- コラボレーター
- 加留部 有哉
Airbnbが「最高の職場」を作れる秘密。従業員体験(EX)を上げるために使うツール5選
みなさんの会社はしっかりと従業員が高いパフォーマンスを出せるように従業員体験を設計していますか?
※従業員体験(Employee Experience)についてはこちら:「Employee Experience(EX)」とは? 企業が「従業員体験」を向上させるべき理由
入社してからのオンボーディングや、キャリア開発、目標達成に向けてのマネジメント体制は整っているでしょうか?
Airbnbは言わずと知れた、ユニコーン企業です。
2016年、2017年にはGlassdoorの選ぶ「Best place to Work」に2年連続で選ばれており、従業員からの信頼がとても厚い企業と言えるでしょう。
従業員からも高い評価を受けるAirbnb
そんな彼らの働きやすい職場は「Employee Experience」という部署によって作られています。
彼らは、人事部がパワーアップしたような部署です。
プロダクト開発には「UX=ユーザー体験」という言葉がありますが、Employee Experienceは従業員の企業での体験を意味しています。
この部署では、従業員の満足度を高め、パフォーマンスを上げられるように、オフィス環境や人事制度、マネジメントルールといった「体験」を設計しています。
彼らの仕事の範囲を定義すると、以下のような領域が挙げられます。
- オフィスやワークスペースの設計
- システムやツールといったデジタルワークプレイスの構築
- 仕事とプライベートの両立をサポート
- 報酬や昇給周りの制度づくり
- 従業員のキャリア開発や学習の支援
- 組織文化の構築
- 従業員エンゲージメントの向上
- オンボーディングプロセスの設計
今日は、上記のうちからピックアップして、AirbnbのEmployee Experienceが実践する「最高の職場」を作る方法をツールとセットで見ていきましょう。
- 新人を暖かく迎え、組織に溶け込ませるオンボーディングプロセス
- 個人のキャリア開発とスキル習得を担う学習管理システム
- パフォーマンスと目標を管理するマネジメントツール
- 人生の成功のための習慣を作る「Life Dojo」
- 組織づくりを通して、所属意識を向上させる「Niko」
新人を暖かく迎え、組織に溶け込ませるオンボーディングプロセス
まず最初に紹介するのが、Airbnbのオンボーディングプロセスです。
オンボーディングとは、新しく入社する従業員が早く仕事や組織のカルチャーに馴染み、パフォーマンスを発揮してもらうためのプログラムです。
誰だって、新しく入社した会社から放置されるより、暖かく迎え入れてくれたほうが嬉しいですよね。
▼初日にはデスクにもお祝いをしたり
※Onboarding at Airbnb design teamより引用
例えばTwitter社では「Yes to desk」というオンボーディングプロセスを用意して、内定の承諾を得てからデスクにつくまでのフローを細かく作り込んで新入社員を迎えています。
Airbnbでもオンボーディングプロセスを作り込んでおり、新しく入社した社員は同期と一緒に1週間のプログラムを受けます。
そのプログラムでは、Airbnbのカルチャーや目指す世界、ビジネス戦略、サービスの機能紹介、社内ツールの紹介、働き方などに焦点を当てた研修コンテンツがあります。
また、彼らは社内のイントラネットを使い、従業員の誕生日やイベントを全メンバーに知らせています。
新しいメンバーが、彼らのチームやコミュニティを早く会社で作ることができ、所属する場所ができるように支援しているのです。
これらのオンボーディングプロセスを彼らは「Greenhouse.io」を使って効率よく行っています。
▼海外の採用管理ツールの先駆者「Greenhouse.io」
Greenhouse.ioは、Airbnbだけでなく、Evernoteや、Pinterestでも使われている採用管理ツールです。
中には、オンボーディングプロセスを効率化する機能もあり、以下のようなことも可能です。
- 新しく入社した社員のやるべきことを順に提示
- 福利厚生など、社員として知っておくべきことの閲覧
- 入社時の書類などの電子サイン
- 社員やチームメンバーの基本的な情報の閲覧
- オンボーディングプロセスについてのフィードバックを新入社員から受け取る
▼オンボーディングまでのタスクが一覧で閲覧可能
▼オンボーディングのフィードバックを受け取る
以上のようにオンボーディングプロセスを効率化することで、抜け漏れなく新入社員を迎え入れることができます。
また、フィードバックをもらうことで、より良いプロセスに改善することも可能です。
個人のキャリア開発とスキル習得を担う学習管理システム
次に紹介するのが、個人のキャリア開発やスキルの習得、会社のカルチャーを理解してもらうための学習管理システム「Absorb LMS」です。
ハイキャリアの人材にとって、自らが成長していける職場かどうかは大きな興味関心でしょう。
Absoeb LMS
会社のカルチャーや成り立ち、仕事の進め方といった内容を、動画やドキュメントなどあらゆるコンテンツにすることができ、従業員に提供できます。
▼Absorb LMSのダッシュボード
自社で独自コンテンツを作れる他、ビジネススキル、人事、リーダーシップ、セールスなど幅広い数千ものコンテンツも用意されていて、購入することも可能です。
