• 株式会社クレディセゾン
  • カード事業部 営業企画部 課長
  • 相川 耕平

大企業の「働き方改革」は草の根活動から!「まずはやってみる」クレディセゾンの挑戦

〜2,000名以上の社員を抱える大企業で、働き方を改革すべく、立ち上がった新組織。テレワークなどを推進した、その活動を紹介〜

1人ひとりのライフスタイルに合わせ、働き方が多様化する昨今。とは言え、特に大企業において新しい働き方や制度を取り入れるのは、決して容易なことではない。

1951年に創業し、現在は2,000名以上の社員を抱えるクレディセゾン。同社には、「働きやすさ」だけではなく「働きがい」のある職場作りを目指す、「セゾン・ワークライフデザイン部」という組織がある。

そのチームを構成するのは、社内の様々な部署から手を上げたメンバーだ。社内外の「リアルな声」を集めること、テレワークなどの新しい働き方にチャレンジすること、そして、先進的な働き方についての情報を広く発信することが役割だという。

今回は、セゾン・ワークライフデザイン部の立ち上げに携わった、相川 耕平さんと、上川 奈保さんにお話を伺った。

新しい働き方を「まずやってみる」のが、ワークライフデザイン部

相川 弊社には社員1人ひとりが自分らしく働く組織づくりを目的として、2015年4月に発足した「セゾン・ワークライフデザイン部(以下、ワークライフデザイン部)」という組織があります。

私は当社のブランディングやメディア戦略を担う部門の代表、そして子育てをしながら働く社員の1人でもあったことから、立ち上げメンバーとして参加しました。


主な活動は、社員の「本当の声」を吸い上げる、ボトムアップ型の働き方改革です。

また、働き方・子育てなどをテーマに、世の中の先進的な取り組みを発信するオウンドメディア「SAISON CHIENOWA(セゾンチエノワ)(以下、チエノワ)」の運営をしています。

▼オウンドメディア「SAISON CHIENOWA(セゾンチエノワ)」


上川 私は戦略人事部に所属しながらワークライフデザイン部に参加していました。

弊社は、社員の約8割が女性ですので、もともと、産休などの制度は比較的整っていました。ですが同時に、産休・育休中であったり、短時間勤務を利用している社員の活躍の幅を、女性目線で広げていくことが、ひとつのテーマだったんですね。

このような、現状の人事制度では対応しきれていない課題に目をむけ、部門横断型プロジェクトだからこそできる新たな働き方を模索することが、私の役割でした。

社員の声を吸い上げ、まずは現行の制度の中で活動する

相川 ワークライフデザイン部では、社内から意見を吸い上げ、その声を経営層に提案すると共に、できることから実際にメンバーが実行する活動をしています。

新しい働き方へのチャレンジを会社主導でやろうとすると、会議にかけて、労働組合にも確認をとって….と、ステップが多く、時間がかかってしまうんですよね。


ですので、現行の制度の中でできることを、まずはミニマムに、やれる範囲でやってみると。

その活動を通じて課題を抽出し、改善を加え、成果が出たものは正式に人事部で制度化を進める、という活動を目指しています。

また、必ずしも人事制度と関わらない課題も多くありますので、それらは、担当部に直接掛け合って、解決に向けて動き回っています。

オフィシャルな活動ではあるものの、ノルマなどの義務はなし

相川 社内全体の声を集めることを考えた時に、ひとつの部門だけで懸命にやっても、そこだけの盛り上がりで社内の協力を得られません。

そのためワークライフデザイン部は、色々な部署から、希望者を募った上で約10名のコアメンバーを集めています。そして人事部からの発令として、正式なプロジェクトとして動くことで、一定の影響力を行使しながら活動することができるんですね。

またコアメンバー以外にも、有志として約170人がFacebookのグループに参加しており、「こんなことを思ってるんだけど、どう?」などと意見交換をしています。

上川 正式な業務ではあるものの、メンバーにはそれぞれ本業での業務もあります。

ですので、「この日までに必ずこれをやってください」という形でプレッシャーをかけては、おそらく革新的なアイデアは生まれないと考えていました。参加するメンバーが楽しんで、自分事として考えることが大切です。

