- 株式会社Everforth
- 代表取締役
- 森下 将憲
OKR派生の仕組み「VGTA」で自律的な組織を作る!リモートワークを実現する方法とは?
〜個人のモチベーションを最大化させ、6年連続増収を達成したベンチャーの、生産性の高い「自律分散協調型」の組織作りとは〜
昨今「働き方改革」が話題となっているが、組織の生産性を高め、長時間労働を是正していくにはどうすべきか、悩む企業も多いのではないだろうか。
そういった企業にとって1つの解になり得るベンチャー企業がある。東京に本社を構え、マーケティングクラウド事業を展開する株式会社Everforthだ。
同社は「好きな時間に、好きな場所で、好きなことをする」という組織コンセプトで、創業当時から「自律分散協調型」組織を志向し、リモートワークを中心としたワークスタイルを実現している。そうして、生産性とメンバーのモチベーションを高めることで、6年連続の増収を達成した。
その組織を作るために同社が取り組むのが、GoogleやLinkedInでも採用されている「OKR」から着想を得て独自開発した「VGTA」。個人を評価しないことで、組織を自律的にドリブンさせるというモデルだ。組織の普遍的なVision(ビジョン)から始まるそのシステムは、変化の激しい現代において、自律的な強い組織を作るものだという。
今回は代表を務める森下 将憲さんに、社員のモチベーションを最大化させるための「マネジメントしない」組織作りや、VGTAモデルについて詳しく伺った。
「働く時間や場所は限定しないといけない」という考えは負の遺産
私は2010年に株式会社Everforthを立ち上げました。弊社はマーケティングクラウド事業を中心に展開している会社で、現在の社員数は14人、パートナーや業務委託のメンバーを合わせると、40〜50人ほどが働いております。
▼株式会社アパレルウェブとの協業で提供する、ファッション業界のO2Oソリューション「APPAREL CLOUD」
弊社では「好きな時間に、好きな場所で、好きなことをする」を組織のコンセプトとして、一人ひとりのライフスタイルや実現したいことに合わせた働き方で、メンバーの「Well-being(幸福)」を追求しています。
Everforthは創業当初からリモートワークを主体にしていて、更には働く時間や曜日も固定せずにフレキシブルに対応しています。1週間にどのくらい稼働するのかをメンバーに自己申告してもらい、その時間に応じて報酬を決めるというやり方です。
Everforthのメンバーは、札幌、福岡など国内各地はもちろん、最近では海外を拠点に仕事をしている人も増えています。働き方も、子供の送り迎えの時間に合わせて働く人、朝4時から集中して開発を行う人、週30時間くらいだけ働く人まで様々です。
こうした働き方をする理由は、「成果の最大化は1人ひとりのモチベーションの最大化によってもたらされる」という私たちの考え方から来ています。
「働く時間や場所は限定しないといけない」という通念がありますが、これは旧来型の管理社会が抱える負の遺産であり、現代企業の成長に直結するとは考えていません。満員電車で疲弊したり、子育てで同僚に気を使ったりといった無駄なことは、モチベーションを低下させる大きな要因になり得るからです。
その証拠に、弊社は6年連続で増収を達成し、事業と組織を拡大できています。
リモートチームを強くするコツは「マネジメントしない」こと
「好きな時間に、好きな場所で、好きなことをする」という働き方を目指す中で、マネジメントが課題になるとよく言われます。
ですが私たちの場合は、マネジメントという言葉は使わないようにしています。マネジメント(管理)ではなくオプティマイゼーション(最適化)をして、権限をメンバーにどんどん委譲して、自律的に動けるようにしています。
実際には、プロジェクトやタスクごとにチームを作り、チームのオーナー、リーダーが中心となって、メンバー全員がゴールに向かって活動しています。もちろん、個人でのタスクもありますから、それは、その人個人の責任の範囲で、自由にアプローチしてもらっています。
▼オプティマイゼーションの4つの原則
私たちはヒエラルキー型組織との決別を強調する意味も含めて、あえて「オプティマイゼーション」という言葉を使っていますが、言っていることは、実は最近のマネジメント論としては当たり前のことだったりもしますね。
日本全国、海外を拠点にするメンバーもいて、お互いに顔を合わせる機会が少ない私たちのような組織では、管理という形は理想ではありません。なにより、計画して管理するという形は、変化のスピードが早い現代では通用しにくくなっていると思います。
ですので、やることを全て指示するのではなく、1人ひとりがその瞬間に最適なアクションをとれる自律的な組織を目指しています。
メンバーが自律的に動くための仕組み、「VGTA」とは
自律的な組織を実現するためにも、組織として目指すものが必要です。私たちはそれを「VGTA」というモデルで表現しているのですが、これは、Googleさんなどが採用しているOKR(※)を参考に作ったものです。
