Web3.0世界の「トークン」8種類を徹底解説!定義や歴史、暗号資産との違いもご紹介
NFT(ノンファンジブルトークン)、ガバナンストークン、ファントークン…など、Web3.0の隆盛に伴い、「◯◯トークン」という言葉をよく耳にするようになりました。
本記事で解説するのは、Web3.0の世界における「トークン」です。言い換えると、企業または個人により、既存のブロックチェーン技術を用いて発行された独自の通貨のことを指します。
一方で、「トークン」という言葉自体は、暗号資産やWeb3.0の世界のみで使われているものではなく、その原義から派生して様々な業界や意味合いで使われるため、文脈に応じた解釈が必要です。
今回は「トークン」について、その定義から歴史、混合しやすいキーワードとの違いから、その分類までを徹底解説いたします。ぜひ最後までご覧ください。
<目次>
- 「トークン」の定義とは?その原義と歴史
- 混同しやすい「暗号資産」と「トークン」の違いとは?
- 数多く存在するトークン、どう分類する?
- 【キーワード解説】これだけ押さえればOK!8種類のトークンをご紹介
- アセットトークン / セキュリティトークン / ステーブルコイン
- ユーティリティトークン / ガバナンストークン / ソーシャルトークン
- NFT(ノンファンジブルトークン) / SBT(ソウルバウンドトークン)
- NFTを活用したマーケティング手法「トークングラフマーケティング」
- トークンの活用で生まれる新しい経済「トークンエコノミー」とは
- トークンの保管に必須の「ウォレット」とは?初心者向けウォレットもご紹介
<編集部より>本記事に掲載している情報は、記事公開時点のものになります。Web3.0の世界は日々変化していますので、「DYOR(Do Your Own Research)」の前提で記事をご覧いただけますと幸いです。記事の内容についてご意見や修正のご提案がございましたらこちらまでお願いします。
「トークン」の定義とは?その原義と歴史
Web3.0の世界におけるトークンを語る前に、前提として「トークン(token)」という言葉自体がさまざまな意味を持つため、文脈によって使い分ける必要があります。
トークンの語源には、「しるし」「象徴」「証拠品」「代用貨幣」といった言葉があり、その本質は「特定の価値を代替するもの」です。
この「価値を代替するもの」としてのトークンは、まだ文字が使用されていなかったBC8,000年以上前から存在していたと言われています。その利用目的は、農産物など生産したアイテムを数え、記録するための一種の道具でした。
▼デニス シュマント=ベッセラの著書『How writing came about』(左)、日本語訳も出版されている(右)
上図は、トークン研究の第一人者であるデニス シュマント=ベッセラの著書ですが、表紙に写っている丸い小さな粘土の塊が最古のトークンだとされています。
当時は文字や数字が存在していなかったため、数を記録しておきたいアイテム(穀物や家畜など)にトークンを対応させ、「個人や集団がアイテムをいくつ保持しているか」という在庫管理をするために利用されていたのだそうです。
そこから集落が拡大し都市が形成されたことで、記録すべきアイテムの数が増加し、さまざまなトークンが開発されるようになります。
これらのトークンがその形や装飾を変えることで「抽象文字」のような機能を持ち始め、現代の私たちが使う「文字」の誕生のきっかけになったのではないかという説もあります。
※出典・参考:JT生命誌研究館 – Token:文字誕生の原点
ここまで見て来た通り、歴史的に最も古いトークンは、財産の記録としての機能を果たしていたと言えます。
その主な利用用途は記録であったため、必ずしも交易にトークンが活用されていたわけではないそうですが、当時からトークンを活用した「債権・債務」の仕組みが存在しており、より広く交易を発展させるために「貨幣(硬貨)」がのちに誕生したとされています。
※上記の解釈は、フェリックス・マーティン氏の著書「21世紀の貨幣論」を代表とする「新貨幣論」を元にしています。よって、「『物々交換』から『物品交換』を経て、やがて『貨幣制度』が始まった」という説とは異なりますが、いずれにおいても未だ研究の余地があるとされています。
こうした歴史を経て、現代においてトークンは主に以下の3つの領域で利用されています。
