• 東京地下鉄株式会社
  • 鉄道統括部 お客様サービス課
  • 枝久保 達也

東京メトロは顧客の声で進化する!オフラインでもできる、NPSを利用したサービス改善

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〜東京メトロが顧客のロイヤルティ調査に活用するNPS。Webサービスだけではない、すべての業種に応用できるその取り組みを紹介〜

東京の地下を走る「東京メトロ」には、電話やホームページのフォームなどから、年間1万件もの意見・要望が寄せられている。それだけでなく、近年は駅に並べられているパンフレットと、「NPS(Net Promoter Score)」という指標も活用し、サービス改善につなげているという。

企業や製品へのロイヤルティを図る指標であるNPSは、Webサービスを展開する企業を中心に広まっている。東京地下鉄株式会社は、そのNPSをパンフレットに内包されるアンケートに活用した。

その結果、自社の取り組みを告知するために始まったパンフレットにより、利用者の声を集め、路線そのものに愛着を持ってもらうことに成功したのである。

民営化以降、様々なチャネルを使って利用者の声を聞き、CS中心の改善活動を行っている同社の枝久保 達也さんに、話を伺った。

民営化をきっかけに、利用者の声でサービスを改善する体制へ

2004年に東京地下鉄は民営化されました。そして、それを契機にメトロに乗る体験をより良くしようと、利用者の声をサービス改善活動の中心に据えるようになりました。

それ以前は、利用者の声を集める場所は広聴窓口だけでしたが、今ではホームページのフォーム、「お客様モニター制度」による調査(※1)、インターネットアンケート、パンフレットなど、幅広いチャネルから声を聞かせていただいています。

※1 利用者の構成比を再現して作った500名程度のモニターに対して、定期的に実施するアンケート調査

私は、そこで集められた利用者の声を聞き、新しい取り組みの方針・計画を立てるお客様サービス課に在籍しています。民営化後の2006年に入社し、広報部や営業推進課を経て、顧客満足度(CS)向上の担当になりました。

私たちの課がなんらかの設備や車両を持っているわけではないので、他の部と一体になって取り組みを進めていきます。そういう意味では、CSでありながら企画担当でもあります。

サービス改善の中心になるのは、効果測定まで可能なパンフレット

活動の全体像としては、まず利用者の声を聞き、取り組みを企画・実行したあとに、その成果はどうだったのかを評価をします。この一連の流れで最も大きな成果を上げているのが、パンフレットです。

▼パンフレット「あしたのメトロ」

最初にパンフレットを配布したのは、2012年の「昨日、今日、明日 銀座線」というものです。全線的なリニューアルに着手し始めた頃の課題やトピックを扱っていました。当初は銀座線のみで配布していましたが、2015年にパンフレットをリニューアルし、現在は「あしたのメトロ」シリーズとして全路線全駅で配布しています。

そしてこのパンフレットの背面が、NPS(※2)を中心としたアンケート用紙になっているんです。

※2 Net Promoter Score:顧客が自社ブランドにどれだけ愛着をもっているのか調査する手法

予想以上のアンケート返答率も、うまく活かすことができず...

初期のパンフレットには、「取り組みの認知度」や「冊子で何が一番おもしろかったか」という簡単なアンケートと、フリーコメントのスペースを用意して、料金受取人払いで郵送していただいていました。

▼実際に郵送したアンケート

経験上、郵送はwebに比べると返答率は高くないと考えていたのですが...。蓋をあけてみると、回収率は5%ほどで、2,000通もの回答が寄せられたんです。フリーコメントもびっしりと書いてくださっている方もたくさんいました。

▼NPS導入前のアンケート

ただ、問題はその寄せられた2,000通をいかに分析するかという点でした。

「フリーコメントで〇〇について言及した人が200件でした」という程度の報告しかできず、次の改善活動に活かせる部分が少なかったのです。「ここが問題らしいから改善しよう」というレベルでしか話せず、ベクトルのない分析になっていました。

ロイヤルティを調査するNPS。そのレポート結果は...?

そこで力を借りたのが、NPSを使った顧客調査を行っているEmotion Techさんでした。

NPSはNet Promoter Scoreの略で、企業へのロイヤルティを示す指標です。「○○をあなたの知人や同僚にどれくらい勧めますか」と聞き、0〜10の11段階で評価してもらいます。

ですが、それを最初に聞いたときは、鉄道会社には当てはまりにくく、使えないのではと感じていました。というのも、例えば東西線を勧められても、「じゃあ使おう」とはならないですよね(笑)。ただ、話は面白そうでしたので、試しに今までのアンケート結果をNPS風に分析してもらいました。

すると、フリーコメントで言及している要素と回答者のロイヤルティが結びついて、評価が低い人は何に言及しているのか、逆に高評価の人は何を注目しているのかが見えてきたんです。

そこで「あしたのメトロ3号」から、Emotion Techさんにお願いしてNPSを活用したアンケート調査を進めることにしました。

▼NPS導入後のアンケート

NPSなら、サービス改善後の満足度も予測できる

実際のアンケートでは、「路線の推奨度」と「パンフレットの推奨度」の2点を聞いています。

路線の推奨度は、路線の改善がどれだけ進んでいるのかを評価できます。また、大きなサービス改善が行われる時には、未来の期待値として「○○が改善されると、どれくらい勧められるか」ということも聞いています。

未来の期待値を聞くことで、施策が実施された際のインパクトも確かめることができるんです。

▼施策が実施されたあとの期待値についても調査

そして、パンフレットの推奨度とコメントは、コンテンツの改善に役立てています。

例えば、年配の方に「文字が小さくて読みにくい」というコメントが目立ったので、次の号から文字を大きくしました。「子どもと読むことが多い」という親御さんの声もあったので、ルビを振った子ども向けのコンテンツも用意してみました。

▼「あしたのメトロ」に新たに掲載された、子ども向けコンテンツ

テキストマイニングも合わせて、効果検証をする

パンフレットごとにテーマやターゲットも設定しているので、どの層に期待していたことが伝わったのかも確かめられます。

例えば「あしたのメトロ 千代田線」のメインコンテンツは千代田線直通のロマンスカー増発だったので、ターゲットは小田急線沿線にお住まいの千代田線ユーザーに定めました。

NPSの結果や、アンケートに寄せられたコメントのテキストマイニング(※3)を用いて分析すると、ロマンスカーの利用経験があるほど、路線のロイヤルティも高いということが判明しました。

※3 大量のテキストを解析し、有益なデータを取り出すこと

分析結果から、冊子は狙い通りのターゲットに届いており、「ロマンスカーの利用訴求を通じて路線の価値を向上させる」という冊子の目的も達成されていることがわかったんです。

パンフレット自体は、別にすべてのページを読んでもらう必要はないと考えています。サービス改善の告知だけを読む方もいますし、マニアックなコンテンツだけを読む方もいらっしゃると思います。

路線の歴史にまつまるコンテンツが非常にNPSのスコアが高くなっているのですが、当初はちょっとした読み物として始まったものでした。

ところがNPS分析により、幅広い年代に高い関心を持ってもらっていることがわかったので、今では欠かせない定番コンテンツになっています。これもNPSで推奨度を計測しているからこそ、根拠を持って続けられているんです。

▼「あしたのメトロ」に掲載された歴史コンテンツ

利用者の方々が東京メトロに興味を持ち、愛着を持ってくれたらいいなと思っています。そのためにも、パンフレット自体も、そしてもちろん東京メトロのサービス改善も、利用者の声を中心にしながら続けていきたいですね。(了)

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