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「オープンを当たり前に」。ココナラの、データドリブンな取り組みの変遷を公開

〜ココナラが使うデータ分析ツールの変遷と、データドリブンを根付かせた、同社の文化を公開〜

インターネット上で個人の知識・スキル・経験をサービスとして販売できる、CtoCサービス「ココナラ」。同サービスは、リリース当初から徹底した「データドリブン」の姿勢で、2016年9月現在では、月間の成約件数が5万件に上るまでに成長した。

そのデータ分析の手法は、リリース当初の簡易的な「Google スプレッドシート」での管理から、自前の管理ツール、BIツールの「DOMO(ドーモ)」まで、サービスのフェーズによって変化してきた。

そして、そのデータ分析の文化を支えているのは、「オープンを当たり前に」と「目的ドリブン」という、同社が掲げる2つのバリューだという。

今回は、株式会社ココナラの創業者の南 章行(みなみあきゆき)さんに、その成長過程とデータ分析の変遷について、お話を伺った。

「生きる力の獲得支援」というテーマから、ココナラは生まれた

弊社の運営する「ココナラ」は、知識やスキル、経験といったものを、個人がサービスとして販売できるプラットフォームです。「イラストを描きます」や、「〇〇を教えます」「〇〇についてアドバイスします」といったものが、オンライン上で販売されています。

▼ココナラのトップページ

私がココナラを立ち上げたのは、社会人になってからずっと変わっていない、「生きる力の獲得支援」というテーマに基づいています。

以前、企業買収ファンドに在籍していたときも、「倒産する大企業にいる人をなんとかしたい」という気持ちでした。その後に立ち上げたNPOでも、大学生向けの教育プログラムを実施していました。

ココナラでは、ネットの力をつかって、自分のちょっとした経験や特技で誰かの役に立てます。すると、それだけで「俺ってまんざらでもないな」と思えますよね。ココナラを使って相談する側も、何か新しい一歩を踏み出せたり。そういう、個人をエンパワーメントする場を作りたいなと思っています。

CtoCサービスならではの、ゴール設定の難しさが…

ココナラは2012年7月にサービスを開始して、今では月間の成約数が5万件近くまで成長しました。

成長を測るためのKGIには、「流通高」を置いています。弊社のサービスの場合、それ以外の指標を置くのは、凄く難しいんですよね。というのも、ユーザーには売る側と買う側の2者がいます。そのどちらに軸を置くのが一番良いのか、正直わからないんです。

また、A/Bテストのようなものも十分な数をこなすことができません。例えば、イラストだけ売るサービスなら簡単ですが、弊社の場合は扱うジャンルが異常に広いので。ユーザーによって使い方も全然違うし、満足度の基準も変わってくるんです。

なので結局、いろいろと試行錯誤しながらもKGIは売り上げにして、それを上げるためのエンゲージメント(親密さ)やリテンション(継続)といった数値を見ています

サービスの初期フェーズは、まず「バケツの穴を塞ぐ」

初期は特に、「どうしたらリテンションしてくれるか」を中心に考えていました

よく、新規ユーザーを獲得するために、最初から広告を打つところもありますよね。ですが、これって、お金をかけただけユーザーが増えるという「足し算」の施策なんですよね。

弊社では、「掛け算で効く施策をしましょう」と言い聞かせていました。ユーザーのサインアップ率が上がれば、今後流入してくる、すべてのユーザーに効果がありますよね。逆にそれが無いと、バケツに穴が空いたまま放置しているような状態で、いくら広告費をかけても意味がありません。

なので、まずは「人が残る状態」を作るために、リリースして1年半くらいは、「新規ユーザーは取れなくても悩むな」と言っていました。とにかく、バケツの穴を塞いでリテンションさせることを考えようと、ユーザーのモチベーションが上がるような施策を打っていきました

データ分析の仕組みも、フェーズによって変化していく

サービス開始から2年ほどは、「Google スプレッドシート」に、「Google Analytics(グーグル アナリティクス)」やデータベースから自動的に数値が入るような仕組みを作り、KPIを管理していました

