- Neo Samurai Monkeys
- ファウンダー
- Big Hat Monkey
NFTは「売って終わり」ではない。「Neo Samurai Monkeys」コミュニティの熱が冷めない理由
2021年夏、「Crypto Punks(クリプトパンクス)」「Bored Ape Yacht Club(ボアードエイプヨット クラブ)」など、世界的なNFTアートブームが到来した。
成功したNFTアート作品は1つ数千万円で取引されることもあり、アーティストたちにとってはまさにドリームである。その海外の成功者を追いかけるように、日本国内でも2022年に入ってからNFTアート市場が急激に拡大した。
この流れに乗ろうとさまざまなNFTアーティストが誕生しているが、毎日激しく変動する新しい市場のため、その盛り上がりを長く続けていけるNFTプロジェクトは多くない。
そんな中、2021年には最初のNFTアート「Big Hat Monkeys(以下、BHM)」をセールし、その後も音楽NFTやプログラムで自動生成されるジェネラティブNFTアートなど、いくつもの斬新なアイデアをもってプロジェクトを連続で立ち上げてきたのがBig Hat Monkeyさんだ。
彼が主導する最新プロジェクトである「Neo Samurai Monkeys(以下、NSM)」では、2022年5月のセール時に今後のロードマップを発表し、セール後も開発が続くことを明らかにしていた。
加えて、2022年9月1日には、NFTを長く保有しつづけるファンに向けた独自のポイントシステムである「SALトークン」を実装。
これは、今後5年間、1つのNSM保有につき毎日5個ずつ自動的にトークンが貯まり続けていく仕組みだ。貯まったトークンは、2つ以上のNSM保有を条件に、新たな限定NFTを無料発行(フュージョン)する時に消費できる。
NFTを売って終わりではなく、購入後もずっとわくわくする仕掛けを用意しながら盛り上がりを維持している本プロジェクト。今回はその仕掛け人であるBig Hat Monkeyさんに、プロジェクトを始めた頃のお話から、今後の展望までを詳しくお伺いした。
第4弾まで連続して登場!「おサルさんのNFTプロジェクト」の全貌とは
僕がNFTと出会ったのは、2021年10月頃です。もともとイベント会社でプロデューサーをしていたのですが、新しいことを始めようと独立して。当時、ちょっと時間もあったしNFTに興味を持っていたこともあって、実際にNFTアートを活用したプロジェクトを始めてみることにしました。
ただ、僕はイラストが描けないので、まずはアイデアを一緒に実現してくれるイラストレーターさんを探すことから始め、第1弾は「Big Hat Monkeys(BHM)」というNFTアートプロジェクトを2021年10月にスタートしました。コンセプトである「夢に向かって頑張っているおサルさん」を1点ずつ描いて、最初に8体出し、そこから少しずつ追加していきました。
そして第2弾は、音楽NFTです。立ち上げる前にギャラリー型メタバースの「OnCyber」でNFTアートを飾ることが流行っていたのですが、そこにはまだ音楽NFTが無くて。音なしで絵だけが飾られているメタバース空間を見て、これは音楽があったほうが絶対に良いと感じ、大学時代に作曲した経験もあったので、僕にとって音楽の師匠のような存在である大学時代の先輩と一緒に作りました。
第3弾は360体のジェネラティブNFT「Samurai Monkeys」で、2022年1月にスタートしました。第1弾のBHMシリーズは1点物という希少性が理由で値段が上がりすぎてしまい、新規購入者から手が届かないという声があったため数を増やしました。本当は3,600体にしようと考えていましたが、当時のマーケティング力から考えて360体にしました。実は、この「360体」は「サル」を表しています(笑)。
そして第4弾が、3,600体のジェネラティブNFT「Neo Samurai Monkeys(NSM)」で、2022年5月に開始しました。これまでは夢に向かって頑張っているおサルさんを描いてましたが、元々「人間の成長」を大きなテーマとして表現をしたいという思いがあって。そこで、おサルさんがどんどん進化するストーリーを加えました。
具体的には、最初のBaby Monkeysが成長してSamurai Monkeysになり、それが覚醒してNeo Samurai Monkeysになります。そして今後はフュージョンしてヒューマンっぽいサルに進化する…というストーリーです。
▼NSMのフュージョン
1人で始めたNFTプロジェクト、その認知度が上がった理由は…
BHMの頃は、地道にTwitterスペースで音声配信をしたり、NFTを紹介してくれるツイートに自分の作品をアピールしにいったり、インフルエンサーの方に声をかけにいったりしました。結構いま、NFTアーティストの皆さんが普通にやっていることをしていましたね。
そういった活動の中で、たまたまNFT界隈で有名なZERO100さんが見つけてくれて、最初の8体のうち2体を購入してくれました。それから、ZERO100さんが当時推していたNFTアーティストの中に加わらせてもらって、僕らのことを毎日ツイートしてくれたんですよね。彼のおかげで最初の頃に知られるようになった気がします。
