- 株式会社Speee
- 開発部 エンジニアマネジメント責任者 兼 エンジニア採用責任者
- 是澤 太志
業務委託エンジニアはリソースではなくアセット。リスペクトして頼る、開発組織とは
〜いかにして開発組織を立ち上げ、技術力を高めるか。面接時の1人ひとりへの向き合い方や、高いスキルを持ったフリーランスの採用手法などをご紹介〜
テクノロジーを活用したサービスが台頭する中、開発力の強化をテーマとする企業も多いのではなかろうか。
デジタルコンサルティング事業を中心に展開する株式会社Speeeも、営業中心の組織構成の中で、開発組織を立ち上げる必要があった。
同社で開発部の責任者を務める是澤 太志(これさわ ふとし)さんは、組織の改革に伴う採用面接の際、合否に関わらず徹底して1人ひとりに本音で向き合うことを大切にしてきたと言う。結果的にそのスタンスが評判を呼び、広報的な価値も生むと話す。
また、業務委託として参画するフリーランスエンジニアを、単にコーディングを切り分けて委託するための「リソース」ではなく、技術力を向上させるための「アセット」として捉え、彼らに頼ることを大切にしているそうだ。
今回は是澤さんに、面接時に大切にしている考え方や、業務委託として採用するフリーランスエンジニアへのスタンス、そして、適切なエージェントの見極め方について、お話を伺った。
「いかにしてRubyの技術力を向上させるか」が組織のテーマ
僕はSpeeeで、開発部の責任者をしています。チームとしては、正社員が約25人、業務委託や開発会社の方も合わせると約40人いった構成です。
もともと弊社は、開発中心の組織という訳ではありませんでした。そこから顧問である井原さんと一緒に、これまで試行錯誤しながら開発組織を作り上げてきました。
例えば、採用面接でのコミュニケーション方法であったり、なかなか正社員では採用できない優秀なフリーランスエンジニアの採用方法などに、色々と工夫を重ねてきました。
また、複数の事業を展開する中、事業部間で人が異動する自由度を高めたいという背景があり、現在は言語をRubyに統一しています。
ですので、いかにしてRubyの技術力を向上させ、強い開発組織を作っていくかという点が、僕たちの大きなテーマです。
「IT土方」を生まない。相手の幸せに向き合う面接が評判に
このように僕たちはRubyの組織ですので、採用においては「Rubyを書きたいと思っているか」「Rails wayに基づいた開発ができるか」を、ひとつの基準としています。
そして、正社員の採用面接では「本当にこの人がSpeeeに来たら幸せになるのか」を考えて、真剣に相手に向き合うことを大切にしています。
例えば、カルチャーや価値観が合わないなと思ったら、「Speeeだと成果が出しにくいと思う」と普通に伝えます。
あるいは「スタートアップのような環境で、何でもやりたい」という人には、他の会社をおすすめすることもあります。Speeeはどちらかというと、1人ひとりが技術的な強みを高めようとしている組織だからです。
他にも、それほど技術を追求したいわけではないという人だったら、「本当にエンジニアでいいんですか」という話をしますね。その人のモチベーションが何にあるのか? どのようなライフスタイルを目指しているのか? を話しながら、一緒に考えることを大事にしています。
なので、面接時間は合格する人よりも、落ちる人の方が長くなることもあります。普通は、ダメだと思ったら30分で終了させることもあると思うのですが、僕の場合は逆に長くて、過去には2時間ほど話したこともあります。
なぜ、そこまでするかというと、僕はIT業界が好きなんですよね。2000年頃のビットバレーと言われていた頃から、好きで楽しくてこの業界で働いているので、この業界で不幸になる人が出てしまうのが嫌なんです。
だから僕は、「IT土方」という言葉が大嫌いで・・・。組織と個人がアンマッチを起こして、そういうエンジニアを生まないためにも、1人ひとりに向き合うことを大切にしています。
その結果、仮にご縁がなかったとしても、「色々と相談にのってもらえた」という評判を生んでいるのかなと思うことがあって、それが広報的な価値につながるのかなと考えています。
業務委託は「リソース」ではなく、「アセット」として頼る
そして、僕たちが技術力を高めていくために大切にしていることが、業務委託などで多様な経験をされているフリーランスエンジニアにチームに参加していただくことです。