1.使える場所や交換対象などが限定された、硬貨や紙幣以外の代用貨幣のこと
身近な例でいうと、カジノで見られるチップや、ギフトカード、クーポン、引換券などが当てはまります。
貨幣経済が成立した時代において、原料の不足などにより政府が発行する硬貨が不足した場合に、民間企業や個人が発行したのが「代用貨幣」の始まりとされてます。
2.情報セキュリティの担保を目的とし、一度だけ使える認証権限「ワンタイムパスワード」のこと
この場合、正式には「アクセストークン」と呼ばれ、認証パスワードの一種を指します。トークンを活用してデータのセキュリティを確保することを目的としています。
3.プログラミングにおいて、コードを構成する最小単位の要素のこと
プログラミングにおけるソースコードの内容を、意味をもつ最小単位まで分割した要素をトークンといいます。具体的には、変数名、予約語、演算子、定数などが該当します。
そしてここ最近、「トークン」という言葉をよく耳にするようになった背景には、ブロックチェーン技術の隆盛があります。
ギフトカードやクーポンなどを想像してもらうとわかりやすいかと思いますが、従来のトークンは第三者によって改ざんが容易で、その公平性が保たれにくいという課題がありました。
しかし、トレーサビリティ、耐改ざん性、透明性という性質を持つブロックチェーンと紐づけることにより、より信頼性の高いトークンの発行が可能になったことで、その活用用途が拡大したのです。
混同しやすい「暗号資産」と「トークン」の違いとは?
「トークン」とよく混同されやすい言葉として、「暗号資産」があります。両者は厳密には別の意味を持つ言葉です。
その違いを簡潔に述べると、暗号資産には基礎となる独自のブロックチェーンが存在しますが、トークンは既存のブロックチェーン上を間借りする形で発行されることです。
まず、「暗号資産」の定義からおさらいしていきましょう。日本銀行の定義によると、以下のように定義されています。
「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない代表的な暗号資産には、ビットコインやイーサリアムなどがあります。
暗号資産は、銀行等の第三者を介することなく、財産的価値をやり取りすることが可能な仕組みとして、高い注目を集めました。一般に、暗号資産は、「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)から入手・換金することができます。暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者のみが行うことができます。
暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された、法定通貨ではありません。また、裏付け資産を持っていないことなどから、利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要です。
ビットコインやイーサリアムなどの「暗号資産」の大きな特徴は、独自のブロックチェーンを持つことです。対して「トークン」は、これら既存のブロックチェーンを活用して作成・発行・管理されます。
この違いは、「カレンシータイプ」と「アセットタイプ」というキーワードで説明される場合もあります。この場合、前者が「暗号資産」で、後者が「トークン」とほぼ同義と捉えて良いでしょう。
それぞれの特徴は下記のようなものです。
「カレンシータイプ」…マイニング(採掘)するタイプのことを指す。ビットコインなどのように発行枚数の上限が定められていることやマイニングに参加することで報酬としてトークンを受け取れることが特徴で、ビットコインやイーサリアムなどがこのタイプに当てはまる。
「アセットタイプ」…発行者が存在し、その発行者が供給量を決定できることが特徴で、いわば「株式」のような性質を持つ。さらに、自由に売買できるものの、トークン自体は特定の発行者が提供しているサービスに過ぎないため、企業やプロジェクトの状況によって価値が左右されるという特徴ももつ。
昨今、企業やプロジェクトによるトークンの発行が一気に広がった背景に、主にイーサリアムがプロトコル(コンピューターが通信をする際の手順や規約)を定めたことで、誰もが簡単にトークンを発行できるようになったことが挙げられます。