そして、少し認知されてきた2021年12月頃に、Discordというコミュニケーションツールを使ってBHMコミュニティを立ち上げました。
立ち上げたタイミングで、NFTプロジェクト「Neo Tokyo Punks」などのコミュニティマネージャーをされているTOMOさんが「Discordコミュニティを立ち上げませんか?」と声をかけてくれたんです。そこで、TOMOさんに最初のチャンネルを作ってもらったり、システムの整理などベース部分を作ってもらいながら僕は参加者の方とコミュニケーションを取るようにしていきました。
その後、Samurai Monkeysを準備している時期に、エンジニアメンバーの0xSumoさんと出会って具体的にどうNFTホルダーさんたちに楽しんでもらうかの仕掛けを設計していきました。
そこで、0xSumoさんの提案により実施したのが「リビール(※)」の仕掛けです。当時は国内ではあまり知られていない手法だったため、最初は自分でエアドロップして手動で配布しようと考えていたのですが、結果としてやってみて良かったですね。
※ジェネラティブNFTを一次購入したタイミングでは全員同じ絵柄のNFTアートだが、後日、一斉開封するとそれぞれの絵柄に変化する演出方法
僕はイベンターとしての経験を生かして目に見える「わくわく」を企画していましたが、0xSumoさんがシステムの深いところまで踏み込んで提案してくれたので、とても支えてもらったと感じています。
敢えて「日本語」で展開。シンプルでわかりやすいコミュニティを
コミュニティを立ち上げた最初の頃は、海外へのプロモーションも考えていたので、日本語チャンネルと英語チャンネルの両方を設けていました。
僕自身、その頃は「CLONE X(※)」を買ったりして海外NFTの動向を見ていたのですが、やはり投機目的の人が多く、価格も大きく上下していて。すぐNFTを手放す人も多いので、あまり海外にはアプローチしないほうがいいかなと思ったんです。
※NIKEのジェネラティブNFTプロジェクト。アーティストに村上隆氏を迎えて世界的な人気デジタルファッション展開をしている。
加えて、僕は英語を話せないので、海外展開してもコミュニケーションが取れないんですよ。仮に英語ができたとしてもコミュニティにいる日本のみんなはそうではないですし、それによってコミュニケーションが分断してしまいます。
訳せばわかるかもしれないけれど、それじゃ温度感が伝わらないじゃないですか。だから、まずは日本のNFTホルダーさんを大事にする方が良いコミュニティになると思い、方針を変えました。
そこで第4弾のNSMからは、基本的にプロモーション施策は日本向けに絞ってDiscord上のチャンネル名を日本語にし、NFTホルダーさんとのコミュニケーションも日本語中心で行うようにしました。
また、一般的にNFTアートプロジェクトのコミュニティでは、英語のチャンネル名で複数のチャンネルが立ち上がることが多いのですが、ホルダーさんからするとどこに書き込めばいいか一目でわからないんですよね。そこでチャンネル数をめちゃくちゃ少なくして、シンプルにわかりやすいコミュニティにしました。
▼Discordコミュニティ「モンキーズ」の様子
BHMコミュニティは本当に温かくて、みんな優しくて良い人ばかりなんですよ。
NFTを新しく購入されてコミュニティに参加された方が「はじめまして!」と来たら、みんな歓迎コメントをしています。昔からいる人が偉そうにしたり、マウントを取ったりしないんですよね。だから新しい方もすぐに馴染んでくださる。とても仲間感があります。
参加者から運営メンバーを募集。役割を持った13の「部隊」も活動
コミュニティにおいては、僕が自分でメンバーとコミュニケーションを取ってきましたが、2022年2月頃になると、チャットの数も増えて返しきれなくなってきました。そこでスタッフを入れようと思い、コミュニティの中で「どなたか手伝ってくれませんか?」と募集したら6人の方が手を挙げてくれて、運営メンバーになってくれました。
運営メンバーの主な役割は、新しい方が入ってきた時にお世話をしたり、問い合わせ対応をしたりといったことです。特にDiscordが得意なガリバーさんには、まとめ役であるコミュニティマネージャーを担当してもらっています。
今までで一番大変だったのは、NFTを優先的に購入できる権利である「ホワイトリスト」の配布です。日々、大量の問い合わせが来るので、みんなで協力して対応していきました。
また、300人にNFTを1つずつ無料配布するエアドロップをした時にも、僕1人では大変なので、40個ずつ手分けして配布してもらいましたね。
この運営メンバーとは別に、いまBHMコミュニティには13の部隊があり、13人の隊長がいます。その方たちも色々なことをサポートしてくれたり、自分たちの部隊を盛り上げてくれています。
実は部隊によって役割が違うんです。例えば、弓矢隊は情報を拡散する役割がありますし、サウナととのい隊というサウナ情報を共有するくらいのゆるい部隊もありますね。隊長によってコミット具合も違いますし、皆さん自律的に活動されています。
新しく部隊を作りたい場合は「こういう役割で、この武器を持つことが入隊条件で、こんな部隊を作りたいです」とコミュニティで立候補するんです。「いいねが10個ついたら部隊にしましょう」というルールだけ僕が決めましたが、その後は皆さんで自由にやっていますね。
