- 株式会社アプリボット
- PHQ(生産性本部)プロジェクトマネージャー
- 三浦慶介
広告分析を自動化し、CSが社内報を発行。長寿タイトル「グリモア」を支える組織体制
〜広告のレポーティングを自動化し、出稿もインハウス化。また、ユーザー目線でのサービス開発を意識すべく、CSが社内報を発行する組織体制をご紹介〜
競合ひしめくゲームアプリ市場で、2014年にリリースされた学園ライフアドベンチャー「グリモア~私立グリモワール魔法学園~(以下、グリモア)」。
次々と新しい競合アプリが登場する中、2014年8月のリリースから3年以上が経過した今も、ユーザーに長く支持されるタイトルとなっている。
▼学園ライフアドベンチャー「グリモア~私立グリモワール魔法学園~」
その運用を支えるのは、データの集計や分析を自動化することで、人間が「判断」に集中することができるマーケティング体制だ。
また、運営チームとユーザーの距離を近づけるカスタマーサポートの取り組みも、重要な役割を果たしているという。
今回は同サービスを運営する株式会社アプリボットにて、マーケティングを担当される三浦 慶介さんと、カスタマーサポートを担当される池上 勇人さんにお話を伺った。
キャラの魅力を強みに、ニコニコ動画等でユーザーを獲得
三浦 弊社では、魔法学園に通う美少女が魔物に立ち向かうRPG「グリモア」を運営しています。
プレイを進める中で「好きなキャラのカードを獲得すると、そのキャラのボイス付きオリジナルエピソードを見ることができる」というゲームになっています。
そのため、キャラクターを好きになっていただくことで、どれだけ各キャラのファン数を増やすことができるかを重要視しています。
その中で、僕は「いかに最少工数で最大の効果を生み出すか?」を考えて実行する部署「PHQ(生産性本部)」(※)にて、データを活用して、マーケティング施策の効果を最大化させる役割を担っています。
※PHQ:Productivity Headquarters
ポイントになるのは、オンライン広告の「配信チャネル」「クリエイティブ」「配信タイミング」です。
まず、配信チャネルを考える上では、多くの競合ゲームアプリがある中で、グリモアが持つ特徴を踏まえて施策を打つ必要があります。
グリモアは、アニメファンをターゲット像として、キャラの可愛さと、それに反したシリアスで長期的な伏線の張られたストーリーを楽しんでいただけるゲームです。
逆にバトルの複雑さや、攻略のための細かい戦略性に特徴を持つタイトルではありません。
そのため、ゲームの攻略サイト上で、ガチガチな戦略ゲームと競って広告を配信しても勝ち目が薄く、少しギークな人々との相性が良い、ニコニコ動画や掲示板上でユーザーさんの獲得を進めています。
バナーは「キャラの可愛さ推し」が最も効果的
三浦 また、広告のクリエイティブについては「可愛い角度で切り取られているイラスト」でシンプルにキャラの魅力を訴求するものや、「女の子とメッセージのやりとりをしている様子」でゲーム内での体験をイメージしてもらうものが効果的です。
一方で、ストーリーの良さを推したパターンはダメでしたね。これはゲームをやる中で実感するものなので、広告だけでは伝わらなかったのだと思います。
▼左が効果的だったバナー。右が効果の低かったバナー
そして、配信タイミングについては、Twitter上で話題になっているキーワードをチェックした上で判断しています。
例えば、他社から新規の大型タイトルがリリースされる時は、広告在庫もなくなってしまいますし、ユーザーさんの関心もそちらへ向くので、そんな時に出稿するのは無駄が多いです。
逆にグリモアがアニメとコラボしている時や、キャンペーンの強化時には、ファンの注目度も上がるので、そういったタイミングで広告の出稿を強化しています。
広告運用をインハウス化し、PDCAの精度とスピードを向上
三浦 また、当初は代理店にお任せしていた広告運用を一部インハウス化して、自分たちでデータを管理することで、広告出稿のPDCAを回す精度とスピードを改善しました。
通常、代理店からいただくレポートはあくまでサマリデータでしたが、広告運用の効率化を考えると、より詳細なレポートが必須です。ただ、それを都度作成いただくことも現実的ではありませんでした。
そのため、「インストールしてもらいやすいクリエイティブが何か? まではわかっているけれど、その後、長期間ゲームをプレイしていただけるようなユーザーさんを獲得できているかどうかまではわからない」という状況だったんです。