さらに、このトレンドを牽引したものとして「ICO(Initial coin offering)」が挙げられます。ICOとはトークン(この場合はユーティリティトークン)を発行することで資金調達を行うことを指し、この考え方は、株式会社の「株」と同じようなものです。
株を発行するよりも参入のハードルが低く、投資側も少額から始められるという背景から、2017〜18年頃に盛り上がりを見せました。
しかし、投機性が極度に高いことや詐欺事件が相次いだことにより徐々に市場が縮小していきます。そこで生まれたのが、「STO(Security Token Offering)」です。これは、有価証券の機能が付与されたトークンによる資金調達方法のことです。
詳細は記事後半で解説しますが、「セキュリティトークン」はそれ自体が価値を持つ「暗号資産」とは異なり、「証券が持つ価値を代替したトークン」のことを指します。
つまり、ICOとの明確な違いとして、STOは有価証券に適用される法律に準拠する点が挙げられ、ICOに問題視された市場の健全性と流動性の両立が可能になりました。
※出典:STOとは何か?ICOと何が違う?デジタル証券は新たな資金調達手段となるか – 金融の未来を見通す情報メディアFinTech Journal
最後に補足として、暗号資産を調べると「ネイティブトークン」という言葉に遭遇することもあります。ネイティブトークンとは、そのブロックチェーン独自のトークンのことです。
例えば、イーサリアムブロックチェーンのネイティブトークンは「イーサリアム(ETH)」です。DAI、MKR、REPなどのように、イーサリアムブロックチェーンを使用して構築されたトークンが多く存在しますが、これらのネイティブトークンがイーサリアムということです。
また、ビットコインのネイティブトークンもビットコイン(BTC)ですが、BTCやETHのように独自のブロックチェーンを持つ暗号資産のことを「コイン」と呼ぶこともあるので覚えておくと良いでしょう。
「コイン」に似た言葉として「アルトコイン(Alternative Coin)」という言葉もありますが、これはビットコイン以外の暗号資産のことを指します。
数多く存在するトークン、どう分類する?
「トークン」という言葉の定義が複数あるため、ここで紹介する分類も一例に過ぎませんが、さまざまなトークンを分類する上でポイントとなる点をいくつか挙げてみます。
まずは、そのトークンが数量や品質において同等の商品と代替(交換)可能かどうかによる分類です。同じ価値を持つものが存在するトークンを「FT(ファジブルトークン:代替可能トークン)」、唯一無二で複製ができないトークンを「NFT(ノンファンジブルトークン:非代替性トークン)」と分けられます。
例えば、購入者の名前や利用可能な日時などが記録された音楽ライブのチケットや航空券などはノンファンジブル(代替不可能)であり、この概念をデジタル上で実現したものがNFTです。
一方で、私たちが日常で使う現金(キャッシュ)はファジブル(代替可能)であり、前章で説明したビットコインなどの「暗号資産」がFTに分類されます。
※出典:暗号資産、仮想通貨、セキュリティトークン……表記・定義が乱立する「デジタル資産」を3分類して整理──国内外の公文書用語 – coindesk JAPAN
さらに、各国の公的文書を参照すると、トークンは大きく分けて①決済②金融資産/権利③会員権・消費目的の3つの利用用途に沿って分類されていることがわかります。同じ言葉でも国によって表すものが異なるケースもあるので注意が必要ですが、具体的には下記のような形です。
①決済機能があるトークン…「ペイメントトークン」や「ステーブルコイン」等
②金融資産/権利を代替するトークン…「セキュリティトークン」「アセットトークン」等
③会員権・消費目的のトークン…「ユーティリティトークン」「ファントークン」等
※それぞれのトークンについては、次章にて解説しています。
ただ、ここでも注意しておきたいのは、すべてのトークンをこれら3つの分類に一義的に当てはめることは難しいということです。
例えば、「ファントークン」とはいえ、商品の購入を目的をする場合はペイメントトークンということもできますし、事業収益の分配を受ける場合はセキュリティトークンともいえるため、機能や目的の併用の可能性にも留意する必要があります。
【キーワード解説】これだけ押さえればOK!8種類のトークン
では、代表的なトークンについてひとつひとつ解説していきます。
