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【前編】Web3.0時代の「クリエイターエコノミー」はどう変わる?NFTやメタバースの活用法まで

これまで、「クリエイター」は一部の「プロの」表現者を指し、あくまでも趣味の範疇で表現する多くの人は含まないと考えることが一般的でした。しかし、インターネットの発展と共に、誰もがクリエイターとして価値を生み出せる時代が到来しつつあります。

クリエイターエコノミーとは、個人がクリエイターとして自身のスキルを活用し、情報発信やアクションによって報酬を得る経済圏のことです。

米国の学生の約29%が「YouTubeのスターになりたい」と回答しているという調査もあり、世代を超えて「クリエイター」の影響力が拡大してることがわかります。

現在、世界では5,000万人以上がクリエイターとして活動しているとされ、その市場規模は2021年時点で約1,042 億ドル日本円にしておよそ11兆円と推定されており、すでに大きな市場を形成しています。

さらに、近年話題になっているブロックチェーン技術の台頭やWeb3.0の概念が普及してきたことにより、クリエイターがファンから直接報酬を受け取れる仕組みを形成できたり、ファンとのコミュニケーションがより密になるなど、さまざまな可能性が開かれ始めています。

日本でも経済産業省が、2022年7月から「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業」を開始しており、今後、日本経済のエンジンになるのではないかと大きな期待が寄せられています。

▼2022年8月に公開された全体ロードマップ

そこで今回は、クリエイターエコノミーの定義から、注目される背景や歴史、さらにWeb3.0によってどう変化するのかまでを徹底解説いたします。ぜひ最後までご覧ください。

<目次>

  • クリエイターエコノミーとは? その定義から注目の背景まで
  • クリエイターエコノミーにおける3つの収益化タイプ
  • クリエイターエコノミーの歴史を振り返る
  • クリエイターエコノミーが抱える2つの課題
  • なぜ、Web3.0がクリエイターエコノミーにとって重要か?
  • メタバースが経済圏を創り、クリエイターの雇用機会を生む

クリエイターエコノミーとは? その定義から注目の背景まで

クリエイターエコノミー」とは、個人がクリエイターとして自身のスキルを活用し、情報発信やアクションによって収益化を行う経済圏のことです。

かつて、「クリエイター」とは、イラストレーターや小説家、カメラマン、映画監督といった一部の人々を表象する言葉でした。

しかし、インターネットの発展に伴うサービスやプラットフォームの多様化、さらにコロナ禍による可処分所得の増加や、副業の一般化も相まって、誰もがクリエイターとして活動できる環境が整いつつあります。

そうした中、近年ではYouTuberやTikToker、インスタグラマー、インフルエンサー、ライバー(オンラインでライブ配信を行う人々)、ラジオパーソナリティ、Webライター、ジャーナリストなど、あらゆるジャンルで創作活動を行う個人を「クリエイター」と指すようになりました。

クリエイターエコノミーが国内で注目され始めたきっかけとして、2021年にBASE社やnote社、UUUM社など計39社による、クリエイターの活躍促進や保護、政策提言を目的とした一般社団法人クリエイターエコノミー協会」が設立されたことが挙げられます。

同協会は、2022年10月17日に日本初となる国内のクリエイターエコノミー調査の結果を発表しており、その調査によると国内クリエイターの市場規模は1兆3,574億円で、世界の推計規模の約1割に相当するとしています。

さらに、潜在クリエイター数は2,200万人にのぼると推計され、市場規模は2034年に10兆円超に拡大するのではないかと見込まれており、未だ大きなポテンシャルを秘めていることがわかります。

▼クリエイターエコノミーの市場規模

※出典:日本初!国内クリエイターエコノミー調査結果を発表 – 一般社団法人クリエイターエコノミー協会(note)

クリエイターエコノミーにおける3つの収益化タイプ

クリエイターが創作によって収益を得る方法は、主に3つのタイプに分けることができます。

1.メディアプラットフォーム(広告やアフェリエイト、eコマース、ライブコマースなど)

