- 株式会社bosyu
- 代表取締役
- 石倉 秀明
入社前の「お試しJOIN」で、採用のミスマッチをなくす!bosyu社の採用手法を公開
〜「わからなければ、やってみる」カルチャーで、自社にフィットした採用の形を追求。世間の慣習に囚われない、bosyu社の採用プロセスの全貌〜
コストをかけて採用したけれど、カルチャーやスキルが合わず、思うように活躍できていない…といった課題はないだろうか。
2019年7月に株式会社キャスターから分社化した、かんたん募集サービスを運営する株式会社bosyu。
同社では「プロダクトの創りたい世界」に近づくための仲間を集めるべく、2019年8月から採用を開始。人事不在ながら全メンバーが採用活動に携わることで、約半年で7名の採用に成功したという。
その手法においては、「求人票にスキル要件を記載しない」「雑談ベースの面談を行う」「代表が採用のジャッジに関与しない」「入社前のSlackジョイン」など、世間一般とは異なる特徴がある。
同社の代表取締役である石倉 秀明さんは、「『一緒に働く仲間を自分たちで集める』『会社のことを自ら発信する』ということが当たり前に思う人を、最初から集めにいく。そのカルチャーの濃さが、bosyu社の採用における強み」だと語る。
今回は石倉さんと、bosyuのプロダクトマネージャーを務める松本 航洋さんに、同社の採用プロセスの全貌についてお伺いした。
※編集部注:本取材は、オンラインで実施しております。
「bosyuの創りたい世界」に近づくため、採用活動を開始
石倉 僕は、2016年3月に設立した「働き方ファーム」という会社で、ベンチャー企業を中心とした採用支援を行っていたのですが、その顧客の1社としてキャスター社に出会いました。
そのご縁から同社の取締役COOに就任し、現在はその子会社であるbosyu社の代表取締役を兼任しています。
かんたん募集サービス「bosyu」は、もともとBasecamp社の坪田さんから事業譲渡を受け、キャスター社で運営されていた事業です。
当時、キャスター社のオンラインアシスタントサービス「CASTER BIZ」が成長軌道に乗っていた一方で、bosyuは初のCtoCサービスとして、これから伸ばしていくフェーズで。事業特性も必要な人材も異なる事業を、同じ会社で並行して展開していくことの難しさを感じていました。
また、bosyuを通じて「個人のスキルや経験をもとに、企業に所属するだけでない多様な働き口を簡単に見つけることができる」といった世界観を実現したいと思ったときに、時間をかけて取り組むべき事業だろうという考えもありました。
こうした背景から、bosyuという事業に会社としてきちんと投資するため、僕が代表に就く形で2019年7月に分社化することになりました。
▼左:石倉さん、右:松本さん
松本 僕は、bosyuが分社化した翌月から、フリーランスとして事業に関わり始めました。2020年3月からは、正社員に雇用形態を変えています。
前職では大手のコンサルティング会社を経て、いくつかのスタートアップで事業開発や新規事業の立ち上げをしていました。現在は、bosyuのプロダクトマネージャーとして、プロダクト開発からチームづくりまでを担っています。
分社化した当時、7〜8名のメンバーが、キャスター社から出向する形や業務委託としてbosyu社に在籍していました。そのメンバー全員で、2019年8月に、今後の事業の方向性やロードマップを話し合ったんですね。
そこで「bosyuの創りたい世界」に近づくためにはこういう人が必要だよね、という話が出てきたことがきっかけで、採用活動をスタートしました。
求人票に「経験・スキル年数」は不要? bosyu社の採用要件とは
石倉 bosyu社では、メンバー全員がフルリモートで働いており、正社員から副業、業務委託、フリーランスまで、様々な雇用形態のメンバーがいます。この形態による報酬や権限などの違いはありません。
今は16名が在籍していて、うちフルタイムに近いメンバーは10名です。エンジニア・デザイナーなどの開発サイドが9名、ビジネスサイドが7名という体制ですね。
なので採用においても、「フルタイムなのか業務委託なのか」「どこで働くのか」といった点は全く気にしていません。もちろん、役割によっては「週の半分以上は稼働してもらえないと厳しいかもしれない」といった観点はありますが、そこさえクリアしていれば問題ないと思っています。
松本 採用活動を始めるにあたって、最初にGitHubで求人票を作りました。
求人票では、スキル要件よりもプロダクトに対する想いやどういう人と一緒に働きたいか、が伝わる内容を心がけています。
▼実際の同社の求人票
おそらく一般的なエンジニアの求人票だと、「Ruby歴◯年」みたいな形で、スキルの経験年数を要件に書いているものが多いと思うのですが、bosyu社では一切記載していません。
その代わりに、たとえば「雑談していて楽しい」といったカルチャーだったり、「雇用形態に関係なく採用に協力できる」「一緒にビジネスの議論ができる」といった仕事の取り組み方などを要件として記載しています。
いわゆる求人サービスは使っていませんが、活動を始めておよそ半年で、7名のメンバーを採用することができました。
母集団は形成しない。日々の情報発信で、潜在的な関心層を増やす
石倉 採用には「母集団形成」の考え方があると思いますが、弊社では特に意識していません。
極端な話をすれば、1名応募がきて1名採用できるのが理想じゃないですか。なので応募数を増やすよりも、bosyu社に関心のある潜在層を増やすような活動を意識しています。