①アセットトークン
アセットトークンとは、さまざまなアセットをトークン化したものです。この場合のアセットとは、「資産や財産」「資源」「有価物」「ライセンス(利用権)」などを指します。後述する「セキュリティトークン」や「ステーブルコイン」もアセットトークンの一種です。
わかりやすく身近なものでいうと、ポイントカードや商品券などが該当します。昨今よく見られる例である、アートや不動産などの現実世界に存在するものをトークン化した場合も、この分類に当てはまります。
②セキュリティトークン(デジタル証券)
セキュリティトークンとはトークン化された証券のことで、この際の「セキュリティ」とは防犯の意味ではなく「有価証券」を指します。セキュリティトークンは有価証券と同等の法規制が適用されるため、デジタル証券と呼ばれることもあります。
日本国内では2020年5月に施行された改正金融商品取引法により、新たに導入された「電子記録移転権利」にセキュリティトークンが位置付けられました。この改正により、現在は金融機関での取り扱いが可能となっています。
セキュリティトークンを活用した資金調達(STO)も注目されており、上場(IPO)と比べてハードルが低い点や証券発行のコストが低い点を踏まえても、多くの中小企業やスタートアップにとって資金調達の幅が広がるのではないかと期待されています。
③ステーブルコイン
ステーブルコインとは、価格の安定性を実現するように設計された通貨で、米ドルや金の価格に連動するよう設計されたトークンのことです。ステーブルコインもアセットトークンの一種です。
ビットコインなどの暗号資産は、法定通貨と比較すると価格変動が激しくその実用性に課題があるとされています。その課題を解決し、広く決済手段として使われることを期待して生まれたのがこのステーブルコインです。
価格を安定させる仕組みの違いから、ステーブルコインは主に4つに分類されています。
1. 法定通貨担保型…ドルや円などの法定通貨を担保にし、その法定通貨との交換比率を固定する
2. 暗号資産担保型…特定の暗号資産を担保にし、価格を連動させる
3. コモディティ型…金や原油などの商品(コモディティ)価格の値動きに連動させる
4. 無担保型…法定通貨や仮想通貨などの担保を保有せず、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する
④ユーティリティトークン
「ユーティリティ(utility)」とは「有用性、実用性」という意味で、ユーティリティトークンとは、何らかの機能や実用性、権利を持ったトークンのことを指します。
わかりやすく身近な例で言うと、映画鑑賞のチケットや図書カード、遊園地への入場券などがあります。
また、Web3.0の世界においては「コミュニティへの参加権」「サービスやコミュニティの意思決定に投票する権利」「ユーザーの行動のインセンティブ付与」などに使用されるケースも多く、この場合、詳細は後述しますが「ガバナンストークン」や「ソーシャルトークン」など、その利用用途によって細かく分類されることもあります。
ユーティリティトークン自体は価値を持たないため、トークンの発行元であるサービスやコミュニティが拡大していけば、それに伴いトークンの価値も向上します。つまり、ユーティリティトークンの価値は予め決められているものではなく、発行元に依存(変化)するということです。
⑤ソーシャルトークン
ソーシャルトークンとは、主に「DAO(分散型自律組織)」においてコミュニティのメンバーシップとして機能したり、共同プロジェクトやコミュニティへの貢献を可視化するトークンです。ソーシャルトークンも、ユーティリティトークンに分類されます。
受け取ったソーシャルトークンは、他の暗号通貨に交換したり、コミュニティ内の特別な権利と交換することができます。例えば、トークン保有者のみが閲覧できるコンテンツへのアクセス権、コミュニティの運営に関する意思決定のための議決権(この場合、ガバナンストークンという場合もある)などがあります。
ソーシャルトークンは、その発行者が個人か団体かによって以下2つの種類に分類されることがあります。
- コミュニティソーシャルトークン(コミュニティトークン)…グループやコミュニティを中心に発行されるトークンのことで、トークン保有者限定のメルマガ発行や、非公開のDiscordチャンネル(限定コミュニティ)への招待といった特典を実行するのに利用される。
