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応募経路を「自社アプリ」に1本化!学生とのマッチングを効率化したGYAOの新卒採用

〜新卒採用のエントリーをアプリだけに絞り、学生とのマッチングを高めることに成功したGYAO。その導入背景から採用手法までをご紹介〜

HuluやNetflix、Amazonプライムなど、インターネットを通じた映像配信事業は、まさに戦国時代を迎えている。

ヤフーグループで映像配信サービスGYAO!などを展開している株式会社GYAOも、そのうちの一社だ。

2008年にUSENから独立した同社は、翌年のヤフーによる買収を経て、即戦力となる中途採用を中心としながら、これまで組織を拡大してきた。

そんな同社でも、2015年卒から、新卒の採用活動を開始。当初は、大手求人媒体を使うことで多くの学生から応募を受けるも、自社が求める人材とのギャップを感じていたという。

そこで2017年卒より、「新卒採用アプリ」を導入。エントリーの窓口をアプリ「のみ」に絞ることで、それ自体がITリテラシーの高い人材の応募率を高め、より自社に合った人材とじっくり向き合う採用へと転換することができたそうだ。

今回は、同社で人財戦略室の室長を務める長瀬 剛直さんに、新卒採用アプリの導入背景から、その活用の仕方、そして組織づくりまでを、詳しくお伺いした。

ヤフーからGYAOに出向し、採用や組織文化づくりの責任者へ

僕は、2004年にヤフーに入社し、自動車、グルメ、求人など様々なWebサービスの企画をずっと担当していました。

2012年にヤフーの経営トップが交代になるタイミングで、「長瀬は人事が向いてるから人事やろう」と突然言われまして(笑)。

それから、ヤフーでカンパニー担当人事や新卒採用の業務を経験し、2014年からはGYAOの採用や組織文化づくりの責任者を務めています。

現在、僕が室長を務める人財戦略室には、3つのチームがあります。

ひとつは採用や労務系を担当する「人事チーム」、次にミッション・ビジョンの浸透や社内外の広報を担当する「企業文化・ワークスタイル開発チーム」、そして最後に、役員サポートを担当する「秘書チーム」です。

このように、ヒト・組織・文化に関わる幅広い業務に携わっています。

単黒を目指し組織を拡大する中で、価値観の言語化が必要に…

GYAOはもともと株式会社USENの一事業で、2008年に独立し法人化しました。その翌年に、ヤフーグループの一員になっています。

それから、いわゆる「単黒」の状態を目指して、がむしゃらに走ってきました。採用は中途の即戦力となる方を採っていましたし、文化面や組織づくりもどうしても後手に回っていて。

また、設立当初から企業理念は存在していたのですが、数十名から今の300名弱の規模に組織が拡大していく中で、価値観をきちんと言語化する必要性を感じてきまして…。

そうした背景から、既にある企業理念を前提としながらも、改めてシンプルな表現でミッション・ビジョンを定義することにしました。

この話し合いのため、2017年の2月に、役員と各現場からの選抜メンバーを募って、湯河原の温泉で合宿をしたんです。

そこで、GYAOの来歴をUSEN時代から振り返ってみたり、それぞれ異なるバックグラウンドを持つ社員同士が、互いの考えを元に議論を戦わせました。

この合宿を経て、2017年4月にミッション・ビジョンが無事決定し、現在の19年卒の採用活動からは、GYAOの価値観を学生に伝えるものとして活用しています。

▼同社のミッション・ビジョン

アプリ導入の目的のひとつは、一定のITリテラシーを見極めること

新卒採用を始めたのは、今から4年前の15年卒の採用活動からです。

その当時、黒字化に向けてある程度の収益基盤が出来てきているような状況ではあったものの、最初は学生からどんな反応があるかも予想できなかったですし、正直不安でしたね。

ですが、実際に新卒求人の大手媒体を使って募集してみると、結構な人数の方に興味を持っていただけたんです。

「映画が好きで何百本見てます」とか「音楽フェスには片っ端から行きます」といったような、いわゆるエンタメ好きの学生さんが非常に多かったですね。

ただ、決してそういった方々を否定するつもりはないのですが、僕たちは「エンタメテック」という世界観を大切にしているような会社のため、多少の違和感を覚えていて。

エンタメももちろんなのですが、インターネットの力を信じてくれる人と働きたいな、という想いがずっとありました。

そこで、インターネットに対する心理的な障壁がない、或いはそれに対してポジティブであるということをエントリーの時点で判断するために、17年卒の採用から専用アプリを導入したんです。

▼GYAOの「新卒採用アプリ」トップ画面

大手媒体やWebサイトからのエントリー受付を廃止し、その窓口をアプリだけに絞ることで、それ自体が「ITリテラシーの見極め」になることを狙いとしています。

というのも、テクノロジーを扱う企業で働く仲間としては、スマートフォンを持っていて、かつアプリをインストールする程度のITリテラシーは持っていてほしいと思っていて。

この結果、エントリー数は大幅に減りましたが、採用効率の観点からすると、以前の10倍くらいに上がったと思いますね。初回の17卒採用では、実際に7名が入社してくれました。

採用イベント後のリアクションも、アプリで可視化!

