• 株式会社IDOM
  • 執行役員 新規事業開発室長
  • 北島 昇

オープンイノベーションはなぜ失敗する?「足りないもの」を探す、IDOMの事業開発手法

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〜100年に一度といわれる大変化に見舞われている自動車業界。その渦中にいるIDOMが実施する、「新規事業開発」「オープンイノベーション」の全貌とは〜

中古車の売買で知られる、株式会社ガリバーインターナショナルは、2016年7月15日、未来へ「挑む」という意味を込めて、社名を株式会社IDOMへと変更した。

直後の8月に限定先行リリースされた、月額定額制で車を自由に乗り換えられる新サービス「NOREL(ノレル)」をはじめ、同社は複数の新規事業を構想中だ。その事業開発には、「オープンイノベーション」という手法も用いられている。

同社で新規事業開発を統括している、執行役員の北島 昇さんは、オープンイノベーションを失敗させないためには、「自分たちは何者で、どこに行きたくて、そのために何が足りないか」を明確にすることが重要だと語る

今回は、北島さんに、新規事業開発の背景と方法論から、オープンイノベーションの運用ノウハウ、そして今後の展望まで、幅広くお話を伺った。

激動の自動車業界で感じる、「危機感」

私は2007年に、IDOM(旧ガリバーインターナショナル)に入社し、人事、経営企画、マーケティングなどの部署を経て、現在は執行役員として、新規事業開発室の室長を務めています。

IDOM 北島 昇さん

弊社が新規事業に取り組んでいるのは、クルマの「自動運転化」と「サービス化」という大変化の中で、ものすごい危機感を感じたからです。

「自動運転」「クルマのサービス化」で売買ビジネスは消滅?

配車サービスのUberが登場したり、DeNAがカーシェアリングサービスに進出するなど、クルマを「所有」するのではなく、必要な時だけ利用する「サービス化」の発想が盛んになっています。

また、Googleも自動運転車の開発を主導していたりと、最終的には「自動運転車」を「サービス」として利用する世界がくるかもしれません。自動車業界に、GoogleやDeNAといった、IT業界出身の競合が現れ、ルールチェンジを起こしつつあるんです。

これは、弊社の主力ビジネスである「中古車売買」を根幹から揺るがす危機です。そのため、弊社では現在、経営陣が率先して、本気で新規事業に取り組もうとしています。22年続いた社名を「IDOM」に変えてしまうところに、その本気が現れていると思います。

新規事業開発の出発点は、既存事業の「再フレーミング」?

ゼロから新規事業を開発するため、まずは自社ビジネスの「再フレーミング」、つまり、捉え直しをしました

IDOM 北島 昇さん

新規事業は、自社の既存事業となんらかの連続性が無いと、「私たちがやる意味」がありません。ですが、既存事業だけ見ていると、新規事業のアイディアは生まれないんです。

そこで、既存事業を新しく、より広い枠組みの中で捉え直す必要があるんです。

弊社の事業は、「実店舗を活用した中古車の売買」でしたが、実は「売買を通じて、クルマの情報とドライバーの情報をつなぐプラットフォーム」だったと、捉え直しました

これにより、既存事業である「実店舗での中古車売買」にこだわる必要がなくなりました。

そして、クルマとドライバーの情報を蓄積し、結びつけるものであれば、ECやC2C、さらには「NOREL」のような定額乗り放題サービスに取り組めると考えたんです。

▼ 「再フレーミング」によって捉えなおされた、既存事業と未来へのロードマップ

自社に無い答えを探す、「オープンイノベーション」

再フレーミング以外にも、新規事業を生み出すためのフレームはいくつか持っています。

しかし、それでも「自社」と「その外」、あるいは「これまで」と「これから」のあらゆる交点を探すには、足りないんです。自社がこれまで取り組んでいないことに挑もうとしているので、答えは自社の中にはないんですよ。

自社からすると盲点となるような余白、いわゆる「Out of Box」と出会うには、やはり外に出るしかありません。そこで昨年から、「Gulliver Accelerator」という、オープンイノベーションの試みを始めました

オープンイノベーション成功の秘訣は「自社定義」にあり

オープンイノベーションの失敗を避ける上で一番重要な事は、事前に「自社定義」を明確にするということです。

IDOM 北島 昇さん

自分たちは何者で、何を持っていて、どこに行きたいのか。そして、そこで「足りないものは何か」をはっきりさせることが必要なんです。

そうすることで、「私たちはこれを提供できます。ここに行くためにはまだ足りないので、これを提供してください」という要求ができるんです。

逆に、自社定義ができていないと、出てくるアイディアも散漫なものになりますし、そのアイディアに対する判断基準も持てません。

弊社の場合だと、持っているのは、実店舗の情報、お客様のトランザクションデータ、そして価格データなどです。

それらのデータを元に、「クルマとドライバーの情報をつなぐプラットフォーム」を作るためには、デジタルプロダクトを作るためのアイディアや実行力はもちろんのこと、技術やアセットなどもまだまだ欠けています。その部分を、ベンチャー企業と組んで補うことにしたんです。

対等でなければ、オープンイノベーションは成り立たない

また、オープンイノベーションを実現するためには、フェアであること、対等の立場であることも大切です

IDOM 北島 昇さん

オープンイノベーションでは、当事者の双方が自らの強みを持ち寄り、自由に議論をする中で、それぞれのバリューを発揮してイノベーションを起こしていくべきです。

ですが、フェアさや対等さを大切にしなければ、その理想はすぐに崩れ、「うちのソリューションを導入してくれ」という営業の場になったり、「これ欲しいから作って」というような受発注関係になってしまいます。これでは、イノベーションは実現できません。

「Out of Box」との出会いから、イノベーションを起こしていく

今年からは「Gulliver Accelerator」をイベントとして実施することはやめ、「Anytime Acceleration」というコンセプトで常時門戸を開いています。

自社定義をはっきりさせること、つまり「行きたい場所」と「持っているもの」を明確にし、そこに欠けているものを外に求めるというのは、言わば経営そのものです

今後とも広い意味での「オープンイノベーション」を大切にして、自社の中には無い「Out of Box」と出会いながら、激動の自動車業界の中で、変わり続けることで、変わらないポジションに居たいと考えています。(了)

▼株式会社IDOMの過去のインタビュー記事はこちら

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