• サイボウズ株式会社
  • 人事部 感動課
  • 前田 眞季

「炎上」しても、全員の意見を聞く!サイボウズ「チームワークのための」オフィス作り

〜社内外のコミュニケーションを促進する工夫が随所に。サイボウズのチームワークの拠点である、オフィスの全貌を公開〜

ビジネスアプリ作成プラットフォーム「kintone」などを提供する、サイボウズ株式会社

出勤の必要がなく、勤務時間の規定もない働き方「ウルトラワーク」を制度化するなど、多様な働き方を推進していることで知られている同社。社員数の増加に伴い2015年にオフィスを移転、その新オフィスのコンセプトは「Big Hub for Teamwork」である。

子連れ出社の際に子供を遊ばせながら、仕事のできるリビングスペース、社外の人々と交流しやすいエントランス、勉強会も開催できるBarなど、サイボウズに関わる社内外の人々とのコミュニケーションを促進する工夫が凝らされている。

今回は、同社でオフィス移転プロジェクトを担当した前田 眞季さんに、そのオフィスの全貌を伺った。

▼コミュニケーションを促進するサイボウズのオフィスとは

派遣社員として入社したが、サイボウズに惚れ込む

大学を卒業してからアパレルメーカーで3年ほど働いたあと、2009年にサイボウズに転職しました。実は、当初は派遣社員として一時的に働くつもりだったのですが、入ってみたらすごく社員思いの会社だと実感したんです。そこで、入社2年後から、正社員として働くことになりました。

現在は、オフィス関連の担当をしつつ、「社内にある感動の種を見つけ、感動の華を咲かせる」をミッションとする、人事部の「感動課」に所属しています。

離職率が下がったことで人が増え、オフィスも手狭に…

弊社では、働きやすい環境を実現するため、人事制度などの改善を続けてきました。その効果もあり、離職率はどんどん減り、社員数は増え続けています。

▼離職率は減り、社員がどんどん増えた

人数が300名を超えたころ、以前のオフィスが手狭になってきました。その対策として、席を外すことが多いメンバーをフリーアドレスにする、「セミフリーアドレス」を導入してみたんです。

すると必然的に、役員から順にフリーアドレスになるんですよね。代表の席がなかったり、本部長が簡易デスクを使って廊下で仕事をしている、といった状態になってしまい(笑)。

そういった対策も限界がきて、会議室が足りないなどの問題も出てきました。

弊社には、通勤の必要がなく、勤務時間の決まりもない「ウルトラワーク」という制度があり、在宅ワークの環境も十分に整っています。

そのため、「リアルなオフィスは不要では?」という議論に至り、その旨を社内で発信したところ、若手から「先輩の背中を見て成長したい」「実際に同じ場所で働くことでの学びはすごく多い」という声が上がったんです。

その後、様々な議論を重ねた結果、やはり「実際に集まるHubとなるような場所は必要だ」ということで移転が決まりました。

ワークショップで生まれたコンセプト「Big Hub for Teamwork」

移転プロジェクトは、2014年の夏ごろに発足しました。

年代・性別・職種・働き方などがバラバラなメンバーに集まってもらい、実際に働く場面をひとつひとつ想定して、大事にしたいポイントを整理するワークショップを合計3回行いました。

そして、そのポイントを整理して新しいオフィスのコンセプトを導き出しました。

そうしてできたコンセプトが、「Big Hub for Teamwork」です。社内外の人が集まり、リアルなコミュニケーションが活発に行われることで、高いパフォーマンスが発揮できる中心拠点(Hub)を目指しました

▼全体のコンセプトとエリアごとのコンセプト

コンセプトと同時に、チームワークの成果を最大にするために、実現したい5つの要素も決めました。具体的には、

• 「Communicational」:質量ともに圧倒するコミュニケーションの機能と場がある

• 「Sense5+1」:五感を共有することによる一体感や共感の醸成が可能である

• 「Eco Expand」:エコパートナー様含めたコミュニケーションの拡大が可能である

• 「Changeable」:オフィス環境を固定化せず、環境に応じて変化できる

• 「Trust & Secure」:クラウド事業者として高い信頼性を保ったまま実現できる

の5つで、これらを通して、リアルオフィスの効用を徹底的に高め、個人もチームもパフォーマンスを最大化できるようにオフィスを設計していきました。

※エコパートナー:サイボウズ社のパートナー企業のこと

▼他拠点や、エコパートナーも含めたHubを目指した

移転プロセスは大炎上?みんなの声を吸いあげる難しさも

実際に移転するまで、1年ほどの時間がかかりました。

弊社は基本的にグループウェア上で様々な情報がオープンにされておりますので、「ビルの下見、ここに行きました」などの移転の過程も全てオープンな場で逐一報告をしていました。また、可能な限り社員の要望に近づけたく、週に1回「移転カフェ」をお昼に開いて、幅広く意見を募りました