そのため、活動は基本的に自由で、それぞれの自主性に委ねて進めています。

社内アンケートを実施し、フリー回答の「生」データを社長に提出

相川 働き方改革を進めるにあたっては、まずは社員の声を集めるべく、去年の6月に全社員にアンケートをとりました。

そもそも、いまの働き方に満足しているか、社外に誇れる点は何か、逆に課題だと感じていることは何か、意見を募ったんです。

結果、1,161人の回答が集まり、特に「人事制度」「業務量」「職場環境」への改善要望が多く上がりました。

▼実際のアンケート結果


その中で、フリーアンサーで答えてもらう設問が多くあったのですが、それをエクセルにまとめて、一切編集なしのローデータで、社長に直接渡しました。

これはもう、完全にリアルな魂の声です、だからまずは読んでみてください、と。

そうしたら、数日かけてそれを全て読んでくれて。制度や環境の改善提案についても「ぜひ、進めよう」ということになり、他の経営層への共有も促してくれました。

その後の、正式な会議での提言を行う際にも、事前に経営層と課題が共有されていたため、大変スムーズに進めることができました。

例えば「古いパソコンを刷新して欲しい」という声は、前々から上がってはいたのですが、費用・時間・担当者の労力などのハードルがあって、なかなか前に進んでいませんでした。

しかし、このような形でリアルな意見が全社から集まったことで、ビジネスの効率化のために必要な課題だ、という認識を全員が持たざるを得なくなり、一気にパソコンの入れ替えを進めることができました。

施策案のトライアルも主導。チエノワの活動が後押しに

上川 社内の声を集めることに加えて、新しい制度案のトライアルを主導することも私たちの役割です。

例えば、外出の多い営業担当者や、保育園への送り迎えのあるママ社員から、テレワークの導入を希望する声が多くありました。

そこで、戦略人事部で働き方改革の担当でもある私が旗振り役になり、3ヶ月程かけて、20人位でトライアルを実施しました。

週に3回までであれば、終日、半日、1時間といった短い単位で、自宅でもカフェでも良いので、オフィスではない場所で仕事をしてみましょうと。

当初はセキュリティーが大丈夫なのか、部下の姿が見えないと上司側が不安じゃないか、また、そもそもちゃんと働くことができるのか、といった不安はありました。


その時に、チエノワで得た知見が役に立ちました。以前、テレワークを全社で導入している大手企業に取材に行ったことがあったんです。

「家で働いている社員を、どうやって管理しているんですか?」という質問をしたら、「そこはもう性善説なんですよ」って。社員を信じる、その姿勢の力強さと大切さを学んだこの取材が、トライアルの後押しをしてくれました。

そして、実際にやってみると、時間を有効活用でき、業務の効率も上がったという声が出てきました。それがキッカケとなって、テレワーク制度の導入を進めることになったのです。

まだ正式に制度化はしていないのですが、この夏にもう1回トライアルをし、細かな課題にも対応したうえで、秋頃には制度化を予定してます。

働きやすさから働きがいへ。育休中でも活躍できる組織づくりを

相川 また、社内からは「育休中でも会社と繋がっていたい」という声も上がっていました。

そのため、チエノワの記事を書くなど、育休中で家にいる社員に仕事をしてもらう、というトライアルを数十人で行いました。

本人の希望があって、組織貢献につながるのであれば、育休中であっても「完全に復帰して働く」以外の選択肢を提供できないかと考えたんですね。

「やってくださいね」というノルマ型ではなく、希望者のみを対象として、業務した分だけ出来高制で給与が支払われる、という制度です。

上川 「働きやすさから働きがいへ」というのが弊社のキーワードです。

育休が取得しやすくて働きやすい、というだけではなく、育休中であっても活躍することができ、自分はクレディセゾンに所属しているのだという誇りを持てるような働き方を、今、模索している段階です。

社員にとって、より身近な存在になることを目指す

相川 このように活動を進めてきましたが、弊社の全社員が私たちの活動を理解しているかというと、まだそうではないんですね。

ですので、今後はよりチエノワやワークライフデザイン部が身近な存在と感じられて、何かあった時に頼ってもらえるようになっていきたいですね。

上川 ワークライフデザイン部は、コアメンバーの大半を定期的に入れ替えることになっており、私はこの3月で任期を終えました。

ただ、社内横断的に役職や部門に関係なく社員が集まり、立場を越えて何かをやっていける場があることは、本当に素晴らしいことですし、ダイバーシティ&インクルージョンの実現につながる、そしてそれは必ず会社の成長につながると思っています。

これからも、チエノワ、そしてワークライフデザイン部の活動を、OGとして見守るとともに、相川をはじめ、新メンバーの活躍をサポートしていきたいですね。(了)

「目標達成するチームを作りたい」と思うあなたへ

当媒体SELECKでは、これまで500社以上の課題解決の事例を発信してきました。

その取材を通して、目標を達成し続けるチームは「振り返りからの改善が習慣化している」という傾向を発見しました。

そこで「振り返りからの改善」をbotがサポートする「Wistant(ウィスタント)」というツールを開発しました。

「目標達成するチーム」を作りたいとお考えの経営者・マネージャーの方は、ぜひ、チェックしてみてください。

チームを目標達成に近づけるロボアシスタント「Wistant」無料トライアルはこちら

;