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「悪人の集団」から「誰もが頼られる組織」へ。フリークアウトのマネジメント体制とは

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〜フリークアウトが直面した組織の問題、そして現在の「メンバー全員が専門領域を持つ」マネジメント体制まで、その裏にある思想を紹介〜

最先端のテクノロジーを駆使し、企業と消費者のコミュニケーションのあり方、企業内での猥雑な業務を変え続けている、株式会社フリークアウト。

そんな同社でも、創業当初はマネジメントの方法に苦しんでいた。営業メンバーをマイクロマネジメントすることで、プロダクトを創る人たちと完全に分断されてしまったのだ。

その状態を改善する鍵は、自社の事業特性を理解し、「マネジメントの在り方を事業特性に合わせる」ことだったと、創業者の佐藤 裕介さんは語る。

「歴史が毎日更新されていく状態」だと感じるほど変化の速いアドテク領域に合わせ、「メンバー全員が専門領域を持つ」という方法で組織を作り変えた。

今回は、フリークアウト流のマネジメント手法のメリットから運用方法、そのマネジメント手法で発生するリスクを低減する方法まで詳しく伺った。

▼佐藤さんの過去のインタビュー記事はこちら

「モノが悪いから売れない」とは言わせない。営業マンがGitHubを使うと組織が変わる(GitHubの活用事例)

情報共有する奴が偉い!「役割分担+日々発信」のエンジニア文化が組織全体を強くする(Qiita:Teamの活用事例)

マネジメントの失敗...。組織はいつしか「悪人の集団」に

創業当初は、「自分たちの事業特性と、組織やマネジメントの在り方の組み合わせに、向き不向きがある」という感覚は持っていませんでした。営業力があると言われる会社で採用されている、効率の良いマネジメント方法があるならば、それをそのまま取り入れていけば良いと考えていました。

株式会社フリークアウト 佐藤 裕介さん

現に、創業から2年以上は営業部門のメンバーに対し、いわゆる営業会社らしいマイクロマネジメントで、短期的な目標達成のための行動管理をしていたんです。その結果、プロダクトを売る営業と、プロダクトを作る側が完全に分断され、営業は「営業的なテクニック」をもってして短期的な売上をつくる、押し売りのようなセールスマンになりました(笑)。

営業をマイクロマネジメントしていくと、1人ひとりの全ての行動が、その四半期の売上目標に最適化されていきます。そうすると、いかにして「今この瞬間に今ある商品を売るのか」に主眼が置かれるので、プロダクトが顧客課題を解決する、という目線を持つ暇がなくなります。

プロダクトに足りない部分があったとしても、それを改善するプロセスを踏むよりも「足りない部分があったとしても売れる」営業スキルを磨いたほうが、効率が良いですよね。

こういう「売る」能力は、短期的には必要な場面がありますし、すでに比較優位が実現しづらい成熟したプロダクトにおいては有効です。

ただ、長期にわたって経営していく会社や事業という視点で見ると、そうしたスキルは属人性が高く、伝承していくにも時間がかかるので、伸び悩んでしまいます。「〇〇さんだから買うよ」というのは営業マンとしては名誉かもしれませんが、プロダクト開発を軸とした技術企業としては恥ずべきことです。

いつまでも「売りつける能力」しかないのであれば、それはもうテクノロジー企業ではなく、「悪人の集団」のようにしか、個人的に思えなくなってしまったんですね。

「毎日歴史が変わる」事業で、生まれた育成のコンセプトとは?

