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テレビCM・チラシを超える!?ピザハットが挑戦する、ゼロからのデジタルマーケ戦略

〜Web接客ツール「Sprocket(スプロケット)」でVIP会員の売上を7%UP!ピザハットの、顧客に合わせたデジタルマーケティングとは〜

宅配ピザチェーン「ピザハット」を展開する、日本ピザハット株式会社。そのサービスの特性上、同社は、テレビCMやポストへのチラシ投函といった、マスマーケティングを重視していると思われがちかもしれない。

しかし実は、同社内では、オンライン上で顧客と接点を持つ「デジタルマーケティング」を強化する動きが始まっている。

具体的には、Web接客ツール「Sprocket(スプロケット)」を導入。会員に向けたメールマガジン配信の最適化や、Webサイト上での会員登録を促進するサイト改善を実施した。

結果的に、わずか3ヶ月ほどの取り組みでVIP会員の売上を7%上昇させたり、会員登録率を20%上げることに成功しているそうだ。

こうした施策を手がけるのは、同社でのキャリアを店舗スタッフからスタートした「生え抜き」のメンバーだ。今回は、同社マーケティング部の渡辺 圭祐さんと薮内 浩平さんに、詳しくお話を伺った。

店舗のアルバイトからスタートし、デジタルマーケを担うまでに

渡辺 私は高校生の頃からピザハットでアルバイトをしていて、その流れで入社しました。入社後は、店長、スーパーバイザーを経て、6年前にマーケティング部に異動して今に至ります。

▼マーケティング部 渡辺さん

異動した当時は、社内にデジタルマーケに特化した部署はありませんでした。3年ほど前に、部内にデジタルチームができまして、そこから少しずつ積み上げてきた形になります。

現在は3名で、Webサイトの運営や広告の配信管理、SNS運用、コンテンツマーケといった業務を行っています。また、お客様との関係を強化するための、CRMツールの運用も担当しています。

薮内 私の入社経緯も、実は渡辺と似ていて、アルバイトからの入社になります。店長やエリアマネージャーを経験して、今年の4月からはデジタルチームでメールマガジンの運用などを担当しています。

渡辺も同じかと思うのですが、もともと店舗で接客をしていたことは、現在の業務にも非常に生きていると感じています。

▼マーケティング部 薮内さん

接客って、本当に重要なんです。その体験によって、お客様のピザハットへの印象が大きく変わるんですよね。

オンラインの施策を考える上でも、その気持ちは変わらないです。どれだけ良いシステムを導入しても、実際に関わるのは現場のアルバイトさんや社員になります。ですので、複雑にしすぎてもダメで。あくまでも、現場をフォローしたいという気持ちが強いですね。

ピザを買うのは年に2、3回!?マーケティングの効率化が課題

渡辺 突然ですが、1年間で何回くらいピザを購入されますか? 実は多くの方が、年にたった2、3回なんですよ。

ですので、新規のお客様を獲得するために、大きな予算をかけてCMやポスティングを実施するのは、実はあまり効率が良くないんです。リアルの施策ですと、そもそも顧客をターゲティングできていないので、仕方ないのですが。

そこで、Webで効率的にマーケティングを行えないかと、3年ほど前にCRMツールを導入しました。そのツールを使って、ピザハットの会員を属性に応じてセグメント分けし、メルマガを配信していました。

ただ、当時は広告代理店さんにご協力いただきながら運用をしていたため、それなりに固定費もかかっていまして…。そのため、なかなか新しい施策にチャレンジできない状態でした。

また、当時使っていたツールは多機能だったので、そのごく一部しか活用できていなかったんです。ゼロから経験を積むにつれて、知識もついて、そういったことがわかってきて。これはもったいないな、と。

そこで、よりしっかりとPDCAを回し、深い施策を実行するために、ツールやチーム体制を見直すことにしました。

具体的には、メールマガジンの担当として薮内にチームに入ってもらい、更に、以前の半分の予算で運用できるWeb接客ツール「Sprocket(スプロケット)」を導入しました。

メルマガ配信における大敵は、ユーザーの「不満」

渡辺 Sprocketは、主に会員に向けたメルマガ配信と、Webサイトの改善という2つの目的で活用しています。

薮内 実は、弊社にとってメルマガは非常に大きな存在です。会員数が120万人以上いますので、たった1通のメールで、1,000万円以上も売上が伸びることもあります。

ただ、「売上が欲しいからとりあえずメルマガを送る」というのは違うと思っていて。メルマガもお客様との「関わり」のひとつなので、より満足度を高められるように、工夫を続けることが大切です。

