• SUSHI TOP MARKETING株式会社
  • 代表取締役 CEO
  • 徳永 大輔

Web3.0時代のマーケティングとは?カギは「トークングラフ」と「NFT広告」の活用にあり

私たちの身近な生活にも、徐々に影響を及ぼし始めているWeb3.0の世界。その変化に伴い、企業も消費者とのコミュニケーションを改めて練り直す必要に迫られるだろう。

Web2.0の時代には、企業が消費者に関するさまざまなデータを保有し、マーケティング活動に利用していた。しかし、ブロックチェーン技術を基盤とした分散型のインターネットが普及すれば、データの所有権は個人に移行するため、これまでのマーケティング手法は通用しなくなる。

この課題を解決するWeb3.0のマーケティング手法の一つとして「トークングラフマーケティング」を掲げるのが、NFTの配信技術に強みを持つSUSHI TOP MARKETING株式会社で代表を務める、徳永 大輔さんだ。

「トークングラフマーケティング」とは、ユーザーが保有するトークン(※)からその人の属性や趣味嗜好を推測し、NFTを送るマーケティング手法を指す。

※トークンとは、NFTや仮想通貨といった暗号資産を総称する言葉

徳永さんは「まずは無料ノベルティのような形でNFTを配布し、その後ユーザーと継続的にコミュニケーションを取りながらマーケティングを行う手法が、Web3.0の時代では鍵を握る」と話す。

今回は、徳永さんにWeb3.0時代においてマーケティングはどう変化するのか、歴史的な背景から、「トークングラフマーケティング」の定義、その活用方法まで詳しく解説いただいた。

Web3.0とは、「市民が分割所有するインターネット」

僕は、2021年にSUSHI TOP MARKETING株式会社を設立し、「トークングラフマーケティング」を通じて、さまざまな企業様のお手伝いをさせていただいています。このトークングラフマーケティングの説明をする前に、「そもそもWeb3.0とは何か」ということをお話しますね。

▼徳永 大輔さん

Web3.0とは、一言でいうと「市民が分割所有するインターネット」です。これだけではわかりづらいので、インターネットの歴史を少しだけ遡ります。

そもそも、インターネットが普及したのは1990年代で、まだ30年ほど前の話です。1989年にHTMLを使ったホームページという概念が生まれ、企業や一部の個人が一方的に発信を行っていた時代でした。これが、Web1.0といわれる時代です。

そして2000年代に入る頃にはYahoo!やGoogleといった検索エンジンが登場し、さらにはFacebookやTwitterといったSNSが普及したことで、誰もが双方向的に情報を発信できる環境になりました。これがいわゆるWeb2.0です。

しかし、Web2.0は問題を抱えています。それは、個人のコンテンツやSNSのフォロワーといったデータがGAFAMなどの中央集権型のサーバーに保管されているため、その管理が企業側に依存している、ということです。

そこで、データを個人が「所有」し、主体的にコントロールできる状態をつくろうとしているのが、Web3.0の世界です。そしてこのデータの所有を可能にしたのが、トークンの存在です。

これまでデジタルデータは複製や改ざんが容易でしたが、ブロックチェーンを用いて発行されるトークンによって、その唯一性を担保した上で、個人が企業に依存せずに「データの所有」ができるようになりました。そして、このトークンの可能性は、データの所有を可能にすることに留まりません。

例えば昨今、若者のSNS離れが話題になっていますが、その背景として、すでにフォロワーを多く獲得しているユーザーに対し、後発が影響力を持ちづらいという構造が挙げられます。しかし、いつの時代でも未来を切り開いてきた「名もなき新人」を埋もれさせないために、このような構造は打開しなければなりません。

その一翼を担うのが、トークンです。例えば、Twitterの青い鳥のアイコンを他の色に変える企画があるとします。その際、Twitterが発行するトークンの保有者が投票権を得る、という仕組みを作るなどして、ユーザーの関わり方に平等性をつくることができます。

Web2.0時代のマーケティングは「行き詰まった」状態にある

では実際に、Web3.0の到来でマーケティング手法はどう変化するのか。まずは、現代のマーケティングをおさらいします。現在はWebマーケティングが主流で、それらは主にGoogleと、FacebookやTwitterなどのSNS上で行われています。

Googleでは「何を検索したか」のインタレストグラフによって、そしてSNSでは「誰と繋がっているのか」「どのコミュニティに所属しているのか」のソーシャルグラフを通じて、その人の属性が推し量られ、マーケティングが行われています。

これらは「Cookie(クッキー)」と呼ばれるシステムによって、誰がどこのインターネットを回遊したのかが記録され、それらをリターゲティングすることで成立しています。しかし、このCookieを悪用した事件が起きたことで、データ社会の闇が浮き彫りになりました。