メディアプラットフォームとは、YouTubeやInstagram、TikTok、iTunes、Spotifyなどコンテンツを制作して配信するための機能を備えたサービス全体を指します。

これらは広告収入モデルをメインとし、例えばYouTubeでは、一定の基準を超えた配信者に対して広告収入が得られる権利を付与しています。売上の一部がクリエイターに還元される、アフェリエイトを活用して収入を得ている人もいます。

また、デジタルコンテンツの有料化や物販で収益を得る人もいます。具体的には、BASEやココナラといったプラットフォームでの商品・サービスの販売や、noteやKindleなどで文書のマネタイズを行うこと、さらにUdemyで有料のコースを開設することなどが挙げられます。

2.インフルエンサーマーケティング

SNSの普及により、一般人でも数万単位のフォロワーを抱え、有名タレント並みの発信力をもつ「インフルエンサー」が登場しました。彼らの発信力を活用し、企業が商品やサービスのPRを行うマーケティング手法が「インフルエンサーマーケティング」です。

インフルエンサーは、旅行やファッション、食べ物、美容、ライフスタイルなど特定のジャンルに特化して発信を行う人が多く、また、消費者目線での情報発信ができる点で効果的に訴求できるメリットがあります。

デジタルインファクト社の調査によると、SNSを活用した国内のインフルエンサーマーケティングの市場規模は、2020年時点で317億円だったのが、2022年には約2倍の723億円になっているとしており、市場が拡大し続けているのがわかります。

事実、下図にもみられるように世界的にもクリエイターの収入の多くはブランド力やスポンサーに大きく依存しているのが現状です。

▼クリエイターの収入源の割合を比較

※出典:Shedding Light into the Income Disparity Distribution in the Creator Economy – Influencer marketingHub

3.ファンやオーディエンスによる直接課金(クラウドファンディングや月額課金など)

CAMPFIREやMakuakeなどのクラウドファンディングサイトで出資を募ったり、Twitchや17LIVE、SHOWROOMといったライブ配信サービス、ラジオ配信アプリspoonなどを通じた投げ銭(ギフティング)で収益を得るクリエイターもいます。

昨今、コミュニケーションツールとして活用が広がっているDiscordも、2021年よりクリエイターに向けてサブスクリプション型で収益を得られるサービス「Premium Memberships」の提供をスタートさせています。

さらに、各種SNSもクリエイターエコノミーに注目して新たな機能を続々と公開しています。Twitter社はオランダ発のニュースレター配信サービス「Revue」を買収して個人の発信を後押ししたり、クリエイターへの直接課金で追加コンテンツを視聴できる「Super Follow」機能、お気に入りのツイートに投げ銭できる「TipJar」機能を開始しています。

ブログサービスのTumblrも、「Post+」という記事の収益化ができる機能をベータ版でローンチしており、現在は一部のユーザー間で実験的に機能が解放されているとのことです。

クリエイターエコノミーの歴史を振り返る

クリエイターエコノミーの歴史はインターネットの変遷と関係性が深いので、まずはインターネットのこれまでの変遷を大まかに見てみます。

・Web1.0:読み取り専用ページの時代(1990年~2004年)
…World Wide Webの仕組みが生まれた1990年から、2004年までの期間。静的なコンテンツ提供が中心で、インタラクティブ性はほぼなく、参加者の多くはコンテンツの消費者。個人のホームページに加え、Yahoo!やGoogleなどが代表的なサービスとして挙げられる。

・Web2.0:SNSとGAFAの時代(2005年~2021年)
…いま私たちが日々触れているインターネットの世界。Web1.0よりもインタラクティブで、ソーシャルな世界。SNSの登場により、Webは閲覧するものから「参加できるもの」に。YouTubeやFacebook、TwitterやInstagramなどが代表的なサービスとして挙げられる。

