• 株式会社サンライズ
  • D.I.D.スタジオ CGプロデューサー
  • 井上 喜一郎

アニメ制作サンライズがデジタル化で働き方を変える!制作管理ツール「SHOTGUN」とは

〜アニメ制作会社サンライズが、プロジェクト管理ツールを導入し、「Excel管理からの脱却」「バンクチェックの効率化」などを実現した事例〜

「機動戦士ガンダム」シリーズなどのアニメ制作を手がける、株式会社サンライズ。

同社は、アナログなやり取りが多いと言われるアニメ制作に、プロジェクト管理ツール「SHOTGUN(ショットガン)」を導入した。現在は、CGを専門に取り扱うD.I.D.スタジオで主に活用している。

それにより、複数のExcel管理からの脱却、スケジュール管理の見える化、レビューの効率化など、様々な恩恵が受けられたという。

▼クリエイティブに特化したプロジェクト管理ツール「SHOTGUN」


勘や経験を頼りにしていたアニメ制作の世界で、「制作管理のデジタル化」によって働き方を変え、よりクオリティを高めることに注力できると、D.I.D.スタジオでCGプロデューサーを務める井上 喜一郎さんは語る。

今回は、井上さんに詳しいお話を伺った。

アニメの進行管理は、Excelを行ったり来たり…

弊社は、CGにも積極的なアニメーション制作会社です。D.I.Dスタジオでは、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」や「アイカツスターズ!」を制作しています。

私は、18年ほど前に新卒で入社しました。はじめの頃は、CGの作業者として、ドラム缶や小物のモデリングをしていましたね。そこからCGのディレクターを経て、現在はCGプロデューサーとして、スタジオ全体と作品のCG制作管理をしています。


アニメは作品にもよりますが、一つひとつのカットを完成させるために、絵コンテ・原画・動画・仕上げ・撮影など、5つほどの工程があります。また、それぞれのカットを、外部の会社やクリエイターさんに依頼して、それを制作進行が取りまとめています。

その管理には、まだまだExcelなどの表計算ソフトを使っている会社が多いですね。弊社も、複数のExcelと、自社ツールを行ったり来たりして混乱していました。

▼複雑化するExcelの管理票


その混乱を解消するために、何かツールを入れる必要があるとずっと考えていたんです。そんなときに参加したCGのイベントで、プロジェクト管理ツールの「SHOTGUN(ショットガン)」を知りました。

そして2015年頃から、実際にひとつの作品で使い始めました。

アニメ制作を効率化する、SHOTGUN

SHOTGUNを導入して、まずは香盤表(※1)をExcelから移行しました。

(※1)制作話数、カット、担当者、登場キャラクターなどを管理した表

「それくらいExcelでも管理できるんじゃないか」と思われるかもしれませんが(笑)。私の所属するD.I.D.スタジオはCGの専門部門で、15箇所ほどある社内スタジオから、各作品のCGが集まってきます。すると、並行制作する作品がとても多くなりまして。

1人のCGスタッフは10話分くらいを常に担当していますし、制作は複数話を並行して進めないといけないので、進行状況の把握が難しくなるんです。

SHOTGUNなら、各工程やスタジオごとに管理していたExcelを一元化できます。また、作品をまたいで管理できるので、例えば1人のCGスタッフが、どのくらい忙しいのかが、客観的にわかるようになりました。

▼カットの管理も簡単に

担当、アセット、話数。いろいろな角度から管理できる

アセット(モデル)のスケジュールも、SHOTGUNで管理するようにしました。

誰がモデリングを担当していて、いつ完成するのかというものですね。SHOTGUNは、Excelの条件付き書式のように、「この条件なら列を赤くする」というような設定ができます。もちろん真っ赤になると焦ります(笑)。

▼スケジュールが遅れていることも明確に

アニメ制作は、多くの外部のクリエイターさんにお仕事をお願いするので、そのスケジュール管理にも使っています。担当者ごとの進捗がわかるので、「そろそろ終わりそうだから次の仕事を割り振ろう」と、空き時間を作らないように判断できます。

また、これは正式な使い方ではないかもしれませんが、担当者の作業内容だけではなく、話数ごとのマイルストーン(編集や音響などの作品スケジュール)も、タスクとして登録を行い活用しています。そうすることで、ガントチャート上で各話のマイルストーンや進み具合を一覧で確認できるんです。

