- 株式会社CAMPFIRE
- 執行役員 / CAMPFIREファンクラブ事業部・部長
- 村田 アルマ
オンライン・オフラインで共感を育てる。CAMPFIREファンクラブに学ぶコミュニティ運営
〜「盛り上がる」コミュニティには何が必要? オーナーとの「1対1の関係」を作り、共感を高めるためのオンライン・オフライン施策を紹介〜
「オンラインサロン」に代表される、月額会員制のクローズドなコミュニティが増加中だ。今や著名人やインフルエンサーにとどまらず、様々な個人・団体がコミュニティを立ち上げ、参加者との関係性を深化させている。
クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」のひとつの機能としてリリースされ、2018年4月からは独立したサービスとして運営されている「CAMPFIREファンクラブ」。
同サービスを利用すると、誰でも月額制のファンクラブを立ち上げ、運営することができる。期日を区切って資金を集める従来のクラウドファンディングとは異なり、継続的な活動費を募ることができるのが特徴だ。
事業責任者を務める村田 アルマさんは、活発なファンクラブに共通する要素として「『好き』という気持ちや『やりたいこと』を共有できていること」があると話す。
今回は村田さんと、セールスディレクターを務める𠮷田 楓さんに、実際の人気ファンクラブを例に、オンライン・オフライン双方のコミュニティ運営のコツを教えていただいた。
「打ち上げ花火」ではない、継続的な支援を誰でも募れるサービス
村田 エンジニアとして2016年にCAMPFIREに入社し、初めて作ったプロダクトがこのファンクラブです。もともとはCAMPFIRE内の機能のひとつだったのですが、2018年4月からサービス化し、私が事業責任者を務めています。
CAMPFIREファンクラブは、ファンクラブを開設することで、誰でも「継続的な支援」を募ることができるサービスです。
もともと弊社が提供してきたクラウドファンディングによる資金調達は、「打ち上げ花火」と言われやすくて。最初は盛り上がるけれど、その集まった資金が尽きたら終わり、と思われがちでした。
▼左:𠮷田さん、右:村田さん
「もっと継続的に資金を集めるにはどうすればいいだろう」と考えた結果、業界としては初めての月額制サービスをスタートすることになりました。
最近はオンラインサロンの盛り上がりもあって利用数も増加し、現在は支援者数が2万2千人まで拡大しています(※2018年の11月時点)。
今は6名ほどの常勤メンバーに加えて、リモートのエンジニア数名でサービスを運営しています。
𠮷田 私は2017年に大学を卒業し、投資用マンションの営業、SEOコンテンツの編集者を経て、2018年にCAMPFIREに入社しました。
CAMPFIREファンクラブでは、セールスの役割をアウトバウンドセールスとインサイドセールスに分けています。その中で私はインサイドセールスとして、ファンクラブのオーナーさんに対するサポートをメインで行っています。
いわゆるカスタマーサクセス的な部分と、カスタマーサポート的な部分、どちらも担当しているイメージです。
ファンクラブ立ち上げ時の注意点。会費は月額いくらにすべき?
𠮷田 新しくファンクラブを開設してくださるオーナーさんの流入経路は、大きく営業と自然流入に分かれています。
後者の場合、まずは弊社のプラットフォーム上でプロジェクトを作成していただき、そこに「継続的にどんなことをやっていきたいか」というビジョンを書いてもらいます。そこから申請・審査を経て、掲載に至るという流れです。
村田 開設の際に、そもそもオーナーさんの思いが「5W1H」揃っているかということはしっかり見ています。
というのも、盛り上がってるファンクラブに共通している要素として、「好き」という気持ちや「やりたいこと」を共有できている、というのがあるんですね。なので、誰に対しても「何を目的とした企画なのか」がきちんと伝わるようにすることが大切です。
𠮷田 例えば、400人以上が集まる「欠けた宝石が月1回届く」というファンクラブがあります。
このプロジェクトの場合、以下のような5W1Hが揃っています。
・Who :宝石業界に携わって8年のkeisukeさん(オーナー)が
・When :毎月の月末に
・Where:CAMPFIREファンクラブで
・What :ジュエリー制作時、「誤って少し欠けさせてしまった宝石」を
・Why :宝石の魅力をたくさんの人に知ってもらうために
・How :郵送でお届けする
宝石って、研磨をしている段階で欠けてしまったらもう商品にならないそうなんですね。その「欠けた宝石」を、支援してくれた人に毎月送る。シンプルに素敵なサービスですし、「宝石が好きな人」の共感を集めていると思います。
村田 また、価格に対してリターンが適正かどうか、ということも大切です。
例えば、私が「これから毎月メッセージを届けるファンクラブを作ります」と言って、月額5,000円を設定していたらおかしいじゃないですか(笑)。きちんとしたリターンが設定されているということは、大前提ですね。