・Web3.0:ブロックチェーンの時代(2022年?~)
…ブロックチェーン技術等を用いてデータの分散管理を実現を実現し、Web2.0と異なり「非中央集権的」なWebを目指す。イーサリアム(Ethereum)の共同創設者、ギャビン・ウッド氏によって提唱された。

▼Webの歴史

※出典:Tokenized Networks: Web3, the Stateful Web – Blockchainhub Berlin

上記内容を踏まえ、3つのフェーズに分けてクリエイターエコノミーの歴史をまとめます。

【Phase1:誰もが手軽に発信できる時代の始まり】

クリエイターエコノミーの始まりは、1999年に登場した無料のブログサービス「Blogger」だとされています。参加者のほとんどがコンテンツの消費者であったWeb1.0から、誰もが簡単に文章や写真をWeb上に投稿できるようになったのがこのタイミングでした。

そして、Web2.0に入りTwitterやFacebook、MyspaceなどのSNSが誕生したことで、「UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)」の生成を中心に個人の発信がより手軽なものとなっていきます。

その後、YouTubeが2007年より広告の仕組みをスタートさせ、コンテンツの「マネタイズ」が可能になりました。また同年に初代iPhoneが発売されたことでモバイルの利用者も増加し、クリエイターエコノミーが加速していきます。

【Phase2:インフルエンサーの活躍と収益モデルの多様化】

2010年10月、Instagramの登場とともに「インスタグラマー」と呼ばれる影響力の強いユーザーが現れ、新たな収益源を生み出します。企業から依頼を受けて商品やサービスを紹介し報酬を得る、「インフルエンサーマーケティング」の始まりです。

2015年頃からは、それまで一部のユーザーにしか利用されていなかったYouTubeやニコニコ動画が民主化し、2016年のTikTok誕生以降、ライブ配信アプリが乱立するようになっていきます。

インフルエンサーにPRを依頼する方がTVCMや誌面広告よりも安価であったため、​2017年にはテレビ・雑誌などいわゆる「4マス」を抜いてデジタルの広告費が上昇し、代わって「GAFA」が頭角を現します。

また、2012年にBASE、ココナラ、2014年にSUZURIといった個人がスキルや商品を販売できるプラットフォームも登場しており、徐々に人気を集め始めたのもこのタイミングです。

【Phase3:個人がオーナーシップをもち、ファンと経済圏を拡大する時代へ】

2010年代にクリエイターの収益モデルが多様化したことで、一つのプラットフォームに留まるのではなく、複数にまたがって活動を行うクリエイターが増え始めました。

その動きに拍車をかけた事件として、のちにバイデン政権が撤回したものの、2020年に米国のトランプ政権が国内におけるTikTok使用禁止を示唆したことで、一つのプラットフォームに留まり続けることの脆弱性を感じたクリエイターが多かったとされています。

米国のデータではありますが、2017年には、すでに約1,700万人のクリエイターが9つのプラットフォームで収入を得ていたというデータもあり、徐々に個人の力がプラットフォームを凌駕するように。

個人にパワーバランスが寄った証拠として、TikTokが2020年に米国で約2億ドル(約213億円)のクリエイター向けファンドを立ち上げたのを皮切りに、各種プラットフォームも右へ倣えでファンドを設立しています。

▼各プラットフォームのクリエイター向けファンドの比較

※参照:Who will own the creator economy? A web2 vs. web3 showdown – Justine Moore

昨今においては、クリエイター支援サイト「Patreon」の登場や、投げ銭やサブスク、クラウドファンディングといったファンから直接収入を得られるサービスも活況です。

またブロックチェーン技術を活用したNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)」も登場し、今後、クリエイターは複数の収益モデルをバランスよく使いこなしながら、ファンの熱量や特性に合わせてマネタイズを行っていく姿勢が求められるようになるでしょう。

▼クリエイターの需要曲線(縦軸:価格、横軸:ファンの数)