▼話数ごとの管理も簡単に

修正指示もSHOTGUNで。「記憶を頼りに」は終わり

SHOTGUNは、レビューにも活用しています。アップされたアニメーションに、コマごとに「ここをこう直して」と、修正指示を入れることができるんです。

以前は、Photoshopや紙で書いたり、口頭で伝えていたりと、手間がかかっていたんですよ。複数のソフトを行ったり来たりしていたので、今はかなり便利になりましたね。

リテイクを出す人も、修正指示を書くことによって頭の中が整理できますし、指示も具体的になります。

▼リテイクの指示が明確に

古いテイクのログが残るので、「あのとき何を言ったかな」ということも無くなります。カットによっては、テイクが10を超えるものもあるので、一番最初はどうだったのかを、すぐに振り返ることができます。記憶を頼りにすることがなくなりました(笑)。

アニメ制作に欠かせない「バンクチェック」も簡単に

アニメ制作で、以前作ったカットを流用することをバンクといいます。うまくいくと、100カット中の40カットくらいのカットがバンク流用できることもあります。

このバンクを検索する作業を、バンクチェックというのですが、例えばTVシリーズの「バトルスピリッツ」は7年分の蓄積があるため、累計のカット数は21,000カットくらいになります。

以前は、1話のバンクチェックをするのに、1人専任で2日くらいかかっていたんです。

SHOTGUNは検索機能が強力なので、バトルスピリッツでは、このバンクチェック作業を3割の時間に短縮できました。

長い間バンクチェックをしていた人は、「何年前のあの話数でこのカットがあった」というのを覚えていたりするのですが、それは経験によって左右されてしまいます。この作業が、経験の浅い人でも同じようにできるようになったのは大きいですね。

カットをつなげる「Screening Room」で流れの確認も簡単に

「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の制作では、カットによって工程が複雑で、1つのカットに複数のCGスタッフや制作が関わることもありました。

SHOTGUNは、Activity上でやりとりされた情報を、担当スタッフが常に共有できるので、非常に便利でしたね。これが無ければ、納期までに完成できなかったかもしれません。

▼Activity上でコミュニケーションも可視化


「Screening Room」という機能も活用しました。SHOTGUN上にアップしているカットを、全てつなげて再生してくれます。例えば、一連の戦っているシーンについて、フィルタリングして絞り込めば、そのシーンを続けて再生できます。

カットによっては、エフェクトの合わせなど、つなげてみないと分からないリテイクもあります。

Screening Roomは、カットを更新するとリアルタイムで反映されますので、その点も時間短縮に結びつきました。

作成中の大量のカットを自分でつなげて再生するなんて、想像できないですね。

▼カットをつなげて再生できる「Screening Room」

制作管理もデジタル化し、よりクオリティを高めていく

アニメ制作では、カット袋というものにカットごとの手書きの作画や指示を入れて、それを制作進行とクリエイターの間でやり取りしています。このやり取りがデジタルになると、自分が担当している物理的な実感がなく、嫌だという意見もありました。

しかし、実際にSHOTGUNを使い始めてみると、相手のタイミングを見計らわずにやりとりができることをメリットとして感じているようで、次第にみんな使い始めました。

SHOTGUNのメリットって、一言で言うと、「仕事の見える化」なんです。スタッフの仕事量や、リテイク指示などの履歴を見返すことができるので、曖昧にできません。(笑)

ふわっとした作り方をするのではなく、スケジュールを守れるようになりますし、工数を短縮してオーバーワークも防ぐこともできます。SHOTGUNによる恩恵は大きいですね。

アニメ業界では、CGという意味でのデジタル化は以前から起こっていましたが、今後は制作管理のデジタル化も進んでいきます。アナログな業界の中で、SHOTGUNはそこに一石どころか何石も投じているのではないかと思います。

ある種、アニメの作り方、働き方を少しずつ変えていっていると言っても、過言ではありません。

これからも良い作品を作り続けるために、制作管理の可能な部分は効率化し、よりアイディアや絵、CGを制作するクリエイティビティに時間をかけていきたいですね。

※ミクシィの、3Dゲーム制作におけるSHOTGUN活用法はこちら

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