▼Discordコミュニティ「モンキーズ」の部隊部屋
長くNFTプロジェクトを続けるカギは「わくわく」と「信頼」
長くプロジェクトを続けていくために、基本的には2つのポリシーがあります。「NFTのホルダーさんにわくわくしてもらうこと」と「信頼をしっかり獲得していくこと」です。
例えば先日、これからのプロジェクトロードマップを絵文字だけでツイートして、その後に音声配信で発表しました。わくわくして欲しかったので、エンタメと情報の伝達として絵文字を使ってみました。
▼Twitterスペースでロードマップを公開した時のツイート
この「わくわく」は、みんなが想像しているよりもちょっとすごい!くらいの「120%増し」を意識しています。絵のクオリティや音楽のクオリティも、みんなが想像しているよりも高いものを出すことで、感動が生まれるんですよね。そういった感動も共有し続けていきたいです。
また、「信頼をしっかり獲得していくこと」については、2022年1月にセールしたSamurai Monkeysを持っている方を対象に、2022年9月にメタバース上で使える音楽NFTを無料配布しました。
新しくNSMが出たから1つ前のSamurai Monkeysはもう終わり、じゃなくて、その頃からずっと応援してくれた方に、持っていてくれたことでちゃんとメリットがあるようにすることも信頼につながってくると思うんですよね。
▼実際に配布されたメタバース上で利用できる音楽NFT
加えて、SALトークンの仕組みも「信頼」に繋がっていると感じています。これはNSMを1体でも持っていると、毎日SALトークンが5個ずつ自動的に貯まっていくものなのですが、これはたぶん誰も想像してなかったと思います(笑)。
このSALトークンは、NFTアートを1つ持っていればSALトークンが5個、5つなら25個と毎日自動的に増えていくので持っていて楽しいんですよ。「もう1つNSMを持っておこう」という気持ちになってくれたら嬉しいなと。
▼SALトークンの仕組み
貯まったSALトークンは、2つ以上のNSM保有を条件に新たな限定NFTが貰える「フュージョン」で消費できます。トークンが貯まった先に何かが貰える、そのためにSALトークンを集めればいいんだよね、という形で未来を見せています。そうしなければ、10,000トークンもらっても「それ、どうするんだっけ?」という気持ちになっちゃいますよね。
こうした、未来を見せる「ロードマップ」はNFTプロジェクトでは重要だと思われがちですが、僕個人としては無くても良いものだと思っていて。あくまでも、わくわくをNFTホルダーの方々と共有するための一手段だと捉えているので、「全部やりきるよ」という姿勢を示して信頼を失わないようにすることの方が大切だと思いますね。
「We are Dreaming Monkeys.」を実現するための新たな挑戦も
僕らのコミュニティコンセプトには「We are Dreaming Monkeys.」という大きな括りがあり、おサルさんたちが夢を語り合っている温泉というテーマがあります。この実現のために、新しく「Dreaming Monkeys Project」という人の夢を叶えるプロジェクトをスタートさせ、コミュニティに参加してくださっているの方とのコラボレーションを企画しています。
▼「We are Dreaming Monkeys」のコンセプト
その第一弾として、僕がずっと好きだったアーティストのblue²さんと一緒にジェネラティブのNFTプロジェクトを作ろうとしています。ホルダーさん向けのコミュニティの立ち上げ部分は僕がサポートしたりしながら、BHMコミュニティ全体で盛り上げていきたいですね。
第二弾は、グッズ制作者のいなみかずやさんです。いなみさんは、NFTグッズの制作を通じて日本中や、世界にも日本のNFTを届けたいという思いがある方で、BHMやNSMのIPをフリーで渡して自由に使ってもらっています。BHMコミュニティの熱量でこういったクリエイターの方々の活動を後押ししていけると良いなと思います。
今後も第三弾、第四弾と、夢を応援するプロジェクトを作っていきたいです。BHMコミュニティにも、「人の夢を応援したいから」という動機でより多くの人が集まってきてくれると嬉しいですね。温かいコミュニティなので、もっとみんなに知ってもらって、もっとわいわいできたら楽しいなと思います。
僕は元々イベントプロデューサーですし、アートは一つの手段に過ぎないと思っているので、やっぱりNFTアートのその先にいる人たちを楽しませていきたいです。2023年には、7都市ぐらいの全国行脚をしたいんですよね。近くの皆さんで集まってイベントやオフ会のような交流ができると良いですね。(了)
【読者特典・無料ダウンロード】UPSIDER/10X/ゆめみが語る
「エンジニア・デザイナー・PMの連携を強める方法」
Webメディア「SELECK」が実施するオンラインイベント「SELECK LIVE!」より、【エンジニア・デザイナー・PMの連携を強めるには?】をテーマにしたイベントレポートをお届けします。
異職種メンバーの連携を強めるために、UPSIDER、10X、ゆめみの3社がどのような取り組みをしているのか、リアルな経験談をお聞きしています。
▼登壇企業一覧
株式会社UPSIDER / 株式会社10X / 株式会社ゆめみ