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「出せば売れる」ECは終わった!過当競争時代に、ECサイトが生きのこるには?

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〜日本のECが黎(れい)明期だった頃からECに関わってきた、ネットショップ総研の長山 衛さんが、ECを開始・運営する上での「必要条件」を語る〜

2013年に開始したYahoo!ショッピングの「eコマース革命」や、その他無料サービスの登場で、ECサイトの店舗数はいまや100万店を越えるともいわれている。

そんな時代にECサイトを立ち上げ、成果を上げていくにはどのような条件が必要なのだろうか。

日本のECサイト黎明期から業界に携わり、10年近いコンサルティング歴を持つ、株式会社ネットショップ総研の創業者、長山 衛さん。

今回は長山さんに、ECサイトを開設・運営する際に絶対に考えるべき「必要条件」について、詳しく話を伺った。

Web集客は「釣り」に似ている...?そこからECの世界へ

1996年というネットの黎明期に、ある英会話教室の会社でWeb戦略室に配属されたことで、Webの面白さに目覚めました。

株式会社ネットショップ総研創業者の長山 衛さん

Webでの集客って、釣りに似ていて面白いなと思ったんです。「あの辺りに何かいそうだな」と、仮説を立てて仕掛けを投げて待つところが、Web集客における仮説検証と試行錯誤の繰り返しみたいに感じたんです。

その後、2002年には食品メーカーに転職して、EC事業を立ち上げました。食品は口に入れるものなので、消費者の基準も厳しく、常温・冷蔵・冷凍など配送区分も複雑で、管理も難しい。そんな最も難しいところを押さえておけば、将来ECで天下を取れるだろうと思ったんですよ。

そのEC事業を年商3億円に成長させた後、独立し、2008年にネットショップ総研を創業しました。はじめはEC人材の育成を主要事業としていましたが、最近はECの運用代行やコンサルティングの依頼が増えてきています。

季節性商材で勝つ秘訣は、「売上予測精度」と「ラインの柔軟性」

私は、食品メーカーECの経験から、「季節性商材」を得意としています。おせちやバレンタインなど、ある特定の日付を超えると価値がなくなってしまう商材のことですね。リスクは高いですが、短期間で大きな売上を見込むことができます。

例えば、以前は赤字だった明太子のECで海鮮おせちを販売し、1年目で2,000万円、2年目には2億円の売り上げにまで立て直しました。

このような季節性商材で成功する秘訣は、蓄積されたデータなどに基づいて、高い精度で売り上げを予測することです。そこに自信が持てないと、リスクの高さを前に尻込みしてしまい、そもそも勝負することができません。

それに加えて、製造ラインの柔軟性も重要です。需要が予測を上回った時には、より多くの売上が見込めますし、需要が予測を下回った場合には他の商品を製造すればいいので、リスクを減らせます。

株式会社ネットショップ総研創業者の長山 衛さん

そういった基本を押さえた上で、さらに社会情勢を読むことも必要です。例えば、東日本大震災の次の年のおせち商戦では、多くのメーカーが「今年は売れない」と、製造を絞っていました。

僕は逆張りして、震災の年だったからこそ、正月ぐらいは華々しくと財布のひもが緩む流れを予想し、目論見が当たったんです。ただ、これは実は阪神大震災のときもそうだったので、それを参考にしただけなんですよ。

ECは黎明期が終わり、ニーズを読み取る「マーケットイン」型へ

黎明期からのECの状況の変化を見ると、やはり「マーケットイン」が重要になってきたということを、強く感じますね。

初期のECはやはり、「出せば売れる」、「知ってもらえれば売れる」というところがありました。質も考えずにメールアドレスのリストを買い、無数のセールスレターを送るという、焼畑農業のような発想でした。

それに対して、近年はECが飽和状態になり、ひとりの顧客が何度買ってくれるのか、いわゆるCRMの考えが必要になっています。連作農業の発想というか、顧客を大事にして、何度も買ってもらうという発想ですね。

EC過当競争を生き抜くには、独自商品とブランディングが必須!?

やはり、これだけECサイトが増えると競争が激しいので、いまのECって甘くないんですよ。なのに、いまだ「出せば売れる」といった考えを持っていらっしゃる方も多いです。この競争の中で、ECで成功するために必要な要素がふたつあります。

株式会社ネットショップ総研創業者の長山 衛さん

ひとつ目は、ニーズがあって他社が販売できない、独自性のある商品を持つことです。

わかりやすい例は特許商品ですが、そういった商品の開発力が無い場合は、既存の商品を独自の組み合わせで売るアソートという手法もあります。

そしてふたつ目は、店舗のコンセプトとブランディングができている、あるいはそこに経営資源を投下する意志があるということですね。そのためには、ペルソナをしっかりと設定して考えることが重要です。

どのようなユーザーに価値を提供し、買ってくれたユーザーからどのようにクチコミが広がるのか。そして、どう店舗が認知されていくのかという、ストーリーを設計するということです。

このような要素が無い中で、他と同じ商品を売るのなら、1円単位の値下げ合戦になります。極端に言うと、たった1店舗だけが生き残れる戦いになってしまいます。

ECをうまく運用するには、人材とノウハウも不可欠!

ECを成功させるには、商材だけでなく「人材」と「ノウハウ」も必要です。

人材といっても、単なる作業をこなせる人の頭数ではありません。自分がしていることを自己否定でき、PDCAが回せる人材のことです。

株式会社ネットショップ総研創業者の長山 衛さん

それに加えて、3C分析やRFM分析といった基本的なマーケティングのフレームワークや、商材に合わせて出店先を選ぶことができるといったノウハウがあれば、基本は整ったと言えると思います。

「自分を客観的に見ること」に立ち戻る

細かい戦術もありますが、ECで成功する基本は、別に突飛なことではなく、しっかりとマーケティングをすることなんです。

立ち上げのときはマーケティングをしっかりと行っていた人も、数年すると業務が忙しく、疎かになっていくことが多いです。

すると、隣の店が見えなくなるんです。特に、自分たちがECを運営していると、「他からは買いません」となりがちで、ECサイトを使うことも少ないですから(笑)。

ただ、やはりユーザーからすると、自分たちのECサイトも他のECサイトと並ぶひとつに過ぎません。

株式会社ネットショップ総研創業者の長山 衛さん

なので、やはりユーザーの目線から客観的に見て、他のECサイトがある中で、どうポジションを取っていくのかを常に考え続けること。そういう意味でのマーケティングが、やはり最重要なのだと考えています。(了)

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