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【Web3対談#05】職歴×ブロックチェーンで、個人が実績データを所有できる社会へ

個人や組織にまつわる多くの情報がデジタル化されたことで、新たな社会基盤として関心が高まりつつある「デジタルアイデンティティ」。

その高まりと共に、国境を超えて、個人の学歴・職歴・スキルなどのアイデンティティを証明できる「分散型アイデンティティ(Decentralized Identity)」や「VC(Verifiable Credentials:検証可能な資格情報)」といった技術が注目され、様々な領域で活用され始めています。

その一方で、プライバシー保護の観点から、ビジネスシーンにおける利活用の是非の判断が難しく、社会実装に向けての議論が積極的に行われながらも、未だ各分野での仮説検証が求められている状況とも言えます。

そうした中で、「ブロックチェーン×職歴」の実用化に取り組み、新たな社会インフラの構築を目指している企業があります。それが、NFTとVCを活用した「キャリア証明書」の発行による採用支援サービス「sakazuki」を開発する株式会社PitPaと、DID/VCを用いて個人の実績証明を可視化するプロトコル「VESS」を提供する株式会社VESS Labsです。

今回は、PitPa社の代表取締役を務める石部 達也さん(@isbtty)と、VESS Labs社の代表取締役社長である藤森 侃太郎(@kitakaze_kan13)さんに、職歴へのブロックチェーン活用が求められている社会的背景から、実際のユースケースまでを詳しく伺いました。

個人の実績を可視化する「職歴×ブロックチェーン」との出会い

──本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人の自己紹介をお願いします。

石部 僕は、2014年に新卒で入社したリクルートにて、エンジニアとしてSUUMOやAirペイ、ゼクシィ縁結びなどの開発に従事したのち、2018年5月にPitPaを設立しました。

PitPaは元々、音声メディア事業をメインに展開しており、現在も企業のブランディングや採用広報の支援を目的とした、ポッドキャスト制作事業を主軸としています。

僕とブロックチェーン技術との出会いは、千葉工業大学の学長を務める伊藤穰一さんと運営しているポッドキャスト「JOI ITO Podcast 変革への道」で、メンバーシップNFTを発行したことがきっかけでした。

▼以前、SELECKにて伊藤穰一さんに取材した際の記事もぜひ一緒にご覧ください
web3をより多くの人へ届ける。伊藤穰一氏が主催するDAO的コミュニティ「Henkaku」とは? – SELECK(セレック)

その後も、千葉工業大学の学修歴や学位の証明書をNFT/VC化させていただく機会を得たことで、企業様からもお声がけいただくようになって。それを機に、ブロックチェーンやVCを活用した「キャリア証明書」の発行による採用支援サービス「sakazuki」をスタートさせました。

藤森 私は新卒で伊藤忠商事に入社した後、ナビタイムジャパンにてエンジニアとして従事し、2021年10月にVESS Labsを設立しました。

創業のきっかけは、フリーランスで活躍する両親や友人たちが、「自分がこれまで何をやってきたか」という実績を正確に示す手立てがない、という課題感を抱いていることに気づいたことでした。

そこで、彼らの実績や経歴をDIDに紐づけることで簡単に表現できたらと思い、VESS Labsの創業に至りました。現在はDID/VCを活用したデジタルクレデンシャル管理プラットフォーム「VESS」や、Web3人材に特化した求人マーケットプレイス「SYNAPSS」などを開発しながら、海外の著名プロトコルと連携をとりつつエコシステムの拡大を目指しています。

企業内に眠る人材データを、個人が所有したいというニーズの高まり

──学位や職歴などのキャリア情報にブロックチェーン技術を活用する動きは、日本国内だけでなくグローバル規模でも注目されていると思いますが、その動きにはどういった背景があるのでしょうか?