問題だったのは、自分たちの事業ドメインや特性を考えて、マネジメント方法をコントロールしていくことを考えなかったことです。

株式会社フリークアウト 佐藤 裕介さん

そういう失敗も踏まえて、繰り返し改善を続けてきました。現在のマネジメント方針は、新卒入社も中途入社も同じで、「早期に自分の軸足を発見しよう」というものです。このコンセプトは、汎用性があってどの会社でも使えるのかというと、そうではないかもしれません。僕たちの事業特性を考えて、定義したものです。

事業特性として注目したのは、広告技術やマーケティングテクノロジーの領域の、進化の速さですね。1日で、歴史の教科書が1ページや2ページ追加されているんじゃないかと思うくらい、新しいデータが取れるようになったり、技術によって可能になる施策が増えています。

その環境の中で、新しく仕事を始める人が、すべてをキャッチアップしていくのは不可能だと思っていて。努力したとしても、全ての大枠はわかっているけど、特に得意分野もない人になってしまうんですよね。そうすると、キャリア的にも難しい。

なので、新しく入っていただいたメンバーには、事業領域の中で自分が興味を持てたり、好きだなと思える分野に、早期に1本「ピン立て」してもらいます。

一人ひとりが専門分野を持ち、誰よりも詳しくなる

ピンを立てると言っても、大げさに「10年やるものを決めてください」というわけではなくて、向こう3ヶ月くらい、頑張れそうなものというレベルです。

新しい知識・知見がどんどん出てくる一方で、その知識というのはバラけていて、薄いんです。だから、1つピン立てする分野を決めてあげると、短期的に誰よりも詳しくなれてしまう可能性があります。

僕のケースでいうと、アドテクノロジーという分野の中の、特に事業戦略や市場構造のところを、ずっと見ていたんです。フリークアウトを創業して5年、あらゆる記事を読んだり、識者にヒアリングして、インプットを続けてきました。

すると、細かい機能仕様はわからなくても、どういう構造を持つ製品が勝つのか、次に何が来るのかがわかるようになります。そういった背景もあり、2013年にはネイティブ広告を展開するために、M.T.Burnを創業しました。

株式会社フリークアウト 佐藤 裕介さん

このように、自分のエクスパティーズ(専門分野)を作ってもらった上で、その目線から、顧客課題をプロダクト的に解決してもらうことを最重要視しています。

ピンと事業がオーバーラップする部分を探す

実際に、新卒のメンバーでFacebookの広告プロダクトに興味のある子がいました。当時は社内にも、その領域に明るい人はいなかったので、彼はFacebookにピン立てして、最新の機能のアップデート情報から実務での運用まで、全部インプットしていきました。

周りのメンバーやマネージャーも彼に期待して、案件はすべて任せたり、情報もシェアしていました。彼はそこから、「Facebookのようなプレミアム広告枠が、DSPの世界にも必要だ」という確信を持ち、「我々の技術が活きる形で、高品質な広告枠を取り扱うにはどうすればいいのか」というところに興味が移ってきて。今では、プレミアム広告枠の在庫管理の仕組みや技術を担当し、社内でも一番詳しい人になりました。

このように一緒にピン立てをしたり、ピンと事業がオーバーラップする部分を見つけてあげるのは、マネージャーの仕事です。

他にも、リサーチ会社に勤めていたメンバーのケースでは、社会調査などの領域がピンになりました。社会調査への関心やスキル、既存事業の今後、顧客課題の3つの重なりを考えて、調査の仕組みをどうやったらブランド広告の効果測定に使えるのかを考えます。

社会調査というと、単体ではレガシーな領域ですが、そのピンがエンジニアにも伝わることで、「このデータがあれば、パネルリサーチのユーザーと、広告配信したユーザーをマッピングするための仕組みができる」といった話が生まれて、ブレークスルーが起きます。

正直、マネージャーはかなりめんどくさいと思っているかもしれないです(笑)。やはり面談が多くなりますし。とはいえ、マネージャーの仕事はメンバーを成功させることなので、そのための最短距離として、メンバーの関心、好奇心、面白がる気持ちが生まれる領域と、お金をたくさん稼げる、という領域が重なる場所を一緒に探し続けることが重要なんだと考えています。

株式会社フリークアウト 佐藤 裕介さん

このため、マネージャーは可能な限り、偉いというよりは、きちんと職種・スキルとして定義したいと思っていて。だから、マネージャーというのは、それ以外の仕事はしなくていい「スペシャリスト」だと思っています。

「誰もが頼られる」環境に。しかしトレードオフで失うものも...

