• 株式会社ホットリンク
  • 執行役員 経営推進本部長 兼 CHO(最高人事責任者)
  • 濵野 智成

ダイレクトリクルーティングに100%シフト!採用コストを80%削減した、その手法とは?

〜ビズリーチを活用したダイレクトリクルーティングで、採用コストを80%削減した手法と、「惹きつけ」に特化した採用プロセスを紹介〜

ソーシャルクラウドサービス事業を手がける、株式会社ホットリンク。同社は、エージェントに依存していた採用形態を、「ビズリーチ」を活用したダイレクトリクルーティングと、社員紹介のリファラルリクルーティングに100%切り替えた。

優秀層へのダイレクトリクルーティングにチャネルを絞り、ペルソナを明確にして刺さる求人やスカウトを作成することで、選考の通過率が上がり、採用コストは80%も削減されたという。

また、採用プロセスで重要な役割を占める、面接への取り組みも特徴的だ。

私たちからは何も見極めません」という一言から始まるその面接では、求職者に合わせて「いかに惹きつけるか」を強く考えるという。その手法は、マーケティングや営業に通ずるものがあると、同社CHO(Chief Human resource Officer)の濵野 智成さんは語る。

今回は、濵野さんに、ビズリーチを使ったダイレクトリクルーティングへの取り組みから、新しく始めた「TRUNK(トランク)」を活用した新卒採用まで、詳しくお話を伺った。

コンサルタントとしての付き合いから、CEOに誘われ入社

私は、経営推進本部長兼CHO(Chief Human resource Officer)として、経営企画や人事を中心とした、コーポレート機能やグローバル事業の統括責任者をしています。

弊社は、2016年からダイレクトリクルーティングに力を入れています。現在では、エージェントからの紹介を完全にストップし、採用の70%が「ビズリーチ」を主に活用したダイレクトリクルーティング、残り30%はリファラルリクルーティング(社員紹介)という比率になりました。

実は、私もダイレクトリクルーティングで入社したんです。前職はコンサルティング会社で、人事や組織改革を中心としたコンサルをしていて。そのクライアントの1つがホットリンクだったのですが、2014年の末に、CEOから「どうしてもうちに来てほしい」と声をかけられました。

最初は無理ですと断ったのですが、何度もお誘いの声をいただき(笑)。最終的には、「これからグローバル展開をしていくために、どうしても力を貸して欲しい」と説得されて入社しました。

エージェントに依存した採用から、ダイレクトリクルーティングへ

コンサルで入っていたときから採用活動には関わっていたのですが、2015年1月当時、採用チャネルはエージェントがメインでした。

最初の半年ほどは、エージェント活用の方法をブラッシュアップしていたのですが、やはりフィーの高さが課題になって。そこから、ダイレクトリクルーティングへの取り組みを始めました。

始めてみると、費用対効果はすごく良いし、アプローチできる人のレベルも高いことがわかって。あらゆる採用手段を試した後、2016年の1月からは、エージェントを使わず、ダイレクトリクルーティングに一本化しようという取り組みを進めています。

主な媒体としては、ビズリーチを活用しています。海外人材を採用するときにはLinkedInを使ったり、Facebook経由で知り合いに声をかけることもありますが、やはり国内の人を探すとなると、ビズリーチの人材数が圧倒的ですね。

他の媒体だと、戦力化するのに時間がかかりそうだなと思う人も多いんです。そう考えると、人件費を抑えて、いまいちな人を2、3人採るよりも、ビズリーチでとびきり優秀な人を1人採るほうが、費用対効果は全然高いんですよ。

経営戦略に基づく採用戦略を立案し、成果が出るまでPDCAを回す

採用を成功に導くためには、経営戦略や事業戦略と、人事・採用戦略が一貫していることが重要です。そのため、弊社では経営企画と人事の機能を一体化させています。

戦略を元に人員計画を作成した後は、求めるスキル、年齢、どのような業務経験を有しているか、どういう会社に勤めていたのかという「ペルソナ」を、事細かに固めていきます。

ペルソナができたら、求人とスカウト文をいくつか作り、A/Bテストをしながら文章をどんどん変えていきます。

このA/Bテストの繰り返しがとても重要です。ダイレクトリクルーティングがうまくいかずに諦めてしまう企業も多いと思うのですが、成果が出るまで改善活動を繰り返すことが成功のポイントです。

採用したい層によって、響くキーワードって違うんですよね。例えば、弊社はビッグデータを扱っているので、エンジニアには「世界最大級のビッグデータを解析するプロダクトを開発できますよ」という求人を打ちます。

逆に、テスト基盤の強化をするため、かっちりとした金融システムを作っていたようなエンジニアが欲しいときには、今まで彼らが経験できていない「自社プロダクトを作れます」という打ち出し方が響きます。

