• 株式会社ブイキューブ
  • マーケティング本部 本部長
  • 佐藤 岳

マーケティングのROIが57%向上!マーケと営業の溝を埋めた、その導入プロセスの全貌

〜「マーケと営業の溝」を感じるすべての企業へ。マーケと営業が共に取り組み、マーケティングを現場に根付かせるためのプロセスを公開〜

マーケティングと営業の「溝」。心当たりのある企業も少なくないだろう。

Web会議・テレビ会議のクラウドサービスを展開する株式会社ブイキューブで、マーケティング本部を統括する佐藤 岳さんも、過去にいくつもの会社でその「溝」を感じてきた。

その溝を埋めるため、ブイキューブでは様々な施策を実行し、その結果マーケティングのROIを前年比57%に向上するという成果をあげている。

その施策は、営業とマーケの「期待値」のすり合わせから始まり、共にペルソナを作り、プロセスや目的まで徹底的に伝えてマーケティングオートメーション(MA)を導入するなど、多岐にわたる。

今回は、現場へマーケティングを浸透させるためのそのプロセスについて、詳しく伺った。

マーケティングの「3つの課題」に立ち向かう

私は、1995年頃からWebマーケティングの領域に携わっています。大学在学中に起業した会社では、クライアントさんの販促や広告宣伝に、Webサイトをどう活用すべきかという相談を受けたり、サイトを構築したりしていました。

その後は、シノックス(現エクスペリアンジャパン株式会社)や、トレンドマイクロ、シトリックス・システムズ・ジャパンといった会社で営業やマーケティングを担当し、2015年の11月にブイキューブに入社しました。

入社当時、弊社のマーケティング体制は、まだまだ改善の余地がある状況でした。

コンテンツマーケティングは実施していたのですが、ほぼ外注していた上、納品されたコンテンツのストーリーも粗く、似たような内容のものが並んでいるような状態でした。

そのときの課題を整理してみると、「やりっぱなしのマーケティング施策」「マーケティングの商談への貢献度が不明確」「営業部門とマーケティング部門の壁」という3つだったように思います。

まずは営業とマーケの「期待値」を合わせる

営業部門とマーケティング部門に壁があるという課題は、シトリックスに在籍していたときにも感じていました。営業とマーケティングがうまく連携できていないというのは、よくある話です。

その壁の原因は、お互いの期待値の不一致にあると思います。

営業がマーケティングに期待しているのは、サッカーで例えると、ミッドフィルダーにパスを出す「ディフェンス」のポジションでした。商談につながるような見込み顧客をパスして欲しいと。ですが、よく話を聞いてみると、既存の案件にかかりきりなので、商談の確度をある程度高めてから渡して欲しいと言うんです。

営業部門のメンバーと議論をした結果、シュートにつながるパスを出す「ミッドフィルダー」のポジションまでを、マーケティングで担って欲しい、という結論になりました。

このように、まずは商談までのプロセスを明確にして、お互いの役割を確認することが重要だと強く感じました。

営業とマーケで協力して「ペルソナ」を作り上げる

弊社は、Web会議やテレビ会議などの、ビジュアルコミュニケーション領域で事業を展開しております。

イメージが混同されることもありますが、ソフトウェアのWeb会議サービスとハードウェアのテレビ会議システムとでは、プレーヤーや製品は異なります。

弊社は2015年10月にテレビ会議システムの市場に新規参入し、製品をローンチしましたが、思うように商談が増えていませんでした。そのことに課題意識を持っていた営業メンバーも多かったです。

ある書籍(※1)でも述べられていますが、今の時代は、課題に気がついたお客さまが、その課題を解決できそうな製品やサービスについて情報収集をした上で、お問い合わせをしてきます。

(※1)The Invisible Sale: How to Build a Digitally Powered Marketing and Sales System to Better Prospect, Qualify and Close Leads (Que Biz-Tech)

なので、製品を売るためには、お客さまの課題や情報ニーズに応えるようなコンテンツを作成し、それらがお客さまの目に触れるように発信していく必要があると考えます。

そういった説明を、営業部門の主要メンバーや有志へ説明した後、マーケティングと営業の人が協同で「ペルソナ」や「カスタマージャーニーマップ」を作るワークショップを開催しました。

