【保存版】「NFT」とは?概念と歴史、活用方法、関連用語までわかりやすく徹底解説
あらゆるデジタル資産を、ブロックチェーン技術によって唯一無二の価値へと変換する「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」。
NFTとは、ブロックチェーン上のデジタルデータにシリアルナンバーを付与することで、替えが効かない唯一無二のトークンであることを証明する技術です。
これまでは、デジタル上のデータ(ゲーム内のアイテムや音楽データなど)は複製や改ざんが容易であることから、データの「所有者」を明確にするのが困難とされてきました。しかし、NFTの技術を用いることでデータに「唯一性」という価値を付与でき、資産として扱えるようになった点でここ数年で大きな注目を集めました。
今後も、その市場規模は確実に拡大するとも予測されており、2022年の約30億ドルから、2027年までの5年間でおよそ4.5倍の約136億円に成長すると見込んでいるレポートもあります。
このように、昨今、注目度が高まっているNFTですが、まだまだ具体的な活用例も少ないため「調べてもなかなか理解できない…!」という方も多いのでは?
そこで今回は、初めて「NFT」という言葉を耳にした方にもわかりやすいように、NFTの概念や歴史、暗号資産との違いから活用事例、周辺知識までをまとめてお伝えします!ぜひご覧ください。
<目次>
- 「NFT」とは? その定義と利用用途
- 「NFT」と「暗号資産」の違いとは?
- NFTアートからみる、その歴史と変遷
- 初期のNFT市場に大きな影響を与えた「ビンテージNFT」とは?
- NFTと「イーサリアム(ETH)」の関係性とは?
- 「ガス代」や「ミント」など、NFTに関連する5つのワードを徹底解説!
- 「NFTマーケットプレイス」とは?その種類と3つのおすすめをご紹介
- NFTの保有・管理に必要な「ウォレット」とは?
- NFTを活用したマーケティング「トークングラフマーケティング」とは?
- NFT活用のベストプラクティス【事例3選】
<編集部より>本記事に掲載している情報は、記事公開時点のものになります。Web3.0の世界は日々変化していますので、「DYOR(Do Your Own Research)」の前提で記事をご覧いただけますと幸いです。記事の内容についてご意見や修正のご提案がございましたらこちらまでお願いします。
「NFT」とは? その定義と利用用途
「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」とは、ブロックチェーン上のデジタルデータにシリアルナンバーを付与することで、替えが効かない唯一無二のトークン(※)であることを証明する技術です。
※「トークン」とは、企業または個人により、既存のブロックチェーン技術を用いて発行された独自の通貨のこと。似た言葉に「暗号資産」があるが、暗号資産には基礎となる独自のブロックチェーンが存在している一方で、トークンは既存のブロックチェーン上を間借りする形で発行される。
ブロックチェーンによって取引履歴を記録でき、複製や改ざんを難しくする特徴から唯一性を担保できる仕組みで、デジタルデータの「所有」を可能にした点で画期的な技術として注目を集めました。
加えて、NFTは、デジタルデータの所有権の証明や従来の技術では実現が難しかった「二次流通」を可能とし、クリエイターへの還元手段としても有効であるとして、「クリエイターエコノミー」の文脈で語られることも増えています。
▼こちらの記事ではNFTを活用した経済圏(トークンエコノミー)についてまとめています。ぜひ一緒にご覧ください。
Web3.0で生まれる新しい経済「トークンエコノミー」とは?定義や事例、インセンティブ設計のポイントまで – SELECK(セレック)
NFTは、その代替がきかないという特徴を活かして以下のようなジャンルで活用されています。
ゲーム / 音楽 / デジタルアート / チケット / コレクターズアイテム
スポーツ / ファッション / 学歴・職歴 / 金融 / 不動産 / 契約書
NFTの魅力が最もわかりやすいのは「オンラインゲーム」での活用でしょう。従来は、ゲーム内で集めたアイテムやお金は特定のゲーム内でしか利用できず、外に持ち出すことが不可能でした。さらに、サービス終了と共に集めたアセットが消滅してしまい、それらの存在が運営元に依存してしまうという問題もありました。
しかし、NFTを活用してゲーム上のアセットに互換性を持たせると、複数のゲームを跨いでアイテムを利用することが可能になります。加えて、データを「資産」として扱えるようになり、「OpenSea」など所定のNFTマーケットプレイスで自由に売買ができるようになります。