例えば、もともと福岡でフリーの受託開発エンジニアをされていた入江 慎吾さんという方が立ち上げた「入江開発室」では、月額は2,980円に設定されています。
入江開発室は、技術でお金を稼いでいきたいという人が集まって情報交換するファンクラブです。なので参加している支援者は、初級〜中級者くらいまでのエンジニアが中心になっています。
2,980円って、サラリーマンだとちょうど飲み会1回分くらいの金額なんですよね。もしくは1日100円と考えることもできるので、イメージしやすい金額設定になっているかと思います。
オンラインとオフライン、双方のコミュニケーションが重要
村田 また、ファンクラブ内のコミュニケーションを、支援者の属性に応じて設計することも重要です。
コミュニケーションは、基本的にはオンライン上で行われています。CAMPFIREファンクラブの機能を使ってメッセージを送ったり、活動報告をすることもできるのですが、それぞれの特性に合わせて外部のプラットフォームを利用するケースも多いです。
例えばビジネス向けでしたら、やはりFacebookグループがメインですね。エンジニアだったらSlack、ゲームやeSportsだったらDiscord、といった形です。
先ほどご紹介した入江開発室では、当初からSlackコミュニティをアクティブにするために外部連携ツールを含めて設計していました。
僕たちもノウハウとしてプラットフォームに対する知識を持っているので、属性に合わせて活用をご提案させていただいたり、使い方の相談にのったりしています。
𠮷田 例えばFacebookコミュニティであれば、オーナーさんが投稿するコンテンツの内容がどれだけ支援者にとって興味があるか、ということは非常に大事です。
もともと何かを得たいと思って入ってきている人が多いので、例えばTwitterのように独り言をつぶやいているだけだと、どんどん反響がなくなっていくんですよ。
村田 あとは、やはり盛り上がっているFacebookコミュニティは投稿数が多いです。大体週4、5ぐらいは投稿されているイメージがあります。朝や夕方の、決まった時間に投稿をされている方もいらっしゃいます。
オーナーさんだけではなく、ファンクラブの中で運営チームを作ってうまく回しているところもありますね。
𠮷田 また、どうしてもオンラインだけだと熱量が伝わりきらない部分があるので、オフラインで会える場所を作ることも良いですね。実際、メンバーがオフ会を通じてだんだん仲良くなってきたことで、ファンクラブが盛り上がっていくケースも多いです。
村田 例えば「フットボリスタ・ラボ」というサッカー雑誌のファンクラブでは、日本代表の試合を解説つきで見られる観戦会を実施するなど、サッカーが好きなメンバーが集まって楽しめる場所になっています。
𠮷田 オーナーさんの中には「直接会うのはちょっと…」という方もいらっしゃいます。そういう方には私たちの方から、電話やSkypeを通じて、支援者さんと1対1のコミュニケーションが取れる場所を設けることを提案することもあります。
別にオフラインで会わなくても、オーナーさんと密なコミュニケーションをとれる場所があるだけでもいいんですよね。何となく「1対1の関係ができている」ということが実感できることが大事なのかなと。
例えばセミナーや講演形式の集まりであっても、その場でオーナーさんに質問ができたり、同じ場所で同じ物を食べる体験ができたり、といったことも1対1のコミュニケーションなんですね。
盛り上がっているファンクラブは、そういった体験を自発的に作れているのかなと思います。
プラットフォームとして、個人として、オーナーと向き合っていく
村田 CAMPFIREファンクラブは、言ってしまえばシンプルな月額課金のプラットフォームです。競合サービスもどんどん出てきている中、僕たちとしては、ユーザーの方とより近いポジションに居続けたい、ということがあります。
そのためにはサービスの「温かみ」が必要になりますが、それをテクノロジーで演出する場合もあるものの、最終的にはやっぱり「人」なんですよね。
例えば飲食店だったら、おいしい料理を出すシェフがいるからここに通う、ということもあるじゃないですか。僕たちもまさにそういった役割ができるように、オーナーさんと距離感近くやっていきたいと思っていて。
オーナーさんと一緒に、1つひとつのファンクラブのLTVをどれだけ伸ばしていけるか考え実行していく。これが僕たちの仕事の醍醐味でもあります。
𠮷田 CAMPFIREファンクラブというプラットフォームを使っている人の中には、きっと運営側の私たちのことを知らずにいる方もいると思うんですね。
一方で、実際にオーナーさんとお会いする機会も多いんです。そういう方からすると、私たちって「CAMPFIREの𠮷田さん」「CAMPFIREの村田さん」と認識してもらっていて。
そういった方からすると、CAMPFIREファンクラブというプラットフォームを使っているというより、CAMPFIREファンクラブの誰々さんと一緒にやっている、という感覚を持ってもらっているのかなと思っています。
今後は、「サービス 対 利用者」という関係性と、「運営メンバー1人ひとり 対 利用者」という関係性を、双方深めていけると良いですね。(了)