Web3.0で生まれる新しい経済「トークンエコノミー」とは?定義や事例、インセンティブ設計のポイントまで

Web3.0の世界では、こちらの記事で解説した「トークン」を活用した新たな経済圏が生まれています。それが「トークンエコノミー」です。

これは、企業または個人により、ブロックチェーン技術を用いて発行された独自の通貨によって成り立つ経済圏のことを指します。

2021年に始まったNFTブームを契機に、2022年はWeb3.0への注目が集まりました。とはいえ、未だ投機的な側面が目立つプロジェクトも多く、Web3.0時代は本当に到来するのか? と疑問に感じられている方も多いのではないでしょうか。

下の図は、インターネットユーザーの数とイーサリアムのアドレス数の推移をまとめたものです。現時点でアクティブなイーサリアムアドレスの保有者は700万人〜5,000万人いると推定されており、この数は1995年時点のインターネット利用者数と同じくらいです。

そこから10年が経過した2005年にはインターネットユーザー数は10億人を突破しており、グラフの傾きが類似していることを踏まえると、Web3.0は確実にマスアダプションしていくのではないかと予測できます。

▼インターネットのユーザー数とイーサリアムのアドレス数の推移

※出典:Introducing the 2022 State of Crypto Report – a16z crypto

日本国内においてもすでに様々な企業や自治体がトークンエコノミーに注目しており、LINE社やGMOインターネット社などが先進的に取り組みを始めています。

また、トークンエコノミーは個人単位の創作活動とも相性が良く、これまで「稼げない」と言われてきたクリエイターの活動に一石を投じる可能性があるとして、大きな期待が寄せられているのです。

そこで今回は、トークンエコノミーの定義からそれを支えるブロックチェーン技術について、さらにインセンティブ設計におけるポイントや具体的な事例までをお届けいたします。

<目次>

  • 「トークンエコノミー」とは? その定義と原義
  • トークンエコノミーを支えるブロックチェーン技術
  • イーサリアムの登場により、トークンの可能性が広がった
  • トークンは「行動データ」を可視化し、価値を付与する
  • トークンエコノミーを構築する際のポイントとインセンティブ設計
  • トークンエコノミーの国内事例5選
    • ①国内最大級のトークンエコノミーを目指す「LINE Token Economy」
    • ②良い情報に価値を。ブログサービス「ALIS」
    • ③世界で一番信用できるグルメアプリを目指す「シンクロライフ」
    • ④NFTでトークンエコノミーを構築。500万人が参加する通話コミュニティ「Yay!」
    • ⑤就活生の成長に貢献しながら企業とのマッチングを促進「STAR」

<編集部より>本記事に掲載している情報は、記事公開時点のものになります。Web3.0の世界は日々変化していますので、「DYOR(Do Your Own Research)」の前提で記事をご覧いただけますと幸いです。記事の内容についてご意見や修正のご提案がございましたらこちらまでお願いします。

「トークンエコノミー」とは? その定義と原義

トークンエコノミーとは、代替貨幣を用いた経済圏のことです。「クリプトエコノミクス(※)」や「ブロックチェーン経済」と表現される場合もあります。

※クリプト(Crypto)とは「暗号」を意味し、クリプトカレンシー(仮想通貨)やクリプトアセット(暗号資産)といった言葉で用いられる

そもそもこの「トークン(代替貨幣)」とは、以前の記事でも解説した通り、その本質は「特定の価値を代替するもの」です。身近な例では、カジノのチップや企業や地域が発行するポイント、ギフトカードなどがあります。

よって、広義のトークンエコノミーには、特定の地域でしか使えない商品券が流通している経済圏や、ユーザーが課金したりポイントを貯めたりして楽しめるオンラインゲームなども含まれるといえます。

ただし、今回焦点を当てるのはWeb3.0におけるトークンエコノミーです。企業または個人により、既存のブロックチェーン技術を用いて発行された独自の通貨によって成り立つ経済圏のことを指します。

元々、このトークンエコノミーという言葉は心理学で生まれた言葉で、正式には「トークンエコノミー法」と呼ばれる、オペラント条件づけ(※)と呼ばれる学習理論に基づいた行動療法のことを指します。