松本 具体的には、普段から各メンバーが情報発信することをすごく大事にしていますね。たとえば僕の場合は、プロダクトの話を定期的にnoteで出したり、会社の動きをTwitterで発信したりしています。
▼求人と相性のよいnoteを書いて、bosyuを拡散
石倉 こうした日々の情報発信で認知を広げておいて、いざ人が必要となったときにbosyuをする。そのタイミングで、会社に興味をもってくれていた潜在層の人たちが反応してくれる状態を、いかに作り続けられるかが重要だと思っています。
松本 また採用情報は、Slackのオープンチャンネルで基本的にすべて公開しているので、今どのポジションで採用しているのかが誰でも見られます。
プロダクトの定例ミーティングでも、採用に関する情報共有を行ったりするので、全メンバーが採用に対する意識を日頃から持っていますね。
雑談ベースの面談と入社前のSlackジョインで、カルチャーを確認
松本 応募後の選考フローとしては、「面接」というよりも「カジュアル面談」の連続です。
どのような質問をするか、何人以上と会うか、といったルールは特に設けていません。そこは候補者との「関係性の深さ」によって柔軟に変えています。
たとえば全く知らない人でも、2年くらいTwitterで絡んでいたりすると、ある程度「人となり」がわかったりするじゃないですか。そういう場合は、通常1対1の面談を1対2にして、ステップを早めたりもします。
初回は事業説明をするので僕が担当することが多いですが、そのあとの面談は、基本雑談ばかりですね(笑)。だいたい3〜4回ほど面談を重ねて、メンバー全員が「この人と働きたいと思えるかどうか」をもとに判断しています。
石倉 僕は、採用のジャッジにほぼ関与していないですね(笑)。最後の条件面の調整くらいです。
まだ転職自体を迷っていたり、検討段階であるような方に対しては、NDAを交わした上で会社のSlackにジョインしてもらうこともよくあります。
というのも、全員リモートで働いているので、bosyu社にとってのSlackってオフィスみたいなものなんですよね。そこにジョインしてもらえば会社の雰囲気が全部わかるので、実際に働くイメージが持てるかどうかを確認いただいています。
短期プロジェクトを任せ、実務を通してスキルフィットを見極める
松本 こうした面談やSlackのジョインを通じて、カルチャーにフィットしそうかは判断できる一方で、仕事の進め方やスキルフィットの見極めが難しくて。
実際、メンバーのリファラル経由で入っていただいた方が、実務をしていく中で仕事の進め方や考え方で少し合わない部分があることがわかり、結局うまくいかなかったことがありました。
なので最近では、職種にもよりますが「一緒に働くお試し期間」を設けることで、カルチャー・スキルの両面でチームに合うかどうかを判断しています。だいたい週1〜2日の稼働で、1ヶ月くらいで完了できる短期プロジェクトを担っていただきます。
このプロジェクトは、採用のために新しく作り出したものではなく、通常のタスクとして積まれているプロジェクトの中から選んでいます。小さいタスクしかない場合には、複数組み合わせて用意したり、逆に大きいタスクしかない場合には、分解してお渡しするようにしていますね。
業務を遂行する上で必要な情報はすべて開示しますし、社員と同じミーティングにも出ていただくので、本当に一緒に働いているような形です。
▼お試し期間を経て、正式ジョインした際のSlackの様子
また、最初に「ジャッジする日」を明確にするようにしています。この日にはお互いきちんと判断しましょうね、という期日を握っておくことで、判断を先延ばしにすることを避けていますね。
石倉 会社にフィットするかどうかは、やはり一緒に働いてみるのが一番よくわかると思うんですよ。お互いによくわからない部分があれば、「まずは一回やってみる」ことを大切にしています。
その結果、最終的に「フィットしなかった」という判断になることもありますが、候補者の方も同じように感じていることが多いですね。
むしろ「いい体験ができてよかったです」「一緒に仕事できて楽しかったです」といった言葉をもらえることも多いですし、選考後もTwitterでのやり取りが継続することもあったりして、良い関係性を築けているかなと思います。
「人の集合体 = カルチャー」の濃さが、採用の強みになる
石倉 僕は、企業の文化は集まっている人の「集合体」でしかないと思っていて。カルチャーを定めてから根付かせることも不可能ではないですが、それってすごく大変だと思うんです。
だからこそ「一緒に働く仲間を自分たちで集める」「会社のことを自ら発信する」ということが当たり前に思っている人を、最初から集めにいく。そうしたカルチャーの濃さが、bosyu社の採用における強みかなと思います。
また、採用を「人事の仕事」にしてしまうことの弊害もあるかなと思うんですね。もちろん会社の規模にもよりますが、定常的に採用が発生しないうちは、採用人事を置く必要はないと考えています。
代表の立場でいえば、会社のことをただの「箱」だと思っていて。そこに集まった人たちの動きを、いかに邪魔しないかということを大切にしています。
小さな政府、大きな政府のような話でいうと、「めちゃくちゃ小さな政府」みたいなものをずっと考えていますね。
松本 一緒に働く人は自分たちで連れてくるのが健全だと思っていますし、「もし採用できなくても最悪自分たちでやろう」という考えでとりあえずやってみる。その文化がベースにあり、結果として良い循環が回っていると思います。
今後は、事業フェーズに応じて在るべき組織体制をみんなで見極めながら、事業上必要なタイミングに合わせて採用をしていきたいと思っていて。
組織のカルチャー濃度を保ちながら、bosyuというプロダクトを育てていきたいですね。(了)