- インディビジュアルソーシャルトークン(パーソナルトークン)…個人が発行するソーシャルトークンのことで、アーティストやクリエイターが発行するケースが多くみられる。ファンが直接に発行者を応援できる「クリエイターエコノミー」を形成するいち手段として注目されている。
Web3.0に関心を持つエンジニア向けのコミュニティ「UNCHAIN(アンチェーン)」でも、コミュニティトークンとして「$CHAI(チャイ)」が発行されていました。
この「$CHAI」は、Discordへの投稿内容やメンバーのリアクションを解析して、コミュニティ内での学び合いに貢献した人に付与される仕組みになっています。
各プロジェクトをクリアすると学習履歴のエビデンスとして機能するNFTを取得できます。2022年7月時点で、すでに300枚以上が発行されていますね。また、Discord内にはNFTを複数枚もっていないと入れないチャンネルも設けられています。
また、コミュニティトークンの「$CHAI(チャイ)」を発行しています。例えば、メンバーの質問に回答したり、学習コンテンツに対してフィードバックを提供してくださった方などに付与していて、学び合いを加速する仕組みとして活用しています。
ガバナンストークンは、「分散型自律組織(DAO)」の運営においてよく語られ、コミュニティの重要な意思決定を行う際に、所有者に投票権を与えるトークンのことを指します。ユーティリティトークンに分類され、ソーシャルトークンがガバナンス機能を持つ場合もあります。
また、ガバナンストークンを活用してステークホルダーに責任と権限を分散させることを、「オンチェーンガバナンス」といいます。トークンの保有量によって議決権も大きくなる、というケースが多いです。
基本的にはガバナンストークン自体の取引も可能であるため、コミュニティ運営者からすると長期にわたって保有してもらうためのインセンティブ設計が重要になります。そこで金銭的なインセンティブを付与するケースや、一定の金利で資産を貸与する仕組みなども存在しています。
先日、SELECKで取材した「Henkaku Discord Community」で発行されているソーシャルトークン「HENKAKU」も、ガバナンストークンの機能を兼ね備えていました。
コミュニティ内では独自通貨として、金銭的な価値のないソーシャルトークン「HENKAKU」を発行しています。
このトークンを通じて、コミュニティのメンバーシップや、プロポーザルへの投票、プロジェクトマネジメントをコントロールしています。「HENKAKU BAR」の入場料の決済にも利用しましたね。
「HENKAKU」はコミュニティ内で実施される「クエスト」をコンプリートするともらうことができます。例えば自己紹介、ウォレットのインストール、コミュニティの役に立つ作業…といった、web3に関する学びのアウトプットや、コミュニティ貢献といったクエストをクリアするとトークンがもらえる、というゲーム的な仕組みです。
NFTとは、ブロックチェーン上のデジタルデータにシリアルナンバーを付与することで、替えが効かない唯一無二の存在であることを証明する技術です。
これまでは、デジタル上のデータ(ゲーム内のアイテムや音楽データなど)は複製が容易であることから、データの「所有者」を明確にするのが困難とされてきました。しかし、NFTの技術を用いることでデータに「唯一性」という価値を付与でき、資産として扱えるようになりました。
NFTは「NFTアート」という言葉が流行ったように、その投機的な側面が注目されがちではありますが実用的な側面もあります。例えば、メニューをNFT化してスポンサーを募る飲食店もあります。この場合、先ほど紹介した「資金調達をするという性質を踏まえると、セキュリティトークン(ST)と同じでは?」と思われるかもしれまん。
しかし、セキュリティトークンは金融商品として扱われ、株や債券などといった有価証券と同等の法規制が適用されるという点でNFTとは異なります。(他にも、イーサリアム規格が異なる、代替可能な点で異なるといった特徴もあります。)
ほかにも、不動産をNFT化した事例、ウイスキー樽をNFT化した事例、詩をNFT化した事例なども過去記事でご紹介しました。
▼詳しくは、こちらの記事をご参考ください。
【ウイスキー樽やご朱印も】日本のNFT活用事例18選!飲食、アパレル、農地活用から寺院まで – SELECK