藤森 まず一つには、2016年にSSL/TLSの専門家クリストファー・アレン氏が「The Path to Self-Sovereign Identity」という記事の中で提唱した「SSI(Self Sovereign Identity:自己主権型アイデンティティ)」が挙げられると思います。

これは、これまでのビックテック企業による中央集権的な個人データ管理ではなく、個人が主体となってデータを管理すべきであるという思想を指します。そしてこのSSIを実現するために、国際技術標準化団体のW3Cが中心となって、DIDやVerifiable Credentialといった技術フレームワークの標準化を進めています。

また、場所を問わずにグローバルで働ける機会が増えている社会的な流れからも、職歴とDID/VCをどう絡めていくかという議論が生まれているように思います。

現状は、自己申告の履歴書や職務経歴書でしか実績を証明する方法がない上に、国や文化も違えば、相手のバックボーンのコンテキストを読み取ることは難しく、ミスマッチが起こる可能性が高い。そうした背景もあり、個人のキャリア情報をデジタル上で証明できる仕組みが求められていると感じています。

石部 まさに、働き方が変わってきているというのは、大きなトピックだと思いますね。かつては、同じ会社で数十年間働くのが当たり前だったので、そこで積んできたキャリア情報にポータビリティ(可搬性)を持たせたいというニーズがそもそも存在しなかった。

それが今は、スタートアップ業界を中心に、3〜5年間のスパンで転職するのが一般的になりつつあります。また、副業やフリーランスなどの働き方が広がっていて、職歴や実績を持ち出してキャリアに活かしたいという個人のニーズも増えつつあると感じています。

加えて、今後も日本の労働人口の減少が懸念される中で、各社が採用費をかけながら日本国内で人材を取り合う状況はナンセンスだと僕は思っていて。

人材はある種、国の「共有資産」でもあると思うので、各企業内に閉じられている個人のキャリア情報をエコシステム内で共有することで、副業し合ったりキャリアアップとして転職したりするような人材の循環を作れたら、日本経済の発展にも貢献できるのではないかと考えていますね。

ブロックチェーンで作る「時間軸」が価値となる

──キャリア情報を持ち運びたいというニーズがある中、それらをブロックチェーン上に乗せることで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか?

藤森 ブロックチェーンやDID/VCを使うことの価値の一つは、「時間軸を作れること」だと考えています。Web2の世界だと簡単に書き換えられていたデータに対し、ブロックチェーンを使えば「その情報がいつ作られ、いつ更新されたのか」という履歴を、耐改ざん性をもって刻むことができます。

また、サイロ化された情報を個人に集約できるので、データを持ち運べるようになる点もメリットです。例えば、A社からB社に転職した場合、通常は新しい社員番号が振り分けられて、それぞれに付与されるデータは別のものとして存在していますが、DID/VCを使えば一つのIDにキャリア情報を蓄積することができます。

このような特徴を持つことから、例えばオンライン上のコンテンツの作者が「生成AI」か人間なのか判別しにくいケースでも、ブロックチェーンを活用し、DID/VCをリンクすれば正しく判別できる可能性があります。さらに活動履歴を何年もDIDに蓄積しておけば、「その人である」ことを証明する一要素にもなりうると考えています。

石部 ブロックチェーン技術には多くのメリットがある一方で、やはり論点になるのが「プライバシー」の問題です。 個人の情報をどこまで公開すべきか、また、どの情報をオンチェーン上に記録するかといった点はまだまだ議論の余地があると思います。

例えば、弊社が発行しているキャリア証明書は、今はNFTを発行する場合のみブロックチェーン技術を活用していて、基本的にはVCのみでオフチェーン上の情報となっています。とはいえ、VCは国際機関によって標準化されている規格ですし、国境を超えて誰もが情報の真正性を検証できる技術なので、信頼性の担保という観点からは非常に優れているんですね。

また、公開/非公開を選択できる仕様にしておけば、例えば就活時のみ人事担当者に公開するなど、個人側で情報の公開範囲をコントロールできるようになるので、ユーザーの特性やリテラシーに合わせて必要な技術を選択する必要があると思います。

「学歴」ではなく「学習歴」が可視化されると、個人の学び方が変化する

藤森 もう一つ、ブロックチェーンとDID/VCを使うメリットを挙げるとすると、より細かい粒度で個人の実績を証明できるようになります。

従来は履歴書に記載できる項目が、学校の卒業歴や会社の経歴という部分に限られていましたが、ブロックチェーンを使えば、「学歴」ではなく「学習歴」というように、その人が具体的に何を学びアウトプットしたのかというミクロな成果を可視化できるようになります。

