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ブロックチェーンの「Polygon(ポリゴン/MATIC)」とは? イーサリアムとの関係性から活用事例まで

NFTブームの到来と共に、多くの人がWeb3の世界を楽しめる環境が整ってきている昨今。

その環境の構築に大きく貢献している暗号資産のイーサリアムは、スピーディさと安定性、安全性を兼ね備えていることから、世界中で人気を集めています。しかしその一方で、取引の手数料として発生する「ガス代」の高騰や、処理速度の低下といった問題が浮き彫りになっているのが現状です。

こうした課題を解消すべく登場したのが「ポリゴン(Polygon)」です。ポリゴンはイーサリアムのサイドチェーンの一つで、高い処理速度や低い手数料が魅力として知られています。

そして、2022年6月に日本に上陸して以降は、bitFlyerやDMM Bitcoinなどの大手取引所で売買が可能になり、その後もナイキやスターバックスといった大企業で採用されるなど、着実に利用事例を増やしながらユーザーの注目を集めています。

そこで今回は、ポリゴンの概要から注目される背景、今後の展望までを解説していきます。ぜひ最後までご覧ください。

<目次>

  • 「ポリゴン(Polygon)」とは?その概要と注目すべき2つの理由
  • ポリゴンの歴史とこれまでのあゆみ
  • イーサリアムが抱える「スケーラビリティ問題」と、解決策「L2」とは?
  • 【事例4つ】ポリゴンチェーンを採用している会社をご紹介

<編集部より>本記事に掲載している情報は、記事公開時点のものになります。Web3.0の世界は日々変化していますので、「DYOR(Do Your Own Research)」の前提で記事をご覧いただけますと幸いです。記事の内容についてご意見や修正のご提案がございましたらこちらまでお願いします。

「ポリゴン(Polygon)」とは?その概要と注目すべき2つの理由

ポリゴン(Polygon/MATIC)」は、イーサリアムをより普及させるために開発されたセカンドレイヤー(レイヤー2)ソリューションの一つです。

詳しくは後述しますが、トランザクションの速度を向上させることを目的として、主にNFTやDeFi、GameFiが数多く構築されているイーサリアムのエコシステムの拡大に寄与することを目指しています。

ポリゴンが開発された当初は「Matic Netowork」という名称だったことから、現在でもポリゴンが独自に発行しているトークンは「MATIC」の名称で知られています。ポリゴンチェーン上のネイティブトークン「MATIC」と、イーサリアムベース(ERC-20)のトークン「MATIC」の2種類が存在しており、供給量が100億より多く流通しないよう制限されています。

用途としては、ポリゴンネットワークでの取引に伴う手数料や、ポリゴンの開発・運用を担っているエンジニアへの報酬、ガバナンス(投票)に利用されています。

昨今、ポリゴンが注目を集めている理由は、大きく以下の2つが挙げられます。

1.高速なトランザクション処理と、低い手数料(ガス代)

まずは、イーサリアムよりも高速にトランザクション処理ができる点が挙げられます。

ポリゴンは1秒につき約7,000件のトランザクションを処理でき、平均ブロック処理時間はわずか2.1秒と、非常に高速です。イーサリアムが1秒間に実行できるトランザクション処理数が10〜15であることを踏まえると、ポリゴンの通信速度の速さがわかります。

また、手数料の面でもポリゴンは優れています。Polygonscanによると、2023年4月時点でのポリゴンの手数料はイーサリアムの7分の1以下とされています。

※出典:Polygon Gas Fees is 7x Cheaper Than Ethereum – THENEWSCRYPTO

これらが実現されている背景として、ポリゴンが「Proof of Stake(PoS)」と呼ばれるコンセンサスアルゴリズムを採用していることが挙げられます。

まず、ビットコインなどが採用している「Proof of Work(PoW)」は計算量や処理スピードに応じて報酬が発生する仕組みとなっています。そのため高性能なマシンを持つマイナーが圧倒的に有利とされ、個人参入の障壁や膨大な消費電力、「51%攻撃のリスク(※)」などが課題として挙げられていました。

※マイニング市場において、悪意のある個人や団体がブロックチェーン上での取引承認権の51%以上を支配することで、不正な取引が承認されてしまう行為のこと

一方で、PoSのマイニング報酬は通貨の保有量と保有期間に基づいて決められるため、PoWと比較して物理的リソースによる格差が小さくなり、より多くの人が参加できるようになることで、更なる分散化の促進とセキュリティ面の強化が期待されています。

また、PoSは大幅に電力消費量を抑えることができるため、エネルギー効率の面でも高い評価を受けています。イーサリアムもかつてはPoWを採用していましたが、2021年9月に実施された大型アップデート「The Merge」によりPoSに移行し、環境負荷の軽減を図っています。

実際、ポリゴンは2022年4月に発表した「Our Green Manifesto」にて環境に配慮する方針を示し、CO2削減に関する具体的な取り組みも展開しています。