▼個人データの不正利用に迫った、Netflixのドキュメンタリー映画「グレート・ハック」

 

時は2016年。アメリカ大統領選の時でした。当時出馬していたトランプ氏の思想的背景により、アフリカ系アメリカ人が多く住む地域では票の獲得が難航すると見込まれていました。

そこで、ケンブリッジ・アナリティカというイギリスの政治コンサルティング会社が、Facebook上の個人情報を利用して心理プロファイリングを行い、投票行動を操作しようとしたのです。

結果はご存知の通り、トランプ大統領の共和党が勝利。また、同じ手法をイギリスの国民投票でも用いて、イギリスがEUを離脱したことも記憶に新しいです。この一連の事件が世界を騒がせ、2018年5月には、欧州内での個人情報の取り扱いに規制を設ける「GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)」が、そして、2020年には米国カリフォルニア州でもユーザーのプライバシーを保護する法律が施行されています。

このように、よりユーザーのプライバシーが尊重されるようになったことで、マーケティング手法が行き詰まってしまっているのが現状です。その結果、出稿に多くのお金がかかる看板広告と、比較的安く出稿ができるWeb広告を比較しても、あまり費用対効果が変わらないということも起きています。

そこで、この状況を打開するべく、僕たちが掲げているのが「トークングラフマーケティング」です。

Web3.0時代に必須の「トークングラフマーケティング」とは

トークングラフマーケティングとは、Web3.0上でその人が所有するトークンの情報、「トークングラフ」を基にその人の属性や趣味嗜好を推し量り、NFTを送るマーケティング手法のことです。

改めて「NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」とは、デジタルデータにシリアルナンバーを付与することで、それが唯一無二の価値であることを証明する技術です。この技術によってデータに「希少性」という価値が付与され、デジタルデータを「資産」として扱えるようになった、という点が注目すべきポイントです。

ここで留意していただきたいのは、トークングラフはWeb2.0のインタレストグラフとソーシャルグラフに取って代わるものではなく、そこに「追加」される新しいマーケティング概念だということです。

トークングラフマーケティングが成立する背景には、ブロックチェーン技術の「透過性」という性質が前提にあります。ブロックチェーン上では、個人名ではなく、ウォレットアドレス(※)にどのようなNFTアートを所有しているのか、どんなゲームをプレイしているのかといった情報が記録され、ガラス張りのようにオープンになっています。

※ウォレットとは暗号資産を取引・保管するためのアドレスのことで、銀行口座で例えると口座番号のようなもの

例えば、あるウォレットの中にVRに関するNFTが複数入っているとします。すると、その人の自宅にはVRのヘッドマウントディスプレイがあるのでは、と予測ができますよね。VR関連サービスを展開する企業は、そうしたウォレットを選んで広告としてのNFTを送ることができます。

とはいえ、Web2.0のマーケティングと具体的に何が違うのか、まだ想像が難しいかもしれないですね。ここでのポイントは主に2つです。

まず一つは、個人が所有するデジタルデータに紐づいたマーケティングであるという点です。例として、あるイベント会場で自分が受け取ったNFTを友人に譲渡したとします。後日主催者がイベントの動画を記録したNFTを送付する際には、参加した人にではなく、そのNFTを所有している友人に送られます。このように、「個人がどんなデジタルデータを所有しているか」という切り口でマーケティングが行われる点が従来とは異なります。

もう一つは、Web2.0よりもエンドユーザーのプライバシーを尊重したマーケティングができるという点です。これまでは、Cookieを元に企業側から一方的にマーケティングされていました。しかし、前述した特徴に加えて、所有するNFTを主体的に選択できるという点を考慮すると、従来よりもユーザーの意思を尊重したマーケティングアプローチであると考えられます。

「NFTを配る」ハードルを下げた、新たなソリューション

とはいえ、これまでは「NFTを配る」という行為のハードルが高く、NFTを活用したマーケティング手法がなかなか普及してきませんでした。

現在のNFTの配布方法は、世界最大のNFTマーケットプレイス「OpenSea」などで販売するのが主流です。しかし、弊社が開発した技術によってQRコードやICカードなどでNFTを配布することも可能になりました。

これは弊社の創業背景に繋がるのですが、僕の友人が銀座の寿司屋「鮨 渡利」で板前をやりながらYouTuberとしても活動していまして。YouTube動画が結構伸びてきた2020年頃、海外でSushiSwapというコインが登場したことをきっかけに、半ばジョークで、暗号資産でお会計できるイベントを開催したんです。

すると、国内外から予想以上の反響があって。「この熱量を一過性で終わらせるのは勿体無い」と感じて、当時流行っていたNFTカード「NBA Top Shot」にかけて「SUSHI TOP SHOT」と名づけたトレーディングカードのNFTを用意し、渡利で暗号資産で決済してくれた人に配布する企画を実施しました。