そこで、まず広告運用を一部インハウス化することで、自分たちで詳細なデータを把握できるようにしました。
ただ、複数の媒体で広告を運用していることもあり、各媒体の管理画面にアクセスして手動でデータを集めていると、多大な時間がかかってしまいます。
そのため、媒体が提供しているレポートから、各広告データを自動で自社のシステムに集計する仕組みを作り、「朝出勤したら評価項目の揃ったフォーマットにデータが一覧化されている」という状況を作りました。
そして、「全体平均に対して成果が出ていないもの」「パフォーマンスの推移が落ちているもの」をすぐに判断して、出稿を止めるようにしました。
このように、スピーディーに正確なPDCAを回すためには、代理店にお任せしたサマリデータと、インハウスだからこそ得られる細かいデータを併用することが、とても重要だと思いますね。
CSは顧客満足度を6段階で評価し、TOP2の割合をKPIに
池上 僕は、アプリをインストールしていただいた後のユーザーさんの満足度を高めるために、ブランド戦略室にて、カスタマーサポートを行っています。
元々は、お問い合わせ対応をメインに行っていたのですが、ユーザーさんの満足度に関わることをより幅広く手がけようということで、プロダクトの改善提案やTwitter運用、デバッグもチームのミッションに加えました。
それに伴ってチーム名も変更し、現在はブランド戦略室として活動しています。
ユーザーの皆さんには、それぞれに推しキャラがいるので、「◯◯ちゃんをもう少し目立たせて欲しい」といったご要望や機能の改善案等、月数千件のお問い合わせをいただいています。
そして、その対応への満足度を6段階で評価していただき、その内のトップ2である「とても満足」「満足」の割合を85%以上にすることをKPIとして掲げています。
また、「ソートがしづらい」というような、ちょっとした使い勝手に関するお問い合わせもいただくことがあります。
こういったユーザーさんの声を踏まえたアプリの改善を進めるべく、プロデューサーや開発ディレクターを含めて開催する週1のミーティング「改善保健室」にて、僕たちが改善の提案をしています。
▼ユーザーの要望を一つひとつ改善していく改善保健室
この取組を通して、今年の1月には、アンケートにお答えいただいた全てのお客様から「満足」以上の評価をいただくことができました。
▼改善保健室の取組を開始したことで、顧客満足度が向上
紙の社内報で、ユーザーと全社員の距離を近づける
池上 また、2017年4月から改善要望などの問い合わせ内容や、ユーザーさんからいただいた嬉しいメッセージを紹介する「LETTERS」という社内報を毎月配布するようにしました。
社内報という形にせずとも、ユーザーさんからいただいたお褒めの言葉を、会社のメンバーに僕たちが個別に伝えることもできます。
ただ、あえて紙で作って全社員に手渡しすることで、「今月は、こういう特集しているので見てくださいね」というコミュニケーションをとるようにしています。
ユーザーさんをより身近に感じて、ユーザー目線に立ったサービス作りを意識してもらえればという考えで、この取り組みを続けています。
▼社内報でユーザーから届いた声を紹介
開発速度を高める仕組み作りと、ユーザー目線の組織文化を作る
三浦 一般的にマーケ担当は、レポーティングやそれに必要なデータ収集などのルーティン業務に多くの時間を奪われています。
しかし本来は、どういうクリエイティブがユーザーさんに刺さるか? などの企画を考えることに時間を使わなければいけません。
PHQでは、ルーティン業務をできる限り自動化して、サービス本来の価値をユーザーさんに届けることに集中できる体制を、より一層作っていきたいと考えています。
池上 ブランド戦略室は、元々カスタマーサポートだけを行う部署からできたチームだということもあり、まだKPIがCSに寄りすぎている部分があると感じています。
そのため、問い合わせ対応に対する満足度だけではなく、TwitterのエンゲージメントをKPIに掲げるなど、よりグリモアのブランドを図る指標を追っていくことができればと考えています。
そして、ユーザーさんに最も近い位置にいる立場から、全員がユーザーさん目線でサービスを開発できる組織を作っていくことができればと思います。(了)
※同社のルーティン業務の効率化についての取組については、こちらの記事をご覧ください。