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- 東 龍行
Webに逃げるお客様をどう振り向かせる?ゼロからECサイトを開設したパリミキの挑戦
〜お客様が店舗で商品を買わない?Webへのシフトに適応する「パリミキ」の挑戦に迫る〜
渋谷駅徒歩数分の場所に、道行く若者の足を止めるアメリカンな楽器店のようなメガネ屋がある。それが、PARIS MIKI SHIBUYAだ。
この店舗は、創業87年の株式会社三城ホールディングスが運営する「パリミキ」の店舗のひとつだ。渋谷の若者をターゲットに2012年にリニューアルされ、多くの若者の心をつかんでいる。
▼まるで楽器店のようなPARIS MIKI SHIBUYAの外観
さらに2016年7月、そのコンセプトを受け継いだECサイト「E-megane」を立ち上げた。その発端は、PARIS MIKI SHIBUYAに訪れたお客様の「ある行動」だったという。
そしてECサイトを立ち上げることとなった同社だが、社内にはECのノウハウも技術もなかったという。そこで活用したのが、ECサイト構築サービスの「カゴラボ」だ。
今回はECサイトの立ち上げを主導した東 龍行さんに、ゼロからのECサイト構築を実現したプロセスから、顧客のインサイトを起点にしたECサイトの構想、カゴラボの利点まで詳しく伺った。
創業87年、初の自社ECサイト「E-megane」を公開
私は20年前に入社し、最初は山口県にあるパリミキのロードサイド店舗で勤務し、その後ニューファミリー層向けブランドの立上げ責任者を務めていました。現在はEC事業部でチーフを務めるかたわら、店舗のマネジメントにも携わっています。
弊社は創業87年目を迎えるメガネのブランドなのですが、2016年7月にようやく「E-megane」というECサイトを立ち上げました。
▼同社が運営するECサイト「E-megane」(中央の写真はPARIS MIKI SHIBUYAの外観)
このECサイトは約800店舗ほどある実店舗のうち、渋谷にある「PARIS MIKI SHIBUYA」をモデルにしています。
PARIS MIKI SHIBUYAは5年前にリニューアルするまでは、渋谷にありながら目の前を歩く若い世代の方々には見向きもされず、業績も伸び悩んでいました。2012年に「50年代のアメリカと音楽」をコンセプトにリニューアルしてからは、若者からの反響が大きく最も利益を出す店舗になっています。
お客様の行動を観察すると、ECの必要性が見えてきた?
実はECサイトを立ち上げるという話も、渋谷店にいらっしゃる若い世代のお客さんの行動から、気付きを得てスタートしたんです。
弊社の社長はよく渋谷店の店頭に立っているのですが、ある日僕にこんな話をしてきました。
「最近、お客様がメガネやサングラスを見ても買っていかないんだ。」と。そこで、お客様の行動を観察してみると、スマートフォンで品番を調べていたことがわかったんです。
おそらく、他にも扱っている店舗がないか、もう少し安く買えないか、商品の評価はどうかといったことを調べていたのでしょう。
弊社はこれまでITに疎く、Webの施策はほとんど実施していませんでした。でも店舗でお客様の行動を目の当たりにして、「Webでもお客様と接点を持てるサービスを作っていかないと生き残れない。だからECサイトを作ろう。」と考えを改めました。
知識ゼロからの挑戦を支えたのは「カゴラボ」とその担当者
ECサイトのコンセプトとしては「若い世代の方に楽しんでもらえるコンテンツ」を意識しました。
僕が入社してからの20年で、メガネを買いに来られるお客様の状況は大きく変わりました。昔はメガネを掛けるお客様のほとんどは視力が下がって困っていたのに対し、今はそれだけでなく、自分のファッションやライフスタイルに合わせて選ぶ人が増えてきています。
そのニーズに合わせ、お客様が店舗と同じ様に楽しくメガネやサングラスを選べる場所を、オンラインでも実現したいと思ったんです。
ですが、実現したいコンセプトはできたものの、技術のこともわからないし、何から始めたらよいのか見当もつきませんでした。
そこで、まずはECサイト構築を支援する8社に、私が実現したいことを相談しました。その中で、一番願いを叶えてくれそうだったのが、ECサイト構築プラットフォーム「カゴラボ」を提供する株式会社アラタナさんでした。
▼ECサイト構築プラットフォーム「カゴラボ」のWebサイト
機能の良し悪しだけでなく、担当者がとても信頼できる方で、とても真剣に親身に相談に乗ってくださったことも、カゴラボを選んだ理由です。
ECに合わせてアプリも作りたいと考えていたのですが、他社さんが「まるまる引き受けます!」と言っている中で、カゴラボの担当者は「アプリを作るお金があるんだったら、多くの人に知ってもらうための活動をしたり、お客さんに安く提供したほうがいい。その方が御社のためになるし、お客様のためにもなる。」とアドバイスしてくださいました。