2.イーサリアムとの互換性

ポリゴンは、イーサリアムのL2のスケーリングソリューションとしての役割を果たしていることから、イーサリアムのセキュリティの高さを担保しながら取引効率を上げることができます。加えて、すでにイーサリアムチェーンで構築されているサービスをポリゴンへ移植する際にも、そのハードルが低い点がメリットとして挙げられます。

また、ポリゴンは「Plasma」と呼ばれるサイドチェーン技術を採用しています。Plasmaはメインチェーンから独立した環境で計算処理を行い、一連の取引の流れなどを要約したデータのみをメインチェーンに記録するという特性を持ちます。

これらの特性により、ポリゴンはイーサリアムと相乗効果が発揮されるように設計されており、イーサリアムの高度なセキュリティや安定性を維持しながら、安価でスピーディな取引を可能にします。

しかし、その互換性がメリットである一方で、ポリゴンはイーサリアムというベースがある上で機能するという性質を持つことから、何らかの理由でイーサリアムが機能不全に陥ったり、暗号資産としての価値を失った場合は、ポリゴンも価値を失う可能性がある点がデメリットとして挙げられます。

ポリゴンの歴史とこれまでのあゆみ

ポリゴンの開発起源は、2017年まで遡ります。当時、インドのムンバイでソフトウェアエンジニアとして働いていたジャインティ・カナニ氏を中心とした4名の開発者らによって、イーサリアムが抱える課題の解決を目指してプロジェクトがスタートしました。

はじめは「Matic Network」として設立されましたが、2021年に「Polygon」としてリブランディングし、新たなCEOとして元YouTubeのゲーム部門責任者であるライアン・ワット氏を迎え、現在に至ります。

2022年は「クリプト・ウィンター(Crypto Winter)」とも呼ばれ、米国の金融引き締め政策やステーブルコインUSTの価格暴落、FTXの破産などにより、暗号資産の市場全体が伸び悩んだ時期として知られています。しかし、ポリゴンは安定してユーザー数を伸ばし、その影響を感じさせない成長を遂げています。

実際に、Polygonscanの分析によると、ポリゴンのアクティブユーザー数は2022年6月から9月頃は20万~30万人の間で推移していましたが、10月に入ると一気に増加し、78万人以上にまで伸ばしたとされています。

その後も、ユーザー数は安定して高水準を維持しており、その背景としていくつかの理由を挙げることができます。

まず一つ目は、リブランディング後に、イーサリアム上のDEX(分散型取引所)として人気を誇る「SushiSwap(スシスワップ)」や、世界的なNFTマーケットプレイス「OpenSea」への対応を早期に実現し、市場への貢献を行っている点です。

もう一つは、2021年に設立された「Polygon Studio」の存在です。

Polygon Studioは、IP所有者のWeb3プロジェクトのローンチ支援やブロックチェーンゲームを開発するためのSDKの提供、コミュニティ形成やマーケティングの支援などを行い、ブロックチェーンゲームとNFT市場の発展を支援することを目的としています。

実際に、「Decentraland」や「The Sandbox」などの主要なメタバースプロジェクトがポリゴンを採用し、ゲーム体験の構築を行なっています。

そして現在、ポリゴンは計画通りにゲーミングチェーンとしての地位を確立しています。分散型アプリケーションの統計情報を扱う「DappRader」の報告によると、2023年4月には、UAW(=ユニークアクティブウォレット数:特定期間内にブロックチェーンのやり取りがあったウォレット数)で、1位のWAX(約31万4000UAW)に次ぐ14万UAWを記録しました。

引き続き、各国の大手ゲームメーカーがポリゴンへの移行や投資を進めているため、ポリゴンのゲーム市場は拡大していくと予想されます。

イーサリアムが抱える「スケーラビリティ問題」と、解決策「L2」とは?

イーサリアムはDeFiからNFTまで幅広い経済活動の拠点となり、パブリックブロックチェーンとしての確固たる地位を確立しています。

イーサリアムの魅力としては、誰でも参加可能な「分散化」を実現している点が挙げられますが、その一方で利用者の増加とエコシステムの急拡大により深刻な問題が浮き彫りとなりました。それが、「スケーラビリティ問題」です。

スケーラビリティ問題とは、同時に多数の取引が行われることで負荷が集中し、処理速度が落ちる問題のことを指します。これは、マイナーの処理能力や各ブロックの容量が限られていることから生じるリスクです。

また、ブロックチェーンを用いた取引における手数料は各トランザクション毎に設定されているため、取引が混み合った際は、よりマイニング報酬の良いものが優先されます。そのため、取引がどんどん蓄積していき、承認はさらに遅延、手数料も高騰する…といった負の連鎖が生じているのです。

