• 楽天株式会社
  • グループ顧客戦略部 ブランド戦略グループ ソーシャル戦略チーム リーダー
  • 安井 麻美

累計600万以上のいいね!を獲得!楽天市場のFacebookアカウントの運用の全貌

【今回のソリューション:Facebook】

〜Facebookページと広告の運用を通じて、楽天市場のファンを獲得、育成。ブランディングに貢献し、販売促進につなげている事例〜

近年では、日常的に使われているソーシャルメディア。企業のマーケティング活動においても、FacebookやLINE、Twitterなどのアカウントの運用は、もはや当たり前のことになりつつある。

楽天株式会社では、こうしたトレンドを素早く捉え、2012年にソーシャルメディアの運用を専門的に行う部署を立ちあげ、マーケティング活動に活かしてきた

結果的に現在では、Facebookの企業ページのいいね!数は624万を越しているそうだ。

Facebookでの投稿と広告の運用によって、ファンを獲得し、エンゲージメントを高めていくことで、ファンとそうでないユーザーでの購買行動に明確な違いが生まれてきているという。

同社のグループ顧客戦略部でソーシャル戦略チームのリーダーを務める安井 麻美さんと、ブランド戦略グループマネージャーを務める山岡まどかさんに、その運用と戦略についてお話を伺った。

▼楽天市場のFacebookアカウント

ソーシャルメディアを「どっぷり」運用できる楽天へ

安井:私は、新卒で教育業界に入社しまして、2年ほど営業を担当していました。それからカナダ留学、現地の教育関連企業での就労を経て、楽天には2013年3月に入社しました。前職と合わせると約6年ほどマーケティングに携わっています。

楽天に転職した理由は、ソーシャルメディアのマーケティングを極めてみたいと思っていたこと、そして海外経験を活かせる職場だったからです。

ちょうど入社の半年前に、楽天がソーシャルメディアの専門組織を立ち上げていて。入社から今まで、ずっとソーシャルメディアのマーケティングに関わっています。

山岡:私は新卒で大手情報出版社に就職し、新規事業開発やECサイトの立ち上げなどに従事してきました。その後、ITの将来性とスピード感に魅かれて2010年9月に楽天に入社しました。

以降、ファッション事業、そしてソーシャルメディアやブランディングキャラクターなど、新規サービスやコンテンツ開発に多く携わってきています。

300万いいね!の獲得を目指してFacebookアカウントを運用

山岡:2011年頃までの楽天のソーシャルメディアアカウントは、キャンペーン告知が主で、メルマガと同じような位置づけで運用されていました。「無料でできる告知ツール」、というイメージでしたね。

ただその頃からソーシャルメディアを使われるお客様も、その滞在時間もどんどん増えてきました。そして、これはよりインタラクティブなコミュニケーション接点や、ブランディングツールとして使っていく方がよいのでは、という意見が出てきました。

実際にFacebookファンになっていただくお客様と、それ以外のお客様で比べてみたときの売上げとの相関もわかってきました。

そのため、ファーストムーバーアドバンテージ(注:早く開始・実行したものの方が、後から開始・実行したものよりも優位に立てるということ)を取るためにも、お金をかけてでもファンを獲得して一気に拡大した方がよいだろうだということになりました。

そこでまずはクイックにスモールテストを行い、新規ファンを集めるためのゲームアプリを複数作って展開したところ、数多くのファンを集めることができ、スケールの見通しも立ちました。

それをきっかけに人員も予算も拡大し、ソーシャルメディアマーケティングを本格展開していくことになりました。

安井:このような背景から、弊社では2012年の秋に、ソーシャルメディアを活用した事業貢献を専門的に行う組織ができました。

そして私はその中で、楽天市場アカウントの新規ファンと投稿への「いいね!」をいかに増やすかを考え、日々の施策を実行していました。

Facebookに関しては、まずはFacebookページで300万ファンを獲得することを目標とし、PDCAを回してきました。

【FB投稿のコツ①】投稿の時間帯はインサイトをチェック

安井:楽天のFacebookページでは、主に商品紹介や各種キャンペーン情報を配信しています。

投稿の大きな方針としては、楽天市場のコンセプトである「Shopping is entertainment !」を非常に大事にしていて、商品の紹介の仕方とかもどうやったらワクワク感や楽しさを伝えられるかを考えて投稿しています。この方針は初期のころから、ずっと一貫しています。

運用のルールは、「1日3回投稿する」というシンプルなものです。投稿するタイミングは、Facebookのインサイトの中で、お客さまがアクティブになっている時間帯に合わせて、最適なタイミングで投稿するようにしています。

ターゲットとなる方は、主婦の方からビジネスマンまで幅広く、男女も半々くらい。彼らが一番アクティブなのが夜なので、1日の中で重要な投稿は夜に持ってくるように意識しています。

【FB投稿のコツ②】ファンの方が求めているものは何か

安井:運用する中で気づいたことは、プロモーション色が強いと「いいね!」がつかないということです。ページを運用するなら自社のサービス紹介やプロモーション情報を投稿していきたいところですが、実際にやって見ると、反応が芳しくありませんでした。

そこで、「ファンの方が求めているものは何か」という視点から、過去の投稿の「いいね!」数を分析したりして、投稿内容を常に見直すようにしています。

【FB投稿のコツ③】内容は、双方向のコミュニケーションが取れるものを

安井:内容に関する工夫としては、双方向のコミュニケーションをとることをひとつのポリシーにしています。お客様に何かを投げかけるような言い方にしたり、お客様からの質問に対して答えるような取り組みです。

例えば、桜の季節には、「皆様、もう桜は見ましたか?」という文言に、オフィス近くで撮った桜の写真を加えて、

【皆様の桜の写真も是非コメントに投稿してください♪】

と投稿することで、双方向のコミュニケーションが取れるようなコンテンツにすることを意識しました。

一見、楽天と何も関係のない投稿に見えますが、実はその桜の写真は楽天モバイルのスマホで撮っています(笑)。「スマホでこんなに綺麗に撮れるとは!」といった嬉しいコメントも頂きました。

▼双方向のコミュニケーションを取る投稿

楽天はインターネット企業なので、お客様からすると働いている人の顔が見えにくいというか、直接会話する機会が少ないですよね。その点、Facebookはお客様と双方向の接点が持てる、貴重なメディアだと考えています。

【FB投稿のコツ④】人気が高い県民性コンテンツ 理由は自分ゴト化?