▼様々なジャンルの学習コースが用意されている
まだ入社して日の浅い社員には、会社の基本情報や働き方などのコンテンツを用意しつつ、すでに馴染みのある社員には彼らがキャリアを切り拓けるように、学習環境を整備することで、従業員体験をあげることができます。
また、学習状況を常にデータで確認できたり、コースごとにコメントを残すことができるので、同じコースを学習したメンバーでの集合知にもなります。
画一的に研修を行うのではなく、多くのコンテンツと自主性にキャリア開発を委ねることによって、不満のないパーソナライズされた学習体験をすることが可能です。
パフォーマンスをあげて目標を達成するためのマネジメントツール
会社に所属している以上、目標に対してパフォーマンスをあげて取り組んでいく必要があります。
いくらカルチャーフィットしていようと、働く環境が快適だろうとパフォーマンスが出ないと従業員体験は高くなりません。
そのため、Airbnbでは、「Reflektive」を使って社員の目標を見える化し、パフォーマンスを上げるためのフィードバックを行っています。
▼Reflektiveの画面イメージ
ReflektiveはOKRで目標管理ができ、誰がどんな目標を追っていて現在の状況がどうなっているのか把握することができます。
そのため、同じチームメンバーやマネージャーはいつでも目標達成のアドバイスをすることができ、「気が付いたらもう目標達成できる状態ではなかった」という状態を防ぐことができます。
▼目標を管理して、コメントで現状を確認可能
また、賞賛の文化をチームに根付かせるために感謝の言葉を送ったり、仕事ぶりを褒めることもできます。
例えば、「お客さんへの対応がとてもよかった」「機能の実装が早かった」といったメッセージを送ることで、チームの信頼性と成果が透明化されます。
▼賞賛をリアルタイムで送信
Airbnbでは1on1を実施していますが、そのシーンでもReflektiveが利用されています。
「チェックイン」機能を使えば、マネージャーが部下の目標達成をサポートするためのコーチングの機会をつくることが可能です。
1on1の事前に部下に振り返りをやってもらったり、アジェンダを作ってもらうことで目標達成とそのプロセスを導くことができます。
▼1on1前に事前に現状の確認をしてもらう
日常的に目標達成とその正しいプロセスをチームで考えることで、従業員体験が向上します。
人生の成功のための習慣を作る「Life Dojo」
「Life Dojo」は、習慣作りのための12週間のプログラムを提供するサービスです。
▼Life Dojo
2016年に、Employee Experienceチームを始めたMark Levy氏が導入したもので、「健康的な食事」、「運動」、「ストレス解消」、「適応力(レジリエンス)の向上」、「睡眠」、「禁煙」、「貯金」を達成するためのプログラムを提供しています。
▼計7つのプログラムが用意されている
Life Dojoが言うには、プログラムを始めた人の74%が達成するのだとか…だとしたらすごい。
個別に用意されたプログラムだけでなく、週ごとのアクションリストを作ったり、24時間チャットで相談することが可能です。
▼全てのデバイスだけで完結する使いやすさ
従業員体験を向上させるためには、仕事一辺倒だけで考えるわけにはいけません。
しっかりと従業員の健康や人間としてより良く生活することをサポートすることで、従業員体験を向上させています。
会社作りを通して、所属意識を向上させる「Niko」
「Niko」は会社へのエンゲージメント、所属意識を高めるためのサービスです。自分が会社作りに参加しているという意識が生まれることで、従業員体験が高まります。
▼Nikoのサービス画像
Nikoは、会社の文化やプロダクト、マネジメント、戦略、オフィス環境などについて、質問やアイデア・提案をすることができるプラットフォームです。いわゆる、目安箱みたいなものですね。
以下のように提案を投げると、そのスレッドが作られ、コメントなどが可能になります。投稿は匿名でも可能です。
▼質問、要望、提案が一元管理できる
しかし、これ管理するのがとても大変なような…もし提案が受け入れられなかったり、周知の事実を質問してくる従業員がいたりしたら全体の従業員体験が悪くなりそうですよね。
そこはAirbnb、全て対応しているのか、それともそんな社員はいないハイパフォーマー集団なのか。
いずれにしても会社への所属意識を上げるために、従業員に会社つくりに参加する権利が与えられています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
Airbnbの従業員体験では、しっかりと組織に「所属」してもらい、優秀な人材が気持ちよく成果を残せるようにするために デザインされています。
この違いによって、Airbnbは採用面でも大きくリードしています。働き方が柔軟になり、優秀な人材が働く企業を選べるようになった今、こうした体験をきちんと設計することが競争力になってきそうです。
当媒体SELECKでは、これまで600社以上の課題解決の事例を発信してきました。
その取材を通して、自律的な成長を促す「伴走型のマネジメント」が、組織づくりにおいて重要であるという傾向を発見しました。
そこで開発したのが、1on1の運用と改善で、メンバーの内省を促進し、パフォーマンスを最大化するツール「Wistant(ウィスタント)」です。
進化したマネジメントによって従業員体験を高めたい方は、ぜひ、チェックしてみてください。