正社員の若手エンジニアよりも、そういった経験を持つフリーランスの方々の方が、当然ながらより実戦で経験を積まれています。
組織としてRubyの技術力を底上げするためにも、一緒にプロジェクトをやることで、僕たちに気付きを与えてもらうことが重要だと思っているんです。
そのため、フリーランスの方に関しては、キャッチアップはそこそこに、即戦力として僕らをリード・支援してくれることを求めています。
ですので、現状の採用対象は、経験の豊富なRubyのプロフェッショナルに限定していますね。例えばRubyのコミュニティーで活躍している方に直接お願いさせてもらったりもしています。
これは何故かと言うと、僕たちは業務委託で手伝っていただくエンジニアを「リソース」ではなく、「アセット」だと考えているからです。
ただ単に開発をして欲しいわけではなく、個々に持つ強みを組織のために活かして欲しいという考え方なので、自分たちも彼らを「頼る」ことを大切にしています。
なので、「雇っている」とか「契約を切る」みたいに、あくまでリソースとして捉えているような言葉は絶対に使いません。
仮に社内でそのような言葉が出たときには、「何言ってんの」という感じで注意するようにしています。僕自身が責任者として、いかに小姑になれるかも大切だと思っていますね。
入社後のギャップを生まないために、現場の人間が面接に出る
また、採用時に現場の状況をしっかりと伝えて、期待水準にギャップを生まないことも意識しています。
今はもうありませんが、Rubyを使い始めた当初は、契約が満了する際に「もっとレベルの高い人とやると思っていたんですけど…」というような辛辣なフィードバックをいただくこともあって。
「テストコードが思ったよりも書けていない」「開発だけと聞いていたのに、ディレクションもやる必要があった」というようなことを言われたこともありましたね。
なので、今では現場のエンジニアにも面接に出てもらって、リアルな状況を伝えるように心がけています。
エンジニアへのリスペクト度合いが、エージェント選びのポイント
採用チャネルについては、フリーランスエンジニアの採用エージェントとして、主に「geechs job(ギークスジョブ)」を利用しています。比較的、技術力の高い人を紹介していただける印象があり、信頼できるエージェントだと感じています。
これは、彼らがエンジニアをリスペクトしているからこそだと思います。エージェントとエンジニアの間に信頼関係がなければ、優秀なエンジニアほど、そのエージェントを使わなくなってしまうからです。
ただ単にマッチングさせることだけを目的にしていると、「あのエージェントに紹介してもらったけれど、聞いていたことと全然違った」という不満が生まれてしまいますよね。
ですので、エンジニアをリスペクトして、コンシェルジュ的に1人ひとりと真摯に付き合っているエージェントであるかどうかが、とても大切だと思いますね。
あとは、担当者と連絡がちゃんと取れるかですね。そういう細かいことができていれば、例えば、僕たちが伝えたいメッセージをエンジニアにしっかりと伝えてくれるだろうと、信頼することができます。
スペシャリティーが増す時代。皆でプルリクを出し合える組織へ
これからのエンジニアリングの世界では、よりスペシャリティーが重要になってくると感じています。
そして、働き方の多様性が増している中で、優秀なエンジニアが会社に属せずとも、フリーランスとして働くケースが増えてくるかと思います。
そういった方々と一緒に働くためには、まず、自分たちの技術力を上げないと駄目だと考えています。なぜなら、技術力の高い人は、技術力の高い人と仕事をしたいからです。
Googleの方が「Aクラスの人はAクラスと仕事をしたがる。Bクラスの人はCクラスの人と仕事をしたがる」と言っているように、本当に優秀な方と働くには、僕たちがAクラスになることが必要です。
また、「Speeeに入って、一緒にこのプロダクトを作り上げることができてよかった」という成功体験が積んでいただくことも大切です。
そうすれば、契約期間が終わっても、またいつか一緒に働きたいと思ってもらえるかもしれないですよね。
そうやって、スペシャリティーを持った方々の力を借りつつ、細かいことを言わなくても、みんなで自由に自走をする組織を作っていきたいです。
1人ひとりが仮説を持ってどんどんやりたいことを検証したり、何かを世に出して臨床していけばいいと思っています。
組織やプロダクトもOSSのように、みんながプルリクを出し合えるような組織を作っていきたいですね。(了)