• クルーズ株式会社
  • プライスレス本部 新卒採用兼広報PR担当 執行役員
  • 諸戸 友

インフルエンサーを狙った新卒採用!CROOZの「コンバージョン度外視」インターンとは

〜事業会社CROOZが実践する、「採用へのコンバージョン」を考えないインターン戦略。満足度120%のインターンを実施し、同社に起きた変化とは〜

近年、新卒採用のための「インターン」が、企業と学生の大きなタッチポイントのひとつとなり、ベンチャー・大手問わず多くの企業で実施されている。

中でも、ファッション通販サイト「SHOPLIST」などを手がけるクルーズ株式会社(CROOZ, Inc.)は、「新規事業立案インターン」を実施する企業として、尖った学生の間で話題になっている。

そのブランドを確立したのが、同社が2015年に実施したインターン、「XYZ」だ。このインターンでは、重要指標と考えられている「採用へのコンバージョン」を度外視し、参加者の満足度を120%にすることだけを考えたという。

その結果、インフルエンサーとなる学生の集客に成功。クチコミでそのブランドは広まり、今では「インターンの話を聞いて興味を持った」と採用面接に来る人も多いという。

今回は、同社の新卒採用を担当する諸戸 友さんに、インフルエンサーをつかみ、採用ターゲットへアプローチするインターン戦略について詳しく伺った。

3年後の事業ビジョン達成には、新卒採用の戦略見直しが急務

新卒で入社したリクルートの代理店では、営業をしていました。その後、ベンチャーの新卒採用を支援する会社を創業メンバーとして立ち上げ、5年ほど働いたあと、CROOZに入社しました。

入社後にまず取り組んだのは、ブランディング戦略担当として企業理念を作ることです。「”オモシロカッコイイ”をツクル」という現在の理念を、代表の小渕と一緒に作りました。

その後は、3年ほどPRやIR、ユーザーサポートなど、社長室の室長のような仕事をしたのですが、小渕は僕からすると、バケモンのような凄い経営者なんです(笑)。その要望を実現していくのは、毎日つま先立ちして歩いているような感覚でした。

でも、その3年のおかげで、会社にとって必要なことと、僕にしかできないことが見えてきたんです。それが、新卒採用でした。

経営陣が掲げる、とてつもなく大きい事業ビジョンを実現するためには、当時のCROOZの新卒採用の手法では不十分だと感じてしまったんです。

これまでの新卒採用でも、優秀な人材は集まっていました。しかし、イノベーションを起こすような尖った人材を採るための、戦略的な採用はできていなかったんです。

例えば、2007年に新卒で入社し、当時の全ての上場企業のうち、最年少で取締役になった張本というメンバーがいます。彼は、SHOPLISTというファッション通販サイトを立ち上げ、たった3年で150億の事業に成長させました。

▼2007年に新卒入社した張本さんが立ち上げたファッション通販サイト「SHOPLIST」

このような新卒をあと5、6人採用できれば、無理だと思えた大きなビジョンも叶えられると思ったんです。

採れる人材から、採りたい人材へ

僕は、新卒採用に関する知識も経験もあり、そこに揺るぎない自信と覚悟を持っていました。

さらに、経営陣の近くで課題やビジョン、代表の考えを目の当たりにしていたこともあり、ビジョン実現のために採用を抜本的に見直すなら、僕しか適任者はいないと思ったんです。そこで、「自分にやらせてください」と社長に直談判しました。

そのときに感じていた一番大きな課題は、目標に向かってどんどん突き進み、周りの空気を変えてしまうような新卒を長らく採用できていないことでした。爆発的に伸びていくような尖った人材がいるからこそ、周りにいる人たちも引き上げられ、伸びていくんです。

そのような尖った人材が、3年後、5年後のビジョンを考えたときに絶対に必要でした。でもそんな人材は、口を開けて待っていても来てくれません。

そこから、「採れる人材」ではなく「採りたい人材」を考え、そのような人材が集まっている場所を探し、彼らが何を必要としているのかを見極める「待たない採用」を始めました。

欲しい人材の居場所を見つけ、彼らの求めるものを見定める

そこで、まずは「欲しい人材の居場所」を探しました。弊社にとっての尖った人材とは、事業を伸ばすことや、たくさんのユーザーに価値を提供して対価(お金)をいただくことに対して、興味とリテラシーが高い人です

そのような人材は、若手起業家ネットワークの周りに集まっていました。

次に、その人材が「何を必要としているのか」を見定めます。彼らは、CROOZに入りたいとか、ベンチャーに興味があるとか、そういうレベルのことは考えていません。興味があるのは、「事業を作りたい」ということなんです。

そんな彼らのために、2014年から超少数の実践型インターンシップ「XYZ」をはじめました。

本気で事業をつくれる場「XYZ」を開催!