※出典:Creator Demand Curve – Creator Economy by Peter Yang

クリエイターエコノミーが抱える2つの課題

誰もが「好き」を仕事にできる時代が来るのではないかと期待が寄せられているクリエイターエコノミー。しかし、従来の「プラットフォーム中心」のクリエイターエコノミーでは以下のような問題を抱えています。

・プラットフォーム側にファンの行動データが依存してしまっている
・プラットフォームのアルゴリズムや機能変更に影響される
・すでに無料で良質なコンテンツが多く存在しているため、マネタイズが難しいケースも多い
・市場がある程度飽和してしまっている
・個人がコンテンツの質を保ちながら、市場で戦い続けることの限界
・一部のスターによる富の独占を避けられず、後発のクリエイターにとって不利な場合が多い
・インフルエンサーは男女間で約25%の賃金格差がある(男性の方が収入が多い傾向)
・プラットフォームの衰退に影響され、過去の活動歴が無くなる可能性もある

今回は、上記に加えてクリエイターエコノミーの課題としてよく挙げられる「多くのクリエイターが稼げていない」「アテンションエコノミーによる支配」の2つに焦点を当てて解説します。

1. 99%のクリエイターが「稼げない」

まずは、クリエイターとして活動する人の99%は趣味として創作を行う程度に留まっており、生計を立てられるまで「稼げていない」という課題です。プラットフォームの収益構造により、富の多くがトップ1〜2%のクリエイターに集中してしまっているのが現状です。

YouTubeは広告収入の45%をクリエイターに分配する仕組みを採用していますが、YouTuberの97.5%が米国の貧困ラインである12,140ドルの年収にその分配が到達していないとされています。

クリエイターエコノミーという概念を生み出した投資家のリー・ジン氏は、クリエイターにおける中産階級の不在と格差の拡大を問題視して次のように述べています。

現在のクリエイターの状況は、富が上位に集中する経済とよく似ています。「Patreon(メンバーシップ機能でクリエイターを直接支援できるサービス)」では、2017年に最低賃金である月1,160ドルを稼いだクリエイターはわずか2%でした。

Spotifyでは、アーティストがフルタイムの最低賃金労働者の年収15,080ドルを達成するには年間350万ストリーミングが必要で、この事実が、ほとんどのミュージシャンをツアーや商品で収入を補うように駆り立てています。

下図のような比較もあります。各音楽プラットフォームでの100万再生あたりの収益は、Spoitfyで3,180ドル(約41万円)、Apple Musicでも8,000ドル(約104万円)であり、これらのプラットフォーム上だけで生活費を稼ぐことが現実的ではないことがわかります。

▼生活するために必要な再生回数を、プラットフォーム毎にまとめたもの

※出典:Sound.xyz Changing the economics of the music industry with NFTs – The Syllabus

日本国内でも、三菱UFJリサーチ&コンサルティング社が2022年10月に公開した調査によると、クリエイター活動に取り組む人の54%の人が「活動が思うように収益化に繋がらない(業務が受注できない、PV数が少ない等)」ことを課題に挙げており、クリエイターの収入面において未だ大きな壁があることが実感できます。

2. 「アテンションエコノミー」による支配

クリエイターは作品を創るだけでなく、より多くの人に自分の存在を知ってもらう必要があります。その手段としてSNSを活用している人がほとんどですが、ここに「アテンションエコノミー」と名付けられた社会課題が潜んでいます。

「アテンションエコノミー」という言葉は、ノーベル経済学賞を受賞した心理学者・経済学者であるハーバート・サイモン氏によって1969年に提唱されました。

その後1997年に、元物理学者のマイケル・ゴールドハーバー氏が、オンライン上で多くのコンテンツが無料で提供されている現状に対し、国際経済が「物質ベース」から「アテンション(注目)ベース」へと移行していると述べ、アテンションエコノミーという言葉が一般的に使われるようになりました。これは、情報経済において私たちの「アテンション」が資源となっていることを示唆しています。

現状のSNSの多くは広告モデルでお金を稼ぐようになっているため、クリエイターはユーザーの注目を集め、いかにメディアへの滞在時間を伸ばすかのゲームのような感覚になってしまっているとされています。