※自発的に生じた行動を「オペラント行動」といい、この行動に報酬などの刺激を随伴させることで反応が生起する頻度や内容を変化させる条件づけのこと

これは、ある生体(人間や動物)が望ましい行動をとった直後に報酬(トークン)を付与し、トークンを他の価値を交換できるようにすることで、その望ましい行動を推奨するというものです。

これをマーケティング手法に応用したものがスタンプカードやポイントカードです。ただ値引きをするよりもトークンを用いて「購入」や「来店」といった行動を促すことで、顧客をリピーターに繋げることができるとして活用されています。

この意味が転じて、経済学では代替貨幣を用いた経済圏を指す言葉としてトークンエコノミーという言葉が使われるようになったという背景があります。

トークンエコノミーを支えるブロックチェーン技術

トークンエコノミーという言葉が注目を集めている背景の一つに、ブロックチェーン技術の台頭があります。

ブロックチェーンの特性について触れる前に、私たちが日常的に利用している法定通貨の「円」はなぜ貨幣として成立しているのかを考えてみます。

ここで参考になるのが、「信用貨幣論」という学説に立脚している現代貨幣理論(MMT)です。

信用貨幣論の登場以前は「商品貨幣論」が一般的でした。これは、人間は元来「物々交換」で生活をしていたものの、その価値の不釣り合いが生じたことから、自分と相手が等価だと思うそれ自体で価値あるもの(金や銀など)を仲介させ、交渉における不釣り合いを解消したという理論です。

しかし、ここには矛盾があります。そもそも、なぜ人々が金や銀を絶対的な価値があるものとして最初から認識していたのかという点が解明できないからです。

そこで近年の学説では、貨幣は負債の記録である「負債証明書」だと定義されています。これは、貨幣は物々交換のシステムからではなく「信用システム」から生まれたという考え方です。

※参考:【マネーの本質】なぜ、単なる「紙切れ」の紙幣で買い物ができるのか? – ダイアモンドオンライン

この考え方に則ると、トークンを貨幣として機能させるためには、貨幣と同様に「信用」をもたらすものが必要です。それが、トラストレス(信頼のある第三者が不要)な仕組みをもつブロックチェーン技術となります。

では改めて、ブロックチェーンについておさらいしてみましょう。

ブロックチェーンの考え方が初めて発表されたのは、2008年のサトシ・ナカモトと呼ばれる人物による論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」でした。そしてブロックチェーンは、総務省によると次のように定義されています。

ブロックチェーン技術とは情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種であり、「ビットコイン」等の仮想通貨に用いられている基盤技術である。

一般社団法人日本ブロックチェーン協会は広義のブロックチェーンを「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、且つ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性及びデータ同一性等を実現する技術」と定義している。

※出典:総務省|平成30年版 情報通信白書|ブロックチェーンの概要

わかりやすくまとめると、複数のコンピューターを用いて、「ブロック」と呼ばれるデータの単位を鎖のようにつなげて管理することでデータの改ざん・不正を防ぐ技術がブロックチェーンです。

この技術によって、トークンが偽造不可なデジタルデータとなるため、法定通貨に代わるほどの可能性を持つのではと期待が寄せられているのです。

実際に国の信用が揺らぎ、暗号資産に注目が集まった事例としては、ヨーロッパのキプロス共和国で2013年に起きた「キプロス危機」があります。

これは、ギリシャ危機によって財政が悪化したキプロス共和国に向けてEUが支援を行い、その条件としてキプロス国民の全ての預金に対して重い税を課したために起きた金融危機です。この時、国民は自国の貨幣に対する不信感を抱き、政府の規制がかからないビットコインに資産を移す動きが増え、世界的にビットコインへの注目が高まったといわれています。

▼キプロス共和国

また、「信用」を成り立たせること以外にも、トークンエコノミーを支えるブロックチェーンの特徴がいくつかあります。

ひとつは、銀行に頼らない自由な取引ができることです。具体的にいうと、

  • 海外送金が数秒〜数分で可能であり、即時的な支払いができる(一般的な国際送金であれば数日かかるのが一般的)
  • 金融機関などの第三者を介さないため、支払いのタイミングを自由に選ぶことができる
  • 銀行口座を持っていない人に対しても支払いをすることができる