XYZは、実際にCROOZで新規事業を立案するときの流れを踏襲して、役員陣へのプレゼンと優秀なアイデアへの投資を行う「実践型インターンシップ」です。

▼超実践型の新規事業立案インターン「XYZ」のウェブサイト

尖った人材には、会社説明や普通のインターンをしても意味がありません。そこで、1、2日で実際に事業を企画してもらい、SHOPLISTの取締役である張本が本気でフィードバックする場を用意しました。

初回の参加人数は、3人に絞りました。なぜそこまで少数にしたのかというと、当時のインターン生に「CROOZのインターンには強みもメリットもないから、せめてエッジを立てましょう」と言われたことがきっかけです(笑)。

結果、「Wantedly」で募集をかけてみたら、10人ほどの応募があり、最終的に5人が参加しました。そしてその参加者は、本当に尖った人ばかりだったんです。

先日ユナイテッドにグループ入りして話題になったゴロー代表の花房君や、世界最大級の学生組織アイセックの日本支部の代表をしていた渡邊君、OneBoxという会社を立ち上げた学生起業家の伊藤君などが当時のメンバーで、さらにはXYZから子会社も誕生しました。

コンバージョンはゼロでも、目的は達成?

でも、実はこの第1回のインターンからは、一人も採用していません。

最初から「コンバージョンはゼロでも良い」と考えていて、彼らを120%満足させることだけにフォーカスしていました。事業を作りたいと思って参加してくれた彼らに、「なんだ、採用か」と思われた瞬間、コンテンツとして崩れると思ったんです。

たとえ採用に直接つながらなくても、この尖った人たちを満足させることができれば、その周りにいる人たちがCROOZに興味を持ってくれるかもしれません。

そのような考えを元に、採用ブランディングに振り切り、インフルエンサーになる人を集め、120%満足して帰ってもらうことだけを考えていました。

その結果、XYZに参加した彼らは、経営陣が自分たちの企画に対して全力でフィードバックするという「本気で事業を作る場」にすごく喜んでくれて、良いクチコミが広まっていきました。

2回目以降の募集も、彼らがシェアしてくれることによって、若手起業家ネットワーク周辺の面白い学生たちがバンバン参加してくれたんです。

いま採用面接に来てくれる方も、インターンの話を聞いて来たという人は多いです。「CROOZは、伸びる事業のつくり方を学ぶために最適な環境だ」と認知してもらえるなど、採用したいターゲットへのアプローチには、結果的に成功したと思っています。

ただ、そのクチコミが広まり始めるまでに、1年半くらいかかりましたね。

バックオフィスこそ、クリエイティブな仕事を

弊社では、たまたまインターンというイベントが成功しましたが、会社によって最適な方法は違うはずです。

重要なのは、会社として3年後、5年後にどうなっていきたいのかを見据えて、今のやり方を変えて挑戦していくことだと思います。

人事や広報、バックオフィスといった部署は、セオリー通りにこなしていれば、なんとかなるような部署に思われがちです。ですが、それでは会社が退化してしまいます。

これらの部署こそ、経営陣の掲げる未来から逆算して、クリエイティブにチャレンジしていくことが重要だと思っています。

出会った学生の未来と、入社してくれた新卒の未来を作りたい

弊社では2016年11月から、学生や25歳以下の若手社会人を対象に、事業化を支援する投資会社「CROOZ VENTURES」を設立しました。

せっかく出会った尖った学生たちを、大海原で泳げるよう、もっと支援したいという気持ちで立ち上げたものです。社内なら採用、社外なら投資という形で、彼らの事業成功のための力になりたいですね。

▼「XYZ」に参加した学生とCROOZ社員

新卒採用に関しては、ある程度の型ができたので、今後はそのような人材が活躍できるような環境作りをしていきたいと考えています。人事制度、評価制度、教育研修はすべて見直そうと思っていて。

極端な話を言うと、僕は人事の仕事は無くなると思っているんです。無くなるというより、広報と一緒になるといった方が良いかもしれませんが。文化や制度を外にPRしていけば、勝手に採用につながっていくと考えています。

だからこそ、今後は優秀な人材が活躍できる環境を整え、「人に自慢したくなるような会社」にしていくことで、採用にもつなげていきたいですね。(了)

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