• 株式会社鯖や
  • 代表取締役 八戸前沖さば大使 サバ博士
  • 右田 孝宣

人生をかけて鯖にコミット?メディア掲載1,500回を達成するために必要な事とは

〜創業から10年でメディア掲載1,500回以上、クラウドファンディングで4,000万円以上の調達に成功したノウハウを大公開!〜

クラウドファンディングで4,000万円以上の調達に成功した「さば料理専門店」がある。大阪に本社を構える、株式会社鯖やが運営する「SABAR」だ。

同社代表の右田 孝宣さんは、常にオリジナルの「サバジャン」をまとい、さばの筆箱を使って仕事をするほど、さばへの思い入れが強い。そんな右田さんの元には、創業から現在まで数多くの協力者が集まってきたという。

その結果、10年間でのべ1,500以上のメディア掲載、クラウドファンディングで「SABAR」の立ち上げに成功するなど、事業を急拡大している。

人を巻き込み事業を拡大していくその背景には、情熱だけではなく、情熱を成功に変えるための秘策があった。
今回は、右田さんにPRのポイント、クラウドファンディングの活用のコツから、経営に対する姿勢まで詳しくお話を伺った。

サバイク、サバババーン? 工夫を凝らしたPRで露出は1,500件超に

株式会社鯖やを2007年に大阪で立ち上げ、代表取締役を務めています。現在、とろさばの棒寿司の製造・販売や、とろさば料理専門の飲食店「SABAR」などの事業を展開しています。

私たちのように、広告宣伝費に大きな金額を投資できない中小企業にとって、PRは最優先すべき課題だと考えています。そのため、弊社は創業から現在まで、PRには特に力を入れて取り組み、結果として累計1,500以上の媒体に取り上げられています。

例えば、創業したての頃は、棒寿司を売るために「サバイク」というさばの模型を載せた配達バイクを使っていました。さらに、オリジナルテーマ曲「サバババーン」も流しました。変なものを面白がるという大阪の風土も手伝って、いずれの取り組みもテレビや新聞といったマスメディアが取り上げてくれました。

▼右田さんが配達バイク「サバイク」に乗っている様子

その他にも、さばに関する小冊子「家庭のサバ」を作ったり、日本記念日協会に申請して3月8日を「サバの日」にしてもらうなど、PRには数々の工夫をしてきました。

「SABAR」の店舗も、取材に来てもらいやすいようにテレビ局の近くに1号店を出店しています。

非日常なPRを!お嬢サバを広告換算約4億円のPRにした戦術とは

これだけ多くのPRを企画してきましたが、実際は失敗したことの方が多いかもしれません。

ただ、その失敗の中でも気付きがありました。PRは「非日常」でなければならない、ということです。決して、日常のひとコマにしてはいけないのです。

例えば弊社では、JR西日本さんと組んで、虫の付かないさば「お嬢サバ」を使った料理も提供しています。通常のさばと違い、アニサキスという虫がいないので生でも食べることができるのが特徴です。

「へえーそうなんだ」と思うじゃないですか。

でも、ただアニサキスフリーのさばを売るだけではその「へー」という感想で終わってしまうんですよ。

そこで、この画期的なさばを広めるために「サバ族館」という、さばの水族館をイメージした水槽があるお店をプロデュースしました。

▼さばの水族館をイメージした店舗「サバ族館」

生きたまま箱に入れて運ばれてくる「箱入り娘」のお嬢サバを、そのお店限定で販売することで、そこでしか食べられないというストーリーを作りました。その上で「皆さん食べに来ませんか」というプレスリリースを打ったんです。

すると、20社近くのメディアに取材してもらえました。お嬢サバ自体に関しては、1年半で約80の媒体に出て、広告換算費は約4億円にまで達しました。

話題というのは、みんな見過ごしてしまうんですよ。「ああ、そんなことがあったのか、良かったね」と、日常のひとコマになってしまう。その日常のひとコマを非日常に変えることが重要です。

人を巻き込んだPRには「魂が入っているかどうか」が重要

多くのメディアに取材をしてもらうためには、社外の方をたくさん巻き込むこともポイントです。

関わる会社を3社、4社、5社と増やしていくことで、それまで関係性がなかったメディアが来てくれるチャンスも広がるからです。そして、他の企業の方にも動いていただくには、そこに「魂が入っているかどうか」が大切だと思っています。

2016年12月に、コメ卸の最大手である神明さんと組んで、SABARの新店舗を上野のマルイに出店しました。この店舗は神明さんにとっては初の外食事業、弊社にとっても初のFC店舗ということで、特別な思いを持っていました。

そこで、丸井さんに「私たちはすごい思い入れがあるんだ。私たちと同じ思いになれとは言わないですけど、非日常ということを感じてほしいし、日常のひとコマだと思わないでください」って言ったんです。

すると丸井さんも「じゃあどうしたらいいんですか」と真剣になってくれて。「まずは私たちがプレスを招待します。なので同じフロアにある全店舗で試食会をしましょう。私たちは30社以上のメディアを呼びますから」という話をしたんです。