そのため、ときには道義性なども無視した「炎上商法」にも近いコンテンツやパフォーマンスが蔓延っており、社会的分断を生み出したり、ユーザーのメンタルヘルスに弊害を起こしたりなどの問題が生じているのです。

さらに、ドナルド・トランプ氏が当選した2016年の米大統領選挙において、英国の政治コンサルティング会社がSNS上の個人情報を利用して投票行動を操作しようとするなど、民主主義を揺るがす事件も起きました。

新型コロナウイルスの蔓延によって広く知られた「フィルターバブル(※)」や「フェイクニュース」などのワードも、アテンションエコノミーの副作用的なものです。

※アルゴリズムがインターネットユーザーの検索履歴やクリック履歴を分析し学習することで、ユーザーの好みや行動特性に合わせた情報ばかりが表示されてしまう現象のこと

※参考:Paying Attention: The Attention Economy – Berkeley Economic Review

▼上記事件についてはこちらの記事で詳しく紹介しております。ぜひご覧ください。
Web3.0時代のマーケティングとは?カギは「トークングラフ」と「NFT広告」の活用にあり – SELECK

こうした背景を受け、昨今では個人情報を保護しようとする動きが各国で進められており、2018年には、欧州内での個人情報の取り扱いに規制を設ける「GDPR(EU一般データ保護規則)」が、そして、2020年には米国カリフォルニア州でもプライバシーを保護する法律が施行されています。

よりプライバシーが尊重されることはユーザーにとっては朗報ですが、企業やクリエイター側からすると従来のようにデータを活用したマーケティング手法が行き詰まってしまい、新たなビジネスモデルを模索する必要が生じています。

なぜ、Web3.0がクリエイターエコノミーにとって重要か?

そこで、先ほど述べた行き詰まりや、クリエイターエコノミーの諸課題を解消し得るのではないかと期待されているのが、Web3.0の存在です。

Web3.0とはブロックチェーン技術を基盤とした分散型ウェブの世界のことで、中央集権的なWeb2.0に対するアンチテーゼとして使われている言葉です。「オンラインの世界で巨大テック企業が独占している権力を、ブロックチェーン技術によって個人に分散する」というコンセプトを大まかにもちます。

▼詳しくは、こちらの記事もぜひ一緒にご覧ください
【最新事例も】「Web3(Web3.0)」とは何か? ブロックチェーンが実現する「次世代インターネット」徹底解説 – SELECK

これまで述べてきたように、クリエイターエコノミーでもGoogleやYouTube、TwitterやInstagramなどの各種プラットフォームが大きな力を握り、「クリエイターがコンテンツを作成し、企業が儲かる」という構造が作られてきました。

その力学は収益構造に表れているだけでなく、クリエイターのファンや、ファンの行動データなどが全てプラットフォーム側に依存してしまっているということからもわかります。Web3.0はこうしたプラットフォームの力学を弱め、クリエイターがファンと直接つながり、収益を獲得できるような仕組みを実現しつつあるのです。

Web3.0と共に注目すべき技術の一つとしてNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)が挙げられます。NFTとは、ブロックチェーン上のデジタルデータが唯一無二の存在であることを証明する技術のことです。

NFTの登場によって、これまで複製や改ざんが容易だったデジタルコンテンツに製作者や所有者などの情報を記録でき、プラットフォームに依存しない形で「所有者」になることができます。つまり、よりリアルに近いかたちでの商取引がインターネット上でも可能になったということです。

また、昨今のNFTアートブームに則って、アートをNFT化して販売し、ホルダーによるコミュニティを形成して経済圏の形成を行うアーティストが増えています。

いまやNFTアーティストとして名を馳せるBeepleは、元々はビデオアートをメインに活動していたことで知られています。しかし、2021年3月に発表した彼のNFTアートが競売開始から約2週間で約75億円で落札されたことは記憶に新しいニュースでしょう。