いろいろとアイデアが出てくる分、まとめるのはすごく大変でした。会議室の名前ひとつ決めるのにも、大反対されたり、グループウェア上で炎上することもあって(笑)。

そういうときは、コンセプトに立ち戻って説明をすることで、理解を得ていきました。最初にはっきりとコンセプトを決めたことで、色々とぶれずに調整できたと思います

▼宇宙ポートをイメージした会議室「TANEGASHIMA」

まるで公園? 気軽に遊びに来てもらえるエントランス

エントランスは、公園をイメージしてデザインした、ユニークなものになっています。

▼気軽に出会える公園。動物たちは待ち合わせ場所にも使える

社内のコミュニケーションを活性化し、パートナー様やお客様にも気軽にお越しいただきたかったため、「待合室」ではなく、「公園」をイメージした空間にしました

エントランスには小さなカフェスペースを3つ作っており、新規導入のご相談や、既存のお客様のご相談を受けたりしています。

▼お客様も気軽にご相談ができるカフェ

また、エントランスゾーンは打ち合わせだけでなく、全社の集まりでも使っています。台の部分をステージにして、可動式の壁を動かして横の会議室とつなぎ、オープンな空間にして使っています。

▼エントランスゾーンでユーザー向けイベントを開催

さらに、秘密基地のようになっている場所もあったり、随所に仕掛けが施されています。このように、小さなネタがたくさん盛り込まれているので、お客様との会話も弾みます

▼レゴのように遊べる掲示板も。オフィスには遊び心が溢れている

ちなみに、エントランスのデザインは、空間プロデュースをしてくださるゼオさんにお願いしました。ゼオさんには、弊社がITイベントに出すブースを毎回デザインしていただいていて、それが来訪者からも好評だったことが、依頼の背景です。

実はエントランスデザインには反対の声も多かったため、引っ越し当日は皆どんな反応をするのか凄くドキドキしていました。

でも実際、入ってきたらみんな凄く喜んで、写真もガンガン撮ってくれたんですよ。やっぱり、いろいろと過程も報告していくことで、納得感が増したんだろうなと思っています。

お客様とも、仲間とも使えるキッチン併設のBar

エントランスの隣には、キッチンを併設したBarがあります。仕事、休憩、食事はもちろんですが、パートナー様との懇親会や、社内のイベントなどでも使っていて、プロジェクターも完備しているので、勉強会や研修等も行えるスぺースになっています。

▼気軽に立ち寄れるキッチン付きBarスペース。朝から晩まで大活躍

基本的には朝から晩まで開放していて、予約をせずにふらっと立ち寄れるような感じで使ってもらっています。

年末は、パートナー様との忘年会でずっと埋まっていましたね。ケータリングを取って、簡単にパーティを開くことができる上、周りを気にせずに話ができる点も良いですね。

このキッチンも、生ごみはどうするんだとか、誰が掃除するんだとか…キッチンを作る作らないで、もめました(笑)。

▼キッチンでラーメンを作る社員の方達

でも、やっぱりコミュニケーションの場になりますし、お客さまにもそういう場を提供したいということで作りました。結果的に、今では本当に人気の場所になっています。

▼一緒に食事を作ることで、コミュニケーションも生まれる

なお、Barの横に靴を脱いでくつろげる「リビング」というスペースがあります。このスペースは、子連れ出社した人が、お子さんを遊ばせながら仕事ができるような環境を目指して作りました。弊社の社員は平均年齢が若いため、お子さんがまだ小さい方も多いんです。

▼靴を脱いでくつろげるリビング

最近では、キッズラインというシッターさんに来てもらい、面倒を見てもらうという試みも始めています

▼子供向けのアイテムも保管されている

リモートワークも促進 Ciscoの秀逸な設備

移転を機に、テレビ会議や在宅ワークを促進するため、Ciscoさんのテレビ会議システムを導入しました。大きめの会議室には、天井に高性能なマイクを設置して、簡単かつ快適にテレビ会議ができるようにしています。

以前に使っていたものだと、海外拠点との打ち合わせのときに、向こうのネットが不安定でタイムラグが発生することもありました。Ciscoのシステムに変えたところ、全くタイムラグがなく、本当に同じ場所にいるような感覚でつなげるようになりました。

Cisco Jabber(シスコジャバー)」というチャットを全員のクライアントPCに入れているのですが、それを使えば、どこにいてもテレビ会議が開けます。

在宅勤務のメンバーとオフィスにいるメンバーとの会議だけでなく、外出中も携帯電話から会議に参加することができるので、パソコンを開く手間もなく、すごく手軽です

開かれた勉強会で、部署間の交流も生まれる

移転後は、社内の勉強会の数もすごく増えました

ラウンジとBarでは、プロジェクターとスクリーン、TV会議システムをいつでも使える状況にしているため、頻繁に勉強会が開かれています。移転する前は、まさかここまで使われるとは思っていなかったですね。

ラウンジでの勉強会は、たまたま立ち寄る社員も多く、全く関係ない部署の人も、自然とほかの部署への理解が深まったり、興味が湧いたりするんです。

ふらっとジュースを買いに行ったときに、「この人たちってこういう仕事をしてるんだ」と気づくきっかけになったりして。そういった事業部や職種を超えたコミュニケーションが、新オフィスではすごく増えたなと思っています。

今後は、ご来社いただいた方々にも、オフィスの魅力をもっと伝えていけるようにしていきたいですね。(了)

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