また、ゲームに加えて、その人気に火を付けたのが「アート」です。
2017年にリリースされた「CryptoPunks」を皮切りに、世界中で数多NFTアートが誕生しています。2021年には米国のデジタルアーティストBeepleの作品が約6,900万ドル、日本円で約75億円もの高額で落札され大きな話題となりました。
▼「CryptoPunks」のNFTアート
また、不動産の分野でも活用が進みつつあります。例えば、土地・建物のNFT化や、メタバース上の不動産売買などへのNFTの活用です。NFT不動産は実際の不動産と同様に売買や賃貸が可能で価格変動もあるため、投資対象としても大きな注目を集めています。
このようなコレクション性の高いNFTは高値で取引されることも多いため、投機目的で保有している方も多いようです。その一方で、NFTの実用的な活用例も増えています。例えば、航空券やホテルの宿泊券、イベントの参加券などへの活用です。
これらは、一般的にはシリアルナンバーやQRコードを通じて利用されていますが、第三者への手渡しが個人間で容易にできてしまったり、偽物が複製されてしまったりという課題があります。そこで、チケットをNFT化しておくことで、所有者がブロックチェーンに記録されるため不正や法外な価格での転売を防ぐことができ、消費者保護にもつながります。
実際に、アルゼンチンの格安航空会社Flybondiでは、NFT航空券を販売しています。購入者は出発の72時間前まで転売が可能で、企業側は流通市場で航空券が販売されるたびに取引手数料を受け取る仕組みです。
つまり、NFTはただデジタルデータの複製や改ざんを防ぐだけでなく、新たなビジネスモデルの構築や顧客体験の向上、企業と個人の新たな関係性を紡ぐ可能性があり、いち消費者としても今後の動向に注目したい技術の一つと言えるでしょう。
※参考:FLYBONDI, TRAVELX PARTNER TO ISSUE TICKETS AS AN NFT – PhocusWire
「NFT」と「暗号資産」の違いとは?
NFTは「暗号資産」とともに扱われることも多く、それらを混同している方も多いかもしれません。
まず、「暗号資産」とは日本銀行によると以下のように定義されています。
「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
つまり、NFTは「暗号資産の一種」です。ブロックチェーンによって信頼性が担保されたデジタルデータである点はNFTと暗号資産で共通していますが、両者が決定的に異なるのは、NFTは唯一無二で代替がきかないことです。
例えば、銀行に1万円を預けたとします。後日ATMで1万円を引き出した場合、受け取るのは別の紙幣にはなりますが、価値は同じ1万円です。このように、貨幣は代替性を有しているといえるでしょう。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)(※)などの暗号資産も同様に、同質のトークンと代替が可能です。
一方、プロ野球選手の直筆サイン入りボールは、他のボールと交換することはできるでしょうか。
野球のボールという点では、サイン入りボールと他のボールは同様です。しかし、プロ野球選手の直筆サインが入ったことで、そのボールは唯一無二の価値を獲得し、直筆サイン入りボールを他のボールと交換することはできません。
NFTの本質は、このサイン入りボールと同じです。つまり、NFTと暗号資産はどちらもブロックチェーンによって信頼性が担保されたデジタルデータではあるものの、その価値が代替可能か不可能かという点で異なります。
補足として、暗号資産と仮想通貨は名称が異なるのみで、どちらも同じものを指します。当初は仮想通貨と呼ばれていましたが、円やドルなどの法定通貨と混同する恐れがあるため、金融庁が資金決済法を改正した2020年5月から日本における呼称も暗号資産に統一されました。
・「ビットコイン(BTC)」とは…2008年にサトシ・ナカモトという人物により発明された、ブロックチェーンをベースにしたプラットフォーム。ブロックチェーン技術を最初に応用した例として注目を浴びた。中央集権的な機関に依存せずに取引が可能であることから、海外送金の際にもよく利用されている。
・「イーサリアム(ETH)」とは…ビットコインと同じくブロックチェーンをベースにしたプラットフォームだが、「スマートコントラクト」と呼ばれるプログラムを使って取引を自動化できる点や、アプリケーション開発が可能な点で異なる。
NFTアートからみる、その歴史と変遷
NFTの誕生
NFTの歴史は浅く、最初に生まれたのは2014年頃と言われています。
とあるハッカソンのイベントで、デジタルアーティストのKevin McCoyと技術起業家のAnil Dashがチームを組み、デジタルアートの所有権を担保する方法を模索していました。