日本国内においても海外の成功者を追いかけるように、過去にSELECKで取材したNFTアートプロジェクト「NEO TOKYO PUNKS」のNIKO24氏や「Neo Samurai Monkeys」のBig Hat Monkey氏も、NFTを活用して独自のコミュニティや経済圏を形成しています。

彼らのコミュニティでは熱心なファンによる二次創作活動も活発です。二次創作では著作権のライセンスや違法転売などが問題視されますが、NFTを活用することで二次流通における版権者に対する収益還元も可能となり、「創作が創作を生む」新たな経済圏が生まれてきています。

▼NEO TOKYO PUNKSの二次創作の例

この二次創作文化を活かして、秋葉原ではWed3.0時代のNFT連動・次世代型クリエイターネットワーク「AKIBA EDENという取り組みが行われています。

これは、AKIBA観光協会がカヤックアキバスタジオ社と合同で行っているプロジェクトで、NFT やトークンを活用したビジネスを創出するコンソーシアムの形成を目的としています。クリエイター同士のつながりや所在を明らかにすべく、現在は完全招待制かつ登録制とのことです。

同プロジェクトの第一弾は、手塚プロダクションとのコラボレーションです。世代を超えて愛されるIPの「鉄腕アトム」をテーマに、さまざまなジャンルのクリエイターによってNFTを活用した二次創作が行われました。これらの作品は11月下旬に公開される予定です。

今後も、直接版権元と交渉を行うことで、「ファンアート」としてではなく、幅広いジャンルのクリエイターの創作を商用としてメタバース空間上などで発信できるようサポートを行っていくとのことです。

▼ 手塚プロ公認二次創作NFTプロジェクト「ATOM Genesis」の紹介ムービー

また、ソーシャルトークン(※)を活用することで、クリエイターとファンの双方にとってインセンティブがもたらされるような仕組みを作ることも可能です。

※ソーシャルトークンとは、主に「DAO(分散型自律組織)」などのコミュニティにおいてメンバーシップとして機能したり、共同プロジェクトやコミュニティへの貢献を可視化するトークンのこと

この時、主に以下2つのインセンティブを考えることができます。

  • 「経済的インセンティブ(トークン保有者はより多くの収入や利益を得ることができる)」
  • 「経営的インセンティブ(トークン保有者が投票権を持ち、エコシステムに影響を与えることができる)」

わかりやすく、DJアーティストの活動を例にして説明します。

例として、ある国内DJアーティストが「Xトークン」を発行するとします。

熱心なファンのAさんは、数ヶ月後に予定されているクラブイベントのPRを手伝い100Xトークンを受け取りました。この時点で100Xトークンは2万円の価値があるとします。

その後、そのDJアーティストが武道館でライブを行うとします。この際、VIP席のチケットを100Xトークンで交換することができますが、最近海外に進出したことで人気が上昇し100Xトークンが5万円まで価値が高まっているとします。

この際にファンのAさんが享受できる金銭的な価値(5万円−2万円=3万円)が「経済的インセンティブ」の一つの例です。AさんはトークンをVIP席のチケットと交換することもできますし、VIP席を欲しがっている人にトークンを売ることも可能です。

また、DJアーティストはコミュニケーションツール「Discord」上でファンコミュニティを運営しており、武道館ライブで販売するグッズのデザインについてコミュニティに意見を求めるとします。この際に、Xトークンを保有している人のみが多数決に参加できる仕組みが「経営的インセンティブ」の一例です。

つまり、クリエイターの熱狂に人々が集い、価値向上のためにファンが自律分散的に活動し、個々の価値貢献に対してインセンティブが還元される仕組みが実現される可能性があるということです。

この動きは、Web3.0におけるコミュニティの在り方として語られる「DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)」と呼ばれるものに近いもので、DAO的にコミュニティを形成しながら、独自の経済圏を確立していくクリエイターが今後増えていくでしょう。

