- 株式会社Faber Company
- CCO(Chief Contents Officer)
- 山田 明裕
内省&内製せよ!オウンドメディアで「良いコンテンツ」を作る、基本の発想術
〜数々のオウンドメディアを支援した経験を持つ山田 明裕さんが語る、「良いコンテンツ」を作る、基本の考え方を公開〜
近年、多くの企業がオウンドメディアに取り組んでいる。しかし、Web上のコンテンツの山に埋もれ、成果が出ないまま、いつの間にか更新が滞ってしまう事例も多いはずだ。
数々のオウンドメディアの支援を経験してきた、株式会社Faber Company CCO(Chief Contents Officer)、山田 明裕さん。
山田さんは、埋もれてしまわない「良いコンテンツ」を作るには、まず「内省」して自社の「事業定義」を突き詰め、そこからメディアの骨格となる思想や哲学を引き出した上で、それを一貫して発信することが重要だと語る。そしてその実行のためには、「内製」もまた、ひとつのカギになるという。
今回は、山田さんに、そもそも「良いコンテンツ」とは何か、そして、その作り方について、基本的な発想法から、コンテンツ作りの具体的な手順まで、詳しくお話を伺った。
敏腕アフィリエイターを経て、「良いコンテンツ作り」に目覚める
大学を卒業して6〜7年働いたころ、「ネットで稼ごう」みたいなトレンドが出てきたんですね。2000年代中盤のことです。
それで自分もアフィリエイトブログをやったら、3ヶ月で当時の給料より稼げるようになりまして。それで会社を辞めて、アフィリエイトを法人化して続けました。
そんなとき、創業者の古澤に声をかけてもらって弊社に入社し、現在は主に企業のオウンドメディア運営の支援や自社メディア運営をしています。
「良いコンテンツ」は、差別化され、完読され、情報格差を埋める
いまはCCO(Chief Contents Officer)という肩書きですし、「良いコンテンツ」にこだわって仕事をしています。
では、「良いコンテンツ」とは何か。私はそれには、大きく3つの条件があると考えています。
ひとつは他と「差別化」されていること。良い悪い以前に、今の時代、他と違っていないと、たくさんの他の情報に埋もれてしまうので、これはマストです。
もうひとつは、その上で、シンプルに「完読」されること。読者が最後までついてくるものが良いコンテンツだという意見には、とても共感します。
最後は、「情報の非対称性を埋める」コンテンツであること。読み終えた読者が何か価値のある情報を得て、それまであった「知っている人」と「知らない人」との格差がなくなるようなコンテンツです。
要するに、「良いコンテンツ」とは、他と「違う」ために埋もれずに際立ち、最後まで読まれ、読者が何か有意義な情報を持って帰る、そういったコンテンツのことなんです。
企業のオウンドメディアが「差別化」に失敗しがちな理由とは?
しかし、まず埋もれないために必要な「差別化」が、企業のオウンドメディアだと難しいんですよ。
個人ブログだと、個人がありのままに書くことで、個性が表現されて、自然と他と差別化されたエッジのきいたものになりうる。
ただ、企業だと、どうしても炎上リスクなどがあるため、「会社的にそういうことを言ったらNG」とか、体裁ばかりを気にしてしまい、メディアとしての尖りがなくなりがちになります。
そうならないために重要なのは、まず「内省」すること。つまり、自社の「内」を「省」みて、その「事業定義」をはっきりさせ、そこからメディアの発信する思想や哲学を定めることなんです。
「差別化」のためには、「内省」して、思想や哲学を見出す
例えば、もしスターバックスがオウンドメディアで情報発信をするならば、自分たちは「コーヒー屋」ではなく、「自宅」でも「職場」でもない「第三の場所」、「サードプレイス」だという事業定義から出発するはずです。
そうすることで、コーヒーの話題だけではなく、自由な空間を彩る空間デザインの話や、質のいい音楽の話など、いろいろな話題を持ち出しながら、一貫性のあるメディアが作れるんです。
ただ、こうやって事業定義が定まったとしても、会社組織ですとさまざまな意見が出てくるので、それを取り入れていくと、また無難な方向に流れていきがちです。
その意味では、そういった意見に対して「自分が全部責任を取るから、お前らは黙れ」と言えるような、強い思いを持った編集長が必要になってくると思います。
「内製」することで、一貫性が生まれ、「内省」も深まる
コンテンツの「内製」も重要だと思っています。もちろん、「外注」を一概に否定するわけではないですが、やはりどうしてもメディアの背景にある思想や哲学の浸透が難しくなるので、その点はかなり気を遣う必要があります。
「内製」が良いもうひとつの理由は、それでまた「内省」が深まるからです。自分たちでやっていると、どうしても考えるじゃないですか。
「何でうまくいかないのかな」とか、「これやって何か意味あるのかな」とか、「これじゃなくてもいいんじゃないか」とか。
そうやって考える続けることが大切なんです。そうすると、やっぱり、その悩み考えた分だけ、それをくぐり抜けてきたアウトプットに魂が乗るんですよ。
「良いコンテンツ」を作るための実際の手順とノウハウを公開!
こういったことが基本的な考え方で、あと重要なのは実際にPDCAを回していくことです。
私の場合、まず「計画(P)」のところで、キーワードマップを作って、狙うキーワードを列挙します。ここで重要なのは、検索には「情報収集型」「比較検討型」「コンバージョンに近い」の三種類があることです。
▼「ニキビ」に関して、山田さんが実際に作成したキーワードマップの一部
例えば、「脱毛のサイト」を作るとすると、「脱毛 痛い」はまだ情報収集段階。でも、「脱毛 おすすめ」なら、もう比較検討段階。さらに「脱毛 体験」や「脱毛 赤坂」みたいな検索は相当「コンバージョンに近い」。
こんな風にワードをリストアップして分類した上で、収益につながりやすい「コンバージョンに近い」キーワードから、そのキーワードで検索する人が何を求めているのかを考えて、それに答えるような記事を揃えていきます。
続く「実行(D)」ではライターさんが必要ですが、私の場合、外部に頼むなら、その道の専門家など、とにかくそのテーマに詳しく、情熱を持って取り組める人に頼むことが多いですね。
「検証(C)」は多面的に行い、随時「改善(A)」していく
こうやって計画に沿ってコンテンツを増やしていったあとは「検証(C)」を行います。
検索順位、アクセス解析、ヒートマップ、収益。そういったものを全て見ていって、例えば、ヒートマップなら、「この辺りは読まれてないからいらない」、「この辺りは読まれているから、もっと肉厚にする」など細かく改善していきます。
あと、最初のキーワードマップだけだと、それを作ったら終わりになってしまうので、ニュースなどをこまめにチェックして、時事的な話題を拾って記事化しています。
アウトプットの質が上がらないのは、インプットが足りないからなので、例えば、関係する本を読み込むなど、自分でコンテンツを作る際には、インプットには気を遣っています。
「そもそもなぜメディアをやるのか」に常に立ち返ること
最後に伝えておきたいのは、単に「流行っているから」とか、「どこもやっているから」といった理由でオウンドメディアを始めるのは、やめた方がいいということです。
それでは続かないですし、成果も出ません。そうではなく、自社の事業定義をしてみて、その観点から社会に何か伝えたいことがある、そのときにだけメディアをやる理由があるんです。
そして、メディア運営においては、この「なぜメディアをやっているのか」の理由に何度でも立ち返ることが重要です。
そうやって根っこにある確固たるものに戻ることによってのみ、一貫した尖った思想や哲学を守り、自社メディアを他のメディアと差別化することができるようになるんです。(了)