そこで、McCoyが独学でコーティングを学び、ビットコインから派生したイーサリアム以前のブロックチェーン「NameCoin」と呼ばれるチェーンを試していたところ、ビデオアートをブロックチェーンに刻む方法を発見します。これがNFTの誕生です。
▼Kevin McCoy氏とAnil Dash氏がNFTとして作成した史上初のデジタルアート「Quantum」
※参考:Quantum: The Story Behind the World’s First NFT – nft now
しかし当時は、ブロックチェーンの存在は一部の有識者や技術者の間でしか知られていなかったため、ブロックチェーンの存在が広く普及することはありませんでした。
海外におけるNFTの歴史
そこから三年後の、2017年にいくつかのNFTアートが生まれたことで、転換期が訪れます。その一例が、前述した「CryptoPunks」です。同作品はアルゴリズムで生成された24:24のピクセルアートで、そのネーミング通り、容姿がパンクなキャラクターがメインで猿やゾンビ、エイリアンなどさまざまなタイプが混在しています。
10,000個限定の実験的なプロジェクトとして9,000個は無料で提供され、残りの1,000個は保管。Webメディア「Mashable」に取り上げられたことがきっかけとなり、24時間以内に90,00個すべてが取引されました。その後、二次流通市場も形成されて順調に価格が上昇し、2021年5月にはオークションハウスで約16億5000円で取引され、一躍有名な作品となりました。
その後、イーサリアム上に生まれたゲーム「CryptoKitties」がNFTブームを加速させます。これは猫をモチーフとしたNFTの収集や売買ができるゲームで、発表後、瞬く間に人気を博し大成功を納めました。
▼CryptoKitties公式サイト
これらのヒットをきっかけにNFTを活用したアートやゲームに注目が集まりましたが、NFT自体の注目度が一般層にまで一気に広がったのは2021年に入ってのことです。その背景は大きく二つあります。
一つ目は、世界二大オークションハウスとされている「Christie’s(クリスティーズ)」と「Sotheby’s(サザビーズ)」がNFTアートの販売を開始したことです。両者とも十八世紀にロンドンで創設され、現在でもアート市場を牽引する存在として広く認知されているオークションハウスで、かの有名なグラフィティアーティストBanksyの「シュレッダー事件」が起こったのもサザビーズのオークション会場です。
もう一つは、2021年に、アーティストBeepleが自身のNFTアート作品「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」がクリスティーズに出品され、デジタルアート作品の過去最高取引額となる約78億円で落札され、大きな注目を集めたことです。
▼Beeple | THE FIRST 5000 DAYS(Christie’s公式サイト)
コミュニティ化するNFTアート
さらに、同年には、世界最大級のコミュニティを形成するNFTアート「Bored Ape Yacht Club(以下、BAYC)」も誕生しています。BAYCは全10,000点の「Bored Ape(退屈した猿)」をモチーフとしたアートで構成されたコレクションで、2021年9月にはオークションで約26.8億円の高値で落札されるほど、投資家はもちろん、コレクター間でも注目度の高い作品です。
▼Bores Ape yacht ClubのNFTアート(Opensea)
BAYCの特徴はNFTの保有者(ホルダー)を中心に形成されたコミュニティの存在です。会員権として機能するNFTアートを所有することで、オンライン・オフラインでのミートアップイベントや会員限定のさまざまなコンテンツに参加することができます。
また、オンラインチャットツール「Discord(ディスコード)」を活用したコミュニティも公開されており、ホルダー同士で交流を楽しめます。
▼BAYCのDiscordコミュニティの様子
BAYCのもう一つの特徴として挙げられるのが、ホルダーによる「二次創作」が活発な点です。本来、NFTアートを購入しても著作権が与えることは少なく、商用利用が認められていない場合がほとんどです。しかし、BAYCは商用利用が可能で、アーティストや企業とのコラボレーションが盛んです。
※NFTアートを購入する場合、「著作権」と「所有権」の違いを理解し、二次創作が可能かどうかは販売者に確認する必要があるので要注意。コミュニティによっては利用範囲を定め、明文化しているところもある。