▼トークンを活用した収益化について、詳しくはこちらの記事をご覧ください
Web3.0で生まれる新しい経済「トークンエコノミー」とは?定義や事例、インセンティブ設計のポイントまで – SELECK

メタバースが経済圏を創り、クリエイターの雇用機会を生む

もう一つ注目すべき技術として、「次世代のインターネット」とも称されるメタバースの存在が挙げられます。

メタバースとは、英語の「超(meta)」と「宇宙(universe)」を組み合わせた造語です。概念自体は新しいものではなく、SF小説やコンピューターゲーム上ではすでに馴染みのあるものですが、Facebook社が社名を「Meta」に変えたことで話題になりました。

同社のプレスリリースでは、「メタバースは、現在のさまざまなオンライン上でのソーシャル体験を掛け合わせたようなものになります。時には3次元に拡張され、時には現実世界に投影される、それがメタバースです。」と記述されています。

クリエイターがメタバースに注目すべき理由として、以下の3つが挙げられます。

1. 独自の経済圏を形成し、新たな雇用やビジネスを生む可能性がある
2.
クリエイターとファンとの距離を近くし、新たなコミュニケーションが生まれる
3. ユーザー自らが開発・提供するため、クリエイターの創造性が発揮される

以下、それぞれについて解説していきます。

1.独自の経済圏を形成し、新たな雇用やビジネスを生む可能性がある

メタバース空間上では、現実世界と同じように建物を建てたり、アイテムを制作して販売することができます。

すでにいくつもの企業がメタバースに参入しており、NFTを活用してデジタルアセットを取引したり、インタラクティブなイベントを実施したり、土地を売買するなどのビジネスも生まれています。

企業の参入事例として、イタリアのファッションブランドGUCCIがメタバース上で利用できるデジタルバッグを4,115ドルで販売し話題となりました。

またバレンシアガは、VRオンラインゲーム「フォートナイト」と提携して、プレイヤーがアバター用に購入できる衣装やアクセサリー、武器をデザインしています。同じデザインのファッションをリアルでも発売するという試みも行われました。

▼バレンシアガによるデジタルファッションの紹介動画

 

また、世界的スポーツブランドのNIKEも、オンラインゲームプラットフォーム「Roblox」内のメタバース空間に、米国のナイキ本社を模した「NIKELAND」を開設しており、アバター同士で遊んだり、アパレルを試着して楽しむことができます。

▼NIKELANDの紹介動画

 

こうした、メタバース空間内のアバターをターゲットに行うマーケティング手法は「D2A(Direct To Avatar)と呼ばれ、ファッション業界が大きく注目しています。オンライン上で活動する92%の人が自身のアバターの見た目にこだわっているとする調査もあり、今後の拡大が見込まれる市場の一つです。

今後メタバースが成長するにつれて、メタバース建築家やアバターデザイナー、NFTデザイナーといった新たなクリエイターが誕生する可能性もあるでしょう。

2.クリエイターとファンとの距離を近くし、新たなコミュニケーション方法が生まれる

また、メタバース空間ならではの空間を活かして大規模なイベントを開催したり、ファンと直接コミュニケーションをとることも可能です。

人気ラッパーのTravis Scottは、フォートナイト内で自身のアバターを使い約9分間のパフォーマンスを行いました。イベントにはおよそ1,230万人が参加したとされ、現実世界ではこの規模の観客を到底集めることはできないことを考えても、メタバースが秘める可能性を感じられるのではないでしょうか。

▼Travis Scottが行ったバーチャルライブ「Astronomical」の様子

 

このパフォーマンスを通じて、アーティスト側に与えた利益も莫大だったとされています。具体的には、イベントで披露された新曲がBillboard HOT100で首位デビューを達成したり、2016年の旧作「Goosebumps」のストリーミング消費を約4倍に増やすといった効果があったといいます。

