• ラクスル株式会社
  • 人事・総務グループ マネージャー
  • 河合 聡一郎

採用は全社課題!社員1人ひとりが責任を持つ、ラクスルのリファラル採用とは?

〜優秀な人を連れてこれる人が評価される。リファラル採用を全社的に行うラクスルが、組織を成長させるための採用戦略から組織創りまで大公開〜

企業の成功にはさまざまな要因があるが、なかでも共通して言えることのひとつが「人」ではないだろうか。

近年ベンチャー企業は、リアルとITとを融合した事業モデルを持つことも多い。すると必然的に、多様な分野のプロフェッショナルが集まることになる。そして、そうした会社は、組織創りもまた複雑になる。

シェアリングエコノミーをテーマに、印刷会社の空き時間を活用してインターネット上で名刺やチラシを発注できるネット印刷の「ラクスル」や、運送会社の空き時間を活用し、物流のマッチングサービス「ハコベル」を展開するラクスル株式会社もそういった企業の一つだ。

様々なスタートアップの創業に携わり、ラクスルも創業メンバーとしてジョインしてきた人事マネージャーの河合 総一郎さんは、「事業創りは仲間創り」と語る。

※肩書きは取材時のもので、現在は新規事業・ハコベルのセールスから組織創りなどを担当しています。

スタートアップで気がついた。事業や経営に必要なのは「人」

現在、私はラクスルにて、人事部のマネージャーとして、採用を中心に制度づくりを含めた「組織創り」を主に担っています。

「人事」とは、一般的に採用や評価制度構築・運用や労務など幅広い仕事がありますが、一番の本質は「事業を成長させるための組織創り/運用に関わるすべて」だと思っています。

以前、もう8年ほど前になりますが、あるスタートアップの創業を経験しました。今では社員数百人を抱えている会社ですが、その時に「人が事業を創りだす源泉だ」と感じたのです。

最近では、色々なところから組織創りに関して相談を受けるようになってきたのですが、事業内容を聞いてその会社に適した組織体や採用の在り方などをお話させていただいています。

多様な人が集まるからこそ、バリューを定義することが重要

弊社はビジネスモデル上、組織における機能も様々で働いているメンバーのバックキャリアもバラエティに富んでいます。

インターネットの会社なので、サービスを創りを担うWebエンジニア、プロデューサーやディレクターはもちろん、事業ドライブに必要なマーケター、印刷会社との交渉を行う生産管理チームや、お客様に寄り添うカスタマーサポートチームもいたりします。

それぞれ雇用形態もバラバラですし、仕事の内容や成果の定義も違います。それらを一つの「組織体」として融合し、まとめていかなければいけないため、常に最適なバランスを考えていく必要があります。

多様な人が集まるほど、ビジョンへの理解や想いにも差が出ます。共通の文化を持つことが難しくなっていくんですね。そこで、「共通認識」としてきちんとビジョンやそれに紐づくバリューを定義し、行動規範に落とすことが重要かなと思います。

ラクスルでは「ラクスルスタイル」と言う、6つの行動規範を作り、社員全員に共有しています。社内合宿では、メンバーに繰り返しこの「ラクスルスタイル」を伝えて浸透を図りました。今は、採用の基準としてもそこが合致するかを見ています。

事業創りは組織創り。経営陣のコミットは必須!

組織創りの入り口である採用活動においては、人事として、「自社に加わってもらいたい優秀な人材」「活躍できる人材」を「どのような時間軸で採用するか」を大きなテーマとしております。

現在は、パフォーマンスやカルチャーフィットが高い人材が多いということで、ダイレクトリクルーティングとリファラルリクルーティングを主な手法としています。全社員の約9割がいずれかの経緯で入社しています。

採用活動自体は、もちろん組織を創り、強くしていくためですし、何よりも事業を成長していくためのプロセスだと思います。なので、事業創りと組織創りは切り離せないですし、経営陣の採用へのコミットはなくてはならないものだと思います。

リファラルリクルーティングに成功されている企業さんは社内外への情報発信もですが、何よりも経営陣が優先度高く、積極的に採用に関わっていますね。そして、自分たちでも沢山、あらゆるネットワークを駆使して候補者を連れてくる。実際に弊社も経営メンバーのコミットメントは相当高いです。社員紹介の大多数は経営陣の紹介経由が多いですね。もちろん、私自身も連れてきますよ。

採用の進捗管理という意味では、週に1度、経営陣を交えて採用MTGを実施しています。採用数やその打ち手の議論はもちろん、組織の方向性や課題などについても共有しあい、滞ることなく採用活動を行うことを目的としています。また、情報共有には「Slack(スラック)」などのツールを使って、リアルタイム性を重視して、スピード感も損なわないようにしています。

採用活動に全社を巻き込んで取り組むためには?

採用活動を全社に意識してもらうために様々な施策を考えて、取り組んでいます。もちろん、経営メンバーにはより一層の組織創りへのコミットが求められます。

組織創りにどのように貢献しているかを評価したり、社員紹介を促すような情報のシェアを続けています。

社内外への情報発信という観点では、「Wantedly(ウォンテッドリー)」をうまく活用しています。広報担当にはインタビュー記事を作成、発信してもらい、募集職種の部門に携わる人たちには管理画面の閲覧権限を渡していて、自分たちで募集ページを作ってもらったり、スカウト送信をしてもらっています。

もちろん、最初からうまくはいきませんので、スカウトの送信用のテンプレートを用意したり、面談から面接に来ていただくケース、福利厚生を説明するケースなど候補者とのコミュニケーションを円滑にするための簡単な勉強会を開いたりと、主体的な採用活動をフォローするための仕組み創りもしてきました。

「見える化」することによりブラックボックスをなくす

会社全体で採用活動をしている以上、できる限り現状はシェアして、「今どんな募集があるんだっけ?」「進捗はどうなっているんだっけ?」を減らすことも大切だと思います。ですので、見るべき指標をデータ化して、毎週の全社的な朝会で報告しています。

採用って、ブラックボックスになりがちですよね。どの募集がオープンなのかわからなかったり、急に人の紹介を頼まれたり…。そういった事態を防ぐために、「週報」で会社としての採用進捗を見える化しています。

具体的には、全体の進捗状況に加えて、募集しているポジションや、それぞれのエントリー状況、個々人のスカウトの送信やその返信状況、社員紹介の進捗状況、セットしている面談数などを共有しています。細かく指標も立てていて、それらに対してどれだけミートしているかも見ています。

こうすると、採用に対しての興味はもちろん、それぞれの活動状況や、例えばスカウトなら誰が送ると反応が良いのかもわかったりします(笑)。センシティブな情報ももちろん一定数ありますが、精査した上で出すことで、社員の紹介が増えたり興味を持ってくれたりと、良い流れをつくれるんです。

全社的な採用活動では、社員とのコミュニケーションを丁寧に

ダイレクトにしてもリファラルにしても、社員の協力なしでは成し得ません。そのため、メンバーとのコミュニケーションは、積極的に取るようにしています。

残念ながら不採用となった場合でも、紹介してくれた方に丁寧に理由や背景を伝えて、納得してもらうことが大切だと思います。現場と経営陣の間で採用においてのギャップがどこにあったかなどを、出来るだけ細かく伝えるようにしています。

これらは特効薬的な手法ではないかもしれませんが、自社ならではの成功要因もあるので、シンプルに様々な施策を継続していくことが重要だと思います。

ネットとリアルが融合するビジネスを展開している弊社では、様々な役割が必要であり、同時にそれは多様な組織体となっていきます。中長期でみたときに、それらを担う社員が活躍できる環境創りを担っていければと思います。(了)

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