・「著作権」…知的財産(アートや音楽)の著作者が保持する権利で、著作物を自由に改変、複製、販売できる権利
・「所有権」…アートや音楽などの「作品」そのものの所有権のことを指し、著作権は基本含まれない
例えば、大手スポーツメーカーのadidas がメタバース参入時にコラボしていたり、ローリングストーン誌とのコラボ、音楽プロデューサーの Timbaland氏がBAYCをベースにした音楽レーベル「Ape-In Productions」を創設するいったコラボレーションが生まれています。
このように、ホルダーを中心としたコミュニティから二次創作が生まれ、様々な派生プロジェクトが誕生する点もNFTアートの魅力と言えるでしょう。
SNSのアイコンに利用されるNFTアート
また、これらのアートは「PFP(Profile Picture)」として、海外セレブを中心にTwitter等のプロフィールアイコンに利用されるようになりました。
実際に、かの有名アーティストJustin Bieberやエイベックス代表取締役会長で元CEOの松浦勝人氏などの著名人が、過去にTwitterのプロフィール写真にBAYCを使用していたことで知られています。こうしたムーブメントをきっかけに、NFTの認知が一般にまで広がっていきました。
▼Twitterをはじめとした、さまざまなSNSのアイコンに利用されている
日本国内におけるNFTの歴史
世界でのNFT需要の高まりと呼応するように、2020年頃から日本国内でもNFTが注目されはじめ、多くの作品がNFT市場に出品され始めます。
VRアーティストのせきぐちあいみ氏も、2021年に発表したVR空間で描くNFTアート「Alternate dimension 幻想絢」が約1,300万円という高額で落札され、当時の日本人アーティストとしては過去最高額での落札として注目を集めました。
また、日本国内においても2022年頃から個人アーティストが展開するNFTアートプロジェクトが注目され始め、最近では地域活性化の文脈で自治体とコラボするケースが増えています。
過去にSELECKでも取材したNFTアートプロジェクト「NEO TOKYO PUNKS(以下、NTP)」は、販売開始から2分で完売するなど、国内のジェネラティブNFTとして初の成功を収めています。同コミュニティでも、ホルダーによる二次創作が活発なのが特徴です。
▼NTPの二次創作の事例
▼「NEO TOKYO PUNKS」について詳しくはこちらの記事もご覧ください
素人集団が4,000人のコミュニティに。「2分で完売」のNFT「NEO TOKYO PUNKS 」の裏側 – SELECK(セレック)
日本のポップカルチャーに溶け込むNFT
さらに、アイドルや漫画といった日本のポップカルチャーにもNFTが浸透してきています。
2020年からいち早くNFTにチャレンジしているアイドルユニット「POiNT」。同グループはサイン入りNFTの配布やクリスマスプレゼントとしてのNFTを配布、さらにはPOiNTのNFTホルダーのみ投票可能な「DAO(※)」から生まれた楽曲をリリースするなど、先進的な取り組みが行われています。
※「DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)」とは、同じ志をもつ人々が地理的に分散しながら、個人が自律的に活動することにより、特定の所有者(株主)や管理者(経営者)が存在せずとも、事業やプロジェクトを推進していくことができる組織のこと
また最近では、総合出版社の集英社もNFT市場に参入しています。「集英社マンガアートヘリテージ」と名付けられた同社のプロジェクトは、高品質な技術と素材で漫画をアート化・NFCチップを利用した証明書を同時に発行し、ブロックチェーン上で真贋証明ができる仕組みを構築しています。すでにワンピースやBLEACHなどの多くの有名作がNFTアート化されています。
▼「集英社マンガアートヘリテージ」公式サイト
しかし、これらのNFTブームは2021年12月から2022年1月ごろにかけてピークを迎え、その後大きく下落しています。昨今は暗号資産の「冬の時代」とも言われ、NFTブームは徐々に下火に。その背景として、価格の高騰による投資家の撤退、NFTの過剰な供給、規制の厳格化などが要因として挙げられます。
そうした中で、最近では「web3の廃品回収業者」なるサービスも生まれています。2022年11月に生まれたサービス「Unsellable」は、価値がなくなったNFTを数ドルとガス代を支払うだけで売却でき、損失を確定して収入を減らすことで節税ができるサービスです。
今後もNFTの実用的な活用事例や関連産業が広がりながら、NFTブームの火が再び灯される日が近くやってくるのではないでしょうか。
初期のNFT市場に大きな影響を与えた「ビンテージNFT」とは?
