- 株式会社メガネスーパー
- 店舗営業本部 デジタル・コマースグループ ジェネラルマネジャー
- 川添 隆
EC売上が5倍に!「ちょっとしたキッカケを積み重ねる」メガネスーパー・EC戦略の全貌
今回のソリューション:【Flipdesk・LINE@・VeContact他】
〜LINE@、Flipdesk、VeContact、メールマガジンなど、数々のツールを駆使し、ECの売り上げを5倍に急伸させた事例〜
株式会社メガネスーパーの、川添 隆さん。ECサイトに力が入り切れていなかった同社へ入社後、わずか3年で、メガネスーパー公式通販サイトの月商を約5倍にまで成長させることに成功した。
その成功の要因とは何か? 川添さんは、「ECでは、実店舗との差別化を考えがち。けれどそれ以前に、ECはそもそも劣っている部分が多い。まずはそこを引き上げていくべき」と語る。
実際に同社の施策は、まずはECを実店舗と同じく「売れる店」にするための、サイトのクリエイティブ改善から始まった。そして、メールマガジンや「LINE@(ラインアット)」を使った集客を強化。
さらにオンライン接客ツールの「Flipdesk(フリップデスク)」や、買い物カゴから離脱してしまったお客様を呼び戻す「VeContact(ヴィーコンタクト)」などを導入。「ちょっとしたキッカケを積み重ねる」ことで、売上をどんどん上昇させていったという。
今回は、それらのツールの活用ノウハウから、EC運営における重要な考え方まで、幅広くお話を伺った。
ECの「すべて」を任され、入社後の売上は5倍に!
私は、2013年の7月にメガネスーパーに入社しました。それ以前は109系のブランドを持つアパレル企業にいまして、そこで初めてECの責任者を務めました。
そのときに、EC部門の売上を2倍に伸ばすことができたんですね。なぜそれができたのかを振り返ってみると、全社としての利益獲得が企業の指針として集約され、「すべての権限を与えられたから」だと思います。ECの売上って、極端に言うと経営のジャッジにすべて依存するんですよ。
メガネスーパーでも同じように、EC事業の権限を全て与えられた上で、上司である社長に相談しながらも、結果で返すという関係性で仕事ができると思えたので入社を決めました。そういった場所って、なかなかないじゃないですか。
そして当時のメガネスーパーのECを見たときに、「まだまだ伸ばせるな」を感じました。実際に入社前と比較すると、EC事業全体は約3倍、自社ECサイトの月商は約5倍にまで成長しています。
今ではECだけでなく、オムニチャネルの推進、デジタルマーケティング・コミュニケーション、デジタルを活用した店舗業務支援までを、私たちの部門で担当しています。
成功するECを作るためにまず大事なのは「売れる店を作る」こと
私が入社してまず手を付けたのは、「売れる店を作る」ということです。
ECの売上が悪いとき、「まず集客しよう」と考える人がいます。Google Analyticsを見て、改善策を考えたり。ですが、最初に考えるべきことは集客ではないんです。
意外と、それ以前の「当たり前のこと」ができていなかったりします。例えば前職のときにも経験したのですが、「ECに在庫がない」ということがあります。
実店舗には商品があり、お客様はそれを見てECで買おうとしているのに、ECでは在庫がないと言われる。そのような状態では、いくら人が来ても売れるわけがないですよね。
ECって、そもそも実店舗より「劣っている」部分が多いんですよ。例えば試着もできませんし、面と向かって接客もできない。セールのときにも呼び込みがあるわけではないので、気が付かれないことも多い。
ECのセミナーをすると、「どうやって実店舗と差別化するんですか?」「付加価値をどうやって付けるんですか?」という質問を受けることが多いです。ですが、そもそも劣っているのだから、付加価値とかそういう話じゃないですよね。
ひとりのお客様がメガネスーパーを見た時に、ネットと店舗を比較して「何か違うな」と思ったら、その時点で良くない状況だと思います。その違和感が少なくなるよう、差別化よりもまずは「ECを実店舗と同じレベルまで上げていく」ということを、基本的なコンセプトにして進めていきました。
クリエイティブの改善だけでも、売上は上がっていく
実際にはまず、単純にクリエイティブを変えることから始めました。私が入社する前のサイトって、情報の出し方が悪かったんでね。即日配送や、5,000円以上で送料無料、といった特典があったのですが、お客様から見ると「それはどこに書いているんですか?」という状態(笑)。
お客様にとってすごくメリットのある情報なのに、それがすぐに見える場所になかったんです。そういった情報をサイトの上の方に表示したり、メルマガやサイト内のバナーの価格表示を大きくしたり、といった事から手を付けました。
たったそれだけで、月600万円ほどだった売り上げが、翌月には800万円には上がりましたね。
▼メガネスーパーのECサイト
その後、メールマガジンの配信数を増やしたい、サイトの構造を変えてもっと情報を出したい、お客様が登録に使う入力フォームの選択肢を減らしたい、といった要望を実現するため、サイト自体をリニューアルしました。今は、「ecbeing(イーシービーイング)」というパッケージを使って、サイトを構築しています。
メールマガジンは、あえてセグメントを分けずに
集客は、コーポレートサイト、メールマガジン、リスティング広告、そして「LINE@」を中心に使っています。新規のお客様はコーポレートサイトやリスティング広告から獲得し、リピーターの方には、メールマガジンやLINE@を使って再訪を促す、という形です。
