• 株式会社サイバーエージェント
  • UIUX Lab 代表
  • 鷲山 優作

説明できないデザインは、デザインではない。CAゲーム事業が目指す、デザイン組織とは

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〜「スマートフォンで”夢中”を体感させるゲーム作り」を掲げ、サイバーエージェントが設立した「UIUX Lab」。「ビジネス的な価値」を理解するデザイナーを育成するなど、デザイン組織のあるべき姿を大公開〜

競争が激化し続けるスマートフォン向けゲーム市場。そんな中、株式会社サイバーエージェントは今年、ゲームに最適なUI/UXを考える専門組織「UIUX Lab」を設立した。

▼スマートフォン向けゲームに最適なUI/UX研究をする専門組織、UIUX Lab

UIUX Lab

UIUX Labは、サイバーエージェントグループ各社の第一線で活躍するUI/UXデザイナー7名で構成され、制作するゲームのクオリティ向上と、デザイナーの育成をミッションとしている、プロのデザイナー集団である。

その組織を率いるのが、「説明できないデザインは、デザインではない」と語る、代表の鷲山 優作さん。今回は同氏に、「ビジネス的価値」を高めるための、デザイン組織のあるべき姿についてお話を伺った。

競争の激しいゲーム市場で勝ち抜くため、「UIUX Lab」を発足

私は、雑誌のDTPやポスターといった紙媒体のデザインや、Webデザイナーを経て、2011年にサイバーエージェントグループの株式会社グレンジに入社しました。モバイル向けアプリの制作からはじまり、現在はスマホ向けゲームアプリのデザインを担当しています。

サイバーエージェント UIUX Lab 代表 鷲山 優作さん

最近では、スマホ向けゲームの市場も、さらに競争が激しくなっています。コンシューマーゲームを作っている会社もどんどん参入してきていますし、私たちは「ゲーム開発」という分野ですと、まだまだ後発です。

そのような環境の中では、組織力を活かして、全員が全力でサービスのクオリティを上げていかなければ、勝っていくことはできません。

そこで、スマホ向けゲームに最適なUI/UXを考える専門の組織、「UIUX Lab」を立ちあげました。グループ会社全体が作るサービスのクオリティを上げ、成功の確度を上げていくことがミッションです。

デザインを強くするには、第三者として「俯瞰」できる人が必要

UIUX Labは、サイバーエージェントグループの中でも、ゲーム事業を展開する11社を横軸で横断する組織です。現在7名のデザイナーが在籍していますが、全員がグループ会社のいずれかに所属していて、各社でのプロジェクトと兼務という形で携わっています。

活動内容をわかりやすく表現すると、基本的にはUI改修です。新規プロジェクトのUIを提案することもあれば、既存ゲームのプロデューサーから、「この戦闘シーンをどうにかしたい」といった依頼をもらうこともあります。具体的にどのプロジェクトに取り組むかということは、週に一度の定例ミーティングで決めています。

サイバーエージェント UIUX Lab 代表 鷲山 優作さん

UI改善の場合であれば、まずはプロデューサーや現場のデザイナーに、プロジェクトの趣旨やモックなどをすべて共有してもらった上で、どこを直したいのか、意見を吸い上げます。

そして一旦、UIUX Labのメンバー各自が持ち帰って、ひとりで全ての改善案を考えてきます。それを持ち寄ってすりあわせ、最終的に1つの案にブラッシュアップします。そのときにはグラフィックもきれいに作りますし、演出が必要であれば動画も作ります。

改修前と後では、明らかにクオリティが変わります。というか、変えないといけないというプレッシャーの中で取り組んでいます。例えば、キャラクターの配置を少し変えて臨場感を持たせるだけで、ワクワクする度合いが全然変わったりするんです。

アプリを作っていると、どうしても自分の世界に入り込んでしまって、そのまま突き進みがちになってしまいます。そこで、第三者である私たちが入り、俯瞰することで、シンプルな表現を提案するんです。

「ビジネス的な価値」を理解できるデザイナーを育てる

デザイナーの育成も、UIUX Labの目的のひとつです。

サイバーエージェント UIUX Lab 代表 鷲山 優作さん

まず、デザイナーが出せる「成果」には、「ユーザーにとって素晴らしい体験を創出すること」と、「ビジネス的な成果を生み出せること」の2軸があると思っています。

もちろん、ユーザーに素晴らしい体験を届けられるかどうかが一番重要です。ただ、それだけにとどまらず、そのプロダクトが持つビジネス的な価値も生み出していけるデザイナーが、本当に良いデザイナーだと考えています。ですので、KPIやゲームの狙いなど、ビジネスに関わる最低限の情報については、デザイナーにも押さえてもらうようにしています。