前述した通り、NFTは2017年ごろから熱を帯び、2021年の世界的なブームをきっかけに広く一般に知られるようになりました。
そのタイミングで、初期のNFTアートが再評価され、「ビンテージNFT」という名のもと価値が見直されています。これらは昨今のNFTアートとは一線を画す独自の価値を持ち、日本国内においてもその価値を歴史に残そうという目的で、ビンテージNFTのアーカイブサイト「Rare Japanese NFTs」も誕生しています。
同サイトによると、「ビンテージNFT」は以下のように定義されています。
ビンテージNFTとは、2017年以前のNFT黎明期に誕生した初期のNFT作品のことです。主にビットコイン(BTC)のブロックチェーン上で発行され、「Counterparty」というプロトコルが使われています。
また、ビンテージNFTの特徴としては主に以下の三つが挙げられるとのこと。
- イラストの種類、発行枚数、価格帯などが幅広い
- 初期のNFTとして歴史的価値が高く、文脈により高値で取引される可能性が高い
- 世界的に熱心なコミュニティが存在している
※参考:ビンテージNFTと日本 – Kojisan(SlideShare)
前述した「CryptoPunks」も海外の代表的なビンテージNFTの一つで、特に海外では熱心なNFTコレクター間で取引が行われ、現在は100億円以上の市場規模があるとのこと。
ビンテージNFTは「仮想通貨元年」と呼ばれた2017年以前のビットコインが誕生した初期に、主にビットコイン上で制作された作品であり、NFTという概念がまだ一般的に知られていない時期でした。しかし、2021年にNFTマーケットプレイス「OpenSea」がビットコイン上のNFT売買にも対応したことで、再び注目を集めました。
▼日本発のビンテージNFTコレクション「Japanese Rarepepe」
ビンテージNFTは基本的に「コレクション」としての機能が強いものの、今後は、昨今のNFTアートプロジェクトのようにコミュニティ化したり、企業とのコラボレーションが期待され、その歴史的価値がより拡張されていく可能性があるかと思います。引き続き楽しみな分野です。
※参考:日本のビンテージNFTに注目すべき理由 【Rare Japanese NFTsリニューアル】- kojisan
NFTと「イーサリアム(ETH)」の関係性とは?
NFTについて調べていると、「イーサリアム(ETH)」という言葉を見かけることが多くあるかと思います。イーサリアムとは、ビットコインと同様にブロックチェーン技術を基盤とした分散型のプラットフォームの一つです。2013年11月に誕生し、当時19歳だったVitalik Buterin氏によって考案されました。
主に、ビットコインが取引に特化しているのに対して、イーサリアムは「スマートコントラクト」と呼ばれるプログラムを有し、このプログラムを利用して現存するNFTの多くが発行されています。
この「スマートコントラクト」とは、自動的に契約を履行するプログラムのことで、契約内容とその実行条件を予めプログラミングしておくことができるという性質を持ちます。その条件に従って自動的にトランザクション(※)を実行することから、中間業者を不要としながらも、投票や取引、契約などを実行できるという特徴を持ちます。
※「トランザクション」とは、ブロックチェーン上で行われる取引のことで、送信元アドレスや送信先アドレス、送信量、手数料などの情報が含まれる。
この特徴を有することにより、イーサリアムは、暗号資産の発行に加えて「分散型アプリケーション(DApps:Decentralized Applications)」や、NFTの取引に使用されるウォレットやマーケットプレイスの開発も可能とし、NFT市場の成功に大きく貢献しており、NFTの存続にイーサリアムは不可欠な存在となっています。
「ガス代」や「ミント」など、NFTに関連する5つのワードを徹底解説!