また、新潟県長岡市にある山古志地域(旧山古志村)では「電子住民票」の意味合いを込めたNFTアートを販売しています。この取り組みによって、定住人口にとらわれずにグローバルな「デジタル関係人口」を生み出し、NFTの販売益をベースに独自の財源とガバナンスを構築することに成功しています。
デジタル村民になってくださった方の特徴としては、最初のセールの時、購入者の40%ほどが初めてNFTを購入される方だったんです。
OpenSeaなどでやり取りされている一般的なNFTは、ほとんどの場合は投機性が前提にあると思いますが、それとは全く違うモチベーションで皆さん購入してくださっていて。
ほとんどの人が、「地方に関わりたいけれど、どうやっていいかわからなかった」ということだと思っています。というのも、極端な言い方をすると「地域に関わるならば骨をうずめる気でやれ」というような空気もあるじゃないですか。
最近では二拠点居住やワーケーションなどの選択肢もありますが、今回はより裾野を広げて、オンライン上でも地方と繋がれる門戸を開いたというところが、非常に大きいのではないかなと思っています。
イーサリアム(ETH)の共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏が、暗号資産の次のテーマとして提唱しているのが「Soulboundトークン(SBT)」です。SBTは「譲渡不可能なNFT(非代替性トークン)」のことで、一度受けとったらウォレットの外に移すことができない特性を持ちます。
その具体的なユースケースとして、学位証明や無担保ローン、賃貸契約、イベントへの参加証明などが想定されています。2022年5月、自由民主党青年局が発行した「岸田トークン」も譲渡や売却ができない仕組みで、集会への出席証明や記念品としての活用が想定されていることから、SBTの一種だということができるでしょう。
また、独自開発の「Dynamic NFT」を活用した会員証サービスなどWeb3.0領域で新規ビジネスを展開する株式会社PitPaでは、個人の学歴・職歴・スキルの証明書をSBTの形で発行しています。過去には、千葉工業大学と共同で、国内初となる学修歴証明書をNFTで発行。また、NewsPickが提供している「NewsPicks NewSchool」の受講証明書NFTも発行しています。
▼PitPa社の取り組みについて詳しくはこちらの記事もご覧ください
デジタルとWebの「ちょっと先の未来」を考えよう!SELECKゆるのみ番外編【イベントレポート】 – SELECK
SBTが注目されている背景には、Web3.0における個人の信用問題があります。
現実社会の経済活動は信用ベースで成り立っていますが、Web3.0は基本的に匿名性の世界であり、加えて先ほど紹介したNFTは譲渡可能であるため、個人を信頼するための情報が圧倒的に少ないという現状があります。よって現在は、リアル社会における信頼関係や評判、実績に関わらずどれだけの資産を保有しているかという軸で判断されてしまっています。そこで生まれたのがSBTというわけです。
1つ以上のSBTを保持するウォレットは「Soul(ソウル)」と呼ばれ、複数のSBTにより個人のWeb3.0上のアイデンティティが形成されていきます。現実社会における履歴書のようなイメージに近いですが、大きく異なる点として、履歴書は自ら書くものですがSoulは他者によって作られていくという特性があります。SBTとそのユースケースによって実現するエコシステムは「分散型社会(DeSoc)」と呼ばれており、今後期待されている分野です。
NFTを活用したマーケティング手法「トークングラフマーケティング」
NFTを活用したマーケティング「トークングラフマーケティング」についても触れておきます。
Web2.0では何に興味関心があるかの「インタレストグラフ」や誰と繋がっているかの「ソーシャルグラフ」に基づいてマーケティングが行われてきました。しかし、これまでご紹介してきたようなトークンが普及していくと、その人がどんなトークンを所有しているかの「トークングラフ」によってもマーケティングが展開されていくようになるといわれています。
トークングラフマーケティングの利点は、個人がより主体的に保有するトークンを取捨選択していくことで、Web2.0よりもエンドユーザーのプライバシーを尊重したマーケティングが可能になることです。