これらが一つひとつ可視化されればモチベーションも上がりますし、個人の学び方や働き方も変わることで、採用を行う企業の判断基準も変化するのではないでしょうか。

──個人の実績証明がしやすくなれば、採用のミスマッチ防止や自己アピールの観点でもプラスになりそうです。

藤森 そうですね。社内の一部でしか共有されていなかった評価やパーソナリティの部分も可視化できると、自己アピールの要素も増えると思っていて。例えば、「メールのレスポンスが早い」「絶対に遅刻しない」といった部分も、実績として証明できたら面白いですよね。

弊社で開発している「VESS」は、学修歴や職歴に留まらず、講座の修了証やインターンシップ修了書、学生証、社員証、イベント参加証明など、様々な分野のデジタル証明書を発行していただけるのが特徴です。

例えば「VESS」を活用したVCの例として、過去にいくつかのビジネスイベントで参加者や登壇者の方へ参加証明を発行しています。また、VESSが共催したイベントで「VESS Card」というNFCを活用したデジタル名刺のようなものをお配りしたことがあるのですが、そのカードを使って「そのイベントでこの人と出会った証明」を発行する取り組みも行いました。

▼【左】VESS Cardのイメージ【右】実際に配布されたイベントの参加証明

そういったデータを1箇所にまとめて個人のアイデンティティを表現できれば、無理して「ガクチカ」を作ったりせずに自分に合った企業選びができると思いますし、より生きやすい社会になるのではと思っていますね。

石部  「学習歴」を可視化したユースケースとして、千葉工業大学で開講された「Web3概論」授業で、ブロックチェーン技術を使って学生の学習歴を可視化した取り組みをご紹介します。

この授業は2023年の春に開講されたもので、講座内で流通する「cJPY」というトークンを発行し、ゲーミフィケーション的なインセンティブ設計を行うことで、学生の貢献度や成績評価を可視化する仕組みを導入しました。例えば、テストの正答数やハッカソン等のイベントへの参加といった行動に対し、トークンが付与される形です。

※オンチェーン情報の分析ツール「Dune」で可視化された学生の学習歴はこちらからご覧いただけます

そして、修了者にはNFT/VCを発行し、一部の希望者にはWeb3事業を展開する企業のインターンプログラムを案内し、実際に複数のマッチングが実現しました。

学生からしても、従来はどこの大学を卒業したのかという情報で就職先やインターン先が決まることが多かったと思いますが、学修歴や授業内での評価、頑張りなど様々な情報を集約したポートフォリオを作ることができれば、新たなキャリア機会の創出に繋がっていくと思います。

また、この仕組みでは、学生がトークンを送付できる範囲に制限をかけてトークンの送金履歴も残る仕組みにしているので、単位取得のための不正を抑止する効果もあったのが面白いポイントでしたね。このような可能性が広がれば、大学教育の在り方も変わってくると思いますし、近くこの取り組みをレポート化して、学会に提出しようと検討しています。

企業内に眠る資産を見える化し、採用ブランディングに寄与

──大学での取り組みはすでに進んでいるのですね。一方で、企業がDID/VCを活用していく上では、どのようなユースケースを考えられていますか?

石部 企業においては、すでに企業内に存在しているデータを活用して、企業ブランディングを行うことができると考えています。

現状、人材に関するデータは各企業で保管され、サイロ化している状態だと思います。しかし、それらを「キャリア証明書」という形で個人に還元し、「社会で活躍する人材を多く輩出している」というファクトをオープン化できれば、人材輩出企業としての認知を形成でき、優秀な人材に選ばれる循環を生めるのではないかという仮説を持っています。

すでに若い世代は、会社を選ぶ際に「その会社でどれだけキャリアアップできるか」という点を重視しているという話もあります。また、会社よりも個人のパワーが強い現代において、企業が個人の成長やキャリア形成をサポートする姿勢はブランディングの観点からも非常に重要になるのではないかと思いますね。