この章では、NFTを理解する上で重要な五つのワードを解説します。
1. ミント
「ミント(Mint)」とは、英語で鋳造を意味する「Minting」が語源で、NFTを作り出す行為を指します。
NFTを作成できる「スマートコントラクト」は独自コントラクト(自分専用のコントラクト)と共有コントラクト(複数のコレクションで共有するコントラクト)に分類され、それぞれ取引時のメリット・デメリットを有します。
独自コントラクトは実装のハードルが高い一方、取引や運用の自由度が高いというメリットがあります。そして、共有コントラクトはNFTマーケットプレイスによって提供されるため誰でも簡単にミントできますが、プラットフォームの制限などを受けやすいことがデメリットとして挙げられます。
2. ロイヤリティ
「ロイヤリティ」とは、NFTが二次流通された際に生じた利益の一部がクリエイターに還元される仕組みです。この仕組みを利用することで、クリエイターはNFTから継続して収益を得ることができます。
ただし、スマートコントラクトに組み込まれコード化された仕組みではないため、売買の際にNFTマーケットプレイスが独自にロイヤリティを設定するのが一般的です。そのため、異なるNFTマーケットプレイスでの取引や個人間取引では、クリエイターはロイヤリティを受け取ることができません。
さらに、ロイヤリティの支払いを任意とするNFTマーケットプレイスも登場しており、クリエイターの反感を買うなどして昨今議論となっています。
3. ガス代
「ガス代」とは、NFTをミント・販売・購入する際に生じる手数料です。ガス代は一定ではなく、取引の多い時間帯や処理スピードを速く設定すると高くなります。
利用するチェーンによってガス代が異なるため、場合によってはイーサリアム以外のブロックチェーンを利用することで、ガス代を節約することも可能です。
4. パブリックセール / プレセール
NFTは一般的に、「先行販売のプレセール」「一般販売のパブリックセール」「リセールに該当する二次流通」の三つのフェーズで販売されます。
プレセールには特定の条件を満たした方しか参加できませんが、最も安い価格でNFTを購入可能です。パブリックセールは一般販売に該当するため、希望者は誰でも一般価格でNFTを購入できます。パブリックセールで売り切れたNFTは、一般価格より高額で二次流通するのが一般的です。
5. AL(Allow List) / WL(White List)
「AL(Allow List)」とは、NFTを優先的に購入できるリストです。販売価格も一般価格より安く設定されています。ALに参加するには、SNSのフォローやいいね、リツイートなどのタスクを課されるのが一般的です。
なお、「WL(White List)」も同様に優先購入権を意味する用語ですが、人種差別を連想させる用語であるとして、現在ではALという表現が使われています。
「NFTマーケットプレイス」とは?その種類と5つのおすすめをご紹介
「NFTマーケットプレイス」とは、ユーザーがNFTの作成、および取引を行えるプラットフォームです。NFTマーケットプレイスではNFTのミント・販売・購入が可能で、支払いは暗号資産によって行われるのが一般的です。
また、多くのNFTマーケットプレイスでは一次流通だけでなく二次流通も行えるため、NFTで投資を行っている方にとっても必須の存在といえるでしょう。NFTマーケットプレイスは以下の三種類に分類されます。
1. オープンなマーケットプレイス
最も一般的で取引量の多いNFTマーケットプレイスです。オープンなマーケットプレイスでは誰もがNFTのミント・販売・購入が可能で、取り扱いジャンルも多岐にわたります。「OpenSea」「Magic Eden」 などが代表的なオープンなマーケットプレイスです。
2. クローズドなマーケットプレイス
出品が審査制であったり、マーケットプレイス側がNFTを発行したりするなど、独自性の高いNFTマーケットプレイスです。審査を通過したクリエイターしか出品できないため、品質の高いNFTアートがそろっています。数量が少なく価格も高いため、希少性の高い作品を所有したいコレクターにおすすめです。「SuperRare」「Foundation」「KnownOrigin」などがクローズドなマーケットプレイスに該当します。
3. 独自のマーケットプレイス