しかし、そもそもアプリをインストールする以前に、まずは学生さんにGYAOという会社を知っていただく必要があります。

そこで、まずは「合同説明会」や「逆求人イベント」などを通して学生さんとの接点を持っています。

複数の企業が集まる合同説明会では、自社ブースで企業や事業概要の説明をさせていただくのですが、最後にアプリのQRコードを載せたスライドを映して、興味を持っていただいた方にはその場でダウンロードを促しています。

また、逆求人イベントでは、学生さんのブースをお邪魔する形式なので、事前にいただいた情報からGYAOに合いそうな学生さんとお話し、そこでアプリのQRコードのついた名刺を渡しています。

▼名刺の裏面に、新卒採用アプリのQRコードがついている

通常ですと、合説などの採用イベントに出た後の効果って、感覚的にしかわからないじゃないですか。

それがアプリがあると、イベント後にどれくらいダウンロード数が伸びたかとか、実際にお会いした学生さんのうち何人エントリーしてくれたかが、数値として可視化できるんです。

例えば、今年の19年卒の採用活動で言うと、今日の時点でお会いしている数百名の学生さんのうち、約10%が実際にアプリをダウンロードして応募してくださったとわかっています。

また、エントリーしてくれた方のデータは、「採用Dr.」という採用支援システムで管理しています。

エントリー時にいただいた学生さんのお名前や連絡先などを管理するだけでなく、その後も採用Dr.を通じていつお会いしたかなどのログを残すようにしています。

そして、アプリ自体は、アプリ制作・運営プラットフォームの「Yappli(ヤプリ)」を基盤として使っています。その中で、エントリーについては採用Dr.の入力画面を表示させ、データベースと連携しています。

このように外部ツールを上手く活用することで、採用活動を効率化していますね。

ワークショップとアプリの改修で、よりマッチング度合いを高める

また新卒採用の選考フローについては、エントリーの次のステップとして、「ワークショップ」への参加を必須としています。

このワークショップは、選考要素は含んでおらず、あくまでGYAOへの理解を深めていただくために行っています。約半日かけて、会社説明や社員との座談会、そしてグループワークでGYAOに関する課題に取り組んでいただくという、かなり濃い内容です。

これは、学生さんがワークショップに参加してみて、本当に自分が行きたい会社かどうかを判断してもらうことをゴールにしています。

こうして、アプリを通じてITリテラシーの高い人にエントリーいただくだけでなく、半日にわたるワークショップに参加していただくことで、より弊社への理解と関心度の高い学生さんに、選考に進んでいただけていると感じています。

また、アプリ自体も、より自社にマッチングした学生さんと出会うため、これまで改修を行ってきました。

例えば、初回の17年卒の時は、アプリに一本化することのリスクを恐れていたので、アプリ下部のメニューバー内の、目立つ場所にエントリーボタンを表示していました。

ですが、17、18年卒で実績が出たため、応募ハードルをより上げるように、現在は表示するページを1段下げ、メニューバー内の採用情報のページの中にエントリーボタンを設置しています。

▼表示するページを1段下げた「エントリーボタン」

さらにコンテンツ内容も、初めは社員紹介というワンフォーカスだったものを、今では1日のスケジュールも載せたり、役員が人材育成の取り組みを語るコンテンツを追加するなど、学生の関心に合わせて色々と改善してきましたね。

▼社員の1日のスケジュール

ミッション・ビジョンをより浸透し、意識と行動を変革していきたい

ミッション・ビジョンやバリューについては、今年作ったばかりのため、まだ社員に浸透しているとは言い切れない状況です。

ですので、社員に理解してもらい、意識してもらえるようにしていくことが第一だと考えていて。それから、新卒や中途の採用においても、そこに共感できる方をしっかり採っていきたいと思っています。

さらに、これからGYAOが目指す姿を実現していくにあたって、ベースのひとつになるのは上司と部下の対話の場となる「1on1」だと考えています。ヒトの集まりが組織であり文化を作るので、それぞれに課題があると思っていて。

そんな中、ミッションビジョン、バリューが形になったこの2017年下半期から、新しい「表彰制度」を取り入れました。年2回、バリューを体現する行動をしつつ会社に貢献した社員を表彰し、組織全体としてそうした行動を促すようにしています。

これを通じて、その動きがgoodであると承認し、結果が出ていれば会社全体で褒め称えていきたいと考えています。

近年、インターネットの映像配信は、競合が台頭し、事業環境がますます厳しくなっています。その環境下でも、もっと自分たちの弱みを補完し、強みを伸ばしていけるような組織づくりに、今後も挑戦していきたいですね。(了)

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