実際に、ベトナムに拠点を構えているLIFULL Tech Vietnam様や、「喜多方ラーメン」で有名な麺食様は、採用力の強化を目的に「キャリア証明書」を活用いただいていて、両社とも「従業員が主体的にキャリア形成できるようサポートしたい」という思いを持っている点が共通しているんですよね。

また、業務委託で関わってくれているメンバーに対して、フィードバックを送る手段としても活用できるのではないかという仮説を立てています。

弊社では半期に一度「キャリア証明書」を発行していて、PRや法務の面で関わってくれているフリーランスのメンバーにも発行しています。彼らの仕事はなかなか成果が見えづらかったり、守秘義務的な観点から外部に伝えることができない側面があったりすることから、自ら実績を外部に伝えることが難しいと思っていて。

そこで、詳細な業務内容や成果、会社からのThanks Commentを「キャリア証明書」という形で個人に還元すれば、キャリアアップに繋げてもらうこともできます。また、僕自身、普段はなかなか感情を出さない人間なので、感謝を伝える機会としてもすごく良い体験になると感じています。

実際に、メンバーから「フリーランスはなかなかフィードバックをもらう機会がないので嬉しい」という声もあったので、個人が副業先からキャリア証明書を発行してもらうという事例も増えてくると思いますね。

▼PitPa社内にて発行されたキャリア証明書の一例(※デモ画面)

今後、副業人材に対して職歴を発行するエコシステムが回れば、昨今話題となっている「地方×副業」も促進できるのではないかと思っています。地方は副業人材を雇用したいと考えている一方で、採用時の見極めに課題を感じている企業が多く、結果、地域内のリファラルで採用するケースが主であるため、人材の流動性を高めることで地方創生にも貢献できたらと思っていて。今、水面下で具体的な話を進めている段階です。

藤森 弊社が展開しているWeb3人材求人プラットフォーム「SYNAPSS」は、実際にGMOドメインレジストリ社様やHashPort社様などに活用いただいており、現在はエンジニアが中心の案件ですが、オンチェーン上のキャリアデータを元にすでにマッチングが成立しています。

また、SYNAPSSの利用企業側は、DID/VCの技術を用いた学歴や職歴以外の実績がまとまったレジュメをデジタル上で閲覧できるので、求職者のリファレンスチェックのコスト削減に寄与していると感じていますね。

▼実際に企業側が閲覧できる経歴書「VESS Resume」(一例)

また、私たちとしてはこのプラットフォームの構築を通じて、Web3人材の不足を解消できたらと考えていて。国内外でWeb3が盛り上がりを見せる一方で、企業が効率よくWeb3タレントにアクセスできる「場」がなく、SNSや人脈による採用がメインとなってしまっています。なので、Web3人材のデータを集約させ、企業のイノベーションを加速させる一翼を担えたらと思っています。

技術的背景を意識せずとも、ユーザーが利用できるサービスを目指す

──お二人にDID/VCのもたらす可能性についてお聞きしてきましたが、具体的にどのようにユースケースを拡大していこうと考えていらっしゃいますか?

藤森 やはり、ユーザーが技術的な仕組みを知らなくともサービスを利用できるようなUX設計が必要だと感じていますね。ウォレットを作らずともEメールでログインでき、その裏にDIDが紐づいていくというUI/UXも近い将来に実現すると予想していますし、私たちも試験的に、ウォレットなしでGoogleログインによりDIDを発行できる仕組みを実現しています。

またUXだけでなく、Verifier(発行されたVCを検証し利用する主体)側の具体的なユースケースが必要だと考えており、VESSでもそのような事例を創出しようとしています。

石部 デジタル庁が発行した「コロナワクチン証明書」は、わかりやすいフォーマットでしたよね。技術としてはVCが使われていたものの、「ただデジタル証明書が欲しい」というユーザーニーズを満たしただけで、技術的な背景はユーザーにとってあまり重要ではなかったように思います。

よって、民間企業だけでなく国や政府などと連携しながら、社会インフラを整備する姿勢で技術を活用していく必要性もあると思っていて。

そこで現在、海外人材の受け入れの文脈でデジタル庁と取り組んでいるのが、在留カードにDID/VCを紐付け、学歴・職歴に関するデータを一括管理できるシステムの構築です。