などの特徴が挙げられ、グローバルな取引が自由に行える点からもその利便性は高いといえます。

そしてもう一つは、最小額でのやりとり(マイクロペイメント)が可能であることです。これまでは手数料の関係で、個人間で送金を行うことは難しいとされてきました。しかし、ブロックチェーン上であれば中央管理者が存在しないため、送金手数料は銀行を介するよりも少額に抑えることができます。

実際、銀行を介して国際送金を行う場合は数千円にもなりますが、ブロックチェーン上であれば数円〜数百円に抑えることができます。このような特徴をもつブロックチェーンに下支えされ、トークンエコノミーの可能性が広がっているのです。

イーサリアムの登場により、トークンの可能性が広がった

先ほど挙げたブロックチェーン技術に加えて、トークンエコノミーがより注目されるようになった理由に「イーサリアム」の登場があります。

イーサリアムとは、2013年に当時19歳の学生だったヴィタリック・ブリテン氏が考案した「DApps(Decentralized Application:分散型アプリケーション)」(※)のプラットフォームです。

※ブロックチェーンなどの分散型フレームワークを基盤としたWeb3.0におけるアプリケーションの総称

イーサリアムの大きな特徴は「スマートコントラクト」と呼ばれる機能です。これは「契約の自動化」を意味し、予め設定されたルールに従って取引プロセスを実行するプログラムのことです。

この考え方自体は1994年に暗号学者であるニック・スザボ氏によって提唱されており、身近な例でいうと、お金を投入すれば自動的に売買が成立し商品を受け取れる自動販売機もスマートコントラクトの一種です。

契約の自動化以外にも、次のような設定を行うことも可能です。

  • サービスを使用する範囲や回数を制限する
  • 設定した条件を満たすまでトークンの移動を制限する(ロックアップ)
  • 設定した条件でトークンを焼却する(バーン)

このプログラムによって、従来はトークンの発行者(企業や自治体、個人など)がトークンを発行・管理しなければならなかったのが、すべて自動的に行われるようになり効率的な取引ができるようになったという利点があります。

※参考文献:トークンエコノミービジネスの教科書 – 高 榮郁

そして、イーサリアムの特徴でもう一つ重要なのが、独自のトークンを発行できる点です。

この特徴はビットコインとの比較でよく語られます。ビットコインは主に決済手段として用いられる一方で、イーサリアムはその上にさまざまなアプリケーションを構築・稼働させることができ、多種多様なビジネスを成立させるプラットフォームとしての地位を確立しつつあるのです。

実際に、ブロックチェーン上に構築される金融サービス「DeFi(分散型金融)」やステーブルコイン、ラップド・トークン(※)など多様なカテゴリーに応用されており、かの有名なブロックチェーンゲーム「CryptoKitties」などもイーサリアム上で構築されています。

※異なるブロックチェーン間の相互運用性を可能にするために発行されるトークンのこと

そして昨今市場を賑わせているNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」も主にイーサリアム上で発行されており、これまで著作権が曖昧だったデジタルデータや、アートや不動産などの現実世界のアセットもオンライン上で取引が可能になり、トークンエコノミーのビジネス活用の可能性が大きく広がっています。

トークンは「行動データ」を可視化し、価値を付与する

トークンエコノミーの最大の特徴は、「行動データの経済化」によって、これまで無価値だったものに価値を付与できる点です。これは「推し活(※)」や「ファン経済」、「クリエイターエコノミー」などと相性が良いとされています。

※推し活とは、自分が好きなタレントやアイドル、キャラクターなどの所謂「推し」を愛でたり応援したりする活動のことで、2021年に流行語大賞にもノミネートされている

その理由をお伝えするべく、今回はいちDJアーティストの活動を例に解説していきます。この場合の行動データは、以下のようなものが挙げられます。

・SpotifyやApple Musicなど配信プラットフォーム上での楽曲再生数
・知人・友人への楽曲紹介
・TwitchやYoutubeなどでのライブ配信おける滞在時間
・配信上でのコメントやスタンプの送信量
・オフラインでのクラブイベントに友人・知人を連れて行く