このように切り口を変えた求人をいくつか出し、母集団の反応率を見ながら、PDCAを回しています。

「私たちからは何も見極めません」。惹きつけ特化の選考プロセス

ターゲットとなるペルソナを細かく先に固めているので、スカウトを送って選考に進んだ人の選考通過率もかなり高いです。そのため、面接では基本的に「惹きつけ」を目的にしています。

例えば、「あなたに対して本気ですよ」ということを示すためにも、基本的に面接は役員だけなんですよ。1次はCHOの私が出て、2次はCOO、3次がCEOという体制で面接を組んでいます。

また、一次面接では、「私たちからは何も見極めません」と最初に伝えています。私たちはどんな会社で、どこを目指していて、どんな課題を抱えているのかということをプレゼンして、候補者に見極めてもらうんです。

具体的な面接の流れとしては、まず最初に弊社のスタンスとして、「個人が自己実現をできる場所=会社の役割だ」と伝えます。

そのため、「もし、〇〇さんが入社して、やりたいことができるなと思ったら一緒にやりましょう。もし無いなと思ったら、帰っていただいて結構です。」と伝えています。

そこから、15分くらいで弊社の紹介を行い、その人を一気に魅了していきます。その際には、必ず弊社が抱えている課題も洗いざらい話してしまいます。その課題に対して、嫌だとなってしまう人はそもそも合わないので、良い意味でふるいになります。

逆に、その課題に対してワクワクしてくる人の方が入ってからの活躍も早いですし、入社後のミスマッチが少ないんです。

採用は営業やマーケティングと同じ?

惹きつけができたら、次に30分ほどで、今後のキャリアプランをヒアリングして、弊社の方向性と合っているかどうかを聞きます。そのときに、会社を決める軸が何なのか、他社の選考状況やそのボトルネックは何なのかということも、全部聞いてしまいます。

そこで例えば「活躍している女性社員がいるかどうか」が軸なら、2次面接では女性の部長をアサインしたり、「現場のメンバーが見たい」という人には現場の人をアサインしています。1次面談でどのくらい相手を惹きつけられるかと、今後のプロセスをいかに設計するかがとても重要です。

最後の15分では、候補者の方からの質問にお答えして、1次面接を終えます。

採用って、営業やマーケティングと同じ要素があると思います。

母集団形成時のターゲティングやポジショニングはもちろん、1次面接で会った瞬間に候補者に合わせた1to1のプロセスを設計します。

あとは、営業と同じで、相手の課題によって訴求の仕方を変えていきます。もし他の会社と悩んでいるなら、他社との違いを明確にしながら魅力付けをして、その人にフィットした見せ方をしていくんです。

学歴フィルターに頼りがちな新卒採用には「TRUNK」を

中途の場合だと、キャリアで見極めができるのですが、新卒だとそれが無いんですよね。そうなると、学歴でフィルタリングするしか無くなります。

そこで私たちは、新卒採用に「TRUNK(トランク)」というサービスを使い始めました。TRUNKは、学生が資料作成やコーディングなどの実践トレーニングを受けた後、企業からスカウトをもらう形の採用サービスです。

▼「TRUNK」で受けることができる無料トレーニングの例

TRUNKは一種のトレーニングツールとなっていて、働くために自己研鑽したい学生が登録しているんです。したがって、そこでアプローチできる学生は、就業や仕事に対する意欲が高い人がほとんどです。TRUNKを活用していること自体がフィルターになるんですよね。

実際にTRUNKでスカウトした学生と面接をしてみると、良い意味で仕事に焦っているというのか、「早く仕事したい」と考えている学生が多いなと感じます。

もちろん、もともと仕事への意欲が高い学生も、大学でのらりくらりしていて途中からスイッチを入れた学生も、どちらもいます。ただ、少なくとも「自分で主体的にスイッチを入れている」というフィルターがかかった人が集まっているところを魅力に感じています。

TRUNKに登録している学生は、即戦力とまでは言えなくても、主体的で質問も鋭く、共通言語がすでにできていると思う部分があります。新卒の育成には時間がかかると思っていたのですが、それが解消される気がします。

今は営業系の人材の入社が決まっていますが、引き続きエンジニアも含めてTRUNKでもっと採用していきたいと思っています。

ダイレクトリクルーティングには、「非生産的」なことも重要

ダイレクトリクルーティングに100%切り換えることで、今年度の採用コストは前年度に比較して1/5になり、かつ採用人数は1.5倍になっています

ダイレクトリクルーティングで成果を出すためには、まずは経営陣のコミットが一番重要だと思います。

次に、採用実務者が成果を出すまで改善活動を続けることです。ダイレクトリクルーティングがうまく機能していない会社は、結果が出ないからと言ってエージェントにお願いして楽をしてしまうケースが多いと思うんです。

私自身、求人やスカウトの文言を一個一個訂正したり、ビズリーチを見る頻度も多いです。他の経営陣が面談に割いている時間も多く、経営陣がここまでやる必要があるのかと思うことはありますが、そういった非生産的なことを続けないと良い人って採れないと思うんです。(了)

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