• NKアグリ株式会社
  • 代表取締役社長
  • 三原 洋一

kintoneで「野菜の出荷時期」を予想する!?農業ベンチャー、NKアグリの戦い方とは

〜農業ベンチャー「NKアグリ」。そのユニークな「kintone」活用法から、販売戦略までを詳細に公開〜

いま最も注目を集める分野のひとつ、農業ベンチャー。その中でも、先進的な生産・流通・販売のシステムを整えることで急成長しているのが、NKアグリ株式会社だ。

農業にマーケティングやビジネスの考え方を持ち込む同社では、その業務の中で、ビジネスアプリ作成プラットフォーム「kintone(キントーン)」を活用している。

「承認フローの電子化」から始まったkintoneの活用も、今では農地のセンサーデータを取り込み、野菜の出荷時期を予測するなど、ユニークな広がりを見せている。そのアプリの総数は、70個以上にも及ぶという。

今回は、同社代表の三原 洋一さんに、kintoneを活用した先進的な農業のあり方から、野菜を「差別化」していく販売戦略まで、詳しくお話を伺った。

農業の「素人」7人でロケットスタート!しかし結果は…

弊社は2009年に、ノーリツ鋼機グループの新規事業として、社内公募で集まった7人から始まりました。全員が農業は素人だったので、最初はすべて手探りで、失敗ばかりでしたね。

例えば、まだ野菜も作っていないし、野菜を作るハウスもない段階で、先に営業をかけていたりしました(笑)。

口約束では想定の3倍くらい受注できて、「これは凄いビジネスになるぞ」と意気揚々としていたのですが、結局、ほとんど出荷できなかったんです…。

最初に作ったのはネギでしたが、すべての種が芽吹くわけでもないですし、日当たりぐあいによって、うまく育たなくなるものも出てきます。挙げ句の果てに、ネギが生長しすぎて自重で全部倒れてしまったり…(笑)。

素人だったので、本当に失敗ばかりしていて、お客様にご迷惑をかけてしまったこともありましたね。ロケットスタートは切ったものの、盛大にこけたという感じでした。

そうやって最初の3年間は試行錯誤を繰り返していたのですが、4年目には販路もでき、ほとんど売れ残りがない状態を達成することができました。

「書類を郵送して印鑑を押していた」事態に、kintoneを導入

創業して最初の3年は、社員はみな和歌山のハウスにいたのですが、4年目からは、全国を回るようになりました。私も研究機関との関係から、東京にいることが多くなりました。

そこで問題になったのは、出張経費の承認の印鑑をどうするかという事です。一時期は、私がいる和歌山なり東京なりに、皆が書類を郵送して、私が印鑑を押していました

このような問題の対策のため、ビジネスアプリ作成プラットフォームの「kintone(キントーン)」を導入しました。まずは試しにと、電子承認の経費申請アプリを作り、印鑑を押さなくても済むような仕組みを作りました

▼経費申請アプリ

kintoneは、プログラミングができなくても、テンプレートに沿っていけば誰でもアプリを作ることができます。営業報告や出張報告のアプリは、よく使っていますね。以前は、全員をCCに入れたメールで報告をしていたのですが、それだとメールがあまりにも多くなるので、すべてkintoneに移行しました。

▼出張報告アプリ

定額制なこともあり、今では社員が勝手にいろいろなアプリを作るようになって。現在は60〜70個ほどもアプリがあり、例えば、電気料金を自動でグラフ化するアプリなどもあります。

▼電気料金の自動グラフ化アプリ

kintoneは、野菜の販売予測にも応用できる

kintoneも、最初のうちはテンプレートに沿ったアプリしか作っていなかったんです。ですが、カスタマイズの方法を覚えていくうちに、kintoneは私たちの農業に欠かせない存在になりました。

例えばいまでは、和歌山の野菜工場の生産管理にもkintoneを使っています。毎日、「歩留まりは何%で、何袋作った」というKPIを入力しています。その数字と一緒に、コメントを書き込むようにしたことが、結果的にはとても良かったですね。

▼生産管理アプリ

野菜って、数値だけだと分からないんですよ。ギリギリ踏ん張ってその生産数だったのか、あるいは余裕で達成したのか。それをコメントや写真で残すと、予兆が伝わってくるので。来週どのくらい販売できるのかが推測でき、営業が動きやすくなるんです。

「人参の収穫時期」まで推測するアプリを構築

また、kintoneはコミュニケーションツールとしても活用しています。それまでは全てメールでのやり取りだったのですが、kintoneのおかげで、社員同士が離れがちでも、コミュニケーションがすごく改善されています。

▼kintone上でコミュニケーションしている様子

このように社内のコミュニケーションを改善してくれたkintoneを、次は社外でも使おうと考えました。現在は、高リコピン人参「こいくれない」の協力農家さんとの連絡に活用しています。

これは研究によって分かったのですが、人参の生長を一番大きく左右するのは「積算気温」なんです。なので、kintoneにいつ植えたのかという情報を入れた上で、農家さんのセンサーと連動させて、積算気温を記録しています

そうすることで、収穫時期の目安について、農家さんと早い段階からコミュニケーションが取れるんです。このように出荷時期をすり合わせておくことで、収穫の遅れなどのトラブルを回避できています。

他にも、農家さんに作付面積や発芽率などを記録してもらうことで、何日に何トン収穫できるかを予測するアプリもあります。

これを見て、営業も博打みたいな営業をするのではなく、仮説に基いて売れるようになるんです。もちろん、精度の問題もあるし、農家さんがその通りに採ってくれるかもわからないんですけど。それでも、行動の中心に、何か指標になるものがあったほうが、感情論にならずにコミュニケーションが取れますよね。

野菜にも、「差別化」を意識した販売戦略を

弊社の野菜は、他の野菜との「差別化」を意識した販売戦略をとっています。

いままでの農業って、野菜を主に「重さ」で見ているんです。「何キロの規格の箱に何玉のレタスが入っているので、いくらです」というような。でも、消費者の人たちって、重さで野菜を選んでいるわけじゃない、というのが我々が持っている仮説です。

まだ全然売れていない時期に、私もレタスを手売りしていたことがあったんです。そこでお客さんが聞いてくるのは、「今日はお肉料理にするんだけど、どれを使えばいいの?」とか、「食感にどんな違いがあるの」といったことなんです。

今の市場って、あえて言うならコモディティ化された、個性を殺した野菜が多いんです。消費者が求めてるものと違う規格の野菜を、必死でみんなで守っているっていう異様な雰囲気になってるなと思います。

「流通しやすい野菜を作る」という意見もわかるのですが、やっぱり、お客さんって絶対に美味しいものが良いし、栄養価が高いものが良いですよね。そういう声に応えるというのは、セオリー通りのマーケットインの考え方ですし、最適化された流通システムを持っている人たちと戦うには、ちょうど良いんじゃないかなと思っています。

弊社の野菜のパッケージは、「しゃきしゃき」とか「やわらか」って書いていたり、子ども用のアイキャッチにもなっていて、味もすごい甘いんです。

▼NKアグリで取り扱っている野菜

値段は高めなんですけど、こういうレタスが面白いという人もいるんですよね。今まで通りの量のレタスを売ろうとするのではなく、マーケットの規模をちゃんと適切に知って、個性を出していけば、相場に左右されずに安定して商売ができます。

今後は、様々な品目の商品開発を進めながら、これまでの野菜の売り方とは別の価値観を押し出す売り方を、他の野菜にも広げていきたいと考えています。(了)

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