運営する企業が持つ商標や著作権を活かしたNFTを販売するNFTマーケットプレイスです。音楽・画像・動画・ゲーム内資産などに特化したNFTマーケットプレイスを用意することで、ユーザーはより簡便にNFTを取引できます。ただし、独自のマーケットプレイスを維持するには、一定のユーザー規模が必要で初期の集客が難しいというデメリットがあります。
※参考:NFT Marketplace and 3 Types Of NFT Marketplace You Should Know – Rikkei Finance(Medium)
続いて、世界的に有名な3つと、日本国内のもの2つ、合計5つのNFTマーケットプレイスをご紹介します。それぞれ得意とするジャンルが異なるたね、それぞれの特徴を把握して自身の目的に合ったマーケットプレイスを選択することがお勧めです。
1. 【海外発】OpenSea
「OpenSea」は世界最大級のNFTマーケットプレイスです。オープンなマーケットプレイスで、誰でもNFTをミント・販売・購入できます。取り扱いジャンルも幅広く、アートや動画、ドメインに至るあらゆるNFTが出品されています。イーサリアムだけでなくガス代の安いポリゴンなどが使えるのも特徴です。
2. 【海外発】LooksRare
「LooksRare」は、OpenSeaに対抗して立ち上げられたNFTマーケットプレイスです。独自トークンである「LOOKS」を発行し、OpenSeaユーザーに無料配布することで急速にシェアを拡大しました。LooksRareもオープンなマーケットプレイスで、あらゆるNFTが出品されています。「BAYC」「Azuki」「Moonbirds」など人気の高いNFTコレクションを取り扱っているのも特徴です。
3.【海外発】 Foundation
「Foundation」は招待された特定のクリエイターのみが出品を許されるクローズドなマーケットプレイスでしたが、2022年に招待制が廃止されオープンなマーケットプレイスとなりました。取り扱いジャンルはアート作品に限られ、質の高いNFTアートが集まっています。手数料は高額ですが、希少性の高いNFTアートを取引したいコレクターにはおすすめです。
4.【国内発】CoinCheck NFT
「CoinCheck」は、日本国内で初めて立ち上げられたマーケットプレイスで、対応している暗号資産が豊富なことで知られています。そして、高いガス代や複雑な取引といった課題に対応したオフチェーンのマーケットプレイスとなっており、Coincheckの口座を持っている人は誰でもNFTの売買、取引が可能、かつガス代無料で利用できます。提携先も多く、海外のアセットも多く取り扱っているため、初めてNFTマーケットプレイスを利用する方にもおすすめです。
5.【国内発】SBINFT
「SBINFT」は、大手金融会社のSBIグループが運営するNFTマーケットプレイスです。イーサリアムとポリゴンの二種類のパブリックチェーンが採用されています。アートやゲーム、音楽からビデオまで幅広い作品が取り扱われており、クレジットカードでの購入が可能なのが嬉しいポイント。NFTを発行したい場合は一定の審査が必要で、クローズドなマーケットプレイスとなっています。
▼こちらの記事では、NFTマーケットプレイスを構築できるノーコードツールもご紹介しています。ぜひご覧ください。
【厳選12】誰でも簡単にNFT発行やDApps開発ができる!「Web3.0ノーコードツール」をご紹介 – SELECK(セレック)
NFTの保有・管理に必要な「ウォレット」とは?
「ウォレット」とは、暗号資産やNFT、そのほかのデジタル資産を保管する機能を備えた仮想的・概念的な場所のことです。
ウォレットの利用目的は、主に以下の三つが挙げられます。
1. デジタル資産を安全に保管する
2.ブロックチェーン上でデジタル資産の送受信を行う
3.DeFiやNFTのマーケットプレイスなどの、DAppsに接続する
ウォレットは「公開鍵」「秘密鍵」「シードフレーズ」の三つの要素で構成されています。銀行で例えると、公開鍵は口座番号、秘密鍵はパスワードのようなものです。
▼NFTを保管するためにはウォレットが必須になるので、ぜひこちらの記事もご参考ください。
仮想通貨やNFTの取引に必要な「ウォレット」とは? 定義と分類、おすすめウォレット5選まで – SELECK
NFTを活用したマーケティング「トークングラフマーケティング」とは?