トークングラフマーケティングを掲げるSUSHI TOP MARKETING社によって、「NFTを配る(受け取る)」ことのハードルが下げられ商品のプロモーションからライブ会場でのノベルティ配布、名刺交換にも活用されており、今後の動向にも注目です。
▼トークングラフマーケティングについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください
Web3.0時代のマーケティングとは?カギは「トークングラフ」と「NFT広告」の活用にあり – SELECK
トークンの活用で生まれる新しい経済「トークンエコノミー」とは
最後に、これまでご紹介してきたトークンを活用した新しい経済「トークンエコノミー」についてお伝えいたします。
トークンエコノミーとは、企業または個人により、ブロックチェーン技術を用いて発行された独自の通貨によって成り立つ経済圏のことを指します。
このトークンエコノミーが注目されている背景には、ブロックチェーン技術の台頭と共に「イーサリアム」の登場があります。イーサリアムとは、2013年に当時19歳の学生だったヴィタリック・ブリテン氏が考案した「DApps(Decentralized Application:分散型アプリケーション)」(※)のプラットフォームです。
※ブロックチェーンなどの分散型フレームワークを基盤としたWeb3.0におけるアプリケーションの総称
このイーサリアムには大きく2つの特徴があります。まず一つは、「スマートコントラクト」と呼ばれる機能です。これは、あらかじめ設定されたルールに従って取引プロセスを実行するプログラムのことで、この機能によりこれまで煩雑だったトークンの取引や管理を効率化することが可能になりました。
もう一つは、独自のトークンを発行できるという特徴です。この特徴はビットコインとの比較でよく語られますが、ビットコインは決済手段に特化している一方で、イーサリアムはその上にさまざまなアプリケーションを構築・稼働させることができ、多種多様なビジネスを成立させるプラットフォームとしての地位を確立しつつあります。
昨今市場を賑わせている「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」も主にイーサリアム上で発行されており、これまで著作権が曖昧だったデジタルデータや、アートや不動産などの現実世界のアセットもオンライン上で取引が可能になり、トークンエコノミーのビジネス活用の可能性が大きく広がっています。
トークンエコノミーの最大の特徴は、「行動データの経済化」によって、これまで無価値だったものに価値を付与できる点です。これは「推し活」や「ファン経済」、「クリエイターエコノミー」などと相性が良いとされています。
例えば、いちDJアーティストの活動を例に挙げるとすると、
- SpotifyやApple Musicなど配信プラットフォーム上での楽曲再生数
- 知人・友人への楽曲紹介
- TwitchやYoutubeなどでのライブ配信おける滞在時間
- 配信上でのコメントやスタンプの送信量
- オフラインでのクラブイベントに友人・知人を連れて行く
などのファンの活動がアーティスト側に還元されるような仕組みを、トークンを活用することで構築できる可能性があります。また、ただアーティスト側に還元されるだけでなく熱量の異なるファン間における「価値の非対称性」をも是正し、ファンの活動を後押しすることで、アーティストとファンの共創関係を生み出すこともできるとして、注目されています。
▼詳しくは、こちらの記事で解説しておりますので是非一緒にご覧ください
Web3.0で生まれる新しい経済「トークンエコノミー」とは?定義や事例、インセンティブ設計のポイントまで
トークンの保管に必須の「ウォレット」とは?初心者向けウォレットもご紹介
ウォレットとは、暗号資産やNFT、そのほかのデジタル資産を保管する機能を備えた仮想的・概念的な場所のことを指します。
それぞれのウォレットには、QRコードや30桁ほどの英数字で構成されたアドレスが割り振られており、それを利用することで個人間や取引所でのデジタル資産の取引を行います。ウォレットの利用目的は、主に以下の三つが挙げられます。
1.デジタル資産を安全に保管する
2.ブロックチェーン上でデジタル資産の送受信を行う
3.DeFiやNFTのマーケットプレイスなどの、DAppsに接続する
