• 株式会社アラタナ
  • 代表取締役
  • 山本 稔

地方発ベンチャー「アラタナ」の、宮崎で1,000人の雇用を目指す採用手法とは

〜宮崎発ベンチャー「アラタナ」は、なぜ地方にありながらも人材獲得に成功しているのか?その採用力を支える考え方を公開〜

宮崎に本社を置く株式会社アラタナ。ECサイト構築やWebマーケティングを手がける同社は、地方企業ながら売上の9割を東京のクライアントが占める。

創業当時から「宮崎に1,000人の雇用をつくる」という目標を掲げている同社だが、地方企業の例に漏れず「優秀層をいかにして継続的に採用するか」という課題を抱えていた。

その課題を解決するためには「みんなが東京に出ていく理由を深掘りして考えるべき」と、代表の山本 稔さんは語る。「いかにして惹きつけるかではなく、どう社員を支援できるのかを考えることが重要」だと。

今回は山本さんに地方企業の採用におけるポイントについて詳しく伺った。

「宮崎に1,000人の雇用をつくる」を掲げるベンチャー

弊社は創業10年目になる会社で、ECサイトの構築や運営支援をしています。本社は宮崎に構えていますが、売上の9割は東京のクライアントです。その内の8割くらいはリモートでやりとりしていて、宮崎のオフィスから東京のクライアントと仕事をしています。

私は前々職での転勤で初めて宮崎に来たのですが、転勤を希望したのは趣味のサーフィンができそうだからという理由でした(笑)。実際に来てみるとやはり環境が良くて、ずっと宮崎に住み続けたいなと感じました。

でも、当時東京で勤めていた会社のような、わくわくする面白い会社が全然見つからなかったんです。それなら作るしかないだろうと思い、アラタナに創業メンバーとして参画しました。

創業して10年目を迎え、今では「九州に帰ろうと思ったら最初に目につく」と言われることも多くなってきました。

といっても、地方であれば圧倒的に目立つのは難しくないんですよね(笑)。東京と比べて、費用対効果が全然違うので。例えば、テレビCMも20万円くらいで結構な数を流せてしまいます。

地方企業の採用に立ちはだかる壁

ただ地方の特性として、中途で即戦力となる人を採用するのは難しいです。なので私たちは創業3年目、人数で言うと20人程度の頃から新卒採用に取り組んでいます。全社員のうち20%が新卒入社で、2016年4月入社の新卒は9名採用しました。

即戦力が採れないのなら、新卒で素質のある人を採用していくほうが現実的です。例えばエンジニアなら、未経験でも論理的思考の強い人を採用し、育てていくという方針です。

採用チャネルとしては、エージェント、求人媒体、ダイレクトリクルーティングなどを活用しています。その他にも「アラタナ24h」というオフィシャルブログや、コーポレートサイトからの流入も多いですね。

▼アラタナの技術と舞台裏が見えるオフィシャルブログ「アラタナ24h」


今では求人媒体はほとんど使わず、採用イベントやインターンをメインに活用しています。

採用の軸は主に「素直である」「チャレンジ精神がある」「学習意欲が高い」といった点ですね。でも、2、3年ほど前から、通常の求人媒体では採用したいと思える人たちに、なかなか出会えないなと感じ始めたんです。

東京と同じレベルの仕事ができることをどう理解してもらうか

当時の採用は求人媒体を使って、スタンダードなやり方をしていました。でも結局、それでは欲しい人材の絶対数が足りず、あまり採用につながらなかったんです。

それなら、求人媒体に出しているお金を別の所に使ったほうがいいと考え、自社でイベントを開催したり、旅費・交通費をすべて負担してインターンに来てもらったりということを始めました。

インターンシップで実際に会社に来てもらい、宮崎という土地やアラタナの雰囲気、仕事を直接、体感してもらうことが目的です。

2017年卒向けインターンシップは、前年の新卒社員が企画しました。新人研修も兼ねながら、参加した学生には若手社員が活き活きとプロジェクトに取り組む姿を見てもらう。こうして企業風土を感じてもらおうと考えました。

▼新卒が企画した新卒採用インターンシップ

最終的に直接の採用には至りませんでしたが、次の採用につながる広報効果もあったと考えています。

私たちは地方の企業ですが、チャレンジングな仕事をしていると思っていて、実際の業務も東京の仕事と変わりません。宮崎にいながら東京のように働けるというのは、地方創生や住む環境を気にする人にはいい環境だと思っています。

そして、それを実感してもらうためにも、できる限りのサポートをしたいと思っています。

結婚している人だと、地方に転職するとなると、奥さんに反対されることもあるんですよね。そういう場合は「会社見学の際に、奥さんもぜひ一緒に連れてきて下さい」と言っています。

高校生向けインターンシップで若手人材へアプローチ

また、プログラミングやITの楽しさを知ってもらうために、大学生だけでなく、高校生や中学生のインターンの受け入れも始めました。

昨年の高校生のインターンシップでは、社員と一緒に3日間働きながら、デザイナーの仕事を現場で体験してもらいました。

参加者からは、「デザイナーとしての将来を考えるきっかけになった」「学校で学ぶデザインよりも強い目的を感じ、お客様がいた上でのデザインなんだと実感した」といった感想をいただけています。

自ら考えて学ぶ機会を提供することで、宮崎の若いIT人材を育てていくことに貢献し、それが巡り巡ってアラタナの採用にも活きてくると考えています。

▼佐土原高校の学生に向けた3daysインターンの様子

「東京に出ていく理由」を考えると、答えが見えてくる

採用に困っている地方企業は、みんなが東京に出ていく意味を、もう少し深掘りして考えた方がいいと思っています。

私は、地方にいても夢がないからという理由で出ていく人が多いと思うんですよね。どうしても東京が良いという事ではなくて、「東京なら何とかなりそう」と思って出ていく。


つまり東京と同じようなオフィスの雰囲気にして、仕事も同じレベルのことができれば、地方出身の人は戻ってくるんです。そうして、宮崎を選ばない理由をどんどん減らしていきたいと考えています。

今はまだ、地方に帰るというのが「ちょっと仕事を休憩する」とか「セミリタイアする」と捉えられることも多いじゃないですか。私たちはまったくそのようには捉えていないのですが、そう思う人が多いという事実も踏まえて、アピールしていく必要があると考えています。

「企業ブランディング」は後回し!?

採用においては、どれだけ求職者のことを考えられているのかということも大事です。例えば、サーフィンをするためだけに宮崎にいる人とか、東京に疲れたから宮崎に来た人を採用するかというと、それは違いますよね。

まずは仕事に対してモチベーションがあることが大前提です。その次に、その人の仕事や働く環境、働き方をどう支援していくのかを考えることが大事です。

どうやって求職者を惹きつけるかとか、ブランディングをどうするかというのを最初から考えていると、どうしても騙しているようなイメージがあって。

そうではなくて、私たちはどんな人に来てほしくて、その人たちが宮崎に戻ってくるための条件は何だろうというのを、常に考え続けています。

そうして、最終的に「宮崎に1,000人の雇用をつくる」という目標を達成したいと思います。(了)

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