NFTなどのトークンを活用した新たなマーケティング手法も広がっています。これは「トークングラフマーケティング」と呼ばれ、個人が保有するトークンを分析し、興味関心や購買傾向を把握することで効果的なターゲティングを可能にします。
Web2.0では何に興味関心があるかの「インタレストグラフ」や誰と繋がっているかの「ソーシャルグラフ」に基づいてマーケティングが行われてきました。しかし、多様なトークンが普及していくと、その人がどんなトークンを所有しているかの「トークングラフ」によってもマーケティングが展開されるようになります。
▼「トークングラフマーケティング」については、こちらの記事もご参考ください。
Web3.0時代のマーケティングとは?カギは「トークングラフ」と「NFT広告」の活用にあり – SELECK(セレック)
この「トークングラフ」を形成する一つとして知っておきたい存在が「POAP(Proof of Attendance Protocol)」です。
POAPは主に、イベント参加者に配られるトークンで、NFTの一種です。保有者はPOAPをウォレットに保管しておくことでイベントに参加したことを証明でき、発行者側は後から任意のPOAP保有者に対してプロモーションをおこなったり、コミュニティを形成するなどして活用できます。
以前、SELECKが主催した読者様との交流を目的としたイベント「SELECKゆるのみ」でも、参加者の皆さまに限定POAPを発行しました。
▼2022年11月25日に開催した「SELECKゆるのみ」で配布したPOAP
本POAP発行にあたっては、株式会社ゆめみに技術面のご協力をいただきました。同社が独自に開発しているNFT配布システムは本来NFTを受け取るときに必要なデジタルウォレットを持っていなくても、QRコードからNFTを受け取ることができる仕様となっており、手軽でスムースなNFTの受け取りを実現しています。
NFT活用のベストプラクティス【事例3選】
最後に、NFTを活用し大きな成功を収めた事例を3つご紹介します。
1.デジタル村民(新潟県長岡市山古志村)
まず一つ目にご紹介するのは、新潟県長岡市の山古志村で実施されているNFTアートを活用した地域活性プロジェクトです。
同地域は、2004年の新潟中越地震の発生以降、急激に人口が減少し存続の危機に瀕していました。存続をかけた取り組みの一環として、2021年に旧山古志村が発祥とされる錦鯉をモチーフとしたNFTアート「Nishikigoi NFT」を発行します。このNFTアートは電子住民票の意味合いを兼ねており、多くの「デジタル村民」を生み出しました。
現在では地域人口を超える人数のデジタル村民が誕生しており、NFTの販売益による独自の財政を構築することで、持続可能な山古志の実現を目指しています。
▼「Nishikigoi NFT」(OpenSeaにて閲覧可能)
▼山古志村の詳しい取り組み内容については、こちらの記事もご参照ください。
NFTホルダーの「デジタル村民」に予算執行権も。人口800人の限界集落・山古志の挑戦 – SELECK(セレック)
2.NOT A HOTEL(NOT A HOTEL株式会社)
二つ目は、「世界中にあなたの家を」というコンセプトのもと、住宅のD2C事業を手掛けるスタートアップ企業、NOT A HOTEL株式会社が展開するNFTプロジェクトです。
同社は、自宅・別荘・ホテルとして相互利用可能な新たな形態の住宅を「NOT A HOTEL」と名付け、全国に展開しています。その販売手法が特徴的で、従来の不動産であればまず「資料請求」するところからがスタートですが、NOT A HOTELの紹介ページには「購入する」ボタンが設置されています。さらに、不動産販売だけでなく、物件のシェア購入や宿泊権が付いたメンバーシップNFTを販売しているのも特徴です。
▼NOT A HOTELのビジネスモデル(同社提供)
▼NOT A HOTEL株式会社のNFTへの取り組みについて、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
物件やNFTは即完売。累計41億調達のNOT A HOTELが挑む「新しい暮らし」の体験設計とは – SELECK(セレック)
3. Open Town(株式会社奇兵隊)
株式会社奇兵隊は「公共性の高い課題に、革新性の高い技術で挑む」というミッションのもと、Webサービスを応用してさまざまな国際支援事業を展開しています。
2011年より新興国向けのクラウドファンディング事業「Airfunding」を展開してきましたが、「海外送金に時間とコストがかかる」「広く一般に寄付を募るのが難しい」などの課題がありました。それらの課題を解決するため、同社は2021年にNFTを活用したクラウドファンディング事業「Open Town」を開始。同プロジェクトでは、NFTアートを販売し、その販売益をもとに自律したまちづくりの仕組みの構築を目指しています。
▼「Open Town」の仕組み
▼株式会社奇兵隊の取り組みについて、詳しくはこちらの記事もご参照ください。
社会貢献×Web3を組み合わせたクラファン「OpenTown」で国際支援を目指す奇兵隊 – SELECK(セレック)
おわりに
以上、「NFT」についてご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか。今回はNFTの定義から歴史、NFTに関連するワードや活用事例までお伝えして参りました。また、こちらの記事ではNFT活用の事例を28個ご紹介しております。ぜひこちらも参考にしてください。
【ウイスキー樽やご朱印も】日本のNFT活用事例18選!飲食、アパレル、農地活用から寺院まで – SELECK(セレック)
【漁業や医療、学修歴証明書も】NFT活用事例第2弾!実用的なNFTの活用法をご紹介 – SELECK(セレック)
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