メールマガジンに関しては、とにかく大量に送っています(笑)。さらに、お客様をセグメント分けした配信は、ほとんどしていません。例えば、1dayのコンタクトを買った人に、無くなる頃にメールを送るようなことはしていますが、基本は週に14回ほど、登録者の方に一括配信をしています。
「セグメントを分けると効果が上がる」という世の中の声もありますが、規模や商材によっては、必ずしも「是」ではないと思っています。
送信先が数十万通に及んだり、ZOZOTOWNさんのようにユーザーのアクションに応じて細かいセグメントメールが送れるシステムが備わっていれば、効果が上がると思います。ですが、弊社のように1万通のレベルですと、逆効果になることもあります。
なぜなら、セグメントを分けると、それだけ配信母数が少なくなったり、その分の施策の工数がかかってしまうからです。そのセグメントの中では効果が高かったとしても、じゃあ全体へのインパクトは?と考えると、実は小さくなっていることも多いんですよね。
そういった理由からメルマガは全員に配信しているのですが、メールを受けとりたくない人の「逃げ道」は、用意していた方が良いと思っていて。それがLINE@なんですね。
▼Line@で情報を発信
LINE@は、週1でお得な情報などを発信しています。要するに、メールマガジンとは別の形で、情報を得られる逃げ道を用意しているんです。そしてどの手段を選ぶかは、お客様に委ねるのが良いのかなと。アパレルであれば、この逃げ道がSNSやブログといったものになるのではないかと思います。
ECに来たお客様には「Flipdesk」を活用して接客
そしてECの運営には、様々なツールを活用しています。Web上で接客ができる「Flipdesk(フリップデスク)」は、特にお気に入りのツールです。
ECに情報を出すとき、基本形はバナーになりますよね。けれどそれがスマホになると、バナーを出せるスペースが極端に少なくなってしまいます。スクロールされると、一番上に出していたものも、一瞬で消えてしまうんです。
Flipdeskを使えば、こちらが出したい情報を、画面下に固定した状態で簡単に表示できるようになります。
表示する情報も、簡単に出し分けができます。例えば、眼鏡のページでは無料試着をオススメする、カラコンならランキングを、普通のコンタクトなら定期便をオススメする、といった形ですね。
▼右下にFlipdeskのポップアップが表示されている
有料のサポートプランがあるのも良いですね。いろいろと試した施策を相談できて、どのケースで何を表示するのかという「シナリオ」の作り方も、しっかりとした提案をいただけます。
自分の脳みそだけで考えるのは限界がありますし、弊社のECは少ない人数で運営しているので、信頼できる外の力を借りられるのは嬉しいですね。
ECには、その特性に合わせたツールを
他にも、Ve Japanさんが提供するサービスも活用しています。例えば「VeContact(ヴィーコンタクト)」というツールです。VeContactを使うと、カゴ落ち(※ショッピングカートに商品を入れたのに、買い物を中断してしまう)した人の商品情報を捉え、カスタマイズされたフォローメールを自動送信できます。
また、「Zenclerk(ゼンクラーク)」というサービスも使っていました。AI(人工知能)が搭載されていて、お客様の動きのデータから、最適なタイミングでクーポンを表示してくれるサービスです。
ですが、Zenclerkは運用を続けるうちに、クーポンを出すシナリオがFlipdeskと同じものになってきまして。今ではFlipdeskに一本化して、運用をお休みしています。
ただ、これは単純に弊社のECと合わなかっただけで、サービスのクオリティは非常に高いと思います。多品目を扱い、お客様がサイト内を回遊されるようなECにはおすすめですね。
ツールは他にもいろいろと使っていて、運営を効率化させています。
▼メガネスーパーのECサイトで使っているツール
「ツールを選べない」時代には、全部試してみることが必要
最近は、ECで活用できるITツールがたくさん出てきて、運営側が「ツールを選べない」時代になっていると思います。接客ツール、分析ツール、DMPや広告、LINE。ツールが多すぎて、あらゆるツールや広告などの特性を把握したうえで、「あなたはこれを使ったほうが良い」と、誰も言えなくなっているんですよ。
だから、こちら側から全部試してみるしかないんです。
FlipdeskやZenclerkのようなツールの良いところは、初期費用が安く、月額も従量課金や成果報酬なので、導入のリスクが少ないことです。
ですから、とりあえず使ってみて、そこから継続するかどうかの判断をすることができます。初期費用が数十万、月額10万円です、みたいな料金プランのものですと、なかなかそういったことはできませんよね。
少しの引っかかりを積み重ねて、ECを差別化していく
メルマガのセグメントの話もそうですが、細かく細かく改善しすぎてしまうと、どんどん効果は小さくなってしまうんです。私はあまり深追いし過ぎないように、「マルかバツか」で判断しますね。緩く効いている施策やツールはそのまま残し、効果が出ていないものは切っていきます。
弊社のECで取り扱っている商材は、差別化が難しいんです。アパレルであれば、ブランド自体に価値があるのですが、コンタクトレンズという商材は、どこでも買えてしまいますので。
価格でも差別化は難しく、商材としての優位性を出すことは難しい状況にあります。ではどうやって勝つのかというと、「メガネスーパーちょっと便利だったかも」という、引っかかりが残ればいいと思うんです。
本当に小さなこと、例えば「Amazonペイメントが使えて便利だったな」、「メールでお知らせしてくれるんだな」で本当に良くて。ちょっとしたキッカケを積み重ねて、少しずつ他サイトとの差を作っていく。これからもそんな風に、より大きな売上成長に貢献できればと思っています。(了)