さらに、衣服やフィギュアなどイベント用に制作されたマーチャンダイズに関しては「12か月分の世界ツアー興行分を10分で稼いだ」とする声もあるそうです。

※参考:トラヴィス・スコット×フォートナイト なぜ「歴史的」だったのか? – CINRA

2021年の9月には、ロックミュージシャンのTwenty One Pilotsがファンとインタラクティブなライブパフォーマンスを行ったことで注目を集めました。ライブはオンラインゲーミングプラットフォームの「Roblox」上で行われ、約160ヵ国からファンが集まりました。

▼Twenty One Pilotsが行ったライブパフォーマンスの様子

 

ショー内では、ユーザーの投票を通じて各コンサートで演奏される曲の順番が選ばれる「ダイナミックセットリスト」の仕掛けや、ショーの後にファンとQ&Aを行うなど先駆的な体験が行われました。

最近では、音楽・エンターティメントブランド「MTV」が主催する「Video Music Awards」に「Best Metaverse Performance」部門が追加しており、「ファンとの交流の新しい形」としてバーチャル空間での音楽パフォーマンスが定着してくるかもしれません。

3.ユーザー自らが開発・提供するため、クリエイターの創造性が発揮される

多くのオンラインゲームでは、アイテムや通貨をプレーヤーが現金化することが規約で禁じられています。しかし、メタバースの場合は参加者が自らコンテンツを開発し、クリエイターとして収益を得ることが期待できます。

オンラインゲーミングプラットフォームの「Roblox」は、ユーザーが自由にゲームを作成したり、また他のユーザーが作ったコンテンツをプレイすることができます。開発ツールは無償で公開されており、公開したゲームの利用状況によって開発者にインセンティブが付与される仕組みも導入されています。

アメリカやヨーロッパ、アジアを中心に多くのユーザー数を獲得しており、2021年8月時点で毎日約4,300万人がこのプラットフォームを利用していると報じられています。なかには若手デザイナーも多く、年間最大1,000 万ドルを稼いでいるプレイヤーもいるとのこと。収益化を支援するインフルエンサープログラムも立ち上がっています。

オンラインゲームプラットフォームの人口統計の67%が16歳未満とする調査もあり、米国では彼らの購買力は2030年までにミレニアル世代とブーマー世代を超えると予測され、若いクリエイターが中心に活躍する世界もすぐそこまで来ているのかもしれません。

▼メタバースについて詳しくはこちらの記事も一緒にご覧ください
誰でもわかる「メタバース」とは? 歴史や定義、参入プレイヤーも徹底解説【Microsoft、Meta、Roblox他】 – SELECK

以上、クリエイターエコノミーの定義から注目背景、さらにWeb3.0による変化や次世代サービスまでお伝えしてきましたがいかがでしたでしょうか。【後編】ではWeb3.0時代のクリエイターにおすすめサービスを12個厳選してお伝えしております。ぜひこちらの記事もご覧いただけますと幸いです。

▼記事内で紹介しているツールはこちら

  1. ソーシャルトークンを簡単に発行できる「Rally」
  2. メンバーシップ機能でクリエイターを直接支援「Patron」
  3. クリエイターエコノミーを構築するWeb3.0プロトコル「DEIP」
  4. コンテンツをNFT化できるニュースレタープラットフォーム「PARAGPAPH」
  5. リスナーとの交流も可能!音楽アーティスト向け「Emanate」
  6. 動画NFTの販売プラットフォーム「Glass」
  7. 読者と直接関係を構築できるブログプラットフォーム「Mirror」
  8. レコード会社が不要に?アーティストと投資家をつなぐ「Indify」
  9. コミュニティを一つのツールだけでマネジメント「Talkbase」
  10. たった数分でクラウドファンディングを立ち上げ「Ko-fi」
  11. SNSなどのリンクをまとめた簡易版ポートフォリオ「Linktree」
  12. クリエイターのタスク・財務管理をサポート「Passionfroot」

▼記事はこちらからご覧いただけます

【後編】Web3.0時代のクリエイターには必須!「好きなことで稼ぐ」を応援する次世代ツール12選 – SELECK

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