そのワークショップでは、「テレビ会議システムの導入を検討される方」というペルソナを、フォーマットに従って作成していきました。

▼ペルソナの構成要素と作成フォーマット

そして、そのペルソナがカスタマージャーニー(導入検討プロセス)のフェーズごとに、どのような情報にニーズを持っているのかについて、全員で考えを持ち寄って、最終的にテレビ会議システムを導入検討されるペルソナの、カスタマージャーニーマップを作成しました。

ペルソナに合わせた情報発信が、成果に繋がる

そうしてペルソナとカスタマージャーニーを定めてから、ペルソナの情報ニーズに合ったコンテンツを作りました。

例えば、「テレビ会議システムに関する問い合わせ負荷を減らしたい」というペルソナのニーズには、当社製品の「簡単さ」を説明するようなコンテンツを提供しました。

また、遠隔会議のマーケットを長年にわたり分析されているアナリストの方に、V-CUBE Boxを貸し出しました。そして、箱から開けてセットアップを行い、実際にテレビ会議をスタートするまでの操作を、体験・検証していただいたレビュー記事を書いてもらったんです。

従来のテレビ会議システムは、セットアップに半日くらいかかるものも多いのですが、ブイキューブの製品は10分くらいでセットアップが全て完了したと、その方自身が感動されていたのが印象深いです。

他にも、既存のテレビ会議システムと連携させながら、一部リプレイスしたいというペルソナのニーズもありました。

そこで、メールマガジンで「保守契約が切れるタイミングで、 社内にあるテレビ会議システムの一部を新しく入れ替えたいが、 費用をできるだけ抑えたい」と大きく出したり、ランディングページを作成したところ、実際にお問い合わせをいただき、初回訪問で商談につながりました。

▼テレビ会議のリプレイスや拡張をご希望の方に向けたメールマガジンの例

実際にお問い合わせいただいたお客さまにお伺いしたところ、「メールに書いてあることが全部自分ごとだった」ため、お問い合わせされたそうです。

MAの導入も、綿密な説明を重ねるからこそ効果が出る

ペルソナに合ったコンテンツを作りながらも、お客さまの検討段階を見える化するために、マーケティングオートメーション(MA)の導入を進めていきました。

MAツールは、導入の目的からマーケティングステップ、必要とする要件などをすべてまとめたRFP(提案依頼書)を作成した上で、ベンダー3社に提案を依頼しました。

各社からの提案に対して、プロジェクトメンバーで3点、2点、1点と採点してもらい、採点の集計結果から最終的に、「HubSpot(ハブスポット)」を導入することにしました。

MAの導入にあたっても、社内でキックオフを実施しました。

導入までのプロセスとして「システム設定」「オートメーション設定」「デザイン構築」「セールスフォースとの接続」「テスト」「サービスイン」を定義し、それぞれのステップごとにWBS、活動目標、成果物を定義して、参加者に説明していきました。

▼HubSpot導入プロジェクトの流れ

他にも、サイトの目標や提供予定のコンテンツ、目標数値なども定義して共有しました。

実際にHubSpotの利用を開始する際には、インサイドセールス部門や営業部門に、画面上でフォロー対象のお客様の行動がどのように見えるのか、その情報を元にどのような営業活動が可能になるのかを解説しました。

さらに、利用を開始した後も定期的に、スコアリング結果に基づいたリードの状況や営業活動への活用方法などを営業部門へ共有し、日々の営業活動に活用してもらうように努めています。

ROIを明確にし、より良いマーケティングを

こうしてマーケティングの進め方をしっかりと浸透させた結果、新規契約の売上実績は前年比26%増、そしてマーケティングのROIは前年から57%向上しました。

現在、弊社はマーケティングのROIを新規契約の売上金額より算出しています。

ですが、本来であれば商談の作成をゴールに置きたいです。商談をクローズするのは営業パーソンのスキルに依存するので、マーケティングとしては、活動の結果より生成された商談金額をROIに用いることで、評価できたらと考えています。

商談金額の評価は、見積金額が100万円で、商談の受注確度が100%ならマーケティングの成果は100万円。商談が初期段階なら25%の価値と評価し25万円、というように成果を算出します。その総額を、マーケティングコストで割って、ROIを出す方が良いなと思っています。

今まで実施した施策により、マーケティングから営業へ引き継いだ商談の受注率が、前年比51%向上しました。今後は、見込み客獲得の入口であるトップファネルのリードを増やしつつ、現状と同じ確度の商談の数を増やしていくために、ブログなどのコンテンツの拡充に力を入れていきます。(了)

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