安井:今は、キャンペーンで新規ファンをとるよりは、いかに日々の投稿でお客様とのエンゲージメントを高めていくかというところを目指しています。最近とても反応が良かったのが、楽天市場のお客様の購買データを活用して作った都道府県ランキングというコンテンツです。

例えば、2015年の酒類の購買金額を都道府県別にランキングにして、クイズ形式で投稿します。そうすると、皆さん色々な意見をコメントに書いてくださったり、普通の投稿よりも「いいね!」やシェアが増えて、拡散されていきます。

おそらく、県民性というのは自分ゴト化して考えやすいので、会話のきっかけになりやすいのではないかと思っています。県民性というテーマは我々の中で、ひとつの成功事例となっていますね。

▼県民性は自分ゴト化されやすい

【FB投稿のコツ⑤】ユーザーへの対応は「誠実に」

安井:また、当たり前のことではありますが、投稿の際のコミュニケーションは誠実に対応するように心がけています。

例えば、投稿で誤植があって、お客様から指摘をいただいた場合は、「お客様のご指摘により変更させていただきました」というご案内を差し上げてから修正するなど誠意のある対応をするようにしています。

Facebook広告では、数百にセグメントを切って運用

安井:Facebook広告に関しては代理店さんと一緒にやっていますが、ターゲットを非常に細かく切って運用しています。多い時は、市町村別くらいまで何百にターゲットを切って、クリエイティブも数十種類作って、それぞれのターゲットに最適化して出していたこともありました。

広告のネタについては、担当者が、国内外の事例をリサーチしたり、Twitterなど他のメディアでの成功事例を応用したり、オフラインのイベントからヒントを得たりして、企画を出しています。また、社内でも様々な企画が動いているので、社内でいいネタがないかを探したりもしています。

【FB広告のコツ①】「飽きられない」ことが大切

安井:運用で大切なことは、「いかに早くPDCAを回して広告を変えるか」です。すごく単純なことですが、1、2週間同じ広告を出していると飽きられてしまいます。

同じターゲットで同じクリエイティブを使っていると、明らかにCTRやコンバージョンが下がってくるのですが、同じターゲットでも例えばクリエイティブを変えだけで、すぐに改善したりします。分かりやすく結果が出るので、意識して日々運用レポートを見るようにしています。

【FB広告のコツ②】キャンペーンはメディアと連携できると◎

安井:300万いいね!を獲得するまでは、とにかくたくさんのキャンペーンを実施しました。例えば、バレンタインやクリスマスなど季節性を意識したゲームコンテンツや、シンプルに楽天ポイントや話題の商品をプレゼントするキャンペーンなどです。多い時には月に20本くらいキャンペーンをやっていました。

商品が100万円分当たったり、「うまい棒かハッピーターン一生分プレゼント」といった大型企画は、メディアにも取り上げられ反響がありました。

ファンになる前の方には、あまり楽天色を強く出し過ぎないことで、一旦は門戸を広く開いて、幅広い方々に来ていただくよう意識しました。

「ファン」になるかどうかで、購買行動にも差が生まれる

山岡:弊社では、楽天市場のFacebookページのファンになった方と、そうでない方の購買行動を統計的に調査しています。購買額を比較すると、ファンになった方のほうが購買額が上がるという結果が出ています。

私たちがソーシャルメディアの運用に投資ができているのでは、こういった統計データの裏付けをもとに、かけたコストをしっかり回収できるという根拠があるからです。

ファンになってもらい、タッチポイントを増やし、マインドシェアにつなげる

山岡:なぜFacebookでファンになると購買額が上がるかについてですが、普段、お客様が多くの時間を過ごす、ソーシャルメディア上でコミュニケーションをしているため、楽天市場のマインドシェアが上がり、買い物しようとするときに思い出してもらいやすくなるのだと思います。

また、コンテンツのコンセプトに共感いただけた結果、楽天市場への好感度が上がったり、ポジティブなイメージにつながる、ということもあると思います。

安井: Facebookの投稿文中のリンク先に、直接アクセスして購入するという短期的な購買ではなく、Facebookでの日々の投稿をみたり、「いいね!」やシェアをして頂きながら間接的につながる機会を継続的に持つことで、お客様の長期的な購買行動が変化してくるのだと思います。

今後は、よりお客様に愛されるために、リアルなコミュニケーションを増やしていきたいと考えています。

Twitterでは、「#楽天探して」という企画を実施しています。Twitter上で、お客様が楽天市場で探しているものをつぶやいたら、私達がリアルタイムで商品を探すというものなのですが、これをFacebookでも実施してみたいですね。

また、楽天には楽天市場以外にも様々なサービスがあるので、お買い物だけでなく、ファンの方の生活がより豊かで楽しいものとなるようなコンテンツをもっと提供していきたいです。ファンの方と直接お会いするイベントも楽しそうですね!(了)

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