そして、上記のような課題を解決するために開発されたソリューションが、ポリゴンなどの「L2(レイヤー2)」です。

ビットコインやイーサリアムはいわゆるブロックチェーンの土台部分として「L1(レイヤー1)」と呼ばれ、このL1に重ねて構築されたオフチェーン(※ブロックチェーン外部で取引を行うこと)をL2と呼びます。

ブロックチェーンの「スケーリングソリューション」は、L2の他にもパラレルチェーンやサイドチェーンなどがありますが、L2はL1とは異なるレイヤーで処理を行うことでL1の弱点を補う特性を持ち、L1の構造を変更せずに高速なトランザクション処理を行える点が魅力です。

L2は、L1に対する一部の役割を担うものから大部分を処理するものまで数多く存在し、取引を処理する一連の仕組みごとに分類されます。ビットコインでは、「Lightning Network」、イーサリアムではポリゴンの他に、「Raiden Network」「Optimism」「Arbitrum」などがL2として知られています。

【事例4選】あの世界的大企業も?ポリゴンを採用している企業をご紹介

最後に、ポリゴンを採用している企業の事例を4つご紹介します。

1.Nike(ナイキ)

プロのアスリートから一般層まで、多くのユーザーに愛されている、大手スポーツブランド「Nike」。同社は2022年11月に、Web3.0プラットフォーム.SWOOSH(ドット・スウッシュ)を立ち上げ、その基盤にポリゴンが採用されています。

ユーザーは、「.SWOOSH」上でデジタルのシューズやジャージなどのアイテムを入手でき、それらはゲームなどのバーチャル世界で着用できるだけでなく、実際に着用可能なフィジカルな製品を入手できたり、アスリートと会話するといった機会もあるのだとか。

なお、ナイキは2021年12月にNFTアイテムを扱うスタートアップ「RTFKT」を買収するなど、NFTやメタバースの領域にも積極的に参入し、サービスの価値向上を目指しています。新たな時代の先駆者的な存在であるナイキの動向から、今後も目が離せません。

2.Starbucks Corporation(スターバックス)

日本でもお馴染みのコーヒーチェーン、スターバックスもポリゴンを採用する企業の一つです。新たなWeb3.0体験を提供するStarbucks Odyssey(スターバックス・オデッセイ)にもポリゴンが採用されています。

Starbucks Odysseyは、スターバックスの従業員ならびに顧客向けにNFTを発行し、保有者はNFTデジタルスタンプを購入したり貯めたりすることで、限定イベントへの参加権やグッズなどの特典が得られる仕組みです。コミュニティ機能なども搭載しており、スターバックスの利用がより便利に、充実しそうな予感です。

2023年7月現在、Starbucks Odysseyは米国のみでサービスが提供されています。若い世代を中心に根強いスターバックスファンが多くいる日本にも、近い将来、上陸することを期待したいですね。

3.The Walt Disney Company(ウォルト・ディズニー・カンパニー)

いわずと知れた世界的エンターテインメント企業・ディズニー社も、ポリゴンの能力を高く評価しています。

ディズニーは毎年、独自の事業開発プログラム「Disney Accelerator(ディズニー・アクセラレータ)」を実施しています。2022年は没入感のある体験を構築する技術に特化した企業が6社選ばれ、見事ポリゴンも選出されました。ポリゴンはディズニーから資金面・経営面の支援を受けるほか、両社はデジタルグッズの開発において協業していく予定とのこと。

ポリゴンと同時に選出された企業には、ARやAIといった最新技術を取り扱う「Red 6」や「Inworld」といった、近年急成長を遂げている革新的なスタートアップが名を連ねています。そのことからも、ポリゴンは今後のネットワーク社会に変革を起こす筆頭候補として、注目されていることがわかりますね。

4.The Sandbox(ザ・サンドボックス)

ベストセラーのアメコミ「The Walking Dead」や大手スポーツメーカー「Adidas」など、数多くの著名IPと連携しているブロックチェーンプラットフォーム「The Sandbox」でもポリゴンが採用されています。

バーチャルな土地「LAND」のメインネットには元々イーサリアムが利用されていましたが、2022年4月にポリゴンへと移行され、処理速度の改善やガス代の節約に成功しています。

さらに、2023年3月にはポリゴンの分散型ID認証サービスである「Polygon ID」を実装する計画も発表しており、ユーザーのセキュリティとプライバシー保護が強化される方針です。

おわりに

以上、「ポリゴン」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。ポリゴンは、その利便性とポテンシャルが全世界で認められており、今後もエコシステムは拡大していくと思われます。

しかし、先述したように、ポリゴンはイーサリアムのサイドチェーンであることから、ポリゴンの将来性を予測する際にはイーサリアムの動向もチェックすることをおすすめします。

※本記事は情報提供を目的としており、投資を勧誘するものではございません。本記事に記載している情報は本サイトの見解によるもので、情報の真偽、各種ツールの安全性、暗号資産の正確性・信憑性などについては保証されておりません。ツールの使用や投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

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