※Objective & Key Result:会社、チーム、個人の「目標(Objective)」と「結果(Key Result)」を管理することで、目標達成や組織内のコミュニケーションを効率化する考え方
20世紀初頭にテイラーが「科学的管理法」を提唱してから100年以上、経営者や企業の労使に関係する人たちは、評価の仕組みについてさまざまに考えてきました。しかし、管理法の絶対的な解にはいまだ行き着いておらず、多くの企業が試行錯誤を繰り返しているのが現状だと思います。
OKRは評価のためのシステムですが、私たちは「人間は相対的な価値判断をするもので、すべての人が納得できるような絶対評価というのはあり得ない」と思っていて、そこから、評価のためのシステムではない「VGTA」というモデルを生み出しました。
「管理」ではなく、あくまでも個人やチームが自律的に動くための指針、それがVGTAです。
VGTAはVision(ビジョン)、Goal(ゴール)、Theme(テーマ)、Artifact(アーティファクト、成果物)という4つの項目からなります。
• ビジョン:普遍的なビジョン
• ゴール:ビジョン実現のための1年から3年でのマイルストーン
• テーマ:年間で設定する、ゴールを実現するために必要となること
• アーティファクト:四半期単位で設定する、テーマの実現に向けた定量的な指標
OKRとの大きな違いは、テーマですね。今の時代は変化が激しいので、やるべきことやミッションはどんどん変わります。そういった変化に対応するためにも、テーマは「売上1,000万円」みたいな定量指標ではなく、あえて曖昧に定性的なものを設定しています。
そのテーマに合わせて、アーティファクトは週次のミーティングで変えていきます。環境が目まぐるしく変化する時代に、「年間」のような長期スパンで目標を立てていては、変化に対応できる組織にはならないと思っています。
VGTAの全体像ですが、まずは組織としてのVGTAを私が決めて、そこからチームごとに個別のVGTAを設定します。さらに個人単位でも設定していきます。
▼VGTAの全体像:個人(左)がチーム(中央)に貢献し、チームが組織(右)に貢献していく
VGTAの進捗は、週一で実施している全体定例ミーティングで共有しています。全体定例ミーティングには主要なメンバー20人ほどがオフィスに来るか、リモートならGoogleハングアウトで参加します。
各チームのオーナーの役割はマネジメントではなく、チームとしてVGTAを実現していくためにサポートをすることです。
このモデルのメリットは、組織全体が向かっている先、そのためにメンバーが何をやっているかが可視化されている点と、それぞれのメンバーが、自分がどう動くのがベストなのかを誰かに言われなくても考えることができる点だと思っています。
▼Google スプレッドシート上で、それぞれのVGTAを随時共有
個人単位のVGTAで「好きなことができる環境」をすりあわせていく
私たちは、モチベーションの最大化には好きなことをすることが重要だと考えています。そのためにも、個人単位でVGTAを設定することを重視しています。ですが、すべての人が明確なキャリアビジョンを持っている訳ではないので、そこは私が面談をしながらサポートしています。
VGTAの設定の仕方ですが、まず私とメンバーで4半期に一度1on1を行い、メンバーの考え方や価値観、やりたいことをヒアリングしていきます。その中で、組織やチームのVGTAにあった形で、その人が実現したいビジョンを追っていくにはどうすれば良いかをすり合わせていきます。
例えばエンジニアの場合だと、特定の領域を深掘りしたいという思いを持っていることが多いので、事業を通じてその領域に取り組めるように、可能な範囲で調整します。
Everforthという組織を通じて、新しい働き方を提言していく
こうして組織を作っていった結果がひとつカタチになったのが、ソーシャル・リクルーティングサービスの「Wantedly」による採用です。最近、掲載をはじめたのですが、この1ヶ月で50人以上の方が応募してくださったんです。やはり、「自由な働き方」というところに魅力を感じる人が多いようです。
ただ、やはり理論だけでは人は動かないので、感情面を大事にするためにも、対面で会う機会を大切にしています。飲みニケーションの場を用意したり、オフィスでバーベキューや唐揚げパーティーを実施したりと、メンバー同士のコミュニケーションを図っています。もちろん自由参加ですが、普段会わないだけに参加率は高いですね。札幌でリモートワークをしているメンバーもいるので、なるべくそちらにも会いにいくようにしています。
私たちは、メンバーが「Well-being」で好きなことをできている状態が、イノベーションの原動力となると考えています。そして、このような状態を企業でも作ることで、顧客への提供価値を最大化し、いずれ社会をよりよくすることにつながっていくのだと信じています。
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だからこそ、「好きな時間に、好きな場所で、好きなことをする」を体現した組織を実践していき、世の中に、新しい働き方やライフスタイルを提言できるくらいに実績を積んでいきたいですね。(了)