- エン・ジャパン株式会社
- ブランド企画室 広報責任者
- 清水 朋之
最初の「50本」までは我慢。エン・ジャパンに学ぶWeb社内報・YouTube継続運用のカギ
社内報や採用ブログなど、社内外へのコンテンツ発信に励んでいるものの、なかなか成果につながらず運用が辛い…。このような悩みを抱える人事や広報は、少なくないのではないだろうか。
総合人材サービスを提供するエン・ジャパン株式会社では、2015年より誰でも閲覧できるオープンWeb社内報「en soku!」を展開。
さらに2019年には、デジタル・ネイティブ世代の入社に合わせてYouTubeチャンネル「しみねーのWelcome エン・ジャパン」をスタートし、社員を存分に巻き込んだ社内広報に成功している。
▼社員にフォーカスした社内報YouTube「しみねーのWelcome エン・ジャパン」
同社ブランド企画室にて社内外に向けた広報活動を担当する傍ら、YouTubeでは自らがタレントとして登場する清水 朋之(通称:しみねー)さん。
清水さんは、「社員にとって『社内報を見ること』が習慣化されることがとても重要。そのためには運用の継続がカギになるので、最初に更新頻度を決めた上で、『こだわりすぎない』ことも大切」と話す。
実際にYouTubeの運用を開始した際も、最初の50本までは再生回数もなかなか伸びない状態だった。しかし毎週着実に発信を重ねることで、社内外から反響を得られるようになったのだという。
社内報のコンテンツは、「どういう人に届いて、どうなったら良いか」を事前にしっかり考えておくことが大切という清水さん。今回は、社員を巻き込む社内報運用のコツについて、詳しくお話を伺った。
2,000人が「理念」を共通言語としてつながる組織、エン・ジャパン
エン・ジャパンは、総合人材サービスを提供する会社です。総合求人サイト「エン転職」をはじめ、人材紹介サービス「エン エージェント」や、ミドルの転職「AMBI(アンビ)」など、複数のサービスを国内外で展開しています。
私は、新卒で2014年にエン・ジャパンに入社し、2022年の4月で9年目を迎えます。入社後は営業を2年間経験した後、ディレクターと呼ばれる求人原稿の制作も2年担当しました。そして社内公募で広報に異動して、今に至っています。
現在は、社内外に向けた広報活動を担いつつ、その一環としてWeb社内報「en soku!」と社内向けYouTubeチャンネル「しみねーのWelcome エン・ジャパン」を運営しています。
「しみねー」は私の愛称で、新卒社員から会長まで、みんなからそう呼ばれています(笑)。
▼エン・ジャパン株式会社 ブランド企画室 広報責任者 清水 朋之(通称:しみねー)さん
広報に手を挙げたのは、もともと管理部門に行きたい気持ちがあったからです。こう言うとちょっと胡散臭く思われるかもしれませんが、私は本当に自社と自社のサービスが大好きで。
営業やディレクターとして、自社サービスをクライアント様にご提案し、良さを伝えていくことにもやりがいを感じていたのですが、徐々に自分が所属する組織に貢献したいという思いが強くなっていったんですね。
弊社は新卒から経営層まで、経営理念が文字通り全員に浸透して「共通言語」になっているんです。さまざまなバックグラウンドをもったメンバーが、さまざまなサービスに携わっていても、皆が理念に共感しているので同じ方向を向ける。
今、全体で2,000人ほどが所属していますが、そんな会社はなかなかないんじゃないかなと思います。
「我が社のサービスにはこういう思いが込められています」という形で、その理念を内にも外にも伝えられる広報の仕事であれば、自分のこれまでの経験も活かせるのかなと。
色々と苦労もしましたが、最近ではようやく「広報は天職かも」と思えるようになってきました。
リアルな自分たちの姿を伝えたい。2015年からWeb社内報を外部公開
弊社の広報活動は、私の所属している「ブランド企画室」が担当しています。現在は4名が所属しているのですが、社内外の双方に向けた活動をすべて担っているので、かなり少数精鋭ですし、正直大変なこともあります(笑)。
ですが、社内報の記事が採用広報に役立ったり、別のメディアで事例として取り上げられたり。ひとつのネタをひとつの記事で終わらせずに、マルチメディア的に発展させて複合的な効果を得られることが、チームの強みになっていると思います。
社員にとっても、自分の記事が外に広がっていくことは嬉しいものなので、そういったつながりが生まれると「また広報に協力しよう」と思ってもらえます。
Web社内報「en soku!」を外部に公開しているのも、同様の背景からです。前身の社内報は完全に社内向けのものだったのですが、社員から「家族に見せてはダメか」「SNSにアップしたい」などリクエストをもらっていて。
▼オープン社内報メディア「en soku!」
「よくよく考えたら、外部に公開しても問題ないし、むしろ公開したいね!」となり、現在のオープンな形が生まれました。
また、「en soku!」を立ち上げた当時、弊社には「堅い」会社のイメージがついていました。実際は社員も社風もすごくフレンドリーなのですが、外からはそう見えていなかったので、リアルな自分たちの姿を伝えることが、社内報を外部にも公開する最大の目的でした。
あくまでも「社内報」ではありますが、会社の空気を伝える内容であれば、外部に公開しない理由はあまりないかなと思います。もちろん社員のプライバシーには最大限配慮は必要ですが…公開することによって得られるメリットはすごくたくさんあります。
社内報は継続が命。コツは「更新頻度」と「こだわりすぎない」こと