その他にも、在籍する約130名の社員の半数以上が技術者である点や、構築した後のサポート体制がしっかりしていることも導入の後押しとなりました。
渋谷ブランドを打ち出すためコンテンツを工夫
カゴラボの導入を決めた後は、担当者と何度もミーティングを重ねて、ペルソナ(※)とコンテンツを考えていきました。
※ サービスのターゲットとなるユーザーの「人格」を定義したもの
渋谷店のコアな客層が20代〜30代だったこと、実際に購入してくださる方に男性が多かったことを踏まえ、ペルソナは「20代〜30代の小物にもこだわりをもつ男性」に設定しました。
コンテンツはサングラスから始めることにしました。最終的には度付きメガネを買っていただけるようにしていきたいのですが、ECサイトではまだまだハードルが高いので。
渋谷店の強みは、おおよそ眼鏡店とは思えない店装と、その中で様々なカテゴリーのブランドを取り扱っている点です。担当者にその話をしたところ「その強みをECサイトでも打ち出したほうが良い!」とアドバイスをいただいたため、「リアルな渋谷トレンド」にこだわりました。
お店の雰囲気が伝わるように使う写真にこだわり、ブログやショップニュースなどで渋谷の情報を知っていただけるようにしました。また、実際にサングラスやメガネを使う際のコーディネートがわかるようなコンテンツも作ろうと考えました。
その後はカゴラボさんにECサイトとCMS(※)を構築してもらいました。
※CMS(コンテンツマネジメントシステム):Webサイトを管理・更新できるシステムのこと
CMSはプログラミングの特別な知識が不要で、素人でも操作できるようになっています。サイトオープン後は私がシステムを操作して、商品の登録や受注処理をしています。
▼CMSでは直感的な操作で、レイアウト設定も可能
私の場合、マニュアルを見ても登録の仕方がわからないことも多かったのですが(笑)。それでも、サポートチームの方々が電話やメールですぐに対応してくださったおかげで、最終的にスムーズに操作できるようになりました。
「Styling」ページの着想はWEARとZOZOTOWN?
今回のサイトで特にこだわったポイントは、スタイリングの提案です。コンセプトである「若い世代の方に向けて楽しんでもらえるコンテンツ」のコアな機能になっています。
僕は以前、WEARというファッションコーディネートサイトを服選びの参考にしながら、ZOZOTOWNで大量に買い物をしていました。その2角サービスの、メガネ版を作りたいという思いがあったんです。
この思いにも、カゴラボの担当者は親身になって応えてくれました。写真撮影までお手伝いいただき、最終的にメガネを含めたトータルコーディネートからメガネを選べる「Styling」ページができたんです。
▼トータルコーディネートからメガネを選べる「Styling」ページ
実は、ここに載っているモデルは弊社の社員なんです。アパレル業界だと普通ですが、メガネ業界ではなかなか無い取り組みなので、社員も最初は写真を撮らせてくれませんでした。
そこで「僕も撮るから撮らせて」と交渉し、最終的には多くの社員に協力を得ることができました。本当は、僕も恥ずかしくて嫌だったのですが(笑)。
チャネルが増えたことで、商品を知ってもらうきっかけに
まだサイトを立ち上げて5ヶ月程度ですが、少しずつ成果は出てきています。
ECサイトを見たことがきっかけで、店舗にいらっしゃるお客様も出てくるようになりました。サイトの売り上げ自体はこれから頑張っていく必要がありますが、新しいチャネルが増えることによって、自社のサービスや店舗、商品を知るきっかけが作れたことは大きなメリットですね。
また、パリミキの公式ホームページの閲覧数が、ECサイトをきっかけに約10%ほど増加したんです。
また、ECで得た経験をリアル店舗での業務に活かして、数値に基づく分析やアクションができるようになりました。「KPIを何にしようか」「KPIを達成するための施策は」と考えられるようになったんです。
800のリアル店舗も活用し、ファッションカルチャーを作っていく
弊社の強みは、地方を含めて約800店舗を展開しているところです。しかし、長期の視点で考えると、Webの浸透で商品の買い方は大きく変わってきているので、オンラインに対応しなければ生き残っていけません。
ですので、まずはECサイトをしっかりと運営していきたいですね。また、オンラインで販売して終わりにするのではなく、買っていただいた後にも弊社のお店でアフターフォローやサポートも提供していくことで、常にお客様の側に寄り添っていけるサービスを構築していきたいと考えています。それが私たちの強みだと考えています。
そうして、多くの方々に弊社のサービスや商品を知ってもらい、安心して使っていただくことで、メガネやサングラスを日本の新しいファッションカルチャーにしていきたいですね。(了)