それを受けて丸井さんも本気になって取り組んでくれて、結果的に45名の方が試食会に取材に来ました。

丸井さんは当初そんな予定はなかったのですが、それだけの人を集めたことが丸井さんを動かし、一緒になって大々的なプレスリリースを打つことができたんです。

しょうもないネタに見えるけど、よくメディアで取り上げられている企画ってありますよね。メディアに取り上げられるかどうかって、企画がすべてではなく、そこにかける「魂のでかさ」だと思うんです。

クラウドファンディングは、情熱を資本に変える

「SABAR」の出店時には、クラウドファンディングを活用しました。累計で調達できた金額は、3,685万円です。1号店の出店にかかった1,788万円はすべてクラウドファンディングによる調達でまかないました。

この経験から、「サバへの愛を語り3685万円を集めた話」という書籍も出版して、クラウドファンディングの活用法について紹介しています。

クラウドファンドの1番のメリットは「情熱」が「資本」に変わることだと思っているんですね。そのために必要なのは、まずビジネスに説得力をもたせる実績、もしくは経歴があるかです。


私は鯖やの社長ですと。創業してから10年、さば1本でやってきましたと。それが、さば1本では事業がうまくいかなかったので、今度新しく出す店はさばとサーモンの店です。そう言われて、ぴんときます?こないでしょ。

自分の過去の経験や実績は、プロジェクトを「応援に値する」と思ってもらうときの、ひとつのフィルターだと思っています。「この会社を立ち上げて10年間、さば以外売ったことありません。」というように、自分の経歴が一言でわかるメッセージが言えるかどうかなんです。

言えないなら、それを作ることです。複数の事業をしてきたのであれば、一番自信があるものを1本選んで、これだけですと言ってください。それは説得力ありますので。

あとは、ビジネスがわかりやすいことと、世の中に必要であることです。これら3つがきっちりあれば、情熱はお金に変わるのかなと私は思っています。

投資型サービスで、募集から4ヶ月で1,788万円の調達に成功

実際に使ったのは、「セキュリテ」という投資型のものと、「Makuake(マクアケ)」という購入型のクラウドファンディングです。

結果的には、セキュリテの方が弊社には相性が良かったです。投資型のほうが、相手もこちらもリスクを負う分、しっかりコミットするので。

セキュリテは、店が軌道に乗り、利益が損益分岐点を越えたら、利益額に応じて出資者の配当金を支払うルールです。投資額に対して、最大110%で償還する仕組みでした。

募集にあたっては、一口あたり3万円で投資を募り、特典として3,000円のさばの棒寿司をつけました。結果的に、募集から約4ヶ月で432名の方から投資いただき、1,788万円を集めることができました。

償還については、3年と5年のファンドで組んでいたのですが、結果的にそれぞれ1年と2年で完了しました。業界では最速ですね。調達した金額に対して金利のようなコストが毎年かかっていくので、早く償還すればその返済額は少なくて済みます。

セキュリテは最初にファンドを組む際に100万円ほどかかるのですが、2回目以降は15万円ほどで済むため、1号店だけでなく、2号店、3号店の出店の際も活用させていただきました。

自分の人生に「コミット」することで協力者を得る

ビジネスって、何が近道で何が遠回りかってわからないですよね。でも最近よく思うのが、私たちがひとつのことに徹底的に特化してきたことが、近道になってきたんじゃないかと思うんですね。

いろんなことをすると、自分が情報を発信するときに相手のアンテナというか触覚がずれるんですよね。相手が応援したいと第六感では感じてくれていても、どうすればいいかわからないと、結果的にスルーされてしまいます。そういうことってたくさんあるんじゃないかと思います。

私の場合は、さばのことしか言いません。身につけているかばん、財布、靴、ズボン、腕時計も全部ブルーで、筆箱もさばの形なんです。だから何やねんっていうのではなくて、自分がそこに賭けてるかどうかっていうことが伝わるじゃないですか。

▼右田さんの身につけているアイテム


つまり、自分の人生にコミットしているかどうかなんですよ。私はひとつのことをずっと見ていて、そこに向かっていきたいというベクトルを、わかりやすく表現しているんです。

そして人に会ったときには、必ず未来について語っています。すると、その未来に対してこの人は何を欲しているのか、直感でわかるじゃないですか。そうすると自分たちの能力や人脈の中で、何かサポートしてあげようと思ってくれるんです。

実際、今までいろんな方にご協力していただいているので、「右田さんってすごくいいタイミングでいろんな方が出てきますよね」とよく言われます。


現在はクラウドファンディングで調達した資金を使って、魚を蓄養する「クラウド漁業」の計画を進めています。

その資金のために、1億1,380万円の資金をクラウドファンディングで調達する、イイサバプロジェクトを行う予定です。募集は3月8日のサバの日に行います(笑)。

これがもし成功すれば、世の中のファイナンスも変わると思っているので、大きな使命感を持って取り組んでいきたいと思っています。(了)

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