社内報の活動による「メリット」を社内に伝える際には、広報から直接伝えてもなかなか理解されないのが現実です。
ですが、社員にとっての第三者、例えば家族に見せると「すごく良い会社だね!」と言ってもらえたりするんですね。こうした実体験がとても重要で、そのためにも、社内報は「継続する」ことが大切になります。
例えば「en soku!」は、平日はほぼ毎日更新しています。継続するために大事なことは、まず最初に「更新頻度を決める」ことと、「こだわりすぎない」こと。実際、「en soku!」の記事の多くは写真がメインで、執筆のしやすさと読みやすさを重視し、あえてテキストは少なくしています。
最も重要なのは、社員にとって「社内報を見ること」が習慣化されること。「今日も何か更新されているはず」とページを見にいく習慣ができれば、社員にとって社内報が身近なものに変わるんです。
YouTubeチャンネル「しみねーのWelcome エン・ジャパン」についても、最初に「毎週更新する」と決めて、社員にとって新しい習慣を生み出すことを目指していました。
動画という手法を選んだ背景としては、Z世代の若い世代が社員に増えていく中、彼らにマッチした新たなコンテンツを企画していく必要性を感じていたからです。
それをカバーするために、入社3年目以内の20代の社員をターゲットに、身近な動画プラットフォームを使ってスタートしました。
▼様々な社員の方が登場する「しみねーのWelcome エン・ジャパン」
最初は自分が登場するつもりはなかったのですが、楽しくポップにエン・ジャパンの良いところを届けるコンテンツにしたかったので、もうやるしかないなと(笑)。「en soku!」が社内に浸透していたこともあり、社員が動画制作にも快く協力してくれるので、すごく助けられています。
とは言え、最初からすべてがうまく行っていたわけではありません。しばらくは全然チャンネル登録数も増えないし、再生回数もなかなか伸びず…。
投稿数が50本を超えてからようやく再生回数が安定し、外部にもコンテンツが届くようになっていきました。
最近反響が大きかった動画は、コロナ禍で入社した新入社員をゲストに呼んで話を聞いた企画です。コロナ禍で入社式もできず、同期とも対面で会えず。何なら就職活動もオンラインでやって…一度も出社することなく在宅勤務している社員をゲストに「どんなことがつらい?」「どんなふうに頑張ってる?」とインタビューしたんです。
▼リモート入社世代の本音に迫ったYouTube企画
そうしたら、自分も同じ不安を抱えている内定者の人や若手社員から反応があって。コロナ禍でも頑張っている先輩の姿を見て、頑張ろうと思ってくれたみたいで、本当に嬉しかったですね。
ちなみに「en soku!」と「しみねーのWelcome エン・ジャパン」の棲み分けについて聞かれることがありますが、「en soku!」はあくまでも幅広く、「今日のエン・ジャパンであったこと」を伝えることが目的です。
一方でYouTubeは、その中でも特に社員にフォーカスしています。やはり人に魅力がある会社なので、一人ひとりに着目することで自社の魅力を発信していきたい。両者、それぞれ目的を持って、同時に運用している形になっています。
「この記事が誰に届いて、どうなったら良いか」を常に明確にする
社内報の活動において、具体的な数値目標は立てていません。最低限の数字の振り返りはしますが、それよりも重視しているのは、「届けたい人に届いているか」ということです。
例えば、リモートワーク下で、家事・育児・仕事に大変なママ社員の悩みに寄り添った動画を撮ったのですが、ただそれをアップするだけではあまり再生回数は伸びなかったんですね。
でも、社内の一斉メールでターゲットであるママ社員に動画を共有すると、「うわー、参考になります!」「悩んでいるのは自分だけじゃないんだと思えました!」といったリアクションが返ってくるんです。
▼コロナ禍以前の2019年には様々なメンバーと撮影も
こうして、ターゲットを明確にした上で、しっかりとコンテンツを届けていく。このコンテンツがどういう人に届いて、どうなったら良いか、ということを事前にしっかりイメージして、具体的な行動に落としていくことが大切です。
そもそも社員は、自社の社内報になかなか興味を持ちにくいものなんです。その前提がないと、「せっかく社内報を書いたのに読んでもらえない」と辛くなってしまう。
だからこそ、社内でも影響力のある社員をゲストに呼んだり、社員が興味を持ちやすいトピックを取り扱ったりすることによって、なるべく関心を高める工夫も必要です。
代表的な例で言えば、社長をYouTubeに出しちゃう。そうすると自然と「え、社長がYouTubeに出たの?」と興味を引くことができます。
また、社外での評判をシェアすることも有効ですね。自分は社内報を全然見ていなかったけど、社外の人が見ているなら見ようかな、という空気を作っていく。外堀から埋めていく感覚です。
弊社は2020年4月から全社的にフルリモートに移行したのですが、社内報の存在によって社員が分断されていない感覚も持っています。今はみんな離れて働いていますが、社内報の発信を通じてリモートワーク下でも、多くの社員が会社の良さを再発見してくれたらいいなと。
今後、まだ「en soku!」でもYouTubeでも、できることがたくさんあります。ですので、やはり引き続き「継続」していくことを大切に。そしてゆくゆくは、もっと多くの人を巻き込んでいきたいと思っています。(了)
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ライター:黒木 あや
企画・編集:舟迫 鈴(SELECK編集部)