本来このような行動には金銭的な価値は付与されず、どれだけ熱心なファンでもアーティストへの貢献方法はアルバムの購入やイベント参加などの手段に限られていました。

またクリエイター目線で言えば、プラットフォーマーが大きな影響力をもつWeb2.0では、クリエイターのコンテンツもフォロワーも収益もすべてプラットフォームに掌握され、その力学ゲームに強制的に参加させられてしまうという課題がありました。実際、99%のクリエイターは趣味として創作活動を行なっており、生計を立てられない人がほとんどです。

そこで、先述したような行動データの価値をトークンで可視化することで、クリエイターがファンから直接お金を稼ぐことができるビジネスモデルが確立される可能性があるのです。

さらに、熱量の異なるファン間における「価値の非対称性」をも是正し、ファンの活動を後押しすることが可能になります。この「価値の非対称性」について2つほど具体例を挙げてみます。

①現実世界(ライブ)における価値の非対称性

例えば、DJアーティストの熱心なファンで地方での公演にも毎回新幹線に乗って参加するAさんがいるとします。その一方で、遊び目的でクラブに遊びにきて、たまたまDJアーティストの公演を見たBさんがいるとします。

この時、AとBさんの参加熱量には雲泥の差があります。しかし、両者共にクラブの運営側が決めた数千円というエントランスフィーを支払うことしか選択肢がありません。

②Web2.0のプラットフォーム上における価値の非対称性

もう一つ例を挙げてみます。熱心なファンで毎回DJアーティストの楽曲を購入しているCさんと、カフェを営んでいてたまたま流したプレイリストで楽曲を聴いたDさんでは、楽曲に対する熱量が全く異なります。

しかし、Web2.0の配信プラットフォーム上では、両者の熱量に関係なく月額1,000円程度であり、Cさんの1再生とDさんの1再生が同じ価値として処理されてしまいます

このような価値の非対称性を是正するのが、トークンの存在です。

つまり、行動データとトークンを結びつけることで潜在的な価値(ファンの熱量)を浮き彫りにし、その結果トークンの価値(=DJアーティストの価値)を向上させ、ファンとアーティストの「共創関係」を生み出すことができます。

補足ですが、ファンをはじめとしたエコシステムのステークホルダー(※)がトークンを獲得するために行うアクションのことを「Bounty(バウンティ:報酬)」と呼ぶことがあります。

※トークンエコノミーでは、特定のエコシステムにおいて目的意識を持つ生産者や消費者など利害関係を持つすべての人々を「ステークホルダー」と呼ぶ

先ほど、「クリエイターがファンから直接お金を稼げるようになる」とお伝えしましたが、このバウンティによってファンもコンテンツの「消費」だけでなく「共創」によって自ら稼げる仕組みを構築できる可能性があります。このバウンティの設計は、次章でトークンエコノミーにおける「インセンティブ設計」として解説しています。

つまり、同じモノやビジョンに共感する人々が自律分散的に集い、その実現や価値向上のためにバウンティなどを通じて活動することで、個々の価値貢献に対してインセンティブが還元される仕組みの実現であり、この動きは、Web3.0におけるコミュニティの在り方「DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)」(※)を目指すのが最適解かもしれません。

DAOとは、同じ志をもつ人々が地理的に分散しながら、個人が自律的に活動することにより、特定の所有者(株主)や管理者(経営者)が存在せずとも、事業やプロジェクトを推進していくことができる組織を指す

バウンティをまとめた「Bounty Board(バウンティ・ボード)」は海外でブームになっており、「Gitcoin」「Layer3」「Web3 Jobs」「Dework」などのまとめサイトも公開されています。こちらもぜひ覗いてみてください。

▼Deworkの画面

▼DAOについて詳しくはこちらの記事もぜひ一緒にご覧ください。
【海外事例14選】分散型自律組織「DAO」とは?web3の鍵となるその定義や歴史、開発ツールも徹底解説

トークンエコノミーを構築する際のポイントとインセンティブ設計


トークンエコノミーを活性化させるためには、もちろんトークンの価値自体を高めることも必要です。しかし、トークンの価値の向上は、保有するステークホルダーの活動による結果にすぎません。

そこで重要なのが、ステークホルダーがトークンを獲得できる「インセンティブ設計」と、トークンのユーティリティ(実用的価値)を高め「トークンの流動性を保つこと」です。それぞれ解説していきます。