ウォレットは「公開鍵」「秘密鍵」「シードフレーズ」の三つの要素で構成されています。銀行で例えると、公開鍵は口座番号、秘密鍵はパスワードのようなものです。シードフレーズはウォレットのパスワードを忘れてしまった場合や、パソコンやスマートフォンを買い替えた時などに必要になるフレーズです。
また、ウォレットは「秘密鍵の管理方法」によって、以下のように2種類に分類することができます。
①カストディアルウォレット
…ユーザーに代わって第三者(取引所など)が保管するウォレット。中央集権型取引所(CEX)のウォレットの多くがこれに該当する。
②ノンカストディアルウォレット
…ユーザー自身が秘密鍵を管理するウォレット。分散型取引所(DEX)や事業者が提供するウォレットの多くがこれに該当する。
昨今、よく耳にする「MetaMask」や「Trust Wallet」などは「ノンカストディアルウォレット」に分類されます。このウォレットの特性として、自分で資産の管理を行うため取引所が閉鎖してデジタル資産にアクセスできなくなるといった心配がない一方で、万が一秘密鍵やシードフレーズを紛失してしまった場合にはデジタル資産へのアクセスが回復できないため、注意が必要です。
ウォレットには紙やUSBで保管する「コールドウォレット」、アプリやブラウザで管理する「ホットウォレット」などさまざまな種類が存在しますが、どんな資産を、どのような目的を持って、どのくらいの期間保管するのかの用途に分けて適切なウォレットを選ぶことが推奨されています。
以下、Web3.0初心者の方におすすめのウォレットを2つ紹介します。
①日本語・日本円にも対応!定番ウォレット「MetaMask」
まずは鉄板の「MetaMask」です。イーサリアム創設メンバーの1人が創業したブロックチェーンの大手企業ConsenSys社が提供するウォレットで、ブラウザ型とアプリ型の2種類のタイプで提供されています。また、日本語と日本円の表示にも対応しているため、初心者でも使いやすくおすすめです。
ETHだけでなく、BNBチェーンやPolygonなどとも連携されています。また、MetaMask独自の機能としてはDAppsやNFTゲーム、DEXなどとの連携があり汎用性が高いというメリットがあります。
また、ウォレットによってはトークンごとにアドレスを管理しなければならないケースも多くありますが、Metamaskは複数のウォレットを作成して、使用用途ごとにアカウントを使い分けることも可能です。そのため、ETH系トークンをまとめて管理できる点でも利便性が高いのが特徴です。
②ユーザーフレンドリーでセキュリティ面もGOOD「Rabby」
「Rabby」はブラウザ連動型のウォレットです。MetaMaskと比べて「セキュリティ面」や「UI」で優れているとする意見があります。具体的には、MetaMaskではスマホアプリでのみ保有しているNFTを確認できますが、Rabbyはデバイスに関わらず保有しているデジタル資産を表示させることができます。また、チェーンの切り替え作業が不要だったり、動作が軽いといったメリットもあります。
Rabbyでは、署名などの操作の際に詳しい説明を表示してくれたり、怪しい操作が求められている場合に警告を出してくれるなど、ウォレット初心者には嬉しいサポートがあります。
▼「ウォレット」について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください
仮想通貨やNFTの取引に必要な「ウォレット」とは? 定義と分類、おすすめウォレット5選まで – SELECK
以上、「トークン」について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
ブロックチェーンの広がりと共にトークンの利用用途は変化し、今後も様々なトークンが発行されるかと思います。単純な分類ではなく、「何の価値を代替するのか」という問いやその運用実態を元に整理することが重要です。
※本記事は情報提供を目的としており、投資を勧誘するものではございません。本記事に記載している情報は本サイトの見解によるもので、情報の真偽、暗号資産の正確性・信憑性などについては保証されておりません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。また、本記事の内容は公開時点の情報となりますのでご了承ください。