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  • 山本 正喜

理念から始める働き方改革!ChatWorkが様々な社内制度を繰り出すその秘密とは

〜働きやすい企業として知られるChatWork株式会社。経営理念である「Make Happiness」をベースした、ボトムアップな制度作りの舞台裏を公開〜

ビジネスチャットツール「チャットワーク」を運営する、ChatWork株式会社。

同社は、社員満足度調査で高い実績を残すほど、「働きやすい」企業として名を馳せている。

その裏には、2つの拠点から好きなように働く場所を選べる「オフィス選択制度」や、「長期休暇制度」など、働きやすい環境を作るための制度がある。これらの制度は、社員との些細な会話から、ボトムアップで次々と生まれ続けているという。

今回は、同社専務取締役兼CTOの山本 正喜さんに、様々な社内制度を生み出すその仕組みについて、詳しくお話を伺った。

マネジメントはプログラミング言語と同じ?その共通点とは

私は、ChatWorkの専務取締役兼CTOという立場で、プロダクトの開発から運用まで一貫して技術統括をしています。また、兄である代表がシリコンバレーに一家全員で移住してしまったこともあり、国内の組織全体を見る役割も兼ねています。


今の主な役割はマネジメントですが、エンジニアがよく言うように私も「マネジメントをやりたくない」と思っていました。でも、マネジメントとプログラミング言語が似ていると感じる転換期があって、そこから興味を持つようになったんです。

プログラムが処理の結果をアウトプットするように、会社では人が結果をアウトプットして、組織ができあがる。「マネジメント」というプログラミング言語があるという感覚ですね。

ただ、人間の場合は「モチベーション」という隠しパラメーターがあって、それによってアウトプットが変わってくる。そのモチベーションを高め、うまく人を組み合わせて組織を作っていくのが、マネジメントというプログラミング言語なんだと思います。

些細な社員の声も見逃さず、制度を作る

社員のモチベーションを高めるためにも、「働きやすい会社を作る」ことは重視しています。例えば、東京・大阪・シリコンバレーの2つのオフィスから、自由にオフィスを選んで働ける「オフィス選択制度」や、月に一度、上司と部下でランチを食べる代金を支給するといった制度を作っています。

このような制度はトップダウンで作っているものではなく、基本的には従業員から上がってきたものなんですね。

制度への意見は、ランチの場で上がってくることが多いです。例えば、「最近目が疲れています」というような、本当に些細な悩みも話したりします。

じゃあブルーベリーが目に良いらしいから、それを支給しようという話になり、次の日にはブルーベリーが回ってくるんです(笑)。「英語が重要だから学びたい」という話になれば、英語研修が始まったりします。


ほとんどの制度が、そういう社内の小さな悩みや、何気ない会話から生まれているんです。

制度は、ニーズが無くなった時点で、幹部とマネージャーの会議にかけ、廃止を検討しています。そうして廃れていく制度もありますが、それで良いと思っています。

社員の反応を見ながら、良いものは残っていくので、どんどん実践していくことが大切かなと思います。

制度もカルチャーも、すべては「経営理念」から

ただ、全部が全部、制度として取り入れられるわけではなくて、しっかりとした基準があります。それが経営理念です。経営理念が、すべての柱になっています。

私たちは、「Make Happiness」、つまりITを通じて幸せを創り出すということを経営理念にしています。幸せというのが何かというと、心の豊かさです。その心の豊かさは、経済的豊かさ、時間的ゆとり、円滑な人間関係の3つから成り立っていると考えています。

この3つが満たされて心が豊かになることで、Make Happinessを実現できる。この経営理念が社内制度やカルチャーでも貫かれています。

例えば時間的ゆとりで言うと、長期休暇制度を整備していますし、円滑な人間関係という点では、人間関係が悪い人がいたら、みんなで解決しようとします。これは人事評価にも組み込まれていて、チーム内の連携がとれていないと評価が下がってしまうので、マネージャーも頑張るんです。

KPIの設定しづらい制度には、「社員満足度」を活用

このように、気持ちよく働ける環境を整えていますが、制度自体にKPIは置いていません。事業のKPIなら設定しやすいのですが、人に対してのKPIは設定しづらいですよね。なので、社員満足度のようなものが通信簿代わりになるかなと思います。

以前は、リンクアンドモチベーションの社員モチベーション調査というものを定期的に実施していました。

「あなたは会社に満足しているか」という質問に答えてもらったり、スキルのこと、会社の理念などについて、マクロとミクロの両方の視点から、評価するんです。


それぞれの項目について、重要度と満足度で評価するのですが、例えば重要度は低いけど満足度の高い項目なら、それは余剰だと判断できます。逆に、重要度が高くて満足度が低いときは、早急に打ち手を考えないといけません。

こうすることで、従業員のモチベーションのドライバーが何なのかが理解でき、非常に役に立ちました。

事例さえあれば、制度は広まる

弊社のプロダクトである「チャットワーク」は、今では様々な業種の方に使われるようになってきています。最近では、地方の工務店のお客様が使っているという事例もあります。

そのお客様は、それまでは「電話とファックスを使い倒す」という考えでしたが、今ではチャットワークによって働き方が変わっています。そして、チャットワークを周りの人にも進めて下さっているようです。

このように、たとえ変化しづらい業界であっても、事例さえあれば少しずつ広がっていきます。

これは組織の制度作りも同じです。新しいことを始めるには、まずは小さなチームで始めて、事例を作るのが鉄板だと思います。

少しずつ新しいことについての知見を貯めていけば、必ず社内に「詳しい人」がでてきます。そこから、トップダウンで一気に全社で浸透させていく。わからないことあったら「○○チームの○○さんに聞いて」と言えるので、つまずきにくいんですね。


これからも、創業から変わらない経営理念を大事にしながら、立ち止まらずに常に新しいことを取り入れていきたいと思います。(了)

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