▼想定しているシステムの設計図

労働人口の不足が叫ばれる日本ですが、海外人材を雇用する際のパラメーターが全くなく、彼らが日本のどこで働いているのかという情報も可視化されていない。また、送り出し国(出身国)側からしても、自国民が海外でどのような仕事をしているのかが不明瞭で、帰国した際にキャリア支援を行うことが難しいとされています。

そこで、在留カードにVCを紐づけて、日本での職歴を還元できると、例えば業界毎に海外人材の就労先の傾向を可視化して大学や送り出し国に情報を共有することもできますし、日本としてもどのくらい海外人材を受け入れるべきかを判断できるようになると思っていて。

ただし、行き過ぎた管理がなされると彼らの行動履歴を国がすべて把握することになりかねず、倫理的な問題が生じる可能性があるので、本格的な実装にはまだまだ時間がかかると思いますね。

藤森 また、DIDに関する課題として、それぞれ互換性がないまま「メソッド(※DIDの発行・管理・更新などを行う仕組みの種類のこと)」が乱立している状況で。「どこのDIDが覇権を握るのか」といった既存のビックテックが抱える課題が再び生じてしまう可能性があります。

加えて、DID/VCに色々な情報を紐付けしていく際に「何を開示して、何を伏せるか」の線引きが難しい問題もあって。例えば数十社にDID/VCを発行して表示した際に、その繋がりが見えると、個人を特定できてしまうかもしれません。

そういった可能性を踏まえて、個人を特定できないようにPeer to PeerのDIDを発行するような仕組みも議論されていますし、一旦はメールアドレスでログインできる仕様にしてタイミングが来た時にDIDを紐付けるなど、ユーザビリティの観点はまだまだ議論の余地があると思いますね。

ブロックチェーン×職歴で、人材のエコシステムが回る未来

──最後に今後の展望について、それぞれお伺いさせてください。

藤森 最終的には、あらゆる人が自分の学歴・職歴・実績などを持ち運べて、 それらを使ってキャリアを歩めるような世界を目指しています。

ただし、やはり現状ではVCの種類や数が圧倒的に少なく、履歴書としての機能を果たすにはデータが足りないという課題があります。開発当初は、各企業がVCを発行するプロトコルとしての位置付けでサービスを構想していましたが、現在はそもそもVCを発行するメリットを感じてもらうところから取り組まなければならないと感じていて。

そこでまずは、インターン生の採用を行う企業やeラーニングを提供する企業などと一緒に、一つずつユースケースを作りながら、様々なVCが紐づいた汎用的なプラットフォームを育て、企業の採用活動に貢献できるよう徐々にスケールさせていきたいですね。

石部 僕は、前職の4年間でエンジニアとして外で働けるレベルに育ててくれ、辞める際も「卒業おめでとう」という雰囲気で送り出してくれたリクルートに、とても感謝していて。なので、そういったリクルートのような人材輩出企業を生み出すエコシステムを作りたいと思っています。

また、職歴のオープン化によって企業が採用を強化できる側面もありますが、個人としても会社で働いた経験は唯一無二のものですし、社員1人ひとりの存在があってこそ会社の歴史があるわけです。なので、自分が愛着を持つ会社の歴史の一部を外部に持ち出せる、というのは「お金で買えないもの」を所有できるという点でもすごく価値があるのではないかと感じていて。

例えば、過去に所属していた企業が上場した際に「実は、僕は社員番号3番で初期のビジネスを開拓して活躍していたんだよ」と言いたくなることもあるじゃないですか(笑)。

既存のポッドキャスト事業も同様に、企業に所属する個人を音声で可視化して企業のブランディングに繋げるものなので、今後はこれら2つの事業を掛け合わせながら、人材輩出企業を目指す会社をサポートしつつ、日本経済の活性化に繋げていきたいですね。

──両社とも今後の展開が非常に楽しみですね。本日は、ありがとうございました!

取材・ライター:古田島 大介
企画・編集:吉井 萌里(SELECK編集部)

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