- Sansan株式会社
- CIO 兼 IT&ロジスティクス部 部長
- 久永 航
名刺管理・Sansanの裏側 目指すのはユーザーが疑問を「自己解決」できる仕組み
今回のソリューション:【Zendesk/ゼンデスク】
〜Sansanは、「働き方を革新する」サービスをお客様に提供する会社としてカスタマーサポートの改善に着手した。WEB上で「自己解決」できる仕組みとして選択したのはZendesk〜
「営業を強くする名刺管理」をコンセプトに掲げる法人向けサービス「Sansan(サンサン)」は、今や3,000社を超える企業に導入されているクラウド名刺管理サービスだ。
そのサービスを裏で支えるカスタマーサポートチームでは、クラウドベースのヘルプデスク管理ソフト「Zendesk(ゼンデスク)」を活用し、問い合わせの傾向を読み解くことでFAQページを日々改善している。最終的に目指すのは、ユーザーの疑問がWEB上で「自己解決」できる仕組みづくりだ。
同社に3番目の営業マンとして入社した久永 航さんは、2年半の営業経験の後カスタマーサクセス部でCS対応を担い、そして現在は同社のCIO(最高情報責任者)とIT&ロジスティクス部の部長を兼務している。久永さんに、Zendesk導入の背景を聞いた。
社員番号23番でSansan入社 営業部、CS部門を経てCIOに
もともとSIerにいたのですが、2009年の5月頃に縁あって営業としてSansanに入社しました。当時、弊社は今より小さい会社で、社員もまだ20人程でしたね。私の社員番号が23番なんですよ。
オフィスも築40年以上のビルにあって狭く、名刺を入力するオペレーターも20名程いたのでいつもぎゅうぎゅう詰めで。一応エアコンはついてたんですが、使っていなかったので夏場に外回りから帰ってくると外より会社の中の方が暑いくらいでしたね。エレベーターも遅かったので、いつも階段を駆け上がっていました(笑)。
入社して2年半は営業をして、その後弊社ではカスタマーサクセス部と呼んでいるCS対応の部署に3年ほどおりました。今年の1月からCIOになって、ミッションとしては、「ITを通じて経営・組織・社員の生産性向上と働き方の革新に貢献する」ということを背負っています。
弊社は「働き方を革新する」サービスをお客様に提供しているので、お客様だけではなく社内でも同じことを行っていこうということですね。
開発部門の中にあったCS部門を切り離し、お客様対応を改革
弊社では企業向けのクラウド名刺管理サービス「Sansan」と、個人向けの名刺管理アプリ「Eight」を提供しています。Sansanは、営業メンバー1人ひとりが持っている名刺情報を社内共通の資産として活用することができるBtoBサービスです。私がカスタマーサクセス部にいた時はサポート及び運用コンサルタントメンバーのマネジメントを担当していました。
もともと、Sansanのサポート部門は開発部門の中にありました。でもサービスに新しい機能がどんどん追加されて更新も早くなり、FAQページを始めとする顧客対応の部分が追いつかなくなって。それで、サポート部門を開発から切り離し、顧客対応の専門部門を作りました。
新しい体制の中で最初に変えていこうとしたのが、FAQページでした。当時のページは簡易なCMSを使って作っていたんですが、検索性や更新性に難がありました。あとは問い合わせのチャネルを一元化して顧客対応をもっと効率化しようという課題もありました。
当時はお客様の問い合わせをメールや電話でばらばらに受けていたので。とはいえ新しいシステムを導入するにはコストもハードルになりますし、まずは安価で手軽なFAQツールが欲しいね、ということで探し始めました。
問い合わせフォームからFAQへの導線が、ユーザーの自己解決を導く
Zendeskを使い始めたのは、サービスが日本へ上陸した2013年の直前くらいからです。もともと社風として、新しいものはどんどんトライアルしていこうという文化があります。
今サンフランシスコでこんなITツールが流行ってるよ、といった話は社内でいつもされていました。それなのでまだ日本での導入事例がほとんどなかったZendeskを導入するのも、特に抵抗はありませんでしたね。
最初はZendeskで問い合わせフォームを作って問い合わせ窓口を一元化することと、FAQページを作成するところから始めました。もともとFAQを充実させたいと思ったのは、ヘルプページを見てユーザーが疑問を自己解決できる仕組みを作りたかったからです。実はお問合せの大部分は、FAQで解決できるんですよね。でもそれに気づかず問い合わせをするユーザーの方が意外と多いんです。
▼「Sansan」実際のヘルプページ
Zendeskでヘルプサイトを作ると、問い合わせフォームと連携させることができます。フォームに入力されたキーワードから、ヘルプサイト上の関係するFAQを候補として提案してくれます。そうするとユーザーの方にヘルプサイトがあるということに気づいてもらうことができます。そうやってヘルプサイトへの導線を作っていけるというのが魅力でした。
お客様の声をサマリー化することで、サービス改善に繋げる
今はすべての問い合わせがZendesk上で一元管理されているのですが、頂いた内容は月に一度全部サマリーを出しています。可視化することでわかることがたくさんあるんです。お問合せの傾向からよく使われている機能がわかったり、季節要因などで特定の機能に関する問い合わせが増えたりします。例えば年末だと年始に年賀メールを送る方が多いので、メール機能のお問い合わせが増えたり。
####▼「Zendesk」画面イメージ
他にも、問い合わせが多かった機能に関しては優先してFAQの拡充を行っています。例えば同姓同名の複数の名刺をまとめて管理し、その人物の職歴・部署の変遷をたどることができる「名寄せ」機能や、CSVデータから名刺をインポートする方法などは、お問合せが多かったので詳細なFAQを作成した事例です。
またユーザーがSansanを使い始めてからの期間という軸で問い合わせを分析すると、フェーズごとにお客様がどういった部分でつまづきやすいのかという傾向が分かるので適切なサポートを提供することもできます。こうして、Zendesk上に集約した問い合わせを読み解くことで、サービス改善に繋げています。
問い合わせ→解決までの時間が測定でき、業務効率化に繋がる
他に良いなと思っている機能は問い合わせの解決までにかかった時間が測れることです。よくある問い合わせを把握するだけではなくて、「件数は多くなくても対応に時間がかかっている問い合わせ」を把握できると、それをヘルプページに載せていこうという流れができますよね。そうすると問い合わせ対応にかかる工数もどんどん減らしていくことができます。
問い合わせ数ゼロ、を目指すのではない
Zendeskを導入してヘルプページが充実した結果、問い合わせの件数が減少し、「ヘルプサイトに掲載されているのに問い合わせをいただいてしまう」件数も下がったので社内のリソースの最適化にも繋がりました。
ただ一方で問い合わせの内容は昔より難しくなっていますね。ヘルプサイトでは解決できないような複合的な問題やお客様の環境によるものも多くて、スタッフに求められるレベルは高くなってきています。
現在の問い合わせ件数は1日平均20件~30件ほどですが、問い合わせ件数をゼロにすることは目指していません。結局、ユーザーの方が問題を解決できなくて諦めてしまうっていうのが一番良くないですよね。最近はおかげさまでユーザー数が増加していますが、その分ユーザーのITリテラシーの差は広がってきているので、今後はそれをもっとフォローしていけたらなと思っています。お客様の声をもっと拾い上げて、より良いサービスの開発に繋げていきたいと考えています。(了)