▼実際に配布された「SUSHI TOP SHOT」の一例

ただし、渡利のようなスタッフが少ない店でNFTを毎回配布するのは手間がかかります。そこで、より簡単なNFTの配布方法を模索しはじめたのが、創業のきっかけです。

これまでITリテラシーに左右されずにNFTを配布できるソリューション開発に特化してきましたが、その中でも弊社独自のNFTの配布方法があります。それは「AUDIO TOKEN DISTRIBUTOR」と名付けた、「音響透かし」技術を活用することで、音声を通じてNFTを配布できるソリューションです。

音響透かしとは、非可聴音やBGMの裏側に人間の耳には聞こえない音で情報を添付し、送信先のデバイスに情報を伝える技術のことで、これをブロックチェーン技術と繋げることにより、音を聞いた人にだけNFTを配信することができます。

この技術は、MP3などの音響データがあればYouTubeやラジオ、ポッドキャストを通じて簡単にNFTを送れる点が強みです。また、広範囲に配布することも可能なので、商業施設やライブイベントなどで「その場にいた証明」としてのNFTを配布することもできます。

実際に、3月25日に実施したバーチャルアーティストのリアル・オンライン同時ライブ​「Re:Volt 2022」では、会場のBGMにNFTを入れて来場者限定のNFTを配布しつつ、オンラインで視聴した人には別のNFTを送るといった試みも行いました。

▼Re:Volt2022でのNFTの受け取り方

昨今、企業さんなどにご相談いただく際には、無料で大量に配る「ノベルティ」としてのNFT配布を勧めています。一度トークンを配布すれば、ユーザーと継続的なコミュニケーションが取れるからです。例えば、新しいイベントの告知や、イベントのチケットを送ったり、コミュニティを立ち上げたらその参加資格にする、などですね。

バブルの先を見据えて。そのNFTには「なぜ価値があるのか」

ここまでお伝えしてきましたが、実際、NFTが万能だとは思っていません。NFTを保管するためにウォレットを作る必要があったり、「NFTハラスメント」への対処など、まだまだ弱点はあります。

現状、NFTを管理するMetaMask(※)などのウォレットは、一方的に送りつけられてきたトークンを拒否することができません。そのため、児童ポルノやわいせつ動画などが送りつけられたり、その行為を通じて印象操作が行われる危険性も孕んでいます。

※MetaMaskとは、イーサリアム系ブロックチェーンに対応した仮想通貨ウォレットの一つで、トークンを保管・管理できる

さらに、多くのNFTが登場する中で、「なぜそのNFTに価値があるのか?」という設計ができていないまま販売し、失敗している企業の事例も多く見受けられます。

とはいえ、僕がこれだけNFTに魅力を感じている理由は、さまざまな機能をあとから付与することで、ユーザーと継続的にコミュニケーションをとりながら、価値や体験の拡張が可能だからです。

先ほどご紹介した「鮨 渡利」でも、「ダイナミックプライシング(需要と共有の関係で値段が決まる)」の考え方を取り入れ、芸能人が来店する際に、座席で一緒に食事をする権利をNFTに変えてオークションで販売する、といったアイデアもあります。

正直、今NFTは「バブル」の状態だと思っていて、いつか崩壊するのではと思っています。「NFTを出品したら、誰でも儲かります」という認識が広がっていますが、そうではなくてNFTの「実用的な部分」を伝えていくことに使命を感じています。

個人がデジタルデータを所有する文化は今後確実に形成されていきますし、早ければ半年後、遅くとも2024年には必ずみなさんのスマートフォンにウォレットが存在する時代になるはずです。

そうした将来を見据えて、日本はもっとNFTを戦略的に活用していくべきだと思います。

正直、今の日本はやばいなと思っていて。僕は現在33歳なのですが、生まれてからずっと日本が落ちていくニュースしか見ていません。特にここ20年ほど続く、テクノロジーにおける日本の負け癖をどうにかしなければならないと、いち起業家として問題意識を持っています。

では、どうすれば日本はこの負け癖を払拭できるかというと、何かひとつで良いので新しいテクノロジーでもう一度トップをつかむこと。そこで鍵を握るのが、NFTだと考えています。

DeFiなどの分散金融の分野は、税制の問題で日本では勝負が難しいのが現状です。けれども、NFTの領域では起業家を後押しするような体制が整っていますし、何より、日本には世界に誇るIPが数多く存在しています。それらにNFTの技術を活用して、再び世界で戦っていく。その一翼を担うために、今後もNFTの活用をさまざまな領域で広げていきたいですね。(了)

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