それぞれが自分の興味領域に対してピン立てしていくと、メンバーのモチベーションも上がります。

例えば、Facebookにピン立てした人は社内で一番詳しいわけですから、当然僕も質問をします。みんなが質問するので、「Facebookならあの人に聞こう」と頼られるんですよね。頼られると嬉しくて、もっと深掘りしていく。こうしてエクスパティーズが分散していくと、「誰もが頼られる」組織になります。

みんなが同じことをしていると、「できる人」「できない人」というグラデーションができてしまいます。これだと、なかなか個人のモチベーションも上がらないし、成果を残しにくくなってしまいます。

ただ、ピン立てすることには、当然リスクも存在します。メンバーそれぞれが1つの役割を担っているので、組織としての強度がすごく弱くなります。その人がいなくなったら、担っていた役割に穴が開いてしまうので。また、会社として「この領域を強化したい」となった時に、その領域にピン立てしている人がいるかどうかもわかりません。

株式会社フリークアウト 佐藤 裕介さん

これはもうトレードオフで、100%防ぐことは不可能だと思います。そういう価値観を採用した以上、受け止めないといけない部分です。リスクがない、というのはあり得ないので。

一応、リスクヘッジをするための仕組みは用意していています。それが「コミュニティ」です。

ピン立てのリスクを低減する「同期コミュニティ」

新卒入社のタイミングが同時期の人たちでグルーピングして、「コミュニティ」を作る試みを行っています。いわゆる同期のつながりというやつですね。古臭く聞こえてしまいますが。

そのコミュニティの中で、ひたすら自分のピンの部分を共有していくんです。「Qiita:Team(キータチーム)」のグループ機能を使って、できるだけドキュメントを残していきます。

▼新卒メンバーがそれぞれ、専門領域に関するドキュメントを「Qiita:Team」で共有していく。

Qiita:Teamで共有されるドキュメントの例

これを全社に対して配信してしまうと、たくさん配信されるメルマガのごとく、誰にも読まれなくなってしまいます。まずは同時期に入社した人たちのような、小さいコミュニティの中で発信されるくらいのトラフィックだと、それなりに目を通せる状況になるので。

そこから、全体が知っておいたほうが良いものだけ、キュレーションしてSlackに流すという形をとっています。

定性評価には、「自分の立場が明確になる」OKRを活用

このマネジメントの形を実現しようと思うと、評価基準も重要になります。

自分に対して、「この分野を全部インプットする」と約束することが重要になりますし、マネージャーもそれを補助していくことが仕事になります。そうなると、定性的な部分が重要になっていきます。

弊社では創業からずっと、定性的な部分を見るために、目標はOKRで管理しています。

本当は100%定性的な評価をしたいのですが、それも難しいので、今は3 〜 5 割くらいを定性的な評価で見ています。OKRの良いところは、全社で実施すると、自分の目標が会社の目標につながっていることがわかることです。自分の立場やポジショニングがはっきり見えるので、ピン立てしていくことと相性が良いと思っています。

新規事業は、バランスよくマーケット全体のことを知っている人が生み出すというよりは、エッジにいる人が、その先に大きな可能性を見たタイミングで、アイデアが出るのかなと思っていて。そういう意味でも、専門家をたくさん持っている今の状態というのは、会社にとって重要かなという気がしますね。(了)

▼佐藤さんの過去のインタビュー記事はこちら

「モノが悪いから売れない」とは言わせない。営業マンがGitHubを使うと組織が変わる(GitHubの活用事例)

情報共有する奴が偉い!「役割分担+日々発信」のエンジニア文化が組織全体を強くする(Qiita:Teamの活用事例)

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