①エコシステムに参加してもらうためのインセンティブ設計

インセンティブの設計において最も重要なのは、まずそのエコノミーへの入り口として参加のメリットを感じてもらうことです。

この時、以下2つの観点からインセンティブを考えることができます。

  • 経済的インセンティブ(トークン保有者はより多くの収入や利益を得ることができる)
  • 経営的インセンティブ(トークン保有者が投票権を持ち、エコシステムに影響を与えることができる)

わかりやすく、今回もDJアーティストの活動を例にして説明していきます。

例として、ある国内DJアーティストが「Xトークン」を発行するとします。

熱心なファンのAさんは、数ヶ月後に予定されているクラブイベントのPRを手伝い100Xトークンを受け取りました。この時点で100Xトークンは2万円の価値があるとします。

その後、そのDJアーティストが武道館でライブを行うとします。この際、VIP席のチケットを100Xトークンで交換することができますが、最近海外に進出したことで人気が上昇し100Xトークンが5万円まで価値が高まっているとします。

この際にファンのAさんが享受できる金銭的な価値(5万円−2万円=3万円)が「経済的インセンティブ」の一つの例です。AさんはトークンをVIP席のチケットと交換することもできますし、VIP席を欲しがっている人にトークンを売ることも可能です。

また、DJアーティストはコミュニケーションツール「Discord」上でファンコミュニティを運営しており、武道館ライブで販売するグッズのデザインについてコミュニティに意見を求めるとします。この際に、Xトークンを保有している人のみが多数決に参加できる仕組みが「経営的インセンティブ」の一例です。

重要なのは、ステークホルダーの参加動機や温度感、得意分野によってインセンティブを変え、長期的にエコシステムに参加してもらうことです。

例えば、先ほどのDJアーティストの例でいえば、ただコミュニティ内で限定配布される楽曲のデータが欲しいだけなのか、DJアーティストの知名度を高めるために広報活動などでも貢献したいと思っているのかによってステークホルダーのモチベーションは全く異なります。

そこで、ステークホルダーがそれぞれ貢献したい方法で好きなだけトークンを獲得できるようにバウンティ(ステークホルダーが報酬を獲得できるアクション)の設計をしておくことがポイントです。

②トークンのユーティリティ(実用的価値)を高め、トークンの流動性を保つ

そもそも、この「流動性」という言葉は経済用語でモノの換金のしやすさを意味します。つまり保有するトークンを「売りたい時に売れるかどうかを表し、すぐに売買が可能なことを「流動性が高い」と表現します。

売りたい時に売れるかどうかはそのトークンに需要があるかどうか、言い換えるとトークンに価値があると思う人がどれだけ存在するかに左右されます。

そこでトークン自体の価値を高める必要がありますが、重要なのはトークンの保有者数を増やすことと長くトークンを保有してもらうこと、加えてトークンのユーティリティ(実用的価値)を高めることです。

せっかくトークンを保有していても、使える場所や機能がなければトークンは無価値に等しくなってしまいます。先ほどの例で言えば、トークンをVIP席のチケットと交換できたり、コミュニティ内で限定配布される楽曲を取得できたりといったユースケースが考えられます。

最後に、トークンのインセンティブ設計において重要なのは、投機対象として金銭的なリターンを目的としている人をいかに排除できるかです。

なぜなら、そういった人は金銭的リターンがなくなった途端にエコシステムから立ち退いてしまうからです。よって、あくまでもインセンティブの設計はできるだけ温度感の高いステークホルダーに向けたものを設計し、長期で関わってもらえるような仕組みを創ることが大切です。

トークンエコノミーの国内事例5選

①国内最大級のトークンエコノミーを目指す「LINE Token Economy」

LINEblockchain※出典:沸騰するNFT市場。LINE発・仮想通貨の真のすごさとは?執行役員を直撃 – BUSINESS INSIDER JAPAN

LINEは2018年より、「LINEトークンエコノミー構想」を掲げています。これは、LINEが独自に発行する仮想通貨「LINK(リンク)」を中心とした経済圏のことで、ユーザーがLINEのサービスを使うことでトークンを受け取り、「LINE Blockchain」の中で利用できるものです。

