、お客様への提案書ひとつとっても「こんなこと、一緒にやりませんか?」と伝えたいときに、「何故やるべきか」を論理で説得するよりも、「やりたいこと、実現したい価値」を直接訴求するほうがよっぽどインパクトがある。
100枚のリッチな提案書よりも、「要はこういうことなんです、やりませんか?」という3枚のキーチャート。そういう世界になっていくのではないかと。お客様のからの期待が変わる中、当社もコミュニケーションのあり方を変えていくときが来ているのだと思っています。
抽象度が高いビジネスには、インフォグラフィックスはおすすめ
やはり、あらゆる領域において「わかりやすさ」が重要になっているんだと思います。しかし、事業の内容が専門的かつ抽象度が高い場合ほど、それを分かりやすくシンプルに伝えることは難しくなります。
そのような悩みを抱えている企業の方こそ、インフォグラフィックスにチャレンジしてみる価値があると思います。特に目に見える「モノ」がない、サービス業などは、価値をどう伝えるかが難しいので、向いているのではないでしょうか。
その制作のプロセスで、自社の事業内容や、強みの理解がシンプルな形に研ぎ澄まされますし、結果としてできる動画は、お客様に直感的かつ深い理解を生み出してくれると思います。
当社も、様々なテーマで、今後もインフォグラフィックスを積極的に活用していきたいと思っています。(了)