渡辺 そんなにピザを頼まないのにメルマガがしょっちゅう届くと、お客様は「不満」に感じると思うんです。だからこそ、お客様の温度感に合わせて、適切なメールを送ることが重要になります。

例えば、とあるお客様が「金曜日の夜によくピザを頼む人」であることがわかれば、私たちはそこにウェイトを置いた発信ができます。私たちの活動の目的は、「ピザを注文していただく可能性を高めること」ですので、やはりユーザーを見に行かなければダメなんですよね。

現状ですと、その「ユーザーを見る」ということができるのは、会員登録していただいているお客様です。その方たちとメルマガで接点を持つことが、最も効率的なマーケティング手法だと考えています。

会員をセグメント化し、ニーズに応じたメルマガ配信を実行

渡辺 具体的な施策例で言うと、まずピザハットの会員を、年間の注文頻度で4パターンに分けています。

年間6回以上ご注文いただいた方はVIP会員、年間2〜5回ご注文いただいた方はゴールド会員、年間1回はレギュラー会員、1年間1度も注文しなかった方は休眠会員、という形です。

そして、VIP会員の方には特別クーポンを送るなど、メルマガの送付頻度を増やしています。

VIP会員の人数は全体の2割ほどなのですが、実は売上構成で言うと全体の6、7割を占めています。そのため、マーケティングの取り組みにおける優先順位としては、「VIP会員をゴールド会員に下げない」ことを最重視しています。

▼会員ランクのピラミッド図

VIP会員の売上が前年と比べ7%UP!ポイントは「見える化」

薮内 こうした会員のセグメント分けは、以前から行っていました。それに加えて今年からは、細かいメルマガの改善をスタートしています。結果的に、2017年3月のVIP会員の売上高を、前年比で7%上昇させることができました。

どのようにメルマガを改善しているのかと言うと、Sprocketを使って、いわゆるA/Bテストを実施しています。

テストするのは、例えばメルマガの件名です。「会員限定 選べるクーポンつき」と、「超割クーポンでもっとオトクに」を比較すると、後者の方がクリック率は高いのですが、コンバージョン率(購入率)は低くなるんです。

こういった細かい数字をチェックできると、やはりメールの中身を改善しやすいんですよね。例えば「クリック率は高いけどコンバージョン率は低い」という状況であれば、メール内の画像や表現が良くなかったのかも、といった仮説が立てやすいので。

渡辺 Sprocketは、こうした「見える化」の部分が優れているんです。A/Bテストを実施した場合にも、Sprocketの管理画面で明確な数値を見られるので、AとBのどちらを残すべきかが一目瞭然です。

▼管理画面上でA/Bテストを比較している様子


また、それに対するSprocketのディレクターさんの見解も毎月レポートとして届くので、そちらも参考にしています。レポートがあると、社内に報告も上げやすいので助かりますね。

まるで接客!サイト訪問者を任意のページに誘導

渡辺 このようにメルマガ改善に着手する一方で、Sprocketを活用しながら、弊社のWebサイト上でも様々な施策を実行しています。

これまでは、テレビCMの動画を埋め込んでみたり、キャンペーンの告知を出すページを変えてみたりと、色々と試行錯誤してきました。

その中でも成果が高かったのは、新規の会員を増やすためのサイト改善です。

もともと弊社のサイトには、会員登録のメリットが書かれたページが3つにまたがっていたんです。それですと、トップページからその3ページ全てを自然に見てくださる方って少ないんですよね。

そこで、Sprocketのシナリオ機能を使って、自動的にその3ページを見てもらえる導線を作ったんです。

▼ツアー型のシナリオ接客で、会員登録を促す


結果的に、会員登録数を以前の2割ほど上げることができました。

デジタル領域で「勝ち越す」ための挑戦を続けていく

薮内 今後は、普段リーチできない層にもアプローチできるような施策を、オンライン上で行っていきたいです。

例えば本当にライトなもので言うと、今年のエイプリルフールに、「ヒザパッド」という、膝あて用のピザをリリースしたんです(笑)。「ピザハット、ヒザパッド始めたってよ」みたいな形でわりと反響をいただいたので、良かったですね。

渡辺 デリバリーピザ業界ですと、私たちはまだまだ「デジタルに強い」とは言えない部分があります。それがやはり嫌ですし、どんどん新しいことに挑戦して、とっととデジタル領域で勝ち越したいですね(笑)。

やはり、よりお客様とのタッチポイントを増やそうと思ったら、デジタルの勝負になると思っています。個人的には、本当に今年やっと動き始めたという感覚なので、今後はもっともっと施策を強化していきたいですね。(了)

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