これまでもWebサービスを通じてユーザーに価値を還元する仕組みは存在していましたが、システムの複雑性など課題が多かったといいます。そこで、ブロックチェーンを活用してユーザーのモチベーションを維持し、サービスの永続性を図ろうとしているのがこのプロジェクトです。

現在、この構想の中で立ち上げられたサービスはゲームやSNS、電子契約サービスなどさまざまな形態で8つ存在し、ユーザー数としては8,900万人ほどが参加しているそう。国内最大級のトークンエコノミーになるのではないかと期待が寄せられています。

②「良い情報」に価値を。ブログサービス「ALIS」

「ALIS(アリス)」は信頼できるコンテンツを投稿・評価した人にトークンが付与されるブログサービスです。2017年9月にICOを実施し、約4.3億円の資金調達に成功しています。

評価が高いコンテンツの投稿者や、そのコンテンツにいち早くいいねした閲覧者に対して、ALISトークンが付与される仕組みです。

付与されたトークンは、ALIS上での投げ銭や有料記事の購入などに利用できます。また、「ALIS Market」ではALISコミュニティメンバーによってデザインされたグッズや制作された楽曲の販売や、記事執筆におけるメンターシステム、特定のECサイトでトークンを利用できるシステムが構築されているなど、トークンのユーティリティが高い事例です。

③世界で一番信用できるグルメアプリを目指す「シンクロライフ」

「シンクロライフ」は飲食店の口コミサイトです。昨今の口コミ投稿サイトの傾向として、UGC(User Generated Contents:ユーザーが制作するコンテンツ)による運営が主流でしたが、サイト側による削除や変更などの可能性も示唆され、その課題に一石を投じるために開発されたサービスです。

スコアリングされた良質なグルメレビュアーにトークンが報酬として付与されるのに加え、サービスに賛同する1,700店舗以上の加盟店では食事代金からポイントや暗号資産が還元される仕組みになっています。

そして溜まったトークンはフードデリバリー、カフェチェーン、コンビニ、マッサージ、旅行など全27ブランド、全国57万カ所で利用可能です。

④NFTでトークンエコノミーを構築。500万人が参加する通話コミュニティ「Yay!」

Yay!」は同世代と趣味で繋がる音声コミュニティサービスです。2022年の2月時点で登録者数は500万人を突破しており、元々アプリを通じてコミュニティを形成していましたが、2022年の4月にNFTを発行してトークンエコノミーを構築すると発表しました。

現時点ではまだトークンエコノミーに関する詳細などは公開されていないため、今後の動向に注目です。

⑤トークンエコノミーで就活生の成長に貢献しながら企業とのマッチングを促進「STAR」

※出典:慶應大、トークンエコノミーで学生の成長と就職活動を支援する実証実験を開始 – マイナビニュース

慶應義塾大学のFinTEKセンターは、2021年7月にトークンエコノミーを個人情報管理プラットフォーム「STAR」内に作る実証実験を開始すると発表しました。

元々は2020年8月から「学生の個人情報を、学生自身の手に戻す」というビジョンのもと、第一段階実証が行われてきました。今回はその第二段階の実証となるものです。

主に就職活動での使用が想定され、企業が学生の情報開示を求める際に、その情報量などに応じて企業が「STARコイン」を発行するという仕組みです。また、従来の就職活動では評価されづらかった、学習履歴やゼミ、サークル活動などを通じた「学生の成長に関する情報」にも価値が付与されるといいます。

学生はトークンを利用することで、アート思考養成講座や編集スキル育成講座、全国の大学間交流ツアーに参加できるなど様々なコンテンツを利用でき、学生の成長に貢献しながら企業と学生のより良いマッチングの促進が期待されています。

▼その他にも、過去にSELECKでトークンを活用しているコミュニティや事例をいくつか取材しております。こちらもぜひ参考にしてみてください。

以上、トークンエコノミーの定義から注目されている背景、国内事例までお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか。さまざまな可能性を秘めている概念ではありますが、まだその活用方法は模索されているのが現状です。今後も引き続きチェックしていきたいと思います。(了)

※本記事は情報提供を目的としており、投資を勧誘するものではございません。本記事に記載している情報は本サイトの見解によるもので、情報の真偽、暗号資産の正確性・信憑性などについては保証されておりません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

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