成長するデザイナーは、「デザインは人に見せるベき」だと知っている

デザイナーが育つには、育成方法以外に、本人のマインドも重要だと思っていて。

実は、デザイナーの中には、自分が作ったデザインやプロダクトに対して意見を貰うことに対してもろい人も多いんです。

サイバーエージェント UIUX Lab 代表 鷲山 優作さん

もちろん、意見する人はプロダクトのことについて指摘しているのですが、なんだか人間性を否定されているみたいに感じてしまう人も多くて…。

ですが本当は、客観的な意見を聞けるデザイナーの方が、デザイン、本人のスキルともに、良くなっていくと思うんです。

だから弊社では、「人に自分のデザインを見せることで、より良くする」という考えを大切にしています

例えば、私たちが作ったデザインの改修案は、担当したプロジェクトメンバーにのみ共有するのではなく、社内のメーリングリストで全体に送ります。その宛先には、「改修前」のデザインをした人も含まれています。

私たちの改修案には強制力は無くて、あくまで提案なのですが、元々担当していたデザイナーも、素直に受け入れてくれることが多いです。それも、「見せることでより良くする」という文化が浸透しているからだと思います。

「説明できないデザイン」は、デザインではない

それと、出てきたデザインに対して「なぜそのデザインになったのか」と聞くことも重要です。UIUX Labで改修案を話すときにも、作成者であるデザイナーには必ずこの質問をします。

サイバーエージェント UIUX Lab 代表 鷲山 優作さん

そして返答に2、3秒困っていたら、絶対にそのデザインは止めます。説明できないデザインは、デザインではないので。

たとえ小さなボタン1つでも、何らかの理由があって、そこに存在しているんです。だから、私たちが出す提案資料にも、すべてのデザインに対して理由が書かれています。

例えば「Prott(プロット)」のようなツールで作ったプロトタイプの中にも、「なぜそのデザインになったのか」をメモとして書き残しています。ペーパーモックやグラフィックだけを見せて「この方が良いでしょ」と言っても、人はなかなかピンとこないんですよ。

本当に小さなことでも、どんな人のために、どういった目的でそうしているのか。市場の状態や、プロダクトを取り巻く環境もすべて考えた上で「これが良い」と説明できると、良いデザイナーだなと思います。

「ロジカルな」UXデザインを学ぶ

ゲームは、とてもアーティスティックなものだと思われがちで、誰かの天才的なひらめきで作っているイメージを持たれる方もいます。ですが、実際にはロジカルに組み立てられている部分も多く、計算された面白さに裏打ちされています。

そのノウハウの一つに、「ゲームニクス」というものがあります。これは、ファミコン時代から任天堂の作品などに関わったゲームクリエイター、サイトウ・アキヒロ氏が提唱する、人を「夢中にさせる」ノウハウです。

ゲームニクスでは「直観的で快適なインターフェイス」「マニュアル不用の操作理解」「はまる演出」「段階的な学習効果」「リアルとバーチャルのリンク」という、5つの原則があります

サイバーエージェント UIUX Lab 代表 鷲山 優作さん

最初の4つに関しては、あらゆるWebサービスに応用が効く考え方だと考えています。最後の「リアルとバーチャルのリンク」ですが、これは特にゲームの場合に重要になってきます。

ゲームは完全に仮想現実の世界ですが、それをプレイしている人は、現実の世界にいます。これはどういうことかというと、その仮想の世界でゲームを行う体験が、現実の世界で友達と遊ぶことの価値を上回らなければならないということなんです。

これを考えると、仮想の世界で完結させるのではなく、友達と一緒にプレイするなどの「リアルとの結びつき」がないと、ユーザーを惹きつけるのは厳しいんですよね。

UIUX Labでは、サイトウ先生をアドバイザーに迎え、隔週で直接学んでいます。

重要なのは「目的」 チームを横断し、様々な取り組みを続ける

サイバーエージェントグループで、ゲームに携わる11社が所属しているSGE(Smartphone Games & Entertainment)事業部には、UIUX Labに限らず、会社を横断する組織がたくさんあります。各社の強みを尊重しながら、失敗やノウハウの共有、スキルアップのための育成など、横断的に行ったほうが効果的なものに関しては、横軸の組織を通じて実施しています。

例えば、私が関わっている「サバ艦」もそのひとつです。

サバ艦は、新規サービスのヒット確度を上げるために、各セクションのスペシャリストが集まって、どんどん意見交換していくプロジェクトです。その中でもいろいろな施策を運用しているのですが、最近うまくいった試みとして「サバモック」というものがあります。

「サバモック」は、開発中のゲームのペルソナに近しい人を、社員を中心に各社からアサインして、実際にプロトタイプを触ってもらい、点数をつけてもらう試みです。

▼サバモックの採点基準

サバモックの採点基準

最初は手探りだったのですが、繰り返すうちに信憑性が高いことがわかってきて。冷静な判断を下すための、ひとつの指標になってきました。

▼ペルソナに近い社員による、プロトタイプの点数評価

ペルソナに近い社員による、プロトタイプの点数評価

このように弊社では、よりクオリティが高く、ユーザーに求められているゲームを開発していくために、様々な試みをしています。

このような「横軸」で動く組織は、うまくいかないことも多いと思っています。

しかし、「組織を作る」ことを目的に置かず、そこで何をするのか、どういう目的を果たすのかといったことを、メンバーがしっかりと理解し、周りを積極的に巻き込みながら推進していけば、上手く機能するんです。

今後もUIUX Lab含め、様々な取り組みを横軸で行って、ユーザーの方々に大きな価値を届けられるゲームを作っていきたいです。(了)

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