▼Google スプレッドシートによるKPI管理

ですが、自動といっても、ものによっては毎日情報を更新して、手作業でグラフを作っていたので…。更新などの作業に何時間も取られますし、指標が増え、計算が複雑化していくと、スプレッドシートが重くて動かなくなってしまいました。

これはさすがに限界だと感じ、データ分析ツールを自社開発することにしました。ココナラのアナリティクスで、「ココリティクス」というツールです(笑)。

デイリーの値やコホート分析、7日間のコンバージョン数や購入転換率など、必要な指標がぱっと出せるシステムを作りました。

▼自社ツール「ココリティクス」の分析画面

ですが、それも運用していくうちに、「こういう見せ方をして欲しい」とか「この数値とこの数値を横に並べたい」という要望が増えてきまして。ココリティクスは使いやすいし、データもダウンロードできる仕様で凄い便利なんですけど、BIツールの「DOMO(ドーモ)」に乗り換えることにしました。

DOMOで分析、Slackで議論、Confluenceに蓄積

DOMOは値段が結構高いのですが、あらゆるデータを統合できて、圧倒的に良かったんです。

▼DOMOによる数値管理

また、スマホでも見られるので、朝起きたらまずはDOMOの数値をみて、チャットツールのSlack(スラック)で話をするのが習慣になっています

▼Slack上で議論する様子

また、Slack上で行ったDOMOの数値に関する議論は、情報共有ツールのConfluence(コンフルエンス)にストックしていきます。毎週金曜日に行っている全体会議の資料も、DOMOのサマリーをConfluenceにまとめて準備しているんです。

弊社は少し特殊で、1週間の締め日が水曜日なんです。水曜日で締めて、その結果を金曜日の朝の全体会議で報告します。そうすると、「来週どう動くか」というのがその日に固まるので、次の週に動きやすいんですよね。

キャンペーンでもデータを活用し、検証を重ねる

最近実施した施策で言うと、しばらくアクセスしていなかった人に、一定のポイントを配るキャンペーンを実施しました。

これでどれだけの反応があるのかというのを、何度か試してみたんです。すると、配ったポイントのコストがどれくらいの日数で回収できるのか、数字を見ていてわかったんです。こういったことがわかると、「どんどんやっていこう」という意思決定もできますよね

この施策は、数値を見ずに「まずは試してみよう」と思っただけなんですよね。最初の仮説の部分って、必ずしも数値から出てくるとは限らないんです

なので、まずはある金額分のポイントを与えてみる、次はより多めのポイントを与えてみる、というのを順に試してみます。その結果を、しっかりと数値で検証していくことが重要です。

データドリブンを実現する、2つのバリューとは

弊社では、「オープンを当たり前に」と「目的ドリブン」ということを、バリューステートメントのトップに掲げていますデータドリブンな組織には、この2つが重要なんです。

▼ココナラのバリューステートメント

「オープンにしたほうがいい情報を公開する」のではなくて、給与とか人事とか、まずい情報以外は全てオープンにしましょう、というルールなんです。チャットでも、基本的にダイレクトメッセージは使わないようにと言っていますダイレクトメッセージが来たら注意することもあります(笑)

やっぱり失敗って怖いので、情報はクローズドにしたがるんですよね。私もそうだし、誰でもそうなんですよ。ですが、そこはオープンにするのを当たり前にしておかないと、いつか組織が壊れると思うんです。なので会議の資料はすべて、Confluenceに残します。

また、もしその資料に目的の記載がなければ「目的が書いていないんだけど」と注意し合っています目的があいまいだったり、検証方法が先に決まっていない施策なんて、ダメじゃないですか成果というものは、達成状態と、どうやって検証するかがまず決まっていないと、何をやっても意味が無いんです

逆に、目的と情報さえ共有されていれば、まともな人はそれでだけで判断できるので、自由な組織が作れます。なるべく自由にできるなら自由なほうが良いし、私たちは今後も、そういったインターネット的な